時間ある時にバッバって書いて自分で何回も読み直したりして、あ~こんな感じだったなぁとか思いながら書くという謎ですね…
時間がある方は少しだけ、お付き合い貰えたらと思います~。
「あぁ、これは夢だな」
見渡す限りの白が広がるこの場所を、初めて認識できた時、不意にそう言ってしまった。
たまに夢を夢と理解することがあるのは、きっと誰もがあると思う。
ただ、生きてきた中で、これだけ夢を夢だと分かったのは初めてだった。
「遅刻するのかな…ってか、思うこと全部口に出来るのかすげぇ」
これは起きようと思えば、起きることが出来るのではないか?
そう思っておもいっきり自分の頬を抓ってみる。
「……痛くない、不思議なもんだ、夢だからか?」
「これは夢、なの?」
「夢だろ普通に考え…て?」
「ありゃ、今気がついたの?ずっと隣にいたのに」
どこからか聞こえる声を辿って、自然と視線は左隣に移る。
「あれ?確かにこっちから聞こえたと思ったんだけ
「ふんっ!」
「ぐぇ!?」
おもいっきり足を踏みつけられた感覚だけが襲う。痛みは無いが、反射的に声が出てしまった。
「なんだ、小さくて見えなかっただけか」
「小さくて悪かったわね、これでも中学生なんだけど、って、アンタ、顔が真っ黒だけど」
「お前も真っ黒だぞ」
お互いに顔が見えないという事らしい。声だけは聞き取ることが出来るんだな。夢すげぇ…
「そろそろいいかな?僕も会話に入って」
またまた声のする右に顔を向けると、真っ黒顔の男が1人、立っていた。
「あぁ、本当に真っ黒なんだね、背格好は分かるのに、少し怖いね」
「そうだな、こんな夢は初めてだよ」
そう、これは夢だと、先に言った自分がそう感じとれた夢世界。
もしかしたら、昨日どこかですれ違った人達の記憶がポンポンと出てきているのかもしれない。
……早く起きよ
「ねぇ、前から誰か来るわよ」
中学生少女が指さす方に、今度は真正面に顔を向ける。
これだけの白が広がる世界で、視認できる微弱な光を放つローブのような物を羽織った女性が1人、こちらに歩いてくる。
不思議と3人とも、その姿に目を惹かれてしまう。
1歩、1歩、歩く度に足元が揺らぐ。水の上を歩くように、波紋を広げながら。
やがて、腕を伸ばせば、ギリギリ届くかもしれない距離まで、女性は近づいていた。
3人揃って、声が、言葉が出ない、背筋が伸びていた。
少しだけ、この世界を認識してからの沈黙が場を埋める。
どれだけの時間が過ぎたのか、数秒なのか、数分なのか、やがて女性は口を開く。
「初めまして、この世界を記憶する者達、私はこの世界を管理する者です」
…………はい?
恐らく3人揃って、きっとこんな感情を抱いたのだろう。
ーーーーー
「もしもさ、世界に私と君だけになったらさ、きっと世界を独り占めしたくなっちゃって、お互い殺し合いになっちゃうと思うんだけどさ、そうなる前に私の素直な気持ちを伝えておけば君は少し、私を殺しちゃうことに躊躇いをもってくれるかな?」
ガヤガヤと騒がしい教室の窓際最後列。
1人でサンドイッチを齧りながら、ボーッと雲ひとつ無い空を眺めていると、彼女は一つ前の空いてる席に座り、俺の方をニコニコと笑いながら話しかけてきた。
「はぁ、素直に気持ちを伝えるべきは俺の方かもしれないんだが、その辺どう思う?」
風になびくカーテンの裾を手で払いながら、彼女の方にちらりと目線だけを向けた。
少しだけ満足気に、彼女は笑う。
「何かな何かな?ひょっとするとこんな所で大胆にも告白してくれちゃうのかな?いやー、少し照れるけどちゃんと聞こうと思うよ、さぁ、言ってほしいな」
「そうだな、じゃあ言わせてもらおう」
そう言って俺は彼女の方に改めて向き直し、
「毎日毎日、しつこいよお前」
出来る限りの嫌な奴オーラ全開にして、俺はそう言った。
ーーーーー
彼女の名前は、西宮 優衣(にしみや ゆい)
一つ隣のクラスの一般的な女子だと思う。あまり詳しくは知らないけど。
スラッとした体躯に肩にかかるくらいの黒髪で、可愛い顔の出で立ちをしていると思う。
右目が赤、左目が緑色のオッドアイが結構特徴的だとは思う。
身長もまぁ、平均的なところだと思うけど、その、なんだ、胸の辺りはあまり無いと思う。
第1、なぜ俺なんかに毎日まとわりついてくるのか謎なので誰か解明してほしい。いや、ほんとに。
高校2年生になってからほぼ毎日のように現れるようになり、ちょっかいを仕掛けてくる。
1年の時から俺は知っていたけれど、彼女が俺を知っているとは思えなかった、というのにも関わらず物凄くしつこい、とにかくしつこい。
最初はクラスから注目されてしまったのだ。クラス替え早々ではあるが、2年にもなればある程度グループ分けなぞ済んでおり、その輪が広がるか狭まるかの中、男女で、しかも1対1なんて見受けることも無いからなぁ、仕方ないのか……いや仕方なくねぇだろ、全部コイツのせいだし。俺は平穏に暮らしたかっただけなのに…
ちらりと彼女の方に目線を向ける。
気がつけば6月、梅雨も終わり、夏に近くなる暑さを持ってきた太陽よりも明るく笑うの反則じゃありませんかね?
などと思っていると、またしても西宮が仕掛けてきた。
「そーやってすぐツンツンしちゃってさ、実際のところ嬉しいでしょ?私に毎日話しかけられてさ」
「話初めが普通で、普通に会話できてれば男として嬉しいと思うよ、女子と話が出来るのは俺としても今後に生かせる経験だと思うしさ」
「ほれほれ~、素直じゃないぞっ!それならさっきの言葉は訂正してさ、もっかい言ってみようよ!素直な気持ちってやつをさ!」
「……あーうんはい。訂正しますか。」
「うん、言ってみなさい」
ほれほれ~と肘でつついてくる西宮に、ため息ひとつこぼしながら、さっきよりも倍(個人的主観)くらい嫌そうな顔をしてみせた。
「出来れば一人にさせて頂けると嬉しいのでほぐぁ
「ったく、そんなんだから友達も彼女もできねぇんだよ」
後から頭を弱めで平手打ちされてしまった。
「あ、良君だ」
「よ、いつもこいつが悪いね」
良君、そう呼ばれた彼は一つ隣の席に座り足を組む。
北倉 良(きたくら りょう)。俺の幼馴染。
普通一つ隣に住むのは可愛い女の子とか、少し年上の綺麗なお姉さんとか、少しお節介でドジっ子だけど結構しっかりとした幼馴染とか、ちょっとあざとい後輩とかじゃないの?悔やまれる。
小中高と同じ、しかも同じクラス。成績は上の中、運動神経抜群、強面だけど根が真面目、俺の扱いが雑、俺よりも若干(4cm)身長が高い、俺よりも歌が上手い、細マッチョ、赤茶というか染めてんのそれ?って感じのスポーツ刈り、女子からの人気も高いらしい。死んでしまえ…
「お前も彼女は居ないだろ。あと俺は何も悪くないからね?コイツが勝手にしてるだけだぞ?」
「コイツじゃなーい!優衣って呼んでみ?」
「急に下の名前で呼ぶとか出来るわけないだろ…」
そう言って手足をじたばたさせる西宮と、はぁ、と隣でため息を吐く良。
二人に挟まれながらも残りのサンドイッチを頬張る。
そんな一時も校内に鳴り響くチャイムが終わりを告げる。
「ほら、クラスに戻れって、昼休み終わったぞ」
「ちっ、今日もダメだったかー、いいもんね後でまた来るし」
立ち上がり一回転、くるりと周り後ろで手を組み歩き始めた西宮は、鼻歌交じりにその場を去った。
「お前……ほんとにそれでいいのか…」
机に肘をつき、そこに頭を乗せて呆れる良がもう1度深く溜息を吐いた。
ーーーーー
「と、なる訳で~
午後の授業にもなってしまえば、時間というのはあっという間にすぎていくものだ。気がつけば6時限目である。
もうあと数分もすれば今日が、というか学校は終わる。
今日は何するかなー。
そんなことを考えていると、隣の席の…な、名前が分からないけど女の子だ。明るい茶髪に星の髪留めをした、紫色の薄手のカーディガンを着たその子が俺の方に「ん」と小さく折りたたまれた紙を回してきた。
小声で「ありがと」と伝え、受け取ると、隣の彼女は「ん」と言ってそれっきりだった。…いやまぁ、授業中だからいいけど一切こっち見なかったな。いいけどさ。。
果てさて、この紙には一体何が書いてあるのやら、というか小さく畳みすぎだろ……
いつの時代、どこの学校でも有るのかは知らないが、少なくとも今のクラスでは授業中に手紙を書きそれを回してもらうという文化がある。幸いなことに自分の存在はちゃんとクラスにも認知されている、隣の人を覚えてないのは申し訳ない…もといほとんど喋らないからクラスの人たちも実はあまり知らない…それなのに俺が認知されてるのは良とよく絡むからだろう。今は感謝してもいいかもな。
そう思いながら、開き終わった中身は、
『今日、夜飯食いに行くぞ、良より』
……お前かよ。
このあとの用事も特に無い俺は、2列向こうの同じく最後列に居る良がちらっとこちらを向くのが見えて、へいへいと、手を振って見せた。
にしてもしっかり最後まで、しかも達筆で書いてくるとは…流石だな。
トントン、と、机の端を鳴らしたのは、隣に座る茶髪ちゃんだった。
俺が目線をやると、向こうも目だけがこちらを見てきていた。
数秒見つめ合うと、彼女が小声で話しかける。
「ねぇ、私が誰か、分かる?」
相変わらず目線だけは逸らさずに、俺の方を見ている。
声も届いてはいるが、どこか違和感を感じた。何に対しての違和感なのかは分からないけれど、不自然に感じるソレに、気がつくことは出来ず、答えた。
「いや、その、悪い。あんた含めてクラスの人そんなに知らないんだ、名前、なんて言うんだ?」
隣の席に座る人の名前も知らないのを、クラス替えから3ヶ月経った今聴くのは、ちょっと失礼なのでは?
自分の中で自分がそう言っている。いや分かるよ?けど知らないんだもん、知らない、よね?
「ふーん、まぁいっか、私はーーー」
チャイムの音が、学校中に響き渡るのと、開けた窓から流れ込む強風が、まるでそこから先を遮るような、そんな、感じがした。
「それじゃ、授業終わるからな、今日の範囲はテストに思いっきり出るから忘れるなよー」
担当の先生が言い残すと、入れ替わりで担任がやってくる。
そしてそのまま帰りのHRが行われた。
流れ流されてしまい、タイミングも逃してしまった俺は、隣の彼女に目を写すと、あちらさんはもう、俺の事など眼中に無いように、前を向いていた。
何故だろうか、今でも、名前を聞かなくて良かったと、いや、聴こえなくて良かったと、思っている自分がいた。
ーーーーー
「よっ、待ってたぞ!」
授業も終わり、ホームルームも終えて、昼間同様にガヤガヤと賑やかになった校舎。
良と並んで何を食いに行くかを話しをしながら歩いていると、階段の踊り場で彼女は手を振ってきた。
「待ってたって…なして?」
「決まってるじゃありませんか?一緒にご飯、食べに行くんでしょ?」
その長いまつげを伸ばした目でウインクして来ないで、可愛いから。
と、そんなことよりも、となりを歩く男を下からだけど内心的には上から見下した。
「おいおい、男二人でラーメンって話はどこにいったん?お?」
「なんで少し喧嘩腰なんだよ…声は掛けたけど本当に来るとは思ってなかった。これで文句ないだろ」
文句が有るとか無いとかじゃない。せめて言っておいて欲しかった。
「そそ、文句どころかこんな可愛い美少女と一緒にディナーに行けることを光栄に思ってもらわないとね!」
えっへん、と胸を張った…まぁうん、きっと恐らく本人が1番分かってることだろうからね、俺から言う勇気もないし、ここは流しておこう。あと、自分で美少女とか言うな、本当のことでも言われたら言いにくいだろ、言う機会無いけど。
「それによ、たまには男二人で飯よりも男女3人でってのもいいだろ?」
良までも敵に回ったのかぁ…この世は幼馴染さえ敵に回すのか…まぁ元々俺よりもステータスもパラメータも上の時点で人類の敵みたいなところ、あるよね、ね?
「…いやほら、男二人に女の子1人って絵面的にやばいんじゃ?」
「私は気にしないからいいよ?」
「俺も特には気にならん」
リア充共がァァァァァ!!!!
内心の絶叫なぞ知る由もなく、2人は俺を置いてどんどん話を進めていく。
しかし強く断るような理由も実際無いのでなんやかんや行くことになるんだろう。
諦めついでにひとつ、深く深く溜息を吐いた。
ーーーーー
学校から3人で自転車を漕ぎ、近くにある大通りにやってきた。
この地域は田舎というわけでも無ければ、都会という訳でもない。
ある程度の物なら揃っているけれど、逆に言えばある程度の物しか揃っていない。
要はものすごく中途半端な地域である。
まぁ学生の身分でとやかく言える事ではないし、ファミレスもスーパーもあるもんだから、生活には事欠かない。
「んで、結果こうなるよな」
大通りの入口から1番近くに位置するファミレスに足を運んだ。
他にも数件、入れそうな店はあるのだが、ラーメン屋にイタリアン、寿司屋にファストフードと、まぁ偏った軒並みであるため、種類豊富なファミレスを選択するのが無難だろう。
「いらっしゃいませー」
ウィーン、と小さく音を立てて開く自動ドアから入ると、それに合わせて返事がすぐに帰ってきた。
ちらりと辺りを見て回すとまだ夕方時だからだろうか、客層が奥様方と学生がちらほら居る程度で、席はだいぶ空いている。
「3人です」
と、店内を見ていると、良が色々と言ってくれてたようで、すぐに席に案内された。
横に展開される店で1番右端の窓際。壁側に西宮が座り、逆側に俺と良が座る。
メニューを持っくるから少々待っててくれと言って席を離れる店員がぺこりとお辞儀して、離れていく。
「さぁてさて、これで心置き無く色々とお喋りできるね!」
目をキラッキラに輝かせてこちらを見てくる西宮はとても元気よく話し始める。
「普段から話してるだろ…」
「だーめだめそんなんじゃ!もっとこうほら、せっかく私と沢山お話できる時間が確保出来たんだから!もっと喜んでよね、冬夜君!」
東野冬夜 (ひがしの とうや)
これが俺の名前であり、多分今日は初めて名前を呼ばれた気がしたのだった。
ーーーーー
店員の持ってきたメニュー表を見て、俺はピザを2枚、良はガッツリとステーキを、西宮はポテトを注文。
ドリンクバーは普段要らないのだが、西宮が勝手に3つ頼んだ。
そして良が何も言わないし、店員さんも書いてしまっている為、要らないですの一言が言えなかったのである。
「ドリンクバーはあちらになります、ごゆっくりしていてください」
一度礼をして、すたすたと厨房に入っていった。
「よーし、じゃあ冬夜君と良君!何飲む?私取ってくるよ!」
「いやいいよ、自分で取りに行くから」
「いいからいいから、私にまっかせっなさーい!」
ドンと胸を叩く西宮がエッヘンと仰け反っている。
……言うことは無いんだけど、その?目のやり場に困るからやめてください。
「じゃあ、任せた、俺は炭酸水で頼む」
「ほいほい、まさかの炭酸水オンリーとはねぇ…んで?冬夜君は?」
「俺も一緒に行くわ、何があるか見たいし」
「…んー、それもそうかな、それじゃ行こっか!」
元気よく立ち上がり、歩き始めた西宮に、俺もまた、続いていった。
ーーーーー
「んー、私は何飲もうかなー」
ドリンクバーの機械の前で頭を悩ませている西宮がちらりとこちらを見てくる。
ニヤニヤとしたこの表情は、大体ロクでも無い考えをしている顔、のような気がする。
そしてそれは、案の定であった。
「良君の飲み物、色々混ぜちゃおうか」
少し小声で囁いた彼女はイタズラ気味にクスッと笑ってみせてきた。
「……炭酸水は透明だから、他と混ぜると色でバレるだろ」
「……」
もちろん、透明な飲み物がない訳では無い。
この、白ブドウの奴なんかきっと透明だろうから、混ぜれないわけじゃ無い。だが、混ぜたところできっと、普通に飲める物にしかならないと思う。
他にも炭酸系はあるにはあるが、どれも色つきの奴だ。
流石に系統の違うお茶を入れるのは良心が許さないので、結果としては、良の飲み物は弄ることが出来ない。
……ん?
「おいまさか、最初からそれ目的で
「違う違う、全然そんな気は無かったんだ~!今思いついてさ!やっぱ良くないよね!普通に持ってこ!私は100%オレンジジュースにするね!あ、良君のは私が持って行くから!冬夜君はじっくりゆったり選んできてね!」
とんでもない速度で西宮が席に戻っていくのを、ただただ眺めていた。
「自分で選びに来て良かった。。」
そして最初から選ぶ予定だった、100%のオレンジジュースをコップに流し込み、はぁ、と1つ溜息を吐いて席に戻って行った。
ーーーーー
しばらくすると、と言っても注文をしてから10分も経たない内に、それぞれの品が席に運ばれてきた。
ファミレスだけあって、出てくるまでがとても早い。
「それでは、ごゆっくり」
テーブルに並べられた料理の匂いが3人を包み込む。
店員が一礼した後、足早に次の仕事に向かってしまった。
時間帯も良くなってきて、席も順調に埋まってきている。
「よっしゃ食うか」
良が手際よくステーキを切り分けていた、はっや…
「はいはい、冬夜君」
「はいはい、なんですか西宮さん」
「あーん」
…は?
ほれほれ~とポテトを指先でちょこんと摘み、俺の方に向けている。
「はい?」
「あーん、ってしてあげよっか?」
「要らないです」
「ちぇー…なんてね!」
瞬間、西宮はテーブルに手を付き前のめりに俺の方に身体を寄せる。
伸ばされた手の先、ポテトのその先が俺の唇に触れる。
ちょっとした塩味を感じると、西宮はそのまま停止した。
「これを冬夜君が食べないなら、私が食べることになるんだけど、その辺どう思う?」
「……」
なんだこの高度な戦法は…思わずドキッとしてしまった、いや一瞬だけどね?
唇に触れてしまった以上、これを食うしか無い、脳がそう告げていた為に、仕方なくポテトを少しだけ噛むと全力でポテトだけを西宮の手から離させる。
消化させるまで3秒も掛けずに食い終わる。
すると、満足気な西宮はうむうむと頷いていた。すっげー腹立つ。
「冬夜、俺は金を渡しておくから、なんならお前らのドリンクバー代も置いておくから、ゆっくりしていけよ」
帰ろうとした良の腕を死んでも離してはいけないと、この時ばかりは本気で思った。ステーキ食うの早すぎんだろ。
ーーーーー
「楽しい時間ってのは早いもんだね~」
店を出たのは辺りが暗くなって間もない頃だった。
帰ろうとする良を食い止めて、2枚目のステーキを食わせながら、西宮が話を続けるのをなんとか捌き、ドリンクバーにしておいて良かったと思うほどジュースを飲んだ気もする。
店内も席待ちの客が出てきたのを見受け、時間も遅くなる前に出た。
あれだけ話をしたというのに、まだ元気いっぱいな西宮が、楽しかったねー、なんて笑顔を向けてくる。何だこの可愛い生き物、俺じゃなかったら告白して振られてるぞ、振られてるn……なんかこれは言っちゃダメな気がした。
「西宮の家はどっちの方だ?送るぞ、冬夜が」
「え?ほんと?嬉しいなー!」
「まって」
良がとてもいい笑顔でトンデモナイ事を言い始めるから、一瞬出が遅れてしまった。
「けど家の場所は知られたくないし、近いから送らなくていいよ?」
「だったらなんでチラチラこっちを見る」
「え?いやーここはほら、君の言葉で言って欲しいなってね」
西宮が下を向き告白待ちの女子みたいな雰囲気(少年漫画で培った知識参照)を醸し出す。
すると、良が肩をたたき、見下すような目線で俺に訴えかけてくる。
今だぞ、と。長年の仲だと嫌でも伝わるようになるもんだな、後で全力で腹パンしてやる、というキッとした視線を浴びせてやった。
「…家までは行かない、近くになったら教えてくれ、あと良も来るから、ほらチンピラとかに絡まれた時に俺は役に立たないから」
ガシッと良の肩を握ってやる、伝われ…この殺意!!
「はぁ、すまないな西宮、コイツがこんな奴で」
「いいよー、良君が居れば実際心強いしね、帰ろっか!」
幼馴染に溜息をつかれ、西宮には俺一人だと心細いと言われた。
……うんまぁ、反論の余地ないからね、黙るけどね。うん。
3人で自転車に乗り、西宮が先導する方へ走り始めた。
そんな3人を反対車線の歩道から見ている茶髪の女の子が1人居た。
誰一人として気がつくことは無く、そこに居たという事さえも、記憶されることは無かった。
「お願い、私を思い出して、冬夜」
消え入りそうな声でそう呟いた女の子は、3人の向かう方へ、ゆっくりと歩き始めた。
ーーーーー
「世界を記憶する者、ってなんだ?」
思考が停止したのはものの2秒ほどかと思う。
冬夜は思った事をそのまま口にした。
「この世界を「書き換える者達」が現れてしまいました。本来あるべき姿を人々は忘れてしまうのです。家族、恋人、友達、世界中の人々までも、自由自在に書き換える力を持つ人類が」
「まったく話についていけないわ、今日は沢山やらなきゃならないのとがあるの、夢ならば、もう起こしてくれないかしら?」
強気な言葉を並べる左隣の少女が苛立っているのがなんとなく雰囲気で分かる。
「僕としては面白そうな話が聞けそうで、若干興味が湧くよ」
出会って、というかまだ二言目なのにも関わらず、こうも落ち着いたトーンで話をされると、逆に不気味である。
そんな2人に挟まれた俺は、はぁ、と少しだけため息をついた。
「貴方達3人をここに呼び込んだのは、貴方達の周りで既に、この現象が起こっているからなのです。」
「……はい?」
まさかこんな短期間、いや夢の中で同じセリフを言うことになるとは、とても思わなかった。
「書き換えられた世界を、貴方達3人の「正しき記憶」で、あるべき姿に戻して欲しいのです」
「何を言ってるのかさっぱり分からないけど、1つだけ分かったことがあるわ、私疲れてるのね、最近ずっと忙しかったから、そういう事にしておきましょう」
その言葉を最後に、左隣の少女は消えてしまっていた。
え?どやって起きたの?やっぱ夢かこれすげー
「もう起こってるってことは、誰かが書き換えられてる……書き換えられるというのは、どうなるのですか?」
まだ3言目だというのに、言葉に温度が無い。
正直怖い。
「書き換えられると、その存在、「本物」は最終的に、この世界から消えてしまいます。同じような「偽物」が、この世界に在る事になります。そして、この世界の人々は徐々に偽物と入れ替わっていくのです。貴方達3人には、それを防いで貰いたいのです。」
「本物」「偽物」
出てくる単語はとてもそれっぽいのだが、なんにせよ意味がわからない。
防ぐって、どうしろと…?
しかしそれらを聴くと、隣の男は手を曲げ、顎の辺りを触っていた。
あぁ、探偵とかがやりそうなアレね?
「なるほどね、まだ正確には飲み込むことは出来ないけれど、世界にはこれくらい不思議なことが起こっても良いと思っていたし、それに選ばれる内の1人だったってことを、光栄に思わなきゃダメだね……これが現実でも夢でも、さて、僕も今日はここまでにしておこうかな、目覚めたら、きっと面白いことになると思うし。また会おう、いや。会えたらいいね」
すっと、男は消えていった。
瞬きを挟んだら居なくなっていた。
……どやって消えたの?教えて?
「貴方は、私の言葉を信じてくれますか?」
世界を管理する者、そういった女性が俺に問いかけてくる。
目線を合わせようとするが、相変わらず顔は見えない。
声だけが聞こえるこの真っ白な世界で1人取り残された俺は、顔を横に振った。
「これは夢だからな…信じるも何も無いけど、その偽物ってのは分かるものなのか?」
「えぇ、必ず分かるはずです。他の方々には分からなくても、貴方達3人には、分かるはずです」
それがどうして分かるとは言わず、ただ分かるということだけを繰り返す。
黙っていると、女性が話し始めた。
「人が本当に死んでしまうのは、「記憶からも忘れられた時」です。肉体の死や、魂の死よりも、人々の記憶からその人が抜け落ちた時、人は初めて、全てにおいて「死ぬ」のです。貴方達3人が忘れてしまったその時、彼ら彼女ら「本物」もまた、死んでしまうのです。だからどうか、思い出してあげてくださいね、「冬夜君」」
「……ぇ?」
それを最後に、目覚ましの轟音で身体が飛び跳ねた。
寝起きだというのにも関わらず、首を右に左に振り、自分の部屋にいる事を確認した。
時計を見るといつもの時間。カーテンを開けるといつもの風景。
それを見るだけで、心はどうにも落ち着いた。
「冬夜君……あの声、どっかで……?」
夢の中で話していた女性の声は、どこか懐かしい物だったが、しっかりと思い出すことは出来なかった。
果たして、この作品は自分の、そして最後まで読んでくださった記憶に残るのでしょうか?
……いや自分の記憶にくらいのこれよ。そう思いますね。
続きが上がるのか?あげ、、たいですね、、
最後まで読んでいただき、ありがとうございましたっ!!!
もし続きが上がったら、よろしくお願いします!m(_ _)m