俺の名前は
現在の時刻はA.M 6:45。だらしないうちの眠り姫を起こしにきている。
俺はまず膨らんだ布団を揺さぶる。少し動くも反応なし。
「起きろ、起きなければ朝食は抜きだと母さんが言っていた」
次に俺がそう言うと、布団がひとりでにモゾモゾと動き、そして布団がめくれる。
寝起きでボサボサの長い黒髪に、一般的には非常に整った顔立ち、そして膨らんだ胸部とそれを抑えるように着ている白に水色のラインの模様のパジャマ。
俺の双子の妹、
「あぁ〜……おはよう、兄さん」
「おう、とりあえず身だしなみ整えろ。入学式今日だぞ」
「ふぁ〜い……」
雌鶴は再び大きな欠伸をしながらベッドから立ち上がり、部屋を出て行く。
俺も雌鶴と一緒に部屋を出る。ここは雌鶴の部屋だ。昔から出入りしていたとはいえ、年頃の男子が、年頃の女子の部屋にいるのはどうかと思う。
俺は既に制服に着替えている。自分の部屋に戻り、自分の荷物に忘れ物がないかのチェックをする。初日から忘れ物は避けたい。非常に!
──コンコン
チェックを終え、満足していると部屋のドアが叩かれる。
「兄さんいい〜?」
「いいぞ」
ドアの向こう側から声が聞こえ、返事をすると、ドアノブが回されドアが開かれる。
そこに立っていたのは、ボサボサだった黒髪は整えられて綺麗なストレートロングになっており、服は俺の着ている服とは違ったデザインが使われており、ブレザーに〈錬金絹〉が使われ、ところどころにある刺繍には〈宝石糸〉が、金属部分には貴金属を織り交ぜた〈
「どう?」
「ん、いいと思うぞ」
「んふふ〜」
雌鶴は嬉しそうな声を出しながらふにゃっと顔を柔らかくする。
「それにしても雌鶴が〈
「……私は〈魔技科〉じゃなくて兄さんと一緒に〈剣技科〉で頑張りたかった」
その言葉を聞き、俺は雌鶴の頭に手を乗せる。
「いいんだよ、お前も俺と同じ選ばれた人間になってくれたんだ。俺は嬉しいよ」
優しく頭に乗せた手で雌鶴を撫でる。雌鶴は渋々といった感じで、大人しく俺に撫でられる。
空代家には魔法というものが生まれてから15年、誰も使うことのなく保存されていたものがあった。
俺、空代 雄我は、それに選ばれた男だった。
♦︎
今朝は少し寒く、その冷え込みからか霞が出ていた。
俺と雌鶴は青い魔力光を放ちながら高速で走る、〈魔光列車〉に乗っていた。
魔光列車の車体には錬金術で生成された新金属〈ミスリル〉が使われていて大きな軽量化がなされており、それに加え運転手の〈
250km/hという速度まで一瞬で加速する上に、停車する際は軽量化された車体に巧みな念動魔法により、音もなく瞬間に停車することを可能としている。
ミスリスの量産がまだ可能ではないため数は少なく、その運行も東京市内での試験運用にとどまっているらしい。
「雌鶴、そわそわするな。俺も落ち着かぬ」
「むーりー」
雌鶴は体を小刻みに動かしながら、高速で移り変わる景色を眺めていた。
俺も窓際ではない席から外を眺め続けていると、目的の駅である〈騎士学院前駅〉に到着した。
「ほら雌鶴、降りるぞ」
「えー、もうちょっと」
「馬鹿かお前」
「あー引っ張らないでー!」
窓を眺め続けてる雌鶴の襟を掴み、無理矢理立ち上がらせて外に出る。慈悲はない。
俺と雌鶴は目的地である国立騎士団カリアティドに向かって歩いていた。
15年前、ひとりの錬金術師によって生み出された〈賢者の石〉を頭の中に埋め込まれた人々は、魔法の力に覚醒した。
魔法とは人の心や精神力を
魔力によりバリアは、攻撃魔法か、魔力を帯びた魔法剣以外のダメージを、完全に無効化してしまう。
故に、世の中は〈剣と魔法の時代〉に移り変わり、国の治安や平和を守る警察や自衛隊は〈騎士団〉へと変化した。
俺達の入学する国立騎士学院カリアティドは、将来〈騎士団〉となりえる少年少女達を養成する学校だ。
「兄さん、〈あれ〉の調子はどうなの?」
「ん?特に異変はないぞ」
俺は腹を叩きながら雌鶴にそう言う。雌鶴は質問した時の少し強張った表情から、少し安堵したような表情に変わる。
「はぁ……」
「どうした?」
「兄さんと一緒に剣技科に行きたかった……」
「謎痕を授かった限り、魔技科への入学が義務付けられてるんだから」
「うぅ…」
人の心に広がる深層心理の、その奥底には、異世界に通じる扉が存在する。
人の心や精神力は、この異世界に繋がる扉〈
魔力という人智を超えた力を手に入れた人類は、それを感じ取ることができた。
全ての人類はこの異世界に繋がっており、非物質的な異世界は〈
歪界には膨大な魔力が渦巻いており、そこには人格を持った思念体が潜んでいた。
彼らは人類と接触すると、人が眠っているときなどに歪界から夢へと浮かび上がり、語りかけてくるようになった。
そんな彼らと契約し、彼らをこちらの世界に呼び寄せる魔法こそ、召喚魔法。
彼らは驚くべきことに、人類が語り継いできた神話に登場する神や悪魔と同じ名前、容姿を持ち、ゆえに神魔と名付けられた。
神魔の力を借りた召喚魔法は、普通の魔法と比べ遥かに強力でだった。
謎痕という形で神魔に選ばれた者は、魔技科への入学が義務付けられ、国家の厳正な管理の下で〈契約の儀式〉を行うことによって、〈謎痕〉は〈
召喚魔法という力は強大で、反感を買えばかなり危険なことはわかる。
だから国は、そんな強大な力を管理するために、魔技科への入学が義務付けられているのだ。
「あー!今まで兄さんと一緒に修行してきたのにー!」
「あーはいはい落ち着け」
飛びかかってくる雌鶴を俺は紙一重で躱す。躱された雌鶴はこちらを向いて恨めしそうな表情で俺のことを見つめる。
「それに、全く会えないわけじゃないだろ。剣技科と魔技科の生徒がチームを組んで〈クエスト〉に挑むことが多いって説明会でも言ってたろ」
「そうだけど〜」
「ほら、とっとと行くぞ」
俺は雌鶴の手を掴み、学院に向かって歩き始める。雌鶴は「あー待ってー」と言いながら俺に引っ張られる。
登校時点でこんなにグダグダしてて、大丈夫だろうか……?
つっぎのとっうこういーつかな♪(受験勉強から目を逸らしつつ)