でも前回と同じく内容は特に誕生日と関係ないんです(
と言う訳で、前回の話のおまけ的な続きです。おまけ的なので短めです。
美嘉がプロデューサーに耳かきをしたその日の夜。
「たっだいまー☆」
「ちょっと莉嘉、ちゃんと靴は直して行きなよー」
「はぁーい」
家に帰ってきた美嘉と莉嘉。今日はレッスンだけだったとは言え、莉嘉の元気な姿を見た美嘉は思わず苦笑いを浮かべた。
「莉嘉、なんだかゴキゲンだね?」
「当たり前じゃん! 今日は久しぶりにお姉ちゃんが耳かきしてくれるんだよ? ずっと楽しみにしてたんだから!」
「もう、嬉しい事言ってくれちゃって」
「えへへっ☆ 本当は今すぐして欲しいんだけど……」
ダメかな? と言う風に美嘉を見る莉嘉。
「んー……まぁまだ時間はあるし、今からしてもいい――」
「ホントっ!? やったぁー☆」
美嘉が言い切る前に、莉嘉は喜びを爆発させる。
「まだ最後まで言ってないんだけどなぁ……じゃあ道具取ってくるけど、今日は耳かき棒と綿棒、どっちがいい?」
「えっと、両方!」
そう笑顔で言う莉嘉に、再び美嘉は苦笑いを浮かべる。
「もう、欲張りなんだから。それじゃ、先に部屋で待ってて」
「うんっ!」
× × ×
「お待たせ、莉嘉」
「お姉ちゃん、早く早く!」
「はいはい」
近くに置いたティッシュ箱から取った一枚を近くに置き、もう待ちきれないと言うような莉嘉を膝枕に寝かせる。
「じゃ、始めていくからね」
まずは耳かき棒を手にして莉嘉の耳に当てる。
――初めは穴の周りから……。
かり、かり、かり。かりかりかり。
穴の入口の周りを優しく耳かき棒で
「んっ……」
始めたばかりだが、莉嘉はその気持ち良さに早くも顔を綻ばせる。
かり、かり……かり、ぺりぺり。
――うん、入口はこのぐらいで……。
「入れてくからね」
「うん……」
ゆっくりと耳かき棒を耳の中へと進めていく。ある程度入れたところで、優しく耳かき棒を当てる。
「ここ、ちょっと大きめのがあるけど、痛くない?」
「ん、大丈夫……」
「痛かったら言いなさいよ~?」
かりかり、かり、かり、ぺり。ぺりぺりぺり。
美嘉は取れた耳垢をティッシュに捨てて、莉嘉の耳を覗き込む。
「……うん、さっきのは取れた。でも他にもあるから、もう少し耳かき棒でやってくからね」
そう言って再び耳かき棒を入れる。
かり、かり、ぺり……ぺりぺり、かり。
「あぁ~……」
耳垢を耳かき棒で掻き取られる心地よさに、莉嘉も思わず声が出てしまう。
「ホント、気持ち良さそうな声出しちゃって。寝ないでよ~?」
「がんばる……」
「頑張るって、それ最終的に寝るやつだよね?」
変な時間に起きても知らないんだから……と思いながらも、美嘉は手を止めない。
かりかり。かりかり……。
もう一度耳かき棒を抜いて穴の中を覗き込む。
「こんなもんかな……」
耳かき棒で取った耳垢をティッシュに捨てると、持っていた耳かき棒を綿棒に替える。
「それじゃ、今度は綿棒入れるからね」
「ん……」
す、すり、すり、さっさっさっ。すりすり、ずり。
「気持ちいい?」
優しく綿棒で耳の中を擦りながら莉嘉に問いかける。
「うん……。耳かき棒でされるのも好きだけど、やっぱりお姉ちゃんに綿棒でされるのが一番気持ち良くて好き」
「嬉しい事言ってくれちゃって……ありがと★」
すり、すり……ずり、すりすりすり……さっ。
美嘉が耳から綿棒を引き抜く。
「でも、あんまりやりすぎると耳に良くないから、今日はちょっとだけね」
「えー!」
「それで炎症とか起きたら、耳かきも出来なくなるよ?」
莉嘉の頭を撫でながら優しく言い聞かせる。
「……分かった」
「それにまだ反対側もあるんだから。ね?」
そう言う美嘉の言葉に、莉嘉は頷いた。
「よし! じゃあ、梵天するね」
美嘉は耳かき棒を手にして数回指で弾く。
ふわふわ。ふわふわふわ。さっ、さっ。
わずかに残っている耳垢の残りを梵天で取る。
その梵天の気持ち良さに莉嘉は夢心地、と言うような表情だ。
「仕上げに……」
美嘉が莉嘉の耳元に顔を近付ける。
ふっ、ふっ、ふーっ。
「んっ……」
耳に息を吹きかけられたくすぐったさに、莉嘉の身体が思わずびくりと動く。
「これでこっちの耳はおしまい。次、反対ね」
「……もうちょ――」
「もうちょっともダーメ」
「ケチー!」
不貞腐れながらも言われた通りに反対側を向く。
「さっき分かったって言ったの莉嘉なんだから」
「ぶー……」
そんな莉嘉を気にせず、美嘉は耳かき棒を近付ける。
「……反対はちょっと長めにしてあげるから」
「ホント!?」
「ほら、続きするから動かない」
喜ぶ莉嘉を大人しくさせ、再び耳かきを再開する美嘉。
――こっちも最初は穴の周りから……。
かりかり。かりかりかり、かり、かり。
「こっちは外側そんなにないね……それじゃあ、耳かき棒入れるよ」
耳かき棒をゆっくりと耳の中に入れていく。
かりかり、かりかり。かりかりかり……ぺりぺり。
機嫌が良くなった莉嘉は再び耳かきに気持ち良さそうな表情になる。
「お、外の割に中は結構あるね」
「そういうのは言わなくていいよぉ~……」
流石にそういう事を言われるのは莉嘉も恥ずかしい。
そんな様子を見て、美嘉もごめんごめんと口にして続けていく。
かり、かり……ぺりぺり、ぺり。
「でも耳垢がある方が、耳かきする側としては楽しいんだよねー★」
「それは分からなくもないけど……」
美嘉は楽しそうにそんな事を言うが、莉嘉としては素直に賛成できる事ではない。
「まぁまぁ。ほらほら、こことかどう?」
かり、かり、ぺり……ぺり、ぺり、ぺり。
「気持ちいいでしょ?」
美嘉の言う通りの耳かきの気持ち良さに、渋々だが莉嘉は大人しく続きをされる事にした。
そんな莉嘉の様子に、笑みを溢しながらも手を動かしていく。
かりかりかり、かり、かり、かり……。
耳かき棒を抜いて中を覗く。
「……耳かき棒はもういいかな」
美嘉はそう言うと耳かき棒で取った耳垢をティッシュに捨て、綿棒に持ち替える。
「入れるよ」
「うん」
す、すり、すり……すりずりずり。
「ん……」
綿棒が耳の中を擦る心地の良い感触。
――耳かきはもう今やっている方で終わりだし、いつもみたいにこのままお姉ちゃんの膝枕で寝ちゃおうかな……。
などという事まで莉嘉は思い始める。
「あっ、ちょっと莉嘉、寝ようとしないでよー?」
「し、してないよ?」
流石は姉と言うべきか、莉嘉の考えを一瞬で当てる美嘉。
「ホントにー?」
「ホントホント!」
寝ようとしていたのを見破られた事で慌てる莉嘉に、思わず美嘉の頬が緩む。
すりすり、すり……ずり、ずりずり……。
「……でも、Pくんもお姉ちゃんに耳かきされてぐっすり寝てたよね」
ふと、莉嘉が今日の事を思い出して言う。
「あー、プロデューサーもいつの間にか眠ってたっけ」
「Pくんでも寝ちゃうぐらい気持ち良いんだから、お姉ちゃんの耳かきで寝ないなんて無理だよ☆」
「もう、調子の良い事言っちゃって」
そうは言いつつも、美嘉の声音と表情は嬉しそうなものである。
ずり、ずり……さっ。す、すり……さっ、さっ。
一度綿棒を抜いて、取った耳垢をティッシュに捨てる。
「……プロデューサーはアタシ達の為に頑張ってくれてるんだから、それにちゃんと応えないとね」
再び綿棒を入れた美嘉は、今日にプロデューサーとのやり取りを思い出しながら、そう口にした。
「うんっ、今度のライブもたっくさん盛り上げよーっ! ☆」
「こらこら、意気込みはいいけど動かないの」
「えへへ……」
――でも、莉嘉の言う通り、今度のライブで皆で盛り上げて、プロデューサーに褒めてもら……え……。
そう考える美嘉はプロデューサーに頭を撫でてもらうという想像をしてしまい、
――なんで撫でられる想像とかしちゃったワケ!? あ、ありえないったら!
「お姉ちゃん? どうしたの?」
不思議に思った莉嘉が声をかける。
「なっ、なんでもない!」
「……?」
「ほ、ほら、もう耳の中もほとんど綺麗になったから梵天するよ!」
綿棒から耳かき棒に持ち替えた美嘉だが、その頬は赤いままだ。
「ん、んんっ! 入れるからね」
咳払いをしてから、数回耳かき棒を指で弾いてから梵天を入れていく。
ふわ、ふわふわ。
梵天をする前までは慌てていた美嘉だが、やり始めると危なげない手付きで耳かき棒を動かす。
「どう?」
「うん、気持ち良い……」
やはり何度味わっても、この梵天の心地良さに莉嘉は抗えそうにない。
「ちょっと莉嘉ー? 今から寝ちゃったら変な時間に起きるでしょー?」
「大丈夫だよ~……」
――ホントかなぁ。
ふわふわ、ふわふわ。
既にまどろみに沈みそうな莉嘉の声音に半ば呆れながらも、美嘉は梵天をする手を動かしながら、改めて今日の事を思い出していく。
偶然とは言え、プロデューサーと二人きりになったどころか、彼に膝枕と耳かきをした。それを考えるとまた顔が熱くなるが、それと同時にとても嬉しくもなる。
――そう言えば、あのままプロデューサーは寝ちゃったけど、あれから会えなかったなぁ……。
美嘉と莉嘉はレッスンが終わった後、一度事務所を覗いてみたがプロデューサーの姿が無かった。どうやら他の仕事で居ないようだった。
ふわ、ふわ、ふわ。……さっ、さっ。
「今度はいつしてあげようかな……」
今日の耳かきでプロデューサーからの言質は取っている。美嘉はその“次”を期待して微笑んだ。
しかしそこで、ある事に気付いた。莉嘉が大人しいのである。
「ちょ、莉嘉?」
肩を揺すりながら呼びかけるも、聞こえてくるのは静かな寝息だった。
「もー、あれほど寝ないでって言ったのに……」
梵天を止め、莉嘉の耳元に顔を近付ける。
ふー、ふっ、ふっ、ふっ。ふーっ。
耳に息を吹きかけても、莉嘉は身動ぎをするだけで起きる気配はない。
「しょうがないんだから……」
そう言いながら莉嘉の頭の下から両脚を抜くと、そのまま耳垢を包んだティッシュと使った綿棒をゴミ箱へ捨てる。
「よい、っしょ……!」
莉嘉を抱きかかえてそのままベッドまで運び、掛け布団を被せた。
「ホント、気持ち良さそうに寝ちゃってさぁ……」
軽く莉嘉の頭をポンポンと撫でる。
と――
「あっ、莉嘉ってば、パジャマに着替えてないじゃん……」
そのままの格好で寝かせる訳にはいかず、美嘉は莉嘉を寝かせたままであるが、パジャマに着替えさせる事にした。
× × ×
「これでよし、っと」
――もう、着替えさせてる間も呑気に寝てるんだから。
「すぅ、すぅ……ん、お姉ちゃん……大好き……」
「ベタな寝言まで言っちゃってまぁ」
とは言いながらも、美嘉は嬉しそうに莉嘉の頭を何度か撫でた。
「おやすみ、莉嘉」