素晴らしきエオルゼアライフ   作:トンベリ

4 / 11
4:詩人はHimechan率高いけど操作難易度は結構高いから注意な(主人公視点1)

 クイックサンドの一室、角部屋の手前、俺はそこに何年も住み続けている。

 

 移動しろと言われたらするが、その際は目の前に広がる散乱した装備を一緒に片づけてもらうぞ、と冗談交じりにモモディさんに言ったら、じゃあずっと住んでなさいな、とお墨付きも貰ってるし実質俺の部屋みたいなもんだ。

 何が言いたいかというと、ゲーム内では当たり前に行使していた権利であるアイテムボックス、無制限じゃないにしてもアイテムの体積を無視した個数制限だけの収納バッグなんていう便利なものは今のところお目にかかったことはない、つまりアイテムの整理には困るということだ。

 ゲーム内ですらボックス足りねえとか思ってたのにリアル基準では足りるわけもない。もしかしたら魔法とかエーテル技術とかで何とか出来るのかもしれないけど、少なくとも一般人に手が届くものではないだろう。

 

 とりあえず今引っ張り出したいお目当ての装備を見つけるため、アイテムの整理をしながら懐かしい物を発見しては、初めて目覚めた時の事を思い出している。

 

 クイックサンドのラウンジでモモディさんに、そろそろ宿をお探しの時間ですわよ、と肩を揺らされて起きたあの日。

 見慣れているはずの、見慣れていない場所でわけもわからずその場に座り込んでいればちょいちょいと横にあった麻袋を指さされ、旅の商人さんかしら、と言われたのだ。中身はポーションとか、薬類とか、換金アイテムとか、その時は気づかなかったがキャラクターの手持ちアイテムだった物。

 段々と頭に馴染ませるよう状況を咀嚼していけば、あら不思議、ここはクイックサンドであなたはモモディさんでまさかのエオルゼアじゃあないか。

 何をすればいいかなんてわかるはずもない麻痺した頭では宿の確保が最優先事項となり、砂時計亭に泊まれないかと交渉したら、丁度空いていた一部屋が今でもマイルーム。

 ちなみにモモディさんの隣の部屋である、ちゃっかり角部屋使ってる辺りおちゃめだ。

 

 その後数日をかけて色々な事を確認していけば、生前、いや、エオ前――エオルゼアに来る前――にキャラクターが持っていた装備とか素材とかその他諸々は大体そのままだったのはとても助かった。あくまで大体だが。

 元々手持ちには必要最低限だけを持っておく気質だったので、目覚めた当時は最初に持っていた麻袋以外は全滅かな、なんて考えていた。

 何気なくリテイナー、荷物管理とかマーケットへの出品を代わりにしてくれる人たちの雇用窓口で話を聞いてみれば、いるではありませんか、エオ前に雇っていた方々が。

 ならば素材その他諸々も無事だろうと、歓喜しながら呼び鈴を使って呼び出してみれば待たされること数分、一人が駆けつけてくれた。ゲーム的にはいついかなる場合、どんな時間だろうと一瞬で現れるリテイナーだったがリアルに考えればそんな事が可能なわけもなく、タイムラグは必ず発生するのだ。

 さらにいえば二十四時間常に対応してくれるってわけでなく、リテイナーを雇う際に交わす契約によっては規定外の時間では対応してくれないし、お休みの日は契約者が雇っている別の人が対応する、なんてこともあるらしい。

 そんなブラック企業みたいなことは当然させたくないし常識的な時間に呼ぼうと決意しつつ、預けているアイテムの目録を貰えば出るわ出るわヤバいアイテム。もうね、わんさか。

 

 アーマリーチェスト――システム的に装備だけをまとめたボックス――の中身もリテイナーに預けられていたようで、時系列的にどう考えても存在してはいけない装備が多数。

 オメガ装備は確か世界滅ぼそうとしてる奴のデータから作った装備だし、何ならバハムート装備とかゲーム内では無用の長物でも、世界設定的にはアウトでしかない。

 すぐさまリテイナーを物陰に呼び寄せて忖度を強要すれば、報告はしてないしする気もない、とのことだった。まあ一般人からすれば今あげたのは"なんか強そうな装備"でしかなく、そもそもリテイナーは仲介を受けて雇用されているだけで最低限の報告義務以外はないのだとか。もちろん明らかな危険物はリテイナーの判断で報告しているようだが、俺の持ち物では明らかにヤバい物……例えば麻薬とか、そういうのだ、その類の物はないし、小規模な爆発物程度なら管理場所の隔離はするものの、管理可能だから問題ないとかなんとか。りていなーってしゅごい。

 目録を読み進めれば完成した装備は全てそのままだが、装備を作るための、ゲーム的には交換券代わりだったアイテム等はなくなっていた。使ってないデータログ――世界滅ぼしちゃう系の敵から貰える素材――とかあっても困るから逆に助かったが。

 

 そんな存在不可能系の装備達は、当たり前であるがこの世界において破格の性能を誇る。

 

 エオルゼアにおける重要人物とか賢人に見つかった際に疑念の眼を向けられるリスクと、めっちゃ強い装備を持ってるのに装備しない事で生まれる生命的なリスク、天秤にかけるまでもない。俺は躊躇いなく装備を使う事にしている。

 前者は未来から来ましたとかで何とかできるから一発アウトではない、ファイナルファンタジーだし。後者はいつ世界規模の終末を迎えるかもわからないので超危険、ファイナルファンタジーだし。

 なので普段は俺がゲームをやっていた時にエンドコンテンツで入手できた最高の装備――オメガ装備とスカエウァ装備――を装着しているのだが。

 

 今、宿屋の自室でえっちらおっちらアイテムの整理をしつつ何とか見つけ出した、目の前に広がる装備はそんな最強装備に劣るもの。

 何を悩んでいるかと言えば、そう、ミラプリである。

 ミラージュプリズム、通称ミラプリ。要はファッションシステムの一つで、装備のステータスはそのままに、見た目だけを変えられるというもの。ステータスには影響ないが重要だ。例えばめっちゃ強いラスボスが村人の見た目とか嫌だろう。それはそれで興味をそそられるかもしれないが俺が求めるものとは別種のそれだ。

 着ぐるみ装備とかネタに走るのもいいが、やっぱり戦闘はかっこよくキメたい。今日は新人の教導係って事だし、舐められない程度に――アレキ胴とかかっこいいし、キャスターっぽく後ろひらひらマントで行くか。武器はシュレイガー……目立たないでいて均整の取れた細剣。

 こんな感じでミラプリの時間は割と楽しくて、すぐ時間が過ぎてしまう。

 エオ前ではスーツかスウェットかの二種類しかなく着替えに時間をかける女性の気持ちなんぞ分からんかったが、こう着替えられる服がたくさんあると結構こだわってしまうらしい。あるいはゲームをやっていた時代の名残かもしれない。

 時計を見れば集合時間の少し前、隅っこに置かれた大容量のキャビネットにキャスター装備をそっと片づけて荷物の最終チェックに入る。

 

 まずはキャンプ用具、これは一人だったらチョコボに持たせてしまうのだが今回は五人旅、最後にバッグに括りつけて山登りスタイルにする。今の装備はマントがデフォルトでついているからいいが、もし無いようなら必ず持っていくべきだ。夜、下手な布では地面から冷えが伝わってきて最悪凍傷なんてこともあるので布地のしっかりしたマントは必須。

 

 次にポーション類、各種状態異常の解毒薬は絶対に持っていく、特にキャスターなら沈黙対策である『やまびこ薬』は複数個、あとは毒、麻痺などポピュラーな状態異常の対策さえできれば基本的には問題ない。

 それ以外にも状態異常がないわけではないが、少なくとも普通に冒険者をやっていて見ることはほぼ無いと思う。百の内の一に備える必要はあるだろうが、万の内の一に備えるなら、そうならないように行動することを対策とすべきだろう、つまり危うきには近寄らずということ。万が一に備えるならそれこそ白魔道士を頼るべきだ。

 

 そして食料はいつもの『ジャムメルジャーキー』を持っていく。これはギラバニア山岳地帯にいるジャムメルというラクダのような魔物の肉を燻したその名の通り燻製肉だ。現在そのギラバニアはガレマール帝国に占領されており普通の手段では絶対に入れないがそこはこのヒカセン、食の為には命を惜しまぬ――いや、そこまで危ない事をするわけではない。

 

 帝国兵ってのは征服した地方の属州から徴兵された者達が結構な割合で交ざっているのだ。もちろん望まない徴兵を受けて故郷の為に仕方なく従っている者達も多く、管理しきれない部分だって出てくる。

 幸いにもゲームのストーリーを進めていると帝国兵の服は手に入るのでそれを使ってちょろっと近づき、物資の交換をしたいと持ちかけたわけだ。最初は怪しまれたのだが、こんな危ない事をしてまで何が欲しいのかと聞かれ、ジャーキーを作るための肉が欲しいと言ったら一瞬きょとんとした顔を見せ、すぐさま笑いながら肩を叩かれた。巡回のついでに狩ったらしいジャムメルの肉を受け取りつつお代はと聞き返すと、次の取引の時にそのジャーキーを分けてくれればいいと言われ、定期的に交換しに行ったりしている。今ではついでにアラミゴでしか手に入らない塩も貰っている。

 

 肉と塩、加えて紅玉海という東方地方と、万年雪に包まれた地方であるイシュガルドで採れる香草とか、あとはウルダハでも売ってる数種類のスパイスを加えればやっとこさ『ジャムメルジャーキー』の完成だ。

 園芸師や調理師もカンスト70レベルだったので採取や調理をどうやればいいか、とかはなんか身体が憶えてる感じ。例え難いのだが、キーボード打つときとかブラインドタッチは気づかないうち出来るようになってるじゃん、あんな感じ。まずはこれをやってと考えると指が動くのだ。

 もう今でこそ自分の力だと確信するほどには慣れた感覚だが、自分で採ってきた素材を自分で調理するのは楽しかった。苦労が形になる瞬間の達成感は何物にも代えがたい。

 

 そんな懐古の時間も終わり詰め込んだ鞄を肩にかけて自室を出た。数日間の間は帰らないし、しっかりカギをかけて石の廊下を歩く。

 

 今日から教導を任されたパーティは、モモディさんに聞いた情報から察するに30後半くらいのレベルだろう。エオルゼアにおいては中級冒険者の仲間入りといったところだ。

 ただ大体というだけでゲームに当てはめてはいけない。ゲームであれば一定のレベルに達すると覚える技とか魔法だが、この世界においては覚えようと思えば低レベルで最高レベルの魔法を覚えられてしまう。

 これは本当にうろ覚えなのだが、ゲームでは『ソウルクリスタル』と呼ばれるアイテムがあった。それは古の者達の記憶が刻まれていて、所持したまま経験を積むとそのクリスタルから技を受け継げる……とかだった気がする。だからレベルという概念により一定値で技を習得できたのだろう。

 俺が所持している『ソウルクリスタル』を他人に渡せば高度な技を覚える助けになるかもしれないが、今のところ試した事は無い。なので通常であればこの世界において技の習得は才能に左右される。普通に考えれば当たり前の事ではあるが、敵を倒して経験が数値として貰える世界ではないのだから、剣技や魔法を使おうとすれば体系化されたそれを覚える必要がある。

 そう、やろうと思えば才能によっては実戦経験がなくとも強い魔法が撃てたりもする。経験が足りてなくても技を使えたりする。

 それを目の当たりにしたとき、俺はちゃんと赤魔道士の、赤魔法の勉強を始めた。"魔法"という学問はエオ前にはなかったのだ、実際に何をしてどうすれば魔法を使えるのか、理論的に知ってみたくなったのだ。文献として残ってる書物を探し求めたこともあるし、ゲーム内で赤魔道士として成長するクエストで重要だった人物にも会って教えを乞うた。

 

 結果、エオルゼアにおける"魔法"というものをしっかりと"知識"として吸収できている。

 

 ここでも活躍したのがレベルカンストというアドバンテージ。あくまで自分が使える赤魔法に関してだけだが、理論的にこうやって魔力を運用して、こうして、こう、と頭に浮かぶのだ。だが赤魔道士の成り立ちとか、魔法詠唱者が憶えておくべき基礎知識――大地に漂うエーテル云々――とかはごっそり欠如していたので勉強は有意義な時間だったと言える。

 俺の事は置いといても、そんな事情があるのでこの世界の住人を変にゲームでの知識へと落とし込めることはしてはいけないし、したくない。もし数値で彼らを計ろうものなら想定できない痛いしっぺ返しがあるのは当然で、ここはゲームなんかじゃなくリアルなのだから、知識に振り回されてはつまらない。

 

 最初からこの考えは変わらないが、少し昔とある出来事もあって強くそう考えるようになったのを思い起こしながら、砂時計亭から出ればクイックサンドのラウンジから注がれる視線。そこにはモモディさんと弓術士の格好をしたミコッテがいた。

 

「遅れたか?」

「おはよう、ディ。まだ彼女、ペアン一人だけよ」

 

 近づいて声をかければモモディさんは俺の事を気安くディと呼ぶ。四、五年の付き合いではあるが信頼されたものである。もちろん悪い気はしないどころか大変に嬉しい。

 そしてペアンと呼ばれた彼女が件の冒険者なのだろう。横に視線を向ければどこか真面目そうな雰囲気をして佇んでおり、帽子のつばが軽く片目を隠しているが片目は俺を見据えている。帽子と同じく肩口を半分だけ露出させる布防具に、膝丈のスカートとブーツの間から覗く肌――真面目系な子がちょっと清楚におしゃれしましたみたいな感じだ。こやつ、出来るな……適度にカワイイを盛り込んでおる……これは策士系のhimechanの可能性が無きにしも非ずである。

 パーティを組む相手の装備を確認するのは大事だ。ダンジョンに突入して移動中とかに他人の装備を確認してこのミラプリいいなとかプロフィール欄のコメントを暇つぶしに確認するのはヒカセンの嗜み故。まあこの詩人ちゃんは吟遊詩人としてはそこそこな装備である。お金を工面できない駆け出し冒険者の装備よりも強度が高く動きやすく、しかし上級冒険者としては使い込まれていない。

 

「――よろしくお願いします。私はペ・アン・ドルダ、吟遊詩人です。冒険者歴半年の新米です」

「俺の名前はディザスター……オッサンとでも呼んでくれ」

「まだオッサンなんて歳でもないでしょうに」

 

 ペ・アン・ドルダと名乗った彼女に続いて俺も自己紹介を交わす。モモディさん、俺は肉体年齢はともかく精神年齢だけでいえばそこそこなのだよ。だが数年過ごしているこの姿はどうやらそこまで歳食っているようには見られないらしい。

 

「モモディさんおいすー! んんー? アンと一緒に居るのが今回の教導係?」

「二連続オッサンっ……もしかしてウルダハのギルドは人材不足か……っ」

「おい……あまり失礼な物言いは慎め」

 

 まだパーティメンバーが揃っていない事を聞こうとしたところですぐに他の三人もがやがやとやってきた。ミコッテ白魔とヒューラン赤魔とルガディンナイトのお出ましである。

 軽く挨拶をして再び装備を確認する。

 

 白ちゃんは白魔にしては露出が多めで、詩人ちゃんと同じくらいには肌を出していた。言動もだがなんかギャルっぽい……そして詩人ちゃんとあわせて驚異の胸囲をしておられます。胸の設定値最大でキャラメイクしたってああはならない、然り、やはりエオルゼアは素晴らしい。

 

 赤魔くんは物珍しそうに俺を見つめているが、同じ赤魔道士だからだろう。この世界における赤魔道士は人口が少ない、というかほぼいない。赤魔法は失伝した技術らしいし資料もほとんどないのだ。俺も調べるのにかなり苦労したが、あるところにはあるようで稀によく見かける。装備は布装備で整えられていて、動きやすさ重視だろう。腰にあるレイピアは新品同様とはいかなくても、あまり活用は出来ていないのか汚れは少なかった。

 

 ナイトくんは……驚異の胸囲をしているな、筋肉的な意味だけど。装備は足装備の損耗はそれなりに激しいようだ。しっかりと盾受けすると力の流れは足に行く、そうなると足を踏ん張る関係で足装備が損耗していくので、足を見ればタンクの質が分かる。盾が傷つくのは当たり前なので、まずは足装備を見ると交換直後とかでなければ経験を積んできた証が見れたりする。中々仕事人な雰囲気があるから心配はあまり必要なさそうだ。パーティにおいてタンクがよろしくない場合はそれだけで瓦解する可能性もあるから注意深く見る予定だったが、ひとまずは安心できた。

 

 とりあえず装備確認が終わると赤魔くんが口を開く。

 

「オッサンも赤魔道士なのな。後ろで引きこもってるキャスターがどんな『災厄』を運んでくれるんだ?」

 

 俺が気にしてる事を普通に言いやがった。

 いやまあ確かにこんな見た目普通のオッサンがね『災厄』とか名乗ってたらそりゃそうなるかもだけどね。今までも何回も突っ込まれてるしこのやり取りも慣れてきてるけどね。名前負けしてるのは自覚してるけど、もうちょっとオブラートに包んで欲しいものである。

 いつものように流しておくと流石にパーティメンバーに怒られていた。大柄なルガディンの一撃は痛そうだ。あ、白魔ちゃん流石に鳩尾に攻撃は可哀そうじゃないかな。 

 

「あ、あはは……ごめんなさいごめんなさい、本当にごめんなさい」

 

 このパーティにおける苦労人は詩人ちゃんか。冒険者は割とはっちゃけた性格してる奴も多いしパーティメンバーにそういうのがいると必ず後始末を押し付けられる人がいる。まあこのパーティはナイトくんも目を光らせてるようだしたちの悪い冒険者パーティにはならないだろう。仲も良さそうだしギスギスした空気もほぼ無いと見える。エンドコンテンツでワンミスから生まれるギスギスに心を折られる世界ではないのだ。

 

「ふふっ。ディ、いけそう?」

「良いパーティじゃないか――モモディさん、依頼概要を説明してくれるか?」

 

 俺はモモディさんから事前に聞かされていたが認識を合わせるために改めて聞いておく。

 今回はキャンプ・ドライボーン近くの湖に生えている薬草の採集依頼だ。俺一人ならぱっとテレポを使って一日あれば終わる内容だが彼らのパーティはテレポを使えない場所らしい。この世界におけるテレポはエーテライトと呼ばれるでっかいクリスタルと交信して場所を身体そのものに記録かなんかしておかないと飛べないのだ。しかも飛んだ先ではしっかりと使用料を徴収される。正確には整備費らしい。

 一度エーテライトと交信を行えば以降はいつでも使えるようになるが、最初の一回はしっかりと旅をして向かわなければいけない。今回は彼らの行動範囲を広げる目的も含んでいるので丁度いい依頼だったのだろう。

 

「あのあたりなら17ってとこだろう。昨日の夜に君たちがこなした依頼を少し聞いたが、30後半はあるだろうし、余裕だ」

 

 ゲーム内ではあのあたりにいる魔物は大体15から20レベルで、他の冒険者が魔物と戦っているところを何度か見たが変わりはないと思われる。10レベル差あれば鼻をほじりながらでも勝てるくらいには余裕だろう。

 

「でたわね、ディザスター数値」

 

 モモディさんがそう言うと白魔ちゃんが興味津々にそれが何かを聞いてきた。

 レベルをそのまま言っているだけなのだが、そんな説明をするわけにもいかないのでテキトーに流すがモモディさんが説明に入る。

 

「モモディさんが勝手に言っているだけだ」

「んもう、公的に認められているわけじゃないけど私はかなり信頼しているのよ? ディがたまーに呟く数値はね、通称『災厄度』っていって危険度とか強さとかを大体で数値化してくれるの」

「へえー…………あれ、それって、すっごくない?」

 

 凄くはない。自分のために測っていたのが癖になったってだけだ。要は相手の強さを"見れる"ようになる訓練であった。

 この世界にはレベルなんていう概念はなくて、あの相手は危ない、この相手は楽勝、というのが一目では分からないのだ。だから相手の動きから強さを数値として表せれば、それは俺自身がちゃんと彼我の戦力を認識して安全な行動が取れるだろう、ってだけなのだから。そこそこの精度が出るようになったのは結構最近だ。

 各所での情報も集まったから、どの場所で活動している冒険者はこれくらいの数値、って応用も出来るようになり、彼らのパーティが30後半だと大体あたりをつけられている、それだけの話。

 

「大体だよ、大体。君たちの30後半と言ったのだって正確じゃあないかもしれない。モモディさんが勝手に騒いでいるだけだ」

「もう……もうちょっと欲かいてもばちは当たらないわよ?」

「こんなんで金儲けできるかっ」

 

 モモディさんは俺に数値化をギルドの公的な依頼として打診してきたことがある。年単位の作業でいいからと、それも相当な額のギルを報酬として提示までされた。ぶっちゃければそれを生業にしてもいいくらいにはとんでもない金額だったのだが、流石に断るしかない。これは俺が生き残るための嗅覚を鍛えようと勝手にやっていることなので、他人にまでこんな数値を押し付けたくはなかったし、そこまで責任を持てないのだ。

 だからあくまで、あくまで俺が個人的にそっとモモディさんに教えるだけにとどめている。彼女なら鵜呑みにはせず、諸々の状況を見て判断できるだろうと信じているからだ。

 

 そんなやり取りを挟みつつ、依頼や周辺地域の説明を軽く終えて出発と相成った。

 

 

 何となく詩人ちゃんに睨まれている気がするのは、気のせいだと思いたい――装備確認と見せかけて胸を見ていたのがバレたかな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。