俺の転生先はましろ色シンフォニー   作:修平

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さっさと帰れ

 

 

泉side

 

 

学校の講堂に

 

『ダメ。ゼッタイ』

 

と書かれた垂れ幕がかかっている。その下を生徒会長である月光ポンがゆっくり進んでいく。

漆黒の髪に、冷たい瞳。各務台学園の制服をきっちり着こなし、腰にはフェンシング部でもないのに剣を吊り下げているーーー以前「月ポンて厨二病?」と聞いたら青筋を立てて追いかけてきたので多分違うだろう。ーーーなんていうその姿に学校中の女子たちは夢中だ。

 

彼が講堂に現れた瞬間から、まるでアイドルかなにかが登場したかのように、きゃーきゃーと黄色い声が上がる。

そんな彼の姿に同じ生徒会のむっくんは苦笑する。

 

「相変わらずすごい人気なことで」

 

「むっくんも割と女子たちに人気あるよ?」

 

「マジで?でも俺彼女いるし。っていうかむっくんってやめてくんない?」

 

「やだ」

 

そう言うと彼はまた笑った。

女子たちの黄色い歓声をまるで気にすることなく月光ポンは進んでいく。そのまま壇上にあがり、まるでにらみつけるかのように全校生徒を見つめる。前にあるマイクをポンポンっと叩く。するとまた女子達がキャーキャー騒ぐ。

 

「黙れクズども」

 

と、言った。

本来ならそんなこと言った日には明日から学校中の女子たちに無視されそうなのだが

 

『は~い♡』

 

とか、言う。そして静かになる。そのあまりの月光ポンの人気ぶりを、男子生徒達が苦々しい顔で見る。それを見て私は笑いそうになる。

月光ポンはそれすら無視して

 

「あ~、五、六時間目を潰してお前らに集まってもらったのは、俺から少し話があるからだ。しかしその話をする前にこの上にかかっている垂れ幕を見ろ」

と、彼は自分の上を指さす。そこには

 

『ダメ。ゼッタイ。薬物の恐怖について考えてみよう教室』

 

なんてことが書かれている。それを全員が読んだことを確認したのか月光ポンは

 

「読んだか?読めない奴はいますぐ出ていって幼稚園からやり直せ。読んだ奴はもう一度俺を見ろ。よそ見はするな。話を続ける」

 

そして再び視線は月光ポンに集まる。これがカリスマか~などと思っていると

 

「これはつい先週の話だ。俺は校長から今日の行事について聞いた。俺は一年だから知らなかったが、二、三年生にはお馴染みの行事だろう?」

 

そう言うと上級生たちは次々と頷いた。

 

そう。これは毎年行っていた行事なのだ。私自身も年間行事を見てこんなのあるだ~と思ってたくらいだ。

 

「ここで一つ問いたい。特に去年『薬物の恐怖について考えてみよう教室』なるものを受けた、二年、三年生に聞きたい。お前らは十七、十八にもなって薬物が危険だということが分からないほど馬鹿なのか?」

 

そう言う月光ポンに講堂が少しずつざわついてきた。まぁ、それはそうだろう。ある意味警察に喧嘩売ってるようなものだ。だがしかし彼は

 

「どちらにせよ馬鹿な話し合いで俺の貴重な時間を潰させるわけにはいかない。だから各務台署に電話して言っておいた。うちの学校には高校生にもなってクスリをやるようなボンクラはいない。もしいたとしても、そんな社会のゴミは見つけ次第俺が殺すから安心しろ。だから二度とうちの学校に干渉するな、この公務員(イヌども)ーーと。つまり今日予定していた『薬物の恐怖について考えてみよう教室』は考えるまでもないので休講にする。さっさと帰れ」

 

そう本当にそう言ったのだ。この時ばかりは私も唖然としてしまった。しかし生徒達はその場にいなかったので、わーと歓声を上げながら喜ぶ。

そしてしばらくそれを見つめ、最後に少し大きな声で

 

「だがもし、いまクスリをやっている奴がいたら名乗り出ろ。殺してやる。殺されたくなければ、いま、この場で心の中で二度とクスリをやらないと誓え。いままでの生徒会がどの程度無能だったかは知らないが、俺が生徒会長になったからにはこの学校に薬物など蔓延らせない。今後生徒会は校内で薬物が使用されているか調査する予定だ。見つけ次第粛清する。いいな?」

 

その脅しに女子生徒達ははーいと声を揃え男子生徒はうんざりした顔で頷いた。だけど彼を含め私たちはそんなものは見ていない。今の言葉で顔色が変わった者、反応がおかしかったものなどを見ているのだ。

月光ポンは目を細めて

 

「以上だ、解散」

 

と言った。そうしてこの日の学校は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって生徒会室~

 

「どうだった?」

 

「いや、俺にはそんなおかしな奴はいなかったと思いますね」

 

「あたしも~」

 

「ふむ」

 

月光ポンは会長椅子(元は校長先生の椅子)に座って考える。

 

「俺も感じなかった。ということはこの件は何もする必要はない」

 

そう言いながら月光ポンはコーラを飲んだ。

 

「こんな適当でいいんすか?」

 

「なんだ?適当に見ていたのか?」

 

「いや、そこは懸命に見てしたよ」

 

「ならいい。俺は部下のことを信用してないほど愚かではない」

 

「………」

 

月光ポンは偶にこういう恥ずかしいことを真顔で言う。それだけ私達を信用しているんだろう。そう考えると少し嬉しい。

 

「会長はなんかすごいっすね」

 

「俺は天才だからな」

 

「そーっすか」

 

こんな会話が楽しいと思う。

 

「ねぇねぇ、月光ポン」

 

「月光ポン言うな」

 

「じゃあ紅ポン」

 

「“ポン”をはずせ!」

 

「まあまあいいじゃないですか~。それより私立結姫女子学園から統合の話がきてるらしいけどどうすんの?」

 

そう言うと月光ポンは真面目な顔になった。

 

「それは近い内に俺が向こうに行って確認する予定だ」

 

「会長が行くんすか?」

 

むっくんがもっともなことを言う。確かにそこは理事長や校長などが行くべきであろう。

 

「あそこの学園長はやり手で有名だ。禿げに任せるとあっという間に統合に持っていかれる。俺の大事な生徒達を簡単に預けるわけにはいかない」

 

そう言う月光ポンの顔は本気が感じられた。こういうのが皆が彼についていく理由なんだと思う。

 

「今日の仕事はこれで終了だ。さっさと帰れ」

 

そう言いながら彼はコーラ二本取り出して私達に投げた。

 

「りょーかいっす。俺新吾待たせてんで先帰ります」

 

「バイバ~イ」

 

「新吾?」

 

「知らないの?最近むっくんと仲が良い男子だよ」

 

「……そうか」

 

そう言うと手に顎を当てて考える何か月光ポン

 

「もしかして嫉妬?」

 

「………あ?」

 

「だから友達のいない月光ポンはむっくんを瓜生君にとられるのをしんぱ「シャリーーーン」………しゃりーーん?」

 

なんだと思って横を見る黒い刃が私の首筋に当てられている。

 

「な、なんかこの剣本物っぽくない?あと顔怖いよ月光ポン?」

 

「言い残すことはそれだけか?」

 

 

そこから二時間に渡る鬼ごっこが始まった。

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