仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
今回は作者が詰め込みたかったものが煮詰まっています。ご了承ください。
レティサにとって、一人娘のカトリーは自らの希望であり生きる意味であった。
夫を早くに亡くした彼女は、身寄りを失くした他の子どもたちのためにと、生まれ故郷でもあった辺境の地で孤児院の寮を設立する。
他の子どもたちと立場と同じくするために、娘も寮生として周囲の空気を明るくしていた。
大変ながらも、充実した幸せを送る日々……。
しかし、それは突然の悲劇によって脆く崩れ去る。
血相を変えて寮母室に入ってきたシスターから聞かされたのは、娘の身に起こった悲劇。
外で遊んでいたカトリーが一緒にいた寮生を庇って車に轢かれたのだ。
医者から告げられたのは内臓の損傷が激しく、長くて数日しか生きられないという残酷な事実。
その残酷な言葉に、彼女は机に突っ伏し嘆いた。
何故私たちだけがこんな不幸を受けなければならないのか……。
何故、何の罪もない娘にこのような仕打ちをするのか……。
レティサはただただ泣くことしか出来なかった。
そうしていく内に、彼女は動いた。
カトリーを助ける……。
医者が駄目なら私が助ける、神様が手を差し伸べてくれないなら私があの子の手を握る……。
色々な書物を読み漁った。
医学から哲学、果てには既に廃れたオカルトな物まで全部。
そうして書物に書かれた情報や知識を収集している時だった。
「……人間を捨て、自らの命題に答える気はないか?」
その男が、何故ここに来たのかは分からない。
ただ分かるのは、この男も自らに課せられた命題に縛り付けられた彷徨う亡霊だったのだろう。
レティサの答えは決まっていた。だからこそカトリーに新たな命が宿り、娘の温もりをこの手で抱き締めることが出来たのだ。
寮にいた、全ての子どもとシスターたちの命を糧にして……。
『あああああああああああああああああっっっ!!!!』
毒蛇が雄叫びを上げる。
この世の全てを憎んでいるような、自らの不幸を嘆くような、聞いた者の心を揺さぶってしまうような叫びが周囲に響き渡る。
「ぐっ!」
自身のエネルギーを全て解き放ち、暴風のような衝撃にレクスが思わず両腕で顔を覆う。
それが命取りとなった。
『問題いいいいいいいいいいっ!』
「なっ…」
『「大切な人を助けるためなら、どんな手段を使っても許される?」……〇か、×かっ!!』
ヴァイパー・ヴァローグが提示したのは、自らの魂と同等の価値を持つ命題から作り出された問題。
埋め込まれたクイズトッパーがまるでカウントダウンを始めるかのように点滅する。
「×だっ!」
「っ!バカ答えるな!」
反射的にレクスが答えた。
それは、当たり前の答え……彼が答えたのは現実的な回答。
というよりも、ヴァイパーの出した問題は正解も不正解も曖昧なもの。
しかし、それは第三者からすればの話だ。
何故クイズがレクスの答えに反応したのか……その答えはすぐに分かった。
『不正解いいいいいいいいっっ!!!』
「何っ!?」
『正解は〇ッ!!大切な人を助けるためだったら、どんな犠牲を払っても許されるううううううっっ!!!』
瞬間、蛇が尾を噛むような〇のようなエフェクトが出現するとヴァイパーの身体に垂れ下がっていたチューブが意志を持つかのように動き始めた。
それはまるで槍のように硬質化すると、レクスたち目掛けて襲い掛かる。
「このっ!」
ロワとチームCが手に持った銃で迎撃を試みるも、槍は撃ち落されるどころかそれをエネルギーへと変換して吸収しているのだ。
「うわっ!?」
「ヴァローグの命題は己の持つ力や姿へと直結している……下手な答えは俺たちの首を絞めることになるぞっ!!」
「それを早く言えっ!」
攻撃を避けるロワたちにクイズが解説し、攻撃の激しさが増す中でレクスが叫ぶ。
ヴァローグの姿はその者の命題が動物となって形作られている……その中でも幹部級と称される個体はその命題を提示することが出来る。
例えそれが曖昧な、答えのないものだとしてもヴァローグ自身が『正しい・誤っている』と強く信じていればそれは答えの存在する
その命題を強く主張すればするほど、力が上昇してくるのだ。
レクスが自分に迫った槍を叩き落とした瞬間……。
掌にエネルギー弾を宿らせたヴァイパーが距離を詰めていた。
モノアイに宿しているのは、この世と一度は信じた神への強い怒りとそして……。
「くっ!がああああああああああああっっ!!!」
「颯太っ!」
一瞬呆けていたレクスの胴体目掛けて毒々しい闇の色をしたエネルギー弾が放たれる。
とっさにジカンザックス・ノクスを盾にするも、必殺技並の威力を誇る攻撃を防ぎきれるはずもない。
自身の武器が粉々に破壊されると同時にレクスが衝撃と共に吹き飛んだ。
変身を解除されて地面を転がる颯太の元に集ったロワたち目掛けて、再び攻撃を行おうとした瞬間。
『……』
一人の異形が現れた。
それはクイズたちを守るかのように立ち塞がり、手にはオートマチック型の武器『変身血銃メタモルガン』を構えている。
『っ、ブラッドアンサー!?』
驚き、攻撃の手を一瞬だけ緩めてしまったヴァイパーに一瞬だけ視線を向けるも異形……ブラッドアンサーは銃口から赤い霧を噴出し自身とロワたちの姿を完全に覆い隠す。
やがて霧が晴れた時には彼らは既に姿を消していた。
「……仮面ライダーロワ。そして、あれが仮面ライダーレクス……」
一つの影が、彼らの戦闘を見下ろしていた。
時間の止まった空間……喫茶店として賑わっているそこは異世界人たちの持つ王の力によって本来の理が歪められていた。
空いた席に座り、自前のノートPCで現時点での研究を記録している白衣の男性……その背中に声をかけるのは一人の青年。
「時間を止めてレポート作成。随分と楽しそうだねファスティ」
「やぁナイン。そういう君は随分と不機嫌そうだネ」
少し棘のある言葉を適当に返すファスティに、ため息を吐いたナインは近くの席に座り本題へと切り込む。
「別の世界からレプリカライダーを作って送り込む……どういうつもりだい?」
「何か問題があるかナ?ボクたちの目的は世界を破壊する王を作リ、それを我らが『覇王』に献上するこト。問題なんてないヨ」
そこについてはナインも疑ってはいない。
全ての世界線に『魔王の誕生する可能性』が消えたことで、自分たちは自由に動けている。
だが、彼はファスティのことをあまり信じてはいない。
「あの女性を選んだのは、レプリカライダーの変身者に相応しいからってことかな」
「うン、そうだネ」
「本音は?」
「未亡人は良いヨ。愛する夫に先立たれた不幸を背負いながらも、子を想い慈しむ母性。男を知っている女としての顔。薄幸な美貌と時折見せる悲しみとも儚さとも取れる艶のある微笑。世の男性は人妻を好むというガ、ボクとしてはやはり未亡人を推したいネ。いや人妻も人妻で背徳感があって良いが未亡人にはボクたちも知らなイ、そうまだ見ぬ未知の可能性が…」
「ごめん。僕が悪かったからその減らず口を閉じてくれない?」
とりあえず止めた。
このファスティという男。見た目や言動に違わずマッドサイエンティストなのだが、それと同時に女好きな一面を持っている。
美女も不細工も、幼女も老婆も、手足のある人間から触手の生えた宇宙人まで性別が女性ならば普通に興奮出来るほどのやべー奴である。
トゥエムと鉢合わせした時には、周りがドン引きするほどのトークをしたり『SM判定フォーラム』なる歌をデュエットしていたのであまり合わせないようにしている。
今回、ファスティがレティサを選んだのも完全な私情だろう……顔にこそ出さないが呆れるしかない。
「まア。今回は普通に強いモルモットを選んだからサ、期待してナ」
「だと良いけどね」
そう言って研究記録の作成を再開する目の前の変態を視界に入れないよう、ナインは時間が止まっている外の景色を眺めるのだった。
とある港……。
汽笛と波の音しか聞こえないこの場所で、ブラッドアンサーはただその景色を眺める。
手すりに寄りかかったまま何も語らない彼に痺れを切らした主水は、詰め寄り口を開く。
「何のつもりだ、吸血鬼擬き」
『この私に答えを求める、か……お前にも分かっているんじゃないのか?』
その言葉に、主水が鼻を鳴らす。
「俺たちと手を組んでほしい。そういうことか?」
『そうだ。あれを野放しにするのは、我々にとって困るからな』
「自分たちのメンツにしか興味がないってことっ?」
ブラッドアンサーの保守的な意見にアヤは皮肉気に言い放つ。
仮にも味方のレプリカクイズに対し、ドライな発言が彼女の機嫌を露骨に悪くさせるが、気に入る気に入らないで共闘を断るほど彼女の精神は幼くも視野が狭いわけでもない。
ユキや椋は、彼の言動に隠された感情を理解するよりも先にヤマダが一先ずの結論を出した。
「んじゃま。とりあえずあのレプリカライダーを探しましょうか」
気怠そうにしながらも、割と真面目な彼女の言葉に全員が頷いた。
椋はチームCと行動を共にし、ブラッドアンサーは翼を出現させて空からの索敵を行うため主水と颯太がセットになる。
「……」
「何か複雑そうだな」
「当然だ」
鋭い視線をそのままに、颯太は足を進めるとその後を主水が追う。
しばらく二人は何も言わなかったが、やがて颯太が口を開く。
「……貴様はっ」
「あん?」
「貴様はっ、あなたは……どうして強い」
それは、ふと漏らした問いかけ。
強くなり、自分の世界を崩壊させたワールドハックに復讐するべく力を手に入れた。
奴らに立ち向かうためにあらゆる世界に存在する仮面ライダーの情報を可能な限り調べた。その贋作であるレプリカライダーから無理やり力を奪い取ることで疑似的にだが、二つもライドウォッチを作り出すことにも成功した。
それでも、ワールドハック所属のレプリカライダーには勝てないしこの世界に来てからは後れを取ることが多くなってきた。
「俺は、仮面ライダーが分からない」
最矩颯太は仮面ライダーを知らない。
そんな戦士は自分の世界にはいなかったし、その力が危険なものであることだけは理解していた。
だからこそ、颯太は危険な力を持つ戦士……仮面ライダーだけは自分だけで良いと断じていたし、それは今も変わっていない。
故に、知りたい。
「そんな危険な力を持ちながら、どうして力に溺れない。どうしたら、強くなれる」
暗く、辛い表情で呟く。
それはふとした拍子に剥がれた最乗颯太の仮面……復讐者としてではない少年の素顔。
彼の提示した『問題』に、主水が口を開いた。
「知らね」
「なっ!貴様、人が真剣に…」
「言えば、お前は納得するのか?」
腰に下げているホルダーにマウントされたブランクライドウォッチを手に取った彼が構わず続ける。
「人の出した答えに納得するようじゃ、まだまだってことだな」
「教える気はない……て、ことかっ」
「まっ、一つだけヒントをやるとしたら」
肩を叩き、彼を追い越した主水はブランクライドウォッチを弄りながら続ける。
「『その答えを正解だと信じる』……だな。強くなりたい理由なんてとっくに分かっているだろ?」
その言葉に颯太は少し俯く。
壊れた世界、消された両親と友人、理不尽で世界を塗り潰した存在への復讐……。
けれど、それは個人的な怨みだけではない。
そうだ……。
日常を生きていた両親や友人たちへ、本来生きるべきであった人たちのために。
「強くなる理由、俺が戦い続けたい理由……それはっ」
【ヴァローグダヨ!ヤバイヨヤバイヨバヤイヨ!!】
ヴァローグ出現を告げるアナウンスが遮った。
レプリカクイズが再び動き出したのだろう。今頃は椋たちも恐らく現場に向かっているはず……バイクを取り出そうとする颯太に主水がブランクライドウォッチを投げる。
すると淡い光と共に『あるライドウォッチ』へと変化を遂げた。
「これは……!?」
「難題を見つけても足を止めるな。自分の信じた答えを探し続けろ」
それだけを告げると、主水はペンダントをかざし赤と青でカラーリングされたバイク『マシンアンサー』を出現させる。
ヘルメットと手袋を装着すると、唖然としている颯太に少しだけ笑みを向けるとエンジンを蒸かして、走り去った。
颯太も懐にウォッチを捻じ込み、バイクライドウォッチを取り出そうとした時だ。
「待ちなさい」
聞き慣れない女性の声に思わず振り向く。
そこに立っていたのは芸術家風の衣装を着た凹凸の身体を持つモデルのような少女。
シアンカラーにマゼンタのメッシュが入ったセミショートヘアー。黒いズボンに白いコートを着ており、ペレー帽を被った少女が白銀の瞳が彼を見つめている。
首元に巻いたストールのような長い緑のマフラーを弄りながら、彼女は颯太に近寄る。
「何だ貴様はっ?」
気配すらも感じなかった少女の存在に、当然彼は警戒する。
しかし彼女は気にすることなく口を開く。
「ただの宮廷芸術家よ。そんで、武器を壊しちゃったあんたへのプレゼント」
白い手袋に覆われた手で彼女が渡したのは、ナックルダスターの形状をしたグリップタイプのウェポン。
見た目は拳のような形状だが、縦書きで「NAKKURU」と白いローマ字で刻まれている。
また、ナックル部分を回転させれば「KYANON」という文字と砲口が露出するようになっている。
「それは『時間拳討ジカンジャナックル』……あ、ネーミングにツッコミ無用よ。作ったの私じゃないし私だったらもっとセンスの良いの作るから」
誰も聞いていないことを付け足しながら新たな武器を渡した宮廷芸術家を名乗る少女に、颯太はただ困惑するしかない。
しかし、そんな彼に彼女は何も答えることなく。
「行きなさい」
一言、他に何かを口にすることもなくそう言い放った少女に颯太は改めてバイクライドウォッチから自身のバイクを召喚する。
そして主水の後を追って走るのだった。
「期待しているわよ、レクス■■■■……あんたにも、王様になってもらう必要があるんだから」
少女はただ、得意気な様子で、小さくなる背中に向けてそう独り言ちた。
ドライブアーマーに変身したロワがタイヤの軋むような鋭い音と共に参上する。
軽く焦げたブレーキ痕を残しながら、高速移動で着実なダメージを与える。
「はぁっ!」
『ちっ、鬱陶しいわよっ!!』
レプリカクイズが眼を光らせると、ヴァイパー・ヴァローグの能力である石化でロワの動きが突如止まる。
文字通り、蛇に睨まれた何とやらの彼にレプリカライダーが強烈な雷撃が叩き込んで吹き飛ばす。
「……とっ!」
空中で体勢を立て直したロワがすぐに受け身を取る。
そしてその隙を埋めるように銃撃を行う者がいた。
『レティサ。大人しくしてもらうぞ』
『邪魔をしないでっ!』
ブラッドアンサーがメタモルガンで赤い弾丸を発射し、ロワが戦闘に復帰するまでの時間を稼ぐ。
しかし、手を組むことを察知していたレプリカクイズにとって、それは想定内だ。
すぐさま暗雲を召喚、彼らの周りを取り囲むように出現させるとそこから雷撃を出現させる。
『ちっ!』
ブラッドアンサーは翼を広げて安全圏へと回避。
あらゆる角度から放たれる電撃にロワは焦ることなく、両脇を締めてキックボクシングスタイルを取ると回避行動に移る。
迫りくる雷を上半身を捻ったり、体重移動によるヘッドスリップやウィービングを駆使し全ての攻撃を回避すると、すぐさま直進。
「シッ!」
『はぁっ!』
『ぐぅっ!!』
スウェイからのハイキックと鮮血の異形によるゼロ距離射撃を叩き込まれたレプリカクイズが仰け反る。
続けてアヤたちドールも攻撃を繋げようとするが、レプリカライダーが突如身体からチューブを生やして硬質化した槍へと変形させた。
「避けてみんなっ!」
ロワの声にアヤたちは散開する。
しかし、彼女たちの方に意識を向けてしまったロワは……。
「うわあああああああああああああっっ!!!」
近づいてきたレプリカクイズの一撃を受けてしまった。
変身を解除されなかったが、立ち上がれぬほどのダメージを受けて吹き飛んだ彼の元に、アヤたちが向かうも再び非情な毒蛇の槍が迫る。
だが。
「答え合わせには、まだ早いぜ?」
それを止める存在がいた。
赤と青のマシンアンサーを駆る人物、主水と……。
「今日はみっともない姿しか見せないな、小野寺」
レクス仕様のライドストライカーに乗った颯太だ。
二人は同時に降りて並び立つ。
威嚇するように唸り声をあげるレプリカライダーを見据えながらも、颯太は口を開いた。
「強さの理由、俺にはさっぱり分からない」
「だけど」と彼は続ける。
「俺が力を手に入れた理由……そんなの決まっている。これ以上、奴らの好きにさせないためにっ。これ以上、俺みたいな人が増えないために。別の世界だろうと俺は戦うっ!きっとそこに、俺の見つける答えがあるからっ!!」
【REX!!】
決意と共に起動したレクスウォッチを、取り出したジクウドライバーにセットし腹部に巻き付ける。
主水もクイズドライバーを召喚し、クイズトッパーを構えた。
「「変身っ!」」
【FASHION PASSION QUESTION! QUIZ!!♪】
【KAMEN RIDER REX!!♪】
主水は仮面ライダークイズに変身。
颯太もレクスへと変身すると、ホルダーから赤とオレンジのライドウォッチのベゼルを回転させる。
そこに刻まれていたのは、ビルドとは違う叡知の戦士。
本当の意味で、颯太が継承した仮面ライダーの力。
【QUIZ!!】
スイッチを押してクイズライドウォッチを起動したレクスは反対側のスロットへと装填し、バックルのロックボタンを叩いて解除する。
待機音声が鳴り響く中、バックルを再び回転させた。
【ARMOER TIME!】
【QUESTION! QUIZ!!♪】
ビルドアーマーとは違う赤と青のアーマーが出現、クエスチョンマークを象ったパーツ状となってレクスに装備されると複眼に「KUIZU」とローマ字が装着される。
仮面ライダークイズの力を宿した戦士『仮面ライダーレクス クイズアーマー』だ。
無事に継承出来たのを確認したクイズはレクスの隣まで来ると、何か言いたげに視線を向ける。
「……はぁ」
何も発しなかったが、理解したのだろう。
呆れたように軽くため息を吐いた彼は相手に向かって宣言する。
「救えよ世界」
「答えよ正解」
それは、自らを奮い立たせる呪文。
例え望まない答えだとしても、例えそれが知りたくもない真実だとしても……。
胸に秘めた、たった一つの答えを信じる。
「「問題!『仮面ライダークイズは堂安主水ただ一人である?』……〇か、×か!」」
声を揃えて問題を提示した二人の戦士が地面を蹴った。
すぐさまレクスは受け取ったジカンジャナックルを取り出し起動する。
【JIKANJAKNUCKLE!】【ただいま打撃中!】
クイズの力を宿したレクスは青いエネルギーを込めたナックルモードによる打撃を絶やすことなく行い、クイズもクイズランドブレードを使って攻撃を始める。
しかし、暴走しかけているとは言えある程度の力を使いこなせるようになっていたレプリカクイズは攻撃を捌きながら答えを提示する。
『ふっ、正解は〇ッ!』
答えた瞬間、クイズアーマーの青いシンボルが輝きだした。
するとレプリカクイズの上空に雲が出現し、そこから凄まじいほどの落雷がその身体を焼いた。
『がああああああああああああっっ!!?ぐぅっ!!』
正解だと信じて答えたにも関わらず、不正解による雷撃を受けたレプリカクイズの隙を狙って刀身に電気を纏ったクイズの斬撃が吹き飛ばす。
強烈なダメージと共に地面を転がるレプリカクイズにレクスとクイズは答えを提示する。
「正解は、×だ」
「確かにクイズの変身者は俺だ。だけど、俺の力を継承させた今のこいつも……姿はちょっと違うが仮面ライダークイズってわけだ」
『そ、そんな屁理屈が…』
「それが通ったから、ダメージを受けているんだろ?問題っ!」
納得のいかないレプリカクイズを遮るように、クイズは再度問題を提示する。
「『お前のやっていることは自分のため?』」
「『貴様は犠牲にした人たちのことを愛している?』」
「「〇か×か!」」
提示された問題は、レプリカクイズ……レティサの根幹に関連するものばかり。
核心を突いてくるように提示される問題に、レプリカウォッチの副作用で暴走を続けるレプリカクイズは目に見えるほどの動揺を見せる。
しかし、それに気にすることなく二人の攻撃は絶えることはない。
【ただいま砲撃中!】
【TIME CHARGE! 5・4・3・2・1……ZERO TIME!!】
レプリカクイズの雷撃を躱したレクスはカノンモードに切り替えたジカンジャナックルによる至近距離の砲撃を行い、クイズウィンドマグナムによる銃撃がレプリカライダーの思考時間を奪っていく。
そして、時間制限が尽きた。
「正解は×だ」
「正解は〇だっ!」
【JIRIJIRI HOU!!】
今度はクイズが発生させた暗雲による雷撃によるダメージが動きが止まり、そこを逃すことなく雷撃とエネルギーをチャージさせたレクスの必殺砲撃がレプリカクイズを吹き飛ばす。
『ぐううううううううううううっっ!!!』
〇と×のエフェクトを身体に刻まれて地面を転がるも、レプリカクイズは執念で起き上がる。
負けるわけにはいかない……。
ここで倒れれば、カトリーは二度と助からない。
彼女だけが自分の希望。
もしあの子がいなくなれば、私は今まで何のために……!
クイズが問題を口を開いた。
「最終問題。『お前は自分の命題とその解決方法を今でも正しいと信じている?』」
「〇か×か」
『っ!!!』
心臓に、杭が打ち込まれたようだった
それは誰にも言われたくなかった。
目を背けるしかなかった事実、ヴァローグになって捨てたかった『答え』……。
彼女の覚悟を揺らがせるには、充分だった。
『私はっ、私はあああああああああああああああっっ!!!』
レプリカクイズが眼を光らせ、ヴァローグの力を解放しようとする。
しかし。結論から言えばそれは不発に終わった。
【DRIVE! CHIKUTAKU SHOOTING!!】
【FLASH! BAD ANSWER……!!】
「『ふっ!!』」
ジカンハカリバーにドライブライドウォッチをセットして銃口を向けているロワと、メタモルガンを構えたブラッドアンサーの銃撃がヒットしたのだ。
タイプスピードの力を宿した必殺の一撃と、鮮血のような禍々しい断罪の銃弾がレプリカクイズの身体を仰け反らせる。
それを逃すことなく、必殺技を発動したレクスとクイズが同時に跳んだ。
【FLASH! TIME CRUSH!!】
【FINAL QUIZ FLASH!!】
『はっ!?』
出現するのは、視界を覆い隠すほどの巨大なパネル。
そこには赤い〇と青い×が刻まれており、耳には時間制限を匂わせる秒針の音が聞こえてくる。
(正解はとうに分かりきってる!!)
レプリカクイズは向かってくる戦士を返り討ちにするべく、〇のパネルがある場所へと向かい地面から蛇を模した紫色のエネルギーを出現させる。
それに電気を纏わせ、クイズたちが出てきたところを狙い撃つ……そのはずだった。
「「はああああああああああああああっ!!」」
自身が予期した場所とは違う方角、×のパネルを突き破って現れたレクスとクイズが現れる。
それは、レティサが望んだ答えとは正反対の結果となった。
「「クエスチョンキィーーーーーーーーック!!!」」
〇と×の赤いエフェクト身に纏いながら、ドライバーとアーマーに内蔵された電気がクイズとレクスの身体能力を強化させていく。
そして二人の跳び回し蹴りが蛇型のエネルギーを粉砕しながら、歪んだ答えを求める贋作の身体を思い切り吹き飛ばした。
『ああああああああああああああああああああっっっ!!?』
金色に輝くシンボリックマークのエフェクトと共に、レプリカクイズは爆散。
爆発が収まった先には衰弱した様子のレティサが膝をついており、体内から転がり落ちたレプリカクイズウォッチが小さく爆ぜて消滅する。
「はぁっ、はぁっ!わ、私……私はっ!」
『レティサ。少し頭を冷やせ』
頭を抱え、必死に自分を律しようとする彼女に肩を貸すブラッドアンサー。
しかし視線はクイズたちの方に向けられており、警戒の色が強い……馴れ合いはここまで、ということなのだろう。
同時に、地面から突如生えてきた木の枝が巨大な輪を作り歪な空間を発生させる。見ればそこにはレティサたちにとって見覚えのある景色が映っており、恐らく元の世界に通じているのだろう。
ファスティの姿が見えないことから、ウォッチに予め仕込まれていた機能だと見抜いたブラッドアンサーはその空間の中へと入っていく。
「待てっ!」
すぐさま追いかけようとレクスが走り出そうとするが、ある人物がそれを止めた。
クイズ……変身を解除した堂安主水に他ならない。
「あのヴァローグは俺の得物だ……ヒントだって充分もらった。もうお前たちの力は必要ない」
「しかし…」
「問題は最後まで聞け」
まるで突き放すような言い方にレクスが反論しようとするもすぐに遮る。
帽子に軽く手を添えてから、改めて彼らの方に向き直る。
「俺には俺の戦う理由があるように、お前たちにだって戦う理由はあるだろ?」
「それは……」
「なら、この世界で答えを見つけてみろ。俺も、俺の世界で見つけて見せるさ……世界の救い方って奴をな」
それだけ言うと、主水は「じゃあな」と軽く手を振って空間へと入っていった。
レプリカライダー撃破後、全ての事象は修正された。
いつもと変わらない日常で、小野寺椋は事務仕事をしているはず……だった。
「おいアヤッ!リズムがワンテンポ遅れたぞっ!最後まで油断するなっ!」
「り、了解!」
「ユキッ!表情が硬い!!そんな機械的な動きで人が感動するかっ!!猫のような柔軟さを持てっ!」
「……すいません」
「ヤマダァッ!!そんな動きをするダラドルがいるかっ!!自分をそう称するならダラドルらしさを動きに入れろぉっ!!」
「おーっと、何かすごいベクトルからの駄目だし」
何故かチームCのダンスレッスンに巻き込まれていた。
しかもコーチはダンスを教えているレイナやシオリではなく、颯太だ。
あの事件の後、颯太はDOLLS事務所に現れ面接しに来たのだ。
曰く……。
「俺には俺のやるべきことがある。だが俺には力を手に入れるための答えが分からない」
だからこそ、二つのライダーの力を手に入れた椋のことを間近で観察するために来たらしい。
意外にもバレエとストリートダンスの経験があったので振付師とは別にダンス顧問として採用されたのだが……。
「小野寺ぁっ!!その程度でへばるなぁっ!!!」
この男、ダンスになると人が変わる。
クールな態度とは百八十度違う、熱血指導振りに椋はおろかドールズメンバーも驚きを隠せない。
しかも今までのライブ映像を全て鑑賞し、各メンバーの踊りの癖や個性を一から学習するという徹底さ。しかも褒める箇所はしっかり褒めるし指導力もあるから性質が悪い。
というよりも、椋は何故自分も踊っているのか完全に理解していなかった。
「小野寺ぁっ!そこは決めるところだっ!感情を踊りに乗せろおおおおおおおおおっっ!!!!」
「無理無理っ!もう勘弁してえええええええええええっっ!!!」
翌日、滅茶苦茶筋肉痛になったことは言うまでもない。
夜が来る。
太陽は眠りに落ち、静寂に包まれた街を満月の光だけがその役割を果たそうと照らす。
そして今、一つの夜が終わる。
「……」
月光以外に闇夜を照らすは、先ほどまでそこにいた者の残骸。
砕け散ったそれは、まるで愚者の罪を浄罪するかのように月の光に反射して輝く。
その中を歩くのは一人の戦士……。
一歩一歩踏み出す度に、纏った銀色の鎖が鳴り、自らに与えられた力を戒め枷としているようだ。
血脈が縦横無尽に迸る紅の身体に、ジャックオーランタンを彷彿させる獣の仮面、そして巨大な金色の複眼が輝く。
何とも恐ろしく儚げで、それでいてなお引き寄せられる神秘的な光景は、正に『KING』……。
そんな王の凱旋を喜ぶかのように。
『ギャオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!』
巨大な竜の城が雄たけびを上げた。
Next Legend Rider……?
もっと主水のキャラを掘り下げたかった……。
今回のクイズ編でやりたかったこと。
・クイズの時代……世界観の掘り下げ。
・主水のライドウォッチ継承シーン(ジオウ本編だと無理やり奪われたため)
・クイズ大会。
ちなみにファスティはナインよりも先に王になったワールドハックです。なので一応強いのですが……どうしてああなった?
ではでは。ノシ
レプリカクイズ ICV大原さやか
クイズの時代にいる幹部級ヴァローグのレティサがワールドハックのファスティと契約することで変身したレプリカライダーの一体。
モチーフである『仮面ライダークイズ』のエナジーを模したレプリカウォッチの力で肉体を変異させた。
容姿はアナザークイズと同じだが、変身者がクイズの能力とヴァローグであったためか雷を纏った暗雲操作。人間のエナジー吸収などの能力をある程度だが、使いこなしていた。