朝、賑やかな雰囲気で生徒達が登校している。
「まどか…まだかな~?」
「そうですね、少し遅いですね」
そんな中、二人の少女が立ち止まっていた。どうやら誰が待っているようだ。
一人は青い髪をして、元気が良さそうな少女。
もう一人は対照的に、緑色の髪に整った顔立ち、何処かお嬢様を匂わせる言動と振る舞いがあった。
「お待たせー!」
程良くして、彼女達の後ろから別の少女が見えた。
髪色はピンク、リボンで両端を縛り結んでいて、背は小さく、何処か気弱な感じがする。
「あ、まどかおっそーい!」
「ご機嫌よう、鹿目さん」
「ゴメーン、遅れちゃった」
「いえ、お気にせず。さぁそろいましたし、参りましょう。遅刻してしまいますわ」
三人は足を学校に向け、歩き出した。
「…………」
彼女達を見つめる不穏な影に気づくことなく……
時は進み、教室。ちょうどHRが始まったぐらいだった。
「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」
先生は一間を作り……
「目玉焼きとは、固焼きですか?それと(以下略」
先生は長々と愚痴を語っていた。
「あちゃ~こりゃまた振られたかな?」
「だね~……」
「あ、そうそう。今日は転校生を紹介します」
先生は思い出したのか、愚痴を語り終えたのか、話題を切り替えた。
「ヘぇ~転校生か……まどか、どんな人だと思う?」
「さぁ?でも…友達になれたらいいな〜」
「暁美さん、どうぞー」
ガラリとドアを開け、黒と紫色のロングでストレートな髪、凛とした眼差し。一言で表すならクールビューティーの言葉が相応しい少女が入って来た。
教室からも『綺麗~!』とか『美人~!』とか声がちらほら聞こえてきた。先生は黒板に『暁美ほむら』と書き、
「暁美さん、自己紹介をどうぞ」
「暁美ほむらです。よろしく」
「暁美さんは心臓の病気でずっと入院してたの。久しぶりの学校だから……」
先生が話している中、スタスタと歩き、空いていた席に付いた
「……困ってたらみんな助けて上げてね。じゃあHRを終わるわ」
そう言い残すと先生は颯爽と教室を後にした。
先ほどの態度に生徒達はヒソヒソとざわめいていた。
「…………」
暁美ほむらはそんな雑音なんか気にせず、辺りを見回した。まるで誰かを探している様だった
『この前の少女が本当に私なら……この学校にいると思ったけど、流石にいないか』
時は進み、休み時間。暁美ほむらの机には複数人の人集りが出来てた。
『……下らない』
何度繰り返しても周りは同じことばかり。
『前は何処にいたの?』『髪綺麗だね~!』
私は貴方達何かに構っている暇はないと言うのに……
「……緊張したせいかしら、頭が痛いわ。保健室へ行かせて」
私は人集りを気にせず彼女の元へと足を運んだ。
「鹿目まどかさん、貴女このクラスの保健係よね」
「え、えっと……」
「連れてってもらえるかしら?」
勿論『頭が痛い』なんて嘘だ。彼女と二人だけになるための口実に過ぎない。……なのに
「ちょっと転校生、いきなり何なのよ!」
「貴女には関係ないでしょ」
美樹さやか……貴女はいつも私の邪魔ばかり。いつもまどかと一緒にいるくせにまどかが守れない……!
「さ、さやかちゃん、喧嘩はダメだよ」
「……争うつもりはないわ。ただ保健室へ案内して貰うだけよ」
「だったら私もついていく、別に構わないよね」
「えっ?」
「その必要はないわ。保険室へ案内してもらうだけで彼女には余計な時間は取らせたりしないから」
「なら、案内程度に付き添いが一人増えたって何も変わらないよね。違う?」
「……………」
この時間軸の美樹さやかは『言う』わね。でも前例がなかったわけじゃない、対処の仕方は分かっている。
「分かったわ、美樹さんにも同行をお願いするわ」
「さやかちゃん……」
「ゴメンね、まどか。面倒なことにしちゃって」
本当よ、貴女さえ引っ込んでいれば事は手短に済んだと言うのに……
「う、うぅん!全然大丈夫だよ。じ、じゃあ案内するね」
ほむらとまどかとさやかは教室を後にした。
教室を出て、廊下を歩き、保健室へ向かう彼女達だが……
「…………」
「…………」
『く、空気が重いよ~!』
謎の沈黙がただそこにあった。
『な、何か話さないと!何かないかな……』
「えっと……あ、暁美さん?」
沈黙を最初に破ったのはまどかだった。
「……ほむらでいいわ」
「えっ?あ……ほ、ほむら…ちゃん?」
「何?」
「あ、あの……か、変わった名前だよね」
「……そうね」
「あ!べ、別に変な意味とかないよ!そ、それに何かカッコイイ名前だよね!ね、さやかちゃん」
「あたしに振られてもね~……まぁ珍しい名前だよね、何か燃え上がるような感じでさ」
「えぇ、よく言われるわ」
ほむらはただその一言で一蹴、また沈黙も空気が訪れた。
廊下もだいぶ進み、長い渡り廊下に入った時、
「……ねぇ、転校生」
「私にはちゃんと名前があるのだけど、何?」
「もしあたしの勘違いだったら謝る、一つ質問していい?」
「……何?」
「アンタ……私達と前に会ったことある?」
「!?」
「さやかちゃん?」
何ですって?美樹さやか、その質問はどうゆう意味!?
色々な推測がほむらの頭を巡り、考えた。何故美樹さやかはそんな事を聞いてきたのかと。
「いや、やっぱあたしの勘違いか。だってアンタは今まで入院してたんだもんね。そんな人と顔見知りなんてないか」
「…………」
この『美樹さやか』……こいつも『いつもの』美樹さやかではない。もう契約してしまったのか……?
目をさやかの指に向けてみると、
『……そう、この時間軸はそうなのね』
さやかの指には指輪がはまっていた。
この時間軸の『美樹さやか』はもう魔法少女なのだ。
『……相変わらず馬鹿な娘ね』
彼女がまどかより魔法少女になるケースも何回かあった。けど、決まって彼女の最後は……魔女となって死ぬ。
「……貴女に病人の知り合いがいて、見舞いなんかに来た時見かけた…とかならあるんじゃない?」
「いや、そうゆうんじゃなくて……もっと何か……ずっと前から……」
「さやかちゃん?」
「デジャヴってやつね、気にする必要はないことよ」
「う、うん……」
……この時間軸の美樹さやか、少し注意する必要がありそうね。
時間は過ぎ、放課後……
「さやかちゃん、一緒に帰ろ」
「うん、仁美は?」
「申し訳ありません。私、今日は稽古がござまして……」
「そっか~今日はバレエ?茶道?」
「いえ、お恥ずかしい話…護身術の稽古でして……」
「ご、護身術……」
「あ、あはは…仁美ちゃんも大変だね」
「では、ごきげんよう」
仁美はそう言い残すと教室を去って行った。
「じゃあ行こうか、さやかちゃん」
「そうだね。……あ!ゴメン、まどか。帰りCDショップに寄っていい?」
「うん、いいよ。……何なら病院まで付いて行って上げるけど?」
「いや、そこまでは悪いよ」
「あ、もしかして邪魔だったかな?」
「な!ち、違う……って、まどかも言うようになったな~!」
「うぇひひ、さやかちゃんにはいつも言われてるからね。たまには仕返しだよ~!」
「こいつ~!」
まどかとさやかはじゃれあっている、そんな二人をほむらは遠目から見ていた。
『美樹さやかが魔法少女なのは大した障害ではない。さっきのもただのデジャヴ、勘違いだろう。むしろ問題は『美樹さやかを生かすか殺すか』だ』
美樹さやかが魔法少女な時間軸で、魔女として処理した時と魔法少女として共に闘った時、両方の結果と過程は覚えている。しかし今回はイレギュラーなことだらけだ。
まず一つ目、これは経験上あり得なかったことだ。
「インキュベーター……ここ最近動きが無いのは何故?」
今までインキュベーターがまどかに付きまとうのは当たり前なことだった。しかしこの時間軸はその素振りがまるで見えない。転入の今日まで数日の間、まどかを見張ってたが一回も奴の姿を見かけなかった。
二つ目、これはこの時間軸の世界観の問題。
この世界には、今まで一度も見たことのない物が存在していた。それは………
「『武器商人 ゴヴァノン』のブースト、『紅蓮の蝶 ブリジット』でヴァンガードをアタック!」
「ダメージチェック!だー!6点目だー!俺の負けかー!」
クラスから少年達の大きな声が聞こえてきた。
「ふ〜危なかった〜!これだから『ヴァンガード』は面白いな!」
少年から出た単語、『ヴァンガード』……
そう、この世界は『ヴァンガード』と言うカードゲームが流行となっている。
私がこの前見た光景もヴァンガードの対戦だったようだ。
しかし…これがある意味、一番の謎かもしれない。
「この世界で言うヴァンガードはただのカードゲームなはず。この前みたいな魔女退治には何の関係も無いのでは…?」
しかし、世界の理はそうは言っていなかった。
あの後調べた結果、この世界では魔女退治の法則が著しく変わっていた。
1.程度の低い使い魔は今まで通りに魔法攻撃が有効
2.ある程度強くなった使い魔には魔法攻撃が効きにくい
3.それらの使い魔、魔女にはただの魔法攻撃ではなく、ヴァンガードファイトによる魔法攻撃が有効
私が調べた情報を整理するとこうなる。
とても馬鹿馬鹿しい時間軸だ。今すぐにでも遡ろうと考えたが、そうもいかなかった。
「この時間でしか……もうチャンスは無い……」
私の能力「時の逆行」が使えなくなっているのだ。
時間停止はいつも通り使える、しかし盾を逆に回しても、また時間停止が起きるだけだった。
あまりの衝撃に呪いを生み出しそうになったが、それではこの時間軸のまどかを見捨てる事になる。
「……例えこれが最後の世界だとしても、最後まで私は諦めない…!必ず、まどかを救い出す…!」
……………続く
次第にこの世界の理が明らかになっていきますね〜
次回から対戦が入ります。お楽しみに〜
……してくれる人がいればですけど。