ダンジョンに食材を求めているのは間違っているだろうか? 作:猫と果実
「あの白髪頭まだ掃除してるニャ!?」
「ほんとニャ!?どんだけピカピカにする気ニャ!?」
「アーニャもクロエも騒ぎ過ぎ…あんたらが掃除嫌いなだけで普通はあれぐらいするもんなの」
「ルノアも掃除苦手ニャの忘れるのニャ!」
「そうニャ!」
「うるさい猫コンビ!」
「「フシャー!!」」
僕の後ろではなぜか喧嘩が始まろうとしてます。
でも僕は厨房の掃除がまだ残っているので、気にせず作業をしないと……
そんな風に気配を消しているとひょこっと厨房にシルさんとリューさんが入ってきた。
「ベルさんお疲れ様です!」
「お疲れ様ですクラネルさん」
「お、お疲れさまです!シルさんリューさん!」
「後少しで終わりそうですねベルさん?」
厨房を見渡してシルさんは微笑みながら言ってくれる。
でも僕としてはもう少しやりたい所だ。
「クラネルさんミア母さんもそろそろ許してくれるかと思います」
「そ、そうですかね?」
自分の加減じゃ分からないもんだな…おじいちゃんにも『ベルは主夫の才能が長けて過ぎてやり過ぎるところがあるの!』とがははと笑われたものだ。
「今ミア母さんを呼んできます」
「私も行くよリュー!ベルさん待っててね!」
リューさんとシルさんがミアさんを呼びに行ってしまった…これでオッケーを貰えるか不安だ……
「……僕これからどうなるんだろう」
なぜオラリオに来たばかりの僕が『豊饒の女主人』で厨房の掃除をしているのか
少し時を遡る……
~~~~~~~~~~~~~~~
「……」
「……」
現在僕は食事をさせて貰ったお店『豊饒の女主人』の女将みさんに
原因は僕がお金を払えないのに食事をした事にある、しかしお店に入る前にはしっかりお金を持っていたのだがその前に盗まれてしまった…
決してタダ飯をしようとは思っておらず、僕自身もお金がないことについさっき気付いたばかり
しかし仁王立ちする女将さんからしたらそんな状況は知らないわけで…
そんな僕は必死どう説明しようかと頭を悩ませながら黙って正座しています。
「それでなんで金を持ってないんだい?」
「へっ?」
僕は女将さんの質問に思わず間抜けな返事をしてしまった。
正直問答無用に怒られると思っていたので驚きだ。
「あたしから見て坊主はタダ飯するようなバカには見えないからね、なにかしらある理由を聞いてんだよ」
「あ、ありがとうございます!」
「お礼はいいからさっさと言いな!!」
「は、はい!?」
僕は女将さんに簡易的ではあるが、お金がなくなった経緯を話した。
「それで全財産失ったと」
「…はい」
説明したはいいけど僕の立場は変わることはないのは確かだ。
盗まれたのは自分の責任だし…
「アンタ皮むきは出来るのかい?」
「えっ?皮むきですか??」
「うちは払うもんはきっちりと払ってもらう
だけどアンタは事情が事情、今回の代金分は店の手伝いをしてもらうってことでどうだい?」
「い、良いんですか!?ぜひお手伝いさせてください!ご迷惑かけた分精一杯働きます!!」
この申し出は僕にとっては願ったり叶ったりだ!
お金もなくて譲れるのは調理道具だけだったから
働いて返せるなら精一杯働くぞ!!
「その格好で働かせる訳にはいかないからまずは着替えだね、シルそこにいるんだろ!男用の制服準備して坊主に渡しな!!」
「えっ?!」
「はーい!今準備してきますねベルさん!」
ひょこっとドアから顔を出すと楽しそうな顔してどっかに行ってしまった。
「そうえば名前聞いてなかったね」
「は、はい!ベル・クラネルと言います!お世話になります!!」
「アタシはミア・グランド、少しの間でもアタシの店で働くんだしっかり働きな!!!」
「はい!!!よろしくお願いします!!」
どんな雑用でもいいから頑張るぞ!!
「似合ってますよベルさん!」
「あ、ありがとうございます///」
ミアさんに仕事の許可を頂いた後、着替えの服を持ってシルさんが戻ってきた。
初めて袖を通す仕事着。
白のYシャツに黒のタイトな長ズボン、そこに料理用の黒いエプロンを着用する。
服を着替えるだけで身が引き締まる感じがする!!不本意な形で初めての仕事になるけど頑張ろう!!
「一旦ベルさんのお荷物はこの部屋に置いてもらって大丈夫なので」
「何から何まですみません…」
着替えのために貸して頂いた一室。
このお店には離れがあり従業員が住み込みで働ける様になっており、その空室になっている部屋をお借りしている。
支度を終え、シルさんから軽い説明を受けていると扉越しから声が聞こえた。
「シルここに居るのですか?」
「リュー?入ってきていいよ」
「はい」
ウエイトレスさんの一人かな?っと思っているとシルさんの一声で部屋に入って来た。
「シル、ミア母さんが日雇い坊主?の方と早く来いと言ってますよ」
「説明も終わったから今行くよ」
僕は田舎に住んでいたから他の種族の方を見たことがなかった。
それこそおじいちゃんが話し聞かせてくれていた物語の存在だ。
そして今僕の目の前にはその物語の存在のエルフの女性がいる……も、もの凄く綺麗な人だ……
「貴方が新入りの方ですか?」
「は、はい!!ベ、ベル・クラネルと言います!!お、お世話になります!!」
「初めましてリュー・リオンです」
「ふふっベルさんまた顔真っ赤ですよ」
なぁぁぁ!?なんでこうも僕はすぐ顔に出てしまうんだ!?
恥ずかしい……
「そろそろ行きましょうベルさん」
「は、はい!」
気合いを入れ直して厨房に行くとミアさんが待っており、第一声に
「なにチンタラやってたんだい!!!支度ぐらい早く終わらせな!!」
「ひぃ!?す、すみませんでした!?!?」
シルさんとリューさんは店が忙しくなって来たので、僕を案内してすぐに仕事に戻っていった。
そして怒鳴られているのは僕一人……こ、怖いですミアさん…
「店も忙しいからさっさと手伝いな!!あそこにある皮むき頼むよ!」
「は、はい!あっ!ミアさん道具は自前でも良いですか?」
「どっちでもいいから早く始めな!!」
「ありがとうございます!!」
僕はミアさんの許可を得て自前の道具で作業を開始した。
お店の厨房はとても忙しなく皆さんが働いている。
特に
毎日この忙しさなら本当にここは人気なお店なんだろうな……でもその忙しさに見合った厨房だ。
もの凄く厨房の設備が気になるけど今は与えられた仕事をこなさなきゃ!!
……ちらっと見たけどオーブンもあるしコンロも大きい、僕もあそこで料理してみたいなぁ~
今のベルを端から見るとぼけっとした表情をしている筈なのに、作業はもの凄いスピードで進んでいる。少し奇妙だ。
「ミアお母さんベルさんの事気に入ったの?」
「何言ってんだいシル、アタシはあの坊主が調理場に適してるからやらせてるだけだよ」
ミアとシルは仕事の合間をみたベルの仕事姿を見ていた、一応働いているかの監視も兼ねて。
そしてシルはミアに疑問を投げかける。
なぜそんな事を聞くのかと言うと、基本的に厨房で仕事を許されるのはミアの許しがないと出来ない決まりがあるからだ。
会って間もないベルを厨房で仕事をさせるのがシルは不思議だった
「…あの調理道具?」
「はぁ…その観察力並に仕事にも意欲に回してもらいたもんだね」
「もう!ミアお母さん私ちゃんと働いてるのに!」
「とりあえずシルの予想通りだよ、持ってる調理道具をちらっと見たけどしっかり手入れしてたからね」
ミアはベルが荷物を広げている時に見た道具を見て仕事を任せても良いと判断した。
(…それよりも気になるのは田舎出身の坊主が桁違いにいい業物の包丁を持っているの事、あんなほったらかしたらすぐ巻き上げられるよ)
「そろそろ仕事に戻りなシル」
「はいミアお母さん」
(後でそれとなく包丁について聞いてみるかね…)
そんなこんなで僕は皮むき、皿洗い、基本的な雑用などの仕事をこなしていった。
そして今はお店も閉まり後片付けの掃除の手伝いをしている。
「バカっていったやつがバカニャ!!」
「そうニャそうニャ!!」
「あんたらこそバカバカ言ってるでしょ!!」
ま、まだ皆さん言い争ってるよ…だ、誰か止めないのかな?
「毎回よく飽きずに喧嘩しますね」
「ふふっ仲の良い証拠だよリュー」
あっシルさんとリューさんが戻ってきた…や、やっぱり僕場違い感が凄いな…
ここのお店入った時も思ったけどここは女性の従業員さんが多い。
多いっていうか…男の人が一人も居ないんだよね…
厨房とか裏手の仕事に居るのかなって思ったら皆女性だった…
最初は気にしてなかったけど、仕事を貰うには自分から声を掛けなくちゃならないから困ったよ…
でもおじいちゃんに『この世は男と女しかいない!だからこそ女性に慣れておかないと将来困るぞベル!!目指せハーレムじゃ!!』なんてそんな事も言われてたな…
こ、こんな機会滅多にないから少しでも慣れておかないと!!おじいちゃん僕頑張るよ!!
「やっと終わったのかい」
「お、お疲れさまです」
前言撤回です……ま、まずはしっかり真面目に仕事してからにしますおじいちゃん……
ミアさんは僕が掃除した場所を品定めする様に確認していく、正直僕の心臓はドキドキです…
「…予想以上にキレイに掃除したねアンタ」
「ほんとですか!?あ、ありがとうございます!!」
「しっかり仕事もやってくれたし、今回の件は終わりで良いよ!!」
「あ、ありがとうございます!!」
僕はミアさんに頭を下げる。
ほ、本当に良かった……ミアさんが優しい方じゃなかったら大変な事になっていただろうな僕。
「それでアンタこの後どうするんだい」
「…あっ!?」
そ、そうだった!?新しい環境で仕事出来たからすっかり忘れてた!?
ど、どうしよう…僕一文無しなのに……
「おミャー金無しなのかニャ??」
「苦労人ニャ」
「うわぁ!?アーニャさん、クロエさん突然後ろに現れないで下さいよ!?」
この
「何やってんだい仕事終わったんならさっさといきな!」
「「ニャ!?」」
……二人ともいとも簡単に飛ばされてる、でもさすが
「ルノア!バカ二人連れていきな!!」
「なんで私が…」
奥にいるミドルヘアーの女性はヒューマンのルノアさん。
他の人より少し姉御タイプな人かな?仕事中も僕の事を気に掛けてくれてた人だ。
「私達も行こっかリュー」
「そうですねシル」
「シルとリューはここに残りな、後はさっさといきな」
なんでシルさんとリューさんをここに残すんだろ??
ミアさんの一言でアーニャさん、クロエさん、ルノアさんは離れの方に行ってしまった。
そして厨房に残ったのは僕とミアさんとシルさんとリューさん……こ、これから何をするのかな??
「それでどうするんだい」
「えっと…」
ミアさんは僕がどうしたいか聞きたいんだ…ミアさんは分かってるんだ……
僕が少しの期間でもいいからお世話になりたい事。
住み込みで働ける職場であり、女将のミアさんを筆頭に皆さんとても良い人達、もの凄くいい環境だ……
このオラリオに慣れるまでは働かせて貰いたいって言うのが本音……でもまだ知り合ったばっかりの僕がお願い出来る立場じゃないのは世間知らずの僕でも分かる。
だからこそそんな事を頼んじゃいけないよね……
「と、とにかく明日から働き口を探そうかと…」
「坊主料理は得意かい?」
「えっ?は、はい!人並みは出来るぐらいだとは……」
「シル、リュー、アンタ達から見てどうだい」
えっ?ど、どうゆう事?!
「ベルさんはとても良い人だと思いますミアお母さん」
「私もシルと同じです」
「そうかい、なら後は料理の腕だね」
「ミ、ミアさん??」
「坊主!自分が出せる今一番の得意料理を作りな!アタシ達三人に旨いと言わせたら合格だよ!!」
「えっ?!」
「まだわかんないのかい!ここで働く為の面接だよ!!やるならやる!やらないなら出ていきな!」
……ミアさんは僕にチャンスをくれているんだ…言い出せない僕の代わりにミアさんから提案してくれたんだ。
このチャンス逃す訳にはいかない!皆さんの優しさに感謝ししっかり合格してみせる!!
「やらせてくださいお願いします!!」
「なら厨房の物は好きなの使いな!!お客に出すと思って真剣にやりな!!」
「はい!!!」
よしやるぞ!!!!!
次回は果たしてベルの料理が炸裂するのか!?