仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
キバ編ですが、ジオウ系の作品だとどうしても先駆者様と被ってしまうためディケイドに登場した『キバの世界』にいるキャラクターが登場します。つまりはオリキャラですね(汗)
時刻は午後17:30……。
とある中学校の美術室、本来なら人もいないそこに二人の人物がいた。
「いやっ、やめて……!!」
「大丈夫っ、大丈夫だ『
無理に押し倒された少女の名前は『虹峰蛍』……この学校の美術部に在籍する三年の女子中学生だ。
右の泣き黒子に眼鏡、黒がかった茶髪のロングヘアーといった地味な容姿だが、幼い年齢には不相応の豊満な身体つきをしている。
そのせいで一部の男子や女子から下種な視線とやっかみを受けてしまっているが、それでも不登校になっていないのは一重に理解ある両親と妹、そして幼馴染の男子がいるからだ。
人の本質を『色』として見るという特技を持っていた彼女のことを知ってもなお、あの少年は何も変わらず接してくれたのだ。
決して変わらないであろう日常、そこにある彼への密かな想いも変わらない……はずだった。
でも見てしまった。
妹が、彼に告白した瞬間を。
何も考えられなかった。
だからこうして、教室に残って絵を描いていた矢先に待ち伏せされていた同級生の生徒に押し倒され、現在に至る。
(ああ、やっぱり私は……!)
絵を描くことしか取り柄のない、そんな自分が幸せを夢見るなど分不相応だったのだ。
こんな気持ちを味わうくらいなら……。
こんなに苦しい気持ちになってしまうのなら……。
「誰かを好きになんて、なりたくなかった」
瞬間、時間が止まった。
自分を汚そうと覆い被さった獣が、歪んだ笑みを浮かべたまま止まっている。
混乱する頭で周囲を見渡した時だ。
『ちょーちょーちょー!何でここで止めちまうのっ!?』
騒がしい声が聞こえた。
「だって私、ああいうドロドロしたの嫌いだし」
『俺ちゃんは大好きだから止めんなよっ!』
「それにしても醜いね、すっごく」
『あれーガン無視ー?まっ、そだね。これならまだGの方が可愛げがあるよねー』
「いやそれはないから」
『でーすーよーねー!!』
二人しかいないはずの美術室にいたのは、フード付きで丈の長いコートで全身を覆った小柄な少女で首元には銀色の懐中時計を下げている。
コートと同色の長い髪は左目を隠しており、露になっている右目は透き通るような空色になっている。
だが、何よりも異色なのは左手にある『物』だ。
左手には奇妙なパペット人形を嵌めており、右半身はピンク色の猫で左半身は白い兎になっている継ぎ接ぎという、デフォルメこそされているが不気味なデザイン……。
それを使って会話をしている。あまりにも場違いな存在に蛍はただ、視線を向けることしか出来ない。
『おっと、自己紹介が遅れたな。俺ちゃんはワールドハックの「ロックス」……そんでこいつはおまけの…』
「これの本体で同じくワールドハックの『シック』、と言います」
パペット人形のロックスと同じタイミングで頭を下げると、彼女はコートのポケットからあるレプリカウォッチを取り出す。
それを彼女の顔まで近づけながら、か細い声で囁く。
「助かりたくありませんか?」
「えっ、でも……どうせ私はっ」
『どうせ後がないんならよー。好きに動いてみたら良んじゃねー?まっ……』
躊躇する彼女に、ロックスは腕を組みながら言葉を続ける。
そして……。
「『決定事項だ。黙って受け取れ』」
二つの声を出しながら、それのスイッチを押して起動した。
【KIVA…!!】
「ううっ、ああ……!?」
薄く微笑んだシックが、レプリカウォッチを埋め込む。
その力が、雁字搦めにされていた彼女の鎖を解き放たんとばかりに内側から湧き上がる。
『あああああああああああああああああああっっ!!!』
「祝福は、与えられました」
『今からあんたも「仮面ライダーキバ」だ』
覚醒させられた偽りの鎧が蛍の身体を変えていく。
これは、序曲への始まり……。
歪んだ情欲と偏愛の監獄だったこの場所は、変わらぬ静けさを取り戻した。
砕け散った破片と、汚れた絵の具が撒き散らされた床を覗いて……。
最近はレプリカライダーの討伐で忘れがちかもしれないが、DOLLS本来の任務はピグマリオン討伐が主である。
未だ解明はされていないが、ピグマリオンは自身のテリトリーを広げるように東京の中心に地域を汚染する傾向があるのだ。
汚染された地域を浄化するには、まずその地域の汚染度を一定値にまで下げる必要がある。
その後は膨大な量のフィールを収集するべくライブを行い、ピグマリオンに侵食された地域を浄化するのだ。
それはつまり。
「サクラのデビューライブってことだね」
「ううっ、緊張します……」
チームAに加入したサクラの初ライブだ。
緊張でアホ毛の元気がなくなっている彼女の頭を椋が優しく撫でる。
シオリとレイナ、そして颯太(ダンスの鬼)による厳しいレッスン、そしてリハーサルを通したことで着実に経験を積んできた。
後は、ライブ会場の周辺で行われる地域の汚染度を下げるのみ。
今回の巡回はチームBメンバーのナナミとヒヨ。
DOLLSの中では最年少に属する赤紫色の瞳に眼鏡をかけた少女のナナミは短めに切りそろえた紫色の髪が特徴で「何でマスターまでっ」とぶつくさ文句を零す様子に椋が苦笑いする。
小さな体躯に栗色の髪をサイドテールで留めた少女のヒヨは、碧色の瞳と天真爛漫な眩しい笑顔が魅力だ。
通りがかったクレープ屋でクレープを頬張りながら巡回していた時だ。
「……それでっ」
「何か……ことはっ?」
ふと、小さな話し声がクレープを口に運んでいた椋の耳に入った。
視線を向ければ、中学生らしき女子と一人の女性。
不安な様子で話している彼女の容姿は、モデルとしても通じそうな茶髪のロングヘアーで、至って流行りの服装をしているがその顔は青ざめている。
一方、少女の話を真摯に聞いている女性は黒いドレスに白いフリルが特徴でバラの意匠があしらわれたゴスロリのドレスにブーツを着用している。
豊満な身体つきをしており、白銀の長いツインテールで可愛らしい顔立ちで、柔和な表情のまま、それでいてしっかりとした話を聞いている美人だ。
その表情、その動作に思わず椋が見惚れて立ち止まってしまう。
「……何見惚れてるんですかっ」
「えっ!いや別にそんなことは…」
「男って本当単純ですね。あんな年上で、しかも少しだけ胸が大きいだけでデレデレデレデレ」
「少しだけ」と強調したのはなけなしのプライドなのか、口を尖らせて文句を言うナナミに必死に否定する様子にヒヨが笑う。
「仲良しだねー」
「そう、なんでしょうかっ」
そんな交流しながら巡回をしていた時、事務所内にいるカナからの通信が入った。
『交流を深めて頂いている時に恐縮です。ピグマリオンとレプリカライダーの反応ですっ!』
「……こんな時にっ」
『レプリカライダーは颯太君が対応しています!皆さんはそちらに発生したピグマリオンの対処をっ!』
その言葉と同時に、汚染していた地域から青白い蝶『プシュケー』が出現し二本足を生やしたカンガルータイプの『キッカー』とイーターが複数出現。
後衛に回るべくナナミがテアトルを展開しようとした時だった。
『ッッ?』
瞬間、ピグマリオンたちの反応が変わる。
感情すら存在しないであろう存在が、まるで怖がるように身体を震わせている。
連中だけではない。
生きた心地すらしないほどの異常なまでのプレッシャーに、威圧された椋は冷や汗を流し、サクラたちがその方角を見る。
そこに歩いてきたのは、先ほどまで少女といた女性。
モデルように優雅に歩く度に腰まで届くほどの白銀のツインテールを靡かせ、紺色の切れ長な瞳はピグマリオンたちを捉えて離さない。
臆することなく、彼女が口を開いた。
「止まりなさい、それ以上の蛮行は許さない」
しかし、人間の言葉をピグマリオンが理解するはずもない。
むしろ彼女から発せられる力を極上の餌と認識したのか、落ち着きを取り戻したイーターたちがこれ以上にないほどの興奮を現しているかのようにガチガチ、と歯を鳴らす。
もはや交渉の余地もない……。
「なら、真の王に代わって判決を言い渡す……」
手袋外してその手を相手へと向けると、その顔に荘厳なステンドグラスの模様が浮かび上がる。
その掌に刻まれた白い紋章は『KING』……。
彼女『
「『死』だ……!」
故に、『王と王の愛する民を苦しませる危険分子』を決して許しはしない。
「『サガーク』!」
命音の呼び掛けに答え、白銀の影が飛び出した。
『ネダンバデ、ヨタテッマミコト!』
それは、まるで白い円盤のような薄い物体。
良く見れば、側面には小さな牙と鋭い目があり、まるで蛇のようだ。
一部のファンガイアにしか理解出来ない言語……古代ファンガイア語で鳴きながら、上機嫌に飛び回る人工ゴーレムのサガークは命音の腰に取り付く。
そこから黒い尾がベルトのように伸びて完全に固定されると、ディスクのような意匠を持つ『サガークベルト』に変わる。
待機音が鳴り響く中、命音は右手に握られた縦笛の意匠を持つプロトタイプフエッスル『ジャコーダー』を構える。
目の前の障害を睨みつけながら、彼女は一言呟く。
「変身」
ベルトとなったサガークのスロットにジャコーダーを装填。
そして一気に引き抜いた。
『【HEN・SHIN!】』
サガークの宣告と共に盤面部分『マンダテーブル』が回転し、闇のような蒼い螺旋状のウェーブが命音の全身に行き渡る。
銀色に覆われた身体とその光は、やがて硝子になって弾け飛んだ。
「……」
それは、闇に浮かぶ白い教会の如き異形……。
中世西洋の建築様式を踏襲したような高貴で堅牢な白銀の外装と、胸には幻想的なステンドグラスと漆黒の石が煌き、手足には鎖『カテナ』が蛇のように絡みつく。
王冠を被る蛇を模した白い頭部には、反逆者の心を見透かす青き複眼がある。
まるでその全てが、敵から希望を奪っている錯覚に陥ってしまうかのようだ。
闇を統べる王のためへと製作された最初期にして至高の鎧。
その名は
『仮面ライダーサガ』……一族の安寧を守るため闇から闇へ歩き続けるもう一人の王。
「消えろ」
現れた強大な存在を前に威嚇するイーターの群れに気にすることなく、闇を思わせる冷たい声を発したサガは、蛇の舌を思わせるような青い印が刻まれた白い笛型アイテム『フエッスル』をサガークに噛ませた。
『【WAKE UP!】』
ウェイクアップフエッスルの音色とサガークの叫びと同時に、ジャコーダーロッドを再び差し込んだ。
まるでレイピアのような細身の赤い刀身と同じ妖しい光が集束されていく。
直後、あり得ない異変が起こった。
「えっ、あれっ!?」
「ひよっ!?」
「な……っ!」
サクラとヒヨ、声には出さなかったがナナミも驚愕の表情を見せる。
周囲が夜へと変わったのだ。
紺色の濃霧が辺りを包み、全ての景色を塗り潰していく。
そして霧が晴れた時、真っ暗な闇の中には不気味に輝く三日月が冷たく照らしていた。
「ふっ!」
口を大きく開けて食い尽くさんと標的が迫った瞬間、サガがジャコーダーを振るい、まるで鞭のように伸縮した斬撃がイーターたちを殲滅させる。
そのまま返す刀で闇に覆われた天に向かって切っ先を突きつけると、黒い空一面に血を思わせる赤く巨大な紋章が浮かび上がったのだ。
「はぁっ!」
サガが突きを繰り出した次の瞬間、ジャコーダーの紅い刀身は宛らビームかレーザーの如く伸び続けると、やがて最後の個体であるキッカーを的確に貫いた。
『~~~~~~~~~~ッッ!!?』
自身を支配する激痛に人ならざる叫びをあげるピグマリオンに構うことなく、彼女はジャコーダーを握り締めたまま地を蹴って天に輝くキバの紋章へと跳躍する。
「……」
やがて、地上に降り立ったサガが天から伸びたジャコーダーを引くと、紋章から伸びた赤い刀身を通じて貫かれた異形が地から浮かび上がる。
まるで梃子の原理を利用するように宙へと吊るされ、地上から離されていく異形。
更に彼女がジャコーダーを強く引っ張ると、吊り上げられた個体はまるで振り子のように揺らされて凄まじい勢いでサガのところまで引き寄せられていく。
満足な抵抗すらも出来ないまま、無防備な姿を見せるキッカー目掛けて……。
「……ふんっ!!」
魔皇力を宿した右脚による強烈なハイキックを叩き込んだ。
凄まじい衝撃と威力を宿した必殺技『我流スネーキングデスブレイク』により、ピグマリオンのキッカーは断末魔をあげる暇もなく消滅。
瞬く間に戦闘が終わり、夜が明けると同時に変身を解除する。
そして上機嫌に飛び回るサガークに「お疲れ様」と微笑んでいた時だ。
『……ッ!』
物陰に隠れていたイーターが飛び出し、命音の華奢な身体を食い千切らんとばかりに大きく口を開けたのだ。
殺気に気付いた命音が舌打ちと共にジャコーダーを突き立てようとするよりも先に。
【PITTARI GIRI!!】
「でやぁっ!!」
椋の変身するロワの放ったジカンハカリバーの斬撃がイーターを真っ二つにしていた。
両断されたピグマリオンは消滅、戦闘が完全に終了したのを確認すると、変身を解除した椋は呆然とする彼女に、「大丈夫ですかっ」と安否を確認する。
「……」
一方の命音は呆然としていたが、視線は彼に向けられており、華奢な体躯と顔立ちを見つめている。
しばらくして彼女が口を開いた。
「……か」
「か?」
「可愛い~~~~~~~~~~~♪♪」
「んぶぅっ!!?///」
『アア、タッャチキオガサッホノモツイタマ……』
満面の笑みと共に豊満な胸元に彼を抱き寄せた。
その様子にサクラが慌てふためき、宙を飛んでいたサガークが「やれやれ」と言わんばかりに呆れた様子で溜め息を吐いた。
泰牙命音……好きな物『弟と可愛いもの』である。
同時刻。
いつも通りの街並みにも、少し奇妙な光景があった。
「ありがとうございますねぇ。荷物を運んで頂いて……」
「いえいえっ!困っている方の手を差し伸べる、それは至って当然のことですから」
荷物を抱え、杖を突いた老婆が目の前の男性に礼を述べている。
それに謙遜する男性と見ていて心温まる光景だが、男性の服装は現代日本で見るにはあまりにも珍しい。
白い手袋と服に青いコートを羽織り、首には金色に光る十字架を下げた……所謂神父服のような出で立ちだったからだ。
年は若くないのだろうが、緩めにした金髪のオールバックに端正ながらの武骨な印象を思わせる顔立ちにガタイの良い体格が逞しさを感じる。
だが、彼の笑顔は威圧感を与えることなくまるで太陽に輝いている。
互いに礼を言ってから、最後まで老婆を見送ると男性は満足した表情をする。
「はっはっは!やはりどの世界でも神の慈愛は満ちていますね!!とても素晴らしきことです!」
人目も憚らず大声で自らの崇める神に感謝の言葉を口にする男。
だが、背後に感じた衝撃に少しだけ振り返る。
見れば髪を茶色く染めた柄の悪い不良がいたのだ。お世辞にも善良には見えない青年だが……。
「どうしました青年、顔色が良くないですよ?」
自身よりもただごとではない雰囲気で助けを求める不良に神父は声をかける。
一方の青年は自分に声をかけた人物の服を掴み、慌てふためいた様子だ。
「た、助けてくれよっ!頼むっ、助けてっ!!」
「落ち着きなさい。まずは…」
「追い着いた」
「何があったのか」と事情を聴こうとした、少女の声が響いた。
そこにいたのは、黒いセーラー服に眼鏡をかけたショートヘアーの少女……蛍だ。
この不良が少女の財布を盗んだのかとも考えたが、彼女の姿を見て怯えた表情を見せていることからその説を否定する。
神父が彼女にも事情を聴こうとした時だ。
「色は、白……思慮も浅く、大きな声と態度がある癖に自分では何も出来ない。虚栄心だけが大きいだけの空っぽな白」
不良を見つめている蛍が徐にそう呟く。
その瞳は誰も映しておらず、一人一人の人間が持つ『色』しか見ていない。
そして、虚ろな微笑みと共に囁いた。
「あなたの色を、私にください」
【KIVA…!!】
途端、蛍の身体を禍々しい紫の奔流が包み込み、一瞬だけ色とりどりの光がガラスのように砕け散ると、蝙蝠の羽根を持つ異形へとその身を変身させた。
赤い瞳を持つ金色の蝙蝠を腰にぶら下げたその身体は、ステンドグラスのような体組織で全身に覆われている。
右腕は魚類のヒレに似た装飾があるエメラルドグリーン、赤い両肩は目玉にも見えるパーツにアメジストカラーのボディには引き千切ったような鎖の残骸が銀色に鈍く光る。
左腕は猛獣の飾りがあるサファイアカラーが日の明かりに照らされて輝き、右脚は鮮血のように赤い。
赤いステンドグラスに似た頭部の眼に当たる部分には黄色いステンドグラスに覆われており、罅割れたその箇所には碧い眼球と吸血鬼のような白い牙が露出している。
変身の余波で靡いた黒いマントが赤い裏地を覗かせた。
「ファンガイアッ?いや……!」
異形の怪人へと姿を変えた少女に、神父は警戒するもその身体に刻まれた文字に驚愕の表情を見せる。
生やした左右の羽にある「2008」と「KIVA」……それが彼の眼を見開かせた。
「まさかっ。キバ、なのかっ?」
『……』
辛うじて冷静さを保っている彼とは裏腹に、先ほどまで追いかけられていた不良は再び恐怖に支配されたことで腰を抜かしてしまう。
気にすることなく視線を向ける異形……『仮面ライダーキバ』の贋作である『レプリカキバ』は、不良に視線を向けると空中に牙のような半透明の物体を出現させる。
『それ』の意味を、神父服の男性はすぐに理解した。
「ふっ!」
不良の身体目掛けて突き立てられようとする寸前に、彼は懐から取り出した道具を半透明の物体に向けると、そこから発生した衝撃波で弾く。
「早く逃げなさいっ!」
彼の大声で正気に戻った不良は、慌ててこの場から逃げ出した。
それを追いかけることなく、小さくなっていく背中をしばらく見つめた後、レプリカキバは右手に道具……金色のラインを備えたナックルダスターを構えた男性に興味が向けられる。
『邪魔を、しないでください』
「……君は、一体何者だ?」
『知る必要なんて、ありません』
そう答えたレプリカキバは、男性をしばらく観察すると徐に喋る。
『色は青……神がいると本気で信じている汚れのない色。まるで地上を見下ろす透き通った青空』
それは彼女が今まで見たこともなかった色。故に興味を抱いた。
神父の出で立ちなのにも関わらず場違いなメカニカルのデバイスを右手に装備している彼に問いかける。
『あなたは、一体……?』
その問いに、男性は口元を上げて笑みを浮かべる。
「私は『ケイスケ・N・サライズアプス』……ただの神父ですよ」
取り出し、腰に巻き付けたのはデバイスと同じデザインのベルト。
バックル部分の中央には紅玉の様なコアが埋め込まれており、ベルト部分の側面にはホイッスルを模したアイテムが幾つも挿し込まれている。
「さて、説教の時間ですよ?蝙蝠のお嬢さん」
右手に構えたデバイス『イクサナックル』を改めて握り締めると、まるで神に祈りを捧げるように、二つの銃口が見える黒い側面に左掌を押し当てた。
【R・E・A・D・Y】
片言の機械音声と待機音が鳴り響く中、右手を突き出す。
「変身!」
そしてイクサナックルを胸の前に持ってきた後、ベルト中央の機械にスロットに接続させた。
【F・I・S・T・O・N!】
コアから黄金の十字架が出現し、ケイスケの眼前まで来ると、それを基点としてアーマーが形成。
重なるように彼の身体と一体化する。
聖騎士を思わせるような純白の白いプロテクトアーマーの胸部には、太陽を思わせる円形のマーク。
その名は『Intercept X Attacker』……通称
かつては悪しき魔族を打ち滅ぼすために、今は罪なき世界の民を襲う者に立ち向かうための力を纏った彼『仮面ライダーイクサ』はレプリカキバと対峙する。
「はっ!」
『くっ!?』
地面を蹴り、一気に距離を詰めてからのストレートパンチに怯むが、レプリカキバが負けじと魚人のような右腕を振るう。
しかし素人にも近いその攻撃は逆に掴まれ、捻り上げられてしまう。
同時に、機械仕掛けの聖騎士は新たな段階へと進化した。
「イクサ……爆現っ!」
妙な掛け声と共に、マスクに変化が起きる。
光が走ると十字架がまるで四分割されるように変形し、中央から赤い目が現れる。
すると、まるで抑え込んでいたエネルギーを爆発させたかのような熱波が発生……レプリカキバの身体を大きく吹き飛ばした。
『きゃっ!?』
後退させたその間に、バーストモードへと移行したイクサは側面にイクサナックルと同じ装飾を施された武器を取り出す。
グリップ下にロングマガジンが装備された銃型ウェポン『イクサカリバー』をレプリカキバに向けてトリガーを引く。
銃弾が直撃したことでその箇所から煙を上げた彼女は膝をつき、追撃を行うべくイクサが近づこうとした時だった。
『……ああっ!!』
「なっ!?」
上半身を起こしたレプリカキバが狼の左腕を振り下ろした。
ステンドグラスのような青い腕からは風や炎のようなエネルギーの刃が出現し、道路ごと両断しようとする。
「くっ!」
【I・X・A・K・N・U・C・K・L・E・R・I・S・E・U・P!】
ベルトのホルダーに納めた、黒と銀で色分けされたナックルフエッスルを手に取りバックルに装填。
イクサナックルをすぐに押し込んでの音声を鳴らすと、取り外したナックルで思い切り青白い刃のエネルギー目掛けて殴る。
高密度の魔皇力で編んだ巨大な刃と、五億ボルトの威力を秘めた一撃がぶつかり合うことで凄まじい衝撃と火花が散る。
拮抗した両者の力は、やがて大きな爆発音と共に相殺された。
「うおっ!?」
『ふっ!』
衝撃にイクサは倒れてしまったが、レプリカキバはその勢いを利用して後ろへ大きく飛び上がると近くの建造物へ着地。
『あなたのことは分かりました、でも……私の邪魔は、しないでくださいっ』
それだけを言い捨てると、レプリカライダーは腰に貼り付けた蝙蝠の口から自分の周囲に赤黒い霧を発生させてその場から姿を消した。
「説教の途中で逃げてしまうとは……感心しませんね」
口ではそう言うが、思ったよりも込み入った事情があの少女にはあると断定したイクサは変身を解く。
コートについた汚れを払いながら、これからどうするか考える。
あの少女の行方を追いたいが、如何せん右も左も分からない状態では聞き込みも難しい。
それに……。
「これが何か、ですね」
拾った時計のような物体……見れば先ほどとは形が違っており、何処となくキバのマスクが薄っすらと見える。
時計のようにも見えるが、それ以上の役割があるような気がしてならない。
「ふむむっ」と謎のアイテムを見つめながら頭を悩ます。
その時だった。
「ちっ。入れ違いになったか」
レプリカライダーの出現を嗅ぎ付けた颯太がバイクに降りながら舌打ちをする。
すぐに変身出来るようにジクウドライバーとライドウォッチを装備していたが、どうにも無駄足に終わったらしい。
溜息を吐いた颯太がドライバーを外そうと手にかけた時だった。
「待ちなさいっ、そこの少年Aッ!!」
いきなり軽い足取りで馴れ馴れしく声を掛けてきたケイスケに颯太が振り向く。
驚く間もなく、目の前の神父がライドウォッチを見せつけた。
「これについて、何か知っていることはありませんか?」
時計……ライドウォッチを見せられた颯太は当然顔色が変わる。
色はプロトライドウォッチのままだが、刻まれているのは間違いなく吸血鬼の王『仮面ライダーキバ』そのものだ。
「ライドウォッチ!」
思わず触れようとするが、ケイスケはそれを高々と上げて触れさせない。
「なるほどなるほど。やはり君はこれについて知っている。しかも、重要な物であることも理解しました……ならばっ!!」
急に眼を輝かせたケイスケが颯太の両肩を掴んだ。
その表情は輝いており、良く言えば善良な……悪く言えば暑苦しいほどの笑顔を見せながら言葉を紡いだ。
「私の弟子になりなさい」
「……はっ?」
思考が停止する。
今、目の前にいるこの神父服の男は何と言ったのだろうか?
そんな颯太の心情を知ってか知らずか、ケイスケは首を傾げるともう一度口を開いた。
「むむっ、聞こえなかったかな?私の弟子になりなさいっ、少年Aッ!!」
「……はあっ!?」
太陽の如き満面の笑みを見せる神父の唐突な言葉に、今度はしっかりと叫んだ。
一先ずは互いの情報交換のために事務所に来たのだが……。
「椋君って言うの?可愛い……今幾つ?」
「じ、十七歳ですっ///」
蕩けた笑顔で椋を抱き締めたまま離さない命音。
その様子にサクラやナナミは複雑そうな表情だったが、一先ず二人を切り離すべくシオリがアップルパイの一切れを差し出す。
「ありがとうございます……あら美味しい」
一言お礼を言った命音は、一口食べて口に広がる甘味を堪能している間に椋が避難する。
「素晴らしいっ!!私の行きつけの店も美味ですが、このコーヒーも実に美味しいですっ!ああ神よ、このような素晴らしい出会いに感謝致します!!」
一方のコーヒーを飲んだケイスケは目を輝かせ、何やら祈りを捧げている。
それに対し何人かはドン引きしていたが隣に座っていた命音が「いつものだから」と一応のフォローをする。
ようやく二人が落ち着いたのを見計らってから、椋と颯太がライドウォッチとレプリカライダー、そしてここが別の世界であることを説明する。
最初は信じてもらえないと思ったが……。
「なるほど、ファンガイアがいないのも納得です」
「弟から聞いていたけど……驚きね」
割とあっさり流されてしまった。どうやら二人にとって別の世界とかはあんまり驚かないらしい。
そんな様子にサクラやシオリが苦笑いするも、ふと思い出したケイスケが懐から黒いライドウォッチを取り出す。
それを見た命音もポケットを探る。
「私も実は、この世界に来た時に見つけたの」
「キバの……プロトライドウォッチ?」
取り出したウォッチはケイスケが持っているものと同じであり、力らしきものは感じない。
首を傾げる椋だが、それに答えたのは颯太だ。
「ライドウォッチにはそのライダーに相応しい力とフィールが込められている。そのライダーの関係者が俺たちの内一人を選べば力が宿るはずだ」
「つまり、私たちが認めればこれが使えるようになる……そういうことですね」
「なら、結論は出ているわ」
互いに顔を合わせ、頷いた二人は声を揃えて名前を口にした。
「颯太君、君しかいないっ!」
「椋君。あなたがキバの力を使うのに相応しいわ」
……瞬間、空気が変わった。
タイミング揃えて違う名前を口に二人はしばらく唖然とするが、最初に口を開いたのはケイスケだ。
「命音君、彼はクールで戦闘経験があります。王であるキバの力を託すなら、彼の方が相応しい」
「ケイスケさん。椋君は実戦経験こそ少ないけど潜在能力がある。何よりこんな女の子みたいな可愛い子に託した方が良いかと」
「後半はあなたの趣味嗜好じゃないですか」
その時、あーでもないこーでもないと話し合いは平行線の一途を辿る。
しかし結論はいつまで経っても出てこず、それ以外のメンバーは困惑しているか自分の趣味に没頭し始めている。
それから数分後……。
手を叩いてケイスケが眩しい表情を見せた。
「良し、ではこうしましょう。それぞれ私たちが見出した弟子を同行させ、誰がキバを継承させるのに相応しいのか……決着をつけましょう」
「承知いたしました。誰が相応しいかは分かりきっていますが……さっ、行きましょう椋君♪」
意見が一致した椋は命音に担ぎ上げられてそのまま外へと出てしまい、それを見たサクラとヒヨが慌てて後を追う。
それを見届けた後、ケイスケもまたさり気なく逃げようとする颯太の肩に手を置く。
「さっ!我々も行きますよ、颯太君っ!!」
「なっ、おいちょっと待てっ!」
「君もですよナナミ君っ!」
「はっ!?」
文句の一つでも言おうとする彼と、無理矢理同行されたナナミに対して豪快に笑いながら外へと出て行ってしまうのだった。
今回登場したレプリカキバは『リ・イマジネーションのキバ』がモチーフになっています。リマジキバはドカバキが重要な存在になっていたのでキメラみたいな外見になりました。
登場したレジェンド(?)はキバの世界にいる仮面ライダーイクサと仮面ライダーサガです。ディケイド最終話で登場した二人と同一人物だと思っていただければ。
細かい質問は質問コーナーにてお願いします。
簡単なキャラ紹介
ケイスケ・N・サライズアプス イメージCV三宅健太
『キバの世界』にいる神父で二代目仮面ライダーイクサ。溢れんばかりの信仰心を年中掲げまくっている暑苦しい性格だが、根は善人なので社会的弱者や恵まれない者に対しては非常に寛容。私財を投げ打ってでも慈善活動を行う。
1986年に『血の十字架事件』を引き起こした初代イクサは彼の父。
泰牙 命音(タイガみこと) イメージCV豊田萌絵
『キバの世界』にいる仮面ライダーサガで判事を務めている。母親違いの弟であるワタルを溺愛している。ショタコンでブラコンで男の娘好きと残念な美人。
サガークは彼女の相棒だが目を放すと何処かに行ってしまう。