SAObr - System Artificial Operation by reincarnation -   作:くく

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 お気に入り100どころか200突破ありがとうございます。
 拙作ではありますが、こうして沢山の人に読んでいただけて感謝の言葉がいくらあっても足りないぐらいです。

 何かお礼を出来たらな、と思い突発作品ではありますが、一つお話を書かせていただきました。
 こちらは本編より随分先の未来を舞台とした「もしかすると訪れるかもしれないIF」のようなお話です。
 出来る限りあり得そうな未来として書いてますが、本編とは全くの別物として見ていただけると幸いです。
 またIFとなるのでずっと掲載はせずに最終的には削除または別作品として隔離移動して保管する可能性があります。検討中です。




番外編IF 01.なんてことない閑話

 

 

 

 髪質はさらりと言うよりもは、ふわりと言ったような表現が似合う柔らかさがある。黒髪というには少しだけ色素が薄く、ダークグレーに近い髪色は光に当たれば少しだけ眩さを感じさせる。

 遠くを見つめている彼のやや横を向いた顔をじっと見つめていれば、やっとその視線に気付いたのか、視線をこちらに傾ける。

 そして、白藤色の瞳が俺のそれとやっと交わった。

 

 

 

 

 

 

「感謝こそされても、恨み言言われる筋合いは無いと思うんだけど」

「……だって」

「はいはい。子供だねぇ和人くんは」

「…………うるせぇなぁ」

 

 気恥ずかしさからか、それともただの意地っ張りからか目元を微かに赤くさせて視線を逸らす友人の姿に俺はふは、と息を吐くように笑いを漏らした。

 片手でキーボードを難なく操作し、微かに横目で画面を確認しながらも、手の届く距離に座っている彼の頭を数度ぽんぽんと叩いてやる。

 まあ、拗ねもするだろう。頭で理解していても、懐の広い男の器というものを見せようとしても、結局はこいつはただの男子高校生なのだから。

 

「でも、どうなるかはわからないな。難しいラインだ」

 

 カタリ、と最後のキーを叩き終えては、表示される文字の羅列を一気に目を通してそこから導き出される結論を告げる。

 ――時間が足りないな。逆算して取り掛かってたとは言え、やっぱ思い通りにはいかないものか。

 

「そう……か」

「まぁ、倉橋先生にももうちょっと相談してみるよ。……んで?どこぞの黒の剣士様はわざわざ俺に『明日奈との時間が足りない』っていうぼやきをするためだけにここに来たのかな?」

「ぐ……いや、そんなわけないだろ」

「ふーん?いや、別にいいんだよ?そんな愚痴他には言えないもんなぁ。俺的全然大歓迎ですよ?」

「……楽しんでるだろ」

「いえ?全く?これっぽっちも?盛大に楽しんでる」

「言葉が矛盾して可笑しくなってる!」

「はいはい、こちら病院の一室ですお静かにー」

「んぐっ……」

 

 素直に黙り込んでしまう彼の純粋さは健在だ。キィ、と椅子の背もたれに軽く身体を預けたことで鳴る音を耳にしながら右脚を左脚の上に乗せるように組み、渾身の笑みを口元に湛える。言わばニヤニヤ顔である。

 

「そんな心配しなくても明日奈はお前にぞっこんだろ」

「ぞっこんて……別にそれを疑ってるわけじゃないんだよ」

「あーあ、もうちょっと隙があればなぁ。俺が立候補したのに」

「……おい?」

「冗談だって。まぁ、こっちでもあっちでも、今はお前は二の次みたいなもんだもんなぁ」

 

 それも仕方ないことではある。

 俺としては、この物語は完全に彼女が主人公のパートに入っているのだ。本来の主人公の彼の影が薄くなるのは知っていたし、この先の展開も大体は見当がついている。

 しかし、まさか彼がここまで彼女――明日奈との時間が取れなくなってしまったことを寂しくさせているとは思っていなかった。完全の予想外の出来事である。

 

 かの空の城の終わりは、少し違った終わりを迎えはした。確かに彼と彼女の繋がりは、原作より根強くなった気はしていた。でも、ぶっちゃけて言おう、ここまでか?ここまで彼は彼女に執着してたのか?いやはや、青春だねぇ、ほんと。おじさんついていけないよ。同い年だけど。

 結局どうにかしたいとか、そういう話ではなく、心の中のもやを誰かに吐き出したいだけだろう彼の気持ちを汲んでやり、気まずそうな表情を浮かべてしまう彼にただ同調してやる。

 

 

 

 いつか、俺もこんな風に人を愛する時が来るのかねぇ……。

 

 彼ら、彼女らの想いの矛先と、その想いの深さを目の当たりする度に、何だか俺には無縁だなぁという気持ちと、ちょっとした憧れが湧く。誰にも言わないけれど、俺だって人並みに恋とかしてみたいとは思っているのだ。

 そう、彼のように一人の女性を深く愛し、そしてそれを返してもらう。ただ一度も経験したことも無い、そんな夢のような奇跡を体感してみたいと、思えるようになった。

 

 何色にもならなかった前世と、今の生。でも、彼らと共に過ごしていくうちに微かに色づいてきているものがあるのを俺は自覚している。それはきっと、悪いことではないのだ。

 この何色にも染まらない筈の黒の彼は、唯一瞬くような星の白き輝きに染められた。そして変わって行った。黒と白が交わるように、そして一つになったのだ。

 沢山の葛藤と苦悩をしながらもここまで歩き切った俺は、それを見届けたことを間違っていないと思えた。それだけでも十分意味があるのだろう。

 

 ――仕方ない、一肌脱いでやるか。

 昔は度々、しかし最近はよくやり取りしたログの残るトーク画面を開いて、用件を打ち込んでいく。

 人が来ているのに、と少しだけ不満げな雰囲気を見せていく目の前の彼の存在は、この際まるっと無視して送信。直ぐに既読が付くのを確認して緩く口元に笑みを浮かべた。

 

「お礼なら、二時間並ぶらしい銀座にある店のチーズケーキでいいよ」

「は?何言って」

 

 途端、ブブッと彼の携帯に通知が届く。

 そして、その内容を見て、俺の言わんとすることを理解するまで、一分もかからなかった。

 

 

 

 

 

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