SAObr - System Artificial Operation by reincarnation - 作:くく
MMORPGって基本的にやったことないので間違えて捉えている可能性があります。
そっと教えてくださるか、スルーしてくださると嬉しいです。
宜しくお願いします。
00.プロローグ
目の前に広がる光景は、恐怖や絶望で埋め尽くされていた。
「出せ」「この後約束があるんだ」「ふざけんな」「殺す気かよ」……沢山の言葉が重なり、騒音となって広場に響き渡る。
そんな中、俺は逆流するような記憶に飲まれ、ひたすらにあのフードを被った存在がいた空を凝視していた。
二〇二二年、十一月六日。十三時より正式サービスが始まったフルダイブ型VRMMORPG――『ソードアート・オンライン』
βテスト版も体験し、今日という日を待ちわびていた俺はこのゲームの真の姿を知っていた。
このゲームが、あの茅場 晶彦の求めていた世界であり、たった今から本当のデスゲームとなったことを、
俺は、
いや、知っていたではない。思い出したのだ。
鳴り響いた鐘の音。語られる無情な宣告。溢れ出す恐怖……そして、それらの終わりも。
俺は、
この世界が、ソードアート・オンラインという、
そして自分が、その作品を愛読していた前世の過去を持つ、所謂転生者だと言うことを。
生まれて十四年。たった十四年だ。その中で何度か違和感を持ったことはあった。やけに知識がある自覚があった。どこで学んだのかわからない知識、技術を備えていた自分は、周りに酷く期待されていた。
でもそれが何でなのかはわからなかった。自分には前世があって、その記憶が断片的に引き出せていたなんて、今の今まで気付くことなどなかった。
どこかで、なるほどなと冷めた気持ちで納得している自分がいる。堰き止められていた記憶が一気に流れ込んできて混乱していた思考が段々クリアになっていく。
響く騒音は中々落ち着かないが、それも少しずつ怒号より嘆きが増えてきていた。
ぼんやりと、その光景をやっと視界に入れる。
――ああ、彼は確か、アニメでモブのような描写で画面に映っていたな。
――ああ、あの子は確か。
――ああ、前線にいた彼も、最初は嘆いていたのか。
どこかで一枚フィルターのようなものがかかっているような、そんな感覚がする。
さっきまでは無かった感覚。知りたくも無かった事実が自分を大きく切り裂いて、自分という存在がこの世界には求められていない単なるモブだということを突き付けてくる。
でも、どうにかしようとは思わなかった。
数時間後、このゲームの初めての死者が出来る。
死因は――自殺。知っている。茅場の言葉が信じられず、賭けるように、そして諦めるように人が死ぬ。痛みなどないこの世界で、呆気なく死んでいく。
一か月後には死者が二千を超える。知っている。
でも、二年後にはこのゲームはクリアされる。知っている。
知っているからこそ、俺はその場から動くことが出来なかった。