仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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 お待たせしました。後編です。


TIME7 キバッてラストナンバー!0215

日本人が最も心を落ち着ける場所……その一つは銭湯である。

歴史は古く、本格的に出来上がったのは鎌倉時代~江戸時代と言われており、庶民がくつろげるような休憩所が形作られたのだ。

それはそれとして、何故冒頭で銭湯の説明をしたのか。それは……。

 

「ふぅ……やはり日本の銭湯、素晴らしいですね!」

「……」

 

頭にタオルを載せながら銭湯の素晴らしさを力説するケイスケと、颯太が熱い湯の入った風呂に入っていたからだ。

どうしてこうなった……!

颯太は湯の中で握り拳を固める。

 

「はっはっは!どうですか静也君っ、少しは落ち着くことが出来ましたか?」

「は、はぁ……」

 

そんな彼の心中に気にすることなく、ケイスケは右隣りにいる少年に声を掛ける。

名前は『乙橋静也』……彼はレプリカキバを探していたケイスケ・颯太・ナナミの三人と偶然出会い、いなくなった大切な幼馴染を彼女の妹と探していた。

ケイスケが話を聞いてみると、丁度レプリカキバが現れた時間といなくなった日にちが一致したことで正体と目的の検討が着いたのだ。

そして詳しい話を聞こうとしたのだが……。

 

「裸の付き合いは時として種族をも超えます。この安息と喜びも神が与えてくださった感情の一つなのですよ」

 

鍛え上げられた肉体を輝かせながら力説するその姿に、颯太は深いため息と共に出ようとする。

しかし、その肩を掴まれる。

 

「駄目ですよ颯太君っ。きちんと肩まで浸かって百まで数えなくては」

「くだらん。そんな暇は…うおおおおっ!?」

 

文句を零すよりも早く凄まじい力で湯船へと戻された。

肩までというよりは頭まで浸かっている。

 

「さぁ、カウントしますよ!いーち、にーぃ……」

「ケ、ケイスケさんっ!颯太さん溺れますよっ!?」

「がぼぼぼぼぼっ」

 

阿保みたいに笑う彼に静也が叫ぶ中、必死に耐える颯太……そして一つの決意が芽生えた。

後で覚えてろ……!!

 

 

 

 

 

「風呂上りのコーヒー牛乳っ!これもまた美味っ!!」

 

きっちり百まで数えて上がった彼らはリラックススペースでしばらく休む。

既に上がっていたナナミはマッサージチェアでここぞとばかりに疲れを解している。

そんな彼らを無視し、颯太は本筋へと切り出した。

 

「それで、確かなんだな」

「……はいっ」

 

彼の話を纏めるとこうだ。

幼馴染の虹峰蛍が行方不明になったことを彼女の両親と妹から聞いた静也は、学校を休み必死になって探し回っていた。

そこで彼女の発見したのだが、その時化け物の姿……レプリカキバへと変身して人を襲っているところも見てしまったのだ。

それを止めようと飛び出したことで蛍は更に取り乱し、またしても姿を消してしまった。

 

「でも、どうしてそこまで……?」

 

ナナミの疑問を最もだ。

幼いころからの関係だから、兄妹のようなつながりがあるのは分かる。しかし、学校を休んでまで探していのは少し変わっている。

 

「……実は俺、光……蛍の妹に告白されたんです」

「えっ?」

「もちろん保留にしていますけど。それ以来、あいつは俺たちを避けるようになって……だから、きっと俺のせいであいつは化け物に……!!」

 

だから、自分が助けなければならない。

そう悲痛な様子で語る静也。だが現実として事態は最善の結果となるどころか悪化している始末。

彼女を探すことも難しくなってきたところに颯太たちが現れたというわけだ。

 

「ケイスケさん。何かフォローしたらどうですか?」

「それは無理ですよ。神は我々に何もしてくださらないのですから」

 

あっけらかんと、さも当たり前のように告げた。

先ほどまで神を信仰していた人物とは思えない発言に呆然とする中、彼は続ける。

 

「神は、ただ愛してくれるだけです」

 

ケイスケは言う。

神は何もしない、誰か個人を助けたりなど決してしない。

しかし神の救いがないからこそ、加護に置かれた家畜ではなく人間として生きることが出来る……。

唯一与えてくれたのは、隣人を愛し救うという喜びだけだ。

 

「君のその苦しみも、葛藤も……神の試練ではなく、自分だけのものです。故にその想いは間違いなどではないし誰にも否定出来ないのです」

「なら、俺はどうしたら……」

「その答えも、君は既に持っていますよ」

 

ケイスケは静也と同じ視線まで屈み、優しく微笑む。

その様子を、颯太とナナミは何も言わない、ただ二人の中で彼への印象が変わりつつあった。

 

 

 

 

 

「……お姉ちゃんは、私にはない物をたくさん持ってました」

 

同時刻、命音と椋たちも少女『虹峰光』の言葉に耳を傾けていた。

姉が描いてくれる絵がとても大好きだったし、そんな彼女の良さを周囲に知ってもらうべく明るい性格と要領の良さを身に着けたのだ。

でも、自分たちと一緒にいてくれた彼への想いだけは、負けたくなかった。

 

「だから、告白したんです。きっとお姉ちゃんもセイ君のことが好きで告白すると思ったから」

 

しかし現実は違った。

姉は行方不明になり、彼から聞いた話だと怪物になって人を襲うようになっていた。

自分のせいだとすぐに分かった。

だから探さなきゃいけないのだ……姉に謝るために。

 

「光ちゃん、大丈夫?」

「え……?」

 

ヒヨが心配そうにこちらを覗き込んできた。

彼女の顔が暗いから心配してのことだろう。

「はい」と笑って見せたが、やはり無理しているのか笑顔がぎこちない。

……不安なのだ。

 

「もし、お姉ちゃんが私を、私たちを拒絶したら……そう思ったら、怖くて……!!」

「それでも、ちゃんと話さなきゃ駄目。家族なら猶更よ」

 

優しく彼女を抱き締めながら、命音は微笑む。

思い出されるのはかつての記憶……かつて自分の世界にいたテロ組織に所属していたころの記憶だ。

幼いころ母親から聞いた弟のために戦うことを既に彼女は決めていた。

生まれ持った魔力が少ないあまり、ファンガイアとしての姿はおろか魔術すら使えないほどの虚弱だった自分の身体に鞭を打ち、サガの鎧を纏うまでに至った彼女は内側から滅ぼすべく組織へと入った。

全ては弟を護るため、そして王となった弟の敵を排除するため……写真でしか見たことない愛する弟のために武器を取った。

話す必要はないと思ったし正体を知ってもらう必要はないことも思った。

彼から見れば自分は忌まわしい存在だ……だからこそ語ることはない。

それでも。

 

----「言ってくれよ!言わなきゃ伝わらないだろっ!本当は僕のことを想ってくれたこともっ、僕にまだ家族がいたこともっ!!」----

----「あなたは泰牙命音、僕の姉で家族だ……だから、あなたのお母さんにも会いたい」----

 

傷つけられてもなお、彼はそう言った。

家族だと認めてくれた。真っ直ぐな優しさで受け入れてくれた。

だからこそ決めた、今度こそ弟を守りたい。

伝えたいことを、自分の口でしっかり伝えるために……。

 

「家族だから、伝えたいことを言うの。言わなきゃ伝わらないから……」

「そうだよ。今いる時に伝えなきゃ、絶対に後悔する」

 

椋もまた、命音の言葉が響いていた。

優秀な姉を避けていた自分、本当は尊敬していたことも、大好きだったことも……家族だから伝えたかったことを言うことが出来なかった。

後悔してからじゃ、遅い……それが、いなくなって初めて気づいた椋の結論だった。

 

「お姉さんのこと、信じられない?」

「っ!そんなことありませんっ!」

「なら、お姉さんのことを信じてあげなさい」

 

慌てて顔を上げた光に、命音は頭を撫でた。

その姿をずっと見ていた椋に、サクラは小首を傾げる。

 

「マスター?」

「信じる、か……」

 

その言葉を、いつの間にか呟いていた。

何故だかは分からない。

だが、それが妙に胸に響いたのだ。

誰かを信じる、そんなこと今まで考えたこともなかった。

あの時、姉や両親を信じていればきっと違った結果があったのかもしれない。

この世界に「もしも」のケースなど存在しない。

自分の姉が戻ってくるわけじゃない、それでも……。

 

「僕も、信じてみようかな。サクラや、みんなのこと」

 

それが、覚醒の引き金だった。

 

「……っ?」

 

違和感に気づいた命音がポケットの中を探り、取り出す。

手の中に納まっているプロトライドウォッチからは淡く優しい明りが灯っており、やがてそれが消えると黒と黄色のベゼルで構成された物へと変化していた。

2008の数字が刻まれた『キバライドウォッチ』だ。

 

「椋君」

 

戸惑いも迷うもなく、命音はそれを椋へと渡す。

彼なら、受け継がれたこの力を継承するに相応しい……断言出来た。

椋はライドウォッチを握り締める。

重く、それでいてキバという二つの歴史が込められた力に自然と緊張する。

……だからこそ。

 

「必ず、あの子を止めてみせます」

 

迷いはなかった。

誰かを信じることを、強く決意したその顔に命音は弟の面影を重ねてしまう。

きっと大丈夫。

この子なら、キバの力を正しく継いでくれる……。

今ならはっきりと確信が持てた。

 

「んっ。良い子♪」

「うわっ///」

「だからマスターに抱き着かないでくださいっ!」

 

またしても満面の笑みで抱き締められて顔を真っ赤にする椋に、胸の辺りがざわざわするサクラが慌てて止める姿を見たヒヨと光も笑みを零す。

緩い雰囲気になったところに、底抜けに明るい声が乱入した。

 

『おーっと!あいつの可愛い甥っ子に、セクハラしないでくれよー?』

 

そんな茶化すようなセリフと共に現れたのは、サガークとは違う金色の物体。

赤く丸い目に三角のような耳、小さく生えた牙を持つそれは両側に生やした羽を使って宙を飛んでいる。

一頭身のデフォルメされた蝙蝠、と言えばイメージしやすいだろう。

驚くサクラと光、目を輝かせて捕獲しようとするヒヨたちを気にせず、金色の蝙蝠『キバットバットⅢ世』は命音を嗜める。

 

「キバット……どうしてここに?」

『頼まれたんだよ。お前の大好きな弟にな』

 

彼女に返答しながらも、キバットは椋の方に視線を向ける。

そして、レプリカライダーの出現を探知したカナからのアナウンスにサクラたちが現場へと急ぐ。

不意にキバットが声を掛けた。

 

『……その力を使いこなせるか、俺様が直々に判断してやる。準備は良いか?』

「うん」

『よしっ!なら見せてくれよっ!』

 

力強いその言葉に、上機嫌になった彼はすぐさまレプリカライダーの下へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

苦しい……。

胸が痛い、まるで心臓を握られているみたいでとても辛い。

どうしてこんなに苦しいのだろう。

化け物になってしまったのなら、人間から抜き取った色で絵を描き続ければ良い……そう思っていた。

それなのにっ。

 

『苦しいっ、苦しいよ……!』

 

そう嘆きながら、レプリカキバは獲物を求めて彷徨う。

自分には絵を描くことしかない。

妹のように誰かと仲良くなることだって出来ない。

ずっと想っている人に、告白することだって……!

 

「大丈夫ですよ。心配することはありません」

『ただ、その力に身を委ねれば良いのさ……そんであんたは、芸術を好む王になる。我らの神が全てを救ってくださるんだ』

 

突如現れたシックとロックスが、優しく告げる。

彼女の微笑みは慈愛に満ちており、まるで罪に苦しむ咎人の懺悔に祈るシスターのようだ。

それが、壊れつつあるレプリカキバ……蛍の罅割れた心へと入り込んでいく。

 

(もう、私にはどうなったって……)

 

湧き上がる破壊衝動、そして薄れつつある自我を捨てて身を委ねようとした時だった。

 

「神が救う?見返りのある信仰など、ガラス細工の偽物ですよ」

 

その言葉が聞こえた時だった。

両者の間を割くように神父服の男性……ケイスケが飛び蹴りと共に乱入すると、シックの肩を掴み無理やり離す。

呆然とするレプリカキバの耳に、聞き馴染んだ声が響いた。

 

「お姉ちゃんっ!」

 

彼女の背後を抱き締めたのは、最愛な妹。

自分にはないものを持っている大切な人。

 

「ごめんなさいっ!私っ、お姉ちゃんがセイ君を好きなの知ってた。知ってたから、私が告白したらお姉ちゃんも言ってくれるって思ってたっ!」

 

引き剥がそうとするも、背中に張り付いているからそれも難しい。

しかし、その行為こそが彼女が人間へと戻りつつあることへの証明でもあった。

シックが妨害しようとするも、颯太がケイスケの方に加わったため難航している。

 

「お姉ちゃんなら、私のやること全部分かってるって思ってた!ずっとお姉ちゃんに甘えてたっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!」

『光……』

 

大粒の涙を零し、必死にあらん限りの言葉で叫ぶ。

それが、嘘でないことがはっきりと分かった。

彼女の色は、暗く悲しい色に染まっていたのだから。

 

「蛍っ!」

 

シックに伸ばそうとした腕を掴んだのは……誰よりも会いたくて、誰よりも会いたくなかった少年。

彼……乙橋静也は一気に駆けだすと異形となったその腕を強く掴んだ。

 

『セイ、君……?』

「ごめんっ。俺がしっかり言わなかったから、お前も光も傷つけた。今更何言っても言い訳にしかならない……」

 

だから……。

思い切り、息を吸う。

そして周囲に聞こえるぐらいの声をあげた。

 

「俺は、虹峰蛍と虹峰光の二人が好きだっっっ!!!!」

「……ふっ」

「「なっ!?///」」

「ひよっ?」

 

放たれた言霊、それは真っ直ぐに彼女の胸に響いた。

シックを抑え込んでいたケイスケは微笑み、ナナミとほぼ同時に到着したサクラが顔を真っ赤にする。

ヒヨに至っては何で顔を赤くしているのか今一つ理解してなかったが。

動揺するレプリカキバ……蛍に気にすることなく、静也は思いの丈をぶつける。

 

「ずっと一緒だったから、この気持ちがLoveなのかLikeなのか分からないっ!!だからっ、二人の想いを受け止めるっ!この想いが分かるまで一緒にいるっ!!だからっ、だからっ!!」

 

静也はステンドグラスのような異形の顔を両手で掴む。

そして。

 

「俺に告白してくれ。蛍」

 

異形となった彼女の顔に自分の顔を近づけた。

その行為に全員が、ついでにモニターしていたカナと事務所で待機していたドールズメンバーも思考が停止しただろう。

何故なら、例年稀に見ない告白&ファーストキスだったからだ。

ケイスケとキバットは笑い、颯太はシックの妨害で気づいていないし命音は「あら」と楽しそうに微笑む。

恋愛経験くそ雑魚な椋たちメンバーは顔を真っ赤にしている始末だ。

さしずめ美女と野獣(性別は逆だが)といったところ。

一方の当人たちは、思ったより冷静だった。

固く変な感触だったとか、ファーストキスが最低とか、優柔不断の極致だとかそんなことしか考えていなかった。

だが、それは囚われていた彼女の心を解放するには充分だった。

 

『セイ、君……私っ』

「茶番はそこまでですっ」

 

ケイスケたちを何とか振り払ったシックが時間停止を発動。

すぐさまレプリカキバのところまで近づくと、彼女たちを引き剥がして無理やり距離を開く。

そして、その身体に手を入れて埋め込まれているレプリカウォッチを取り出した。

 

『あんたは大人しく神……覇王への加護を与えられてりゃ良いんだよっ!!』

【KIVA…!!】

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

起動して再び埋め込み、レプリカキバへと変身させる。

しかし強制的に変身させたせいか残っていた理性が消えたかのように両腕を振り回して周囲を破壊する。

シックは椋たちを睨みつけ、恨みがましい声で呟いた。

 

「我が覇王に、その御霊を捧げなさい愚者ども」

【IXA…!!】

 

シックとロックスの全身を包み込むように黒いエネルギーの奔流と、不気味な音声が鳴り響く。

同時に鈍く輝く逆十字が身体に重なるとその身を変身させた。

白骨を思わせるその軽鎧の上には、僧侶や信徒を彷彿させる金で縁取られた白い法衣が変身の余波で靡く。

顔には悪魔の角にも見えるような薄汚れた十字架が見えるが、右側は破損したかのように罅割れておりその箇所からは鮮血に染まった赤い眼球が露出している。

腹部には獣の横顔を思わせる生物のようなバックルがあり、時折赤い目玉が獲物を探すように動く。

『レプリカイクサ』……ケイスケの変身する仮面ライダーイクサの贋作である。

 

『さぁ、出番だぜ。俺ちゃんたちの可愛い信徒ども』

 

バックルからロックスの声が響いた同時に、ピグマリオンのイーターとキッカーが無数に出現する。

それに驚くサクラたちだったがケイスケは「なるほど」と一人納得する。

 

「私の贋作……ということは、フェイクフエッスルの能力ですか」

『はい。理性なき化け物ですらも跪かせる、覇王より与えられた力……』

『神父のあんたにとっちゃ喉から手が出るほどじゃねーの?』

 

嘲笑うような彼女たちの言葉……しかし、ケイスケは「いいえ」と首を振って否定する。

 

「宗教とは他者に強要するものではありません。同時に信仰とは弱き者を救い悪しき者を挫くためにあります……貴様らのような自らの正義と神を押し付ける蛮行、決して認めはしないっ!!」

【R・E・A・D・Y】

「変身っ!」

 

レプリカイクサの数々の行いに、怒りをその目に宿したケイスケはイクサナックルを掌に押し当てる。

そして腹部にセットしたバックルにセットすることでイクサへと変身。

変身を完了していたレクスも、ナナミと共に武器を構えて走るのを後目に、椋も二つのライドウォッチを起動させた。

 

『さぁっ、キバッて行きな椋っ!!』

「……うんっ!」

【KIVA!!】

 

キバットの言葉に力強く頷き、前方に突き出したキバウォッチのベゼルをスライドさせて起動。

それは左側のスロットに装填し、バックルを回転させた。

 

「変身っ!」

【ARMOR TIME!】

【ガブッ!KIVA!!♪】

 

継承を告げる電子音声と共にライダーの力が宿る。

複眼には鏡文字で「キバ」と緑で描かれており、両肩の装甲は左右に分割されたキバットバットⅢ世を模したプロテクターと銀のカテナが巻かれている。

右脚はキバの持つ銀の甲冑『ヘルズゲート』をメカニカルにデザインされた形状だ。

 

「ふっ!」

 

キバアーマーへと新たな力を得たロワは両腕を広げるように構え、暴走するレプリカに向かっていく。

ドライブアーマーとは違う、小回りの利いた素早い動きから繰り出される攻撃にレプリカキバも負けじと応戦する。

どちらも拳と蹴りを主体とする格闘術だが、レプリカの方は両腕に異なる属性を宿したエネルギーによって、攻撃力を上げる。

 

「……はぁっ!」

『ガァッ!?』

 

しかし拳のラッシュから生じる一瞬を突いた、ロワの重いストレートがレプリカキバの身体を打ち抜いた。

 

 

 

 

 

イクサは武器を振るい、発射されたいくつもの銃弾がピグマリオンたちを怯ませる。

その隙を縫うようにナナミ振るった斬撃と、ジカンジャナックルによる打撃で消滅させると狙いをレプリカイクサへと定める。

 

「若き少年少女たちの青き春を弄び、あまつさえ一人の少女を凶行に走らせたその行い。筆舌に尽くし難い……」

 

地面を蹴ったイクサはレクスの肩を踏み台にし、更に跳躍すると金の装飾が施されたフエッスルをバックルに装填。

そして間髪入れずにイクサナックルを押し込んだ。

 

【I・X・A・C・A・L・I・B・U・R・R・I・S・E・U・P!】

「その命、神に返しなさい」

 

宣告と同時にセットされたカリバーフエッスルによって胸のマークが赤く輝く。

否、それはただの光ではない。

胸部に内蔵されたエンジンによって生み出されたエネルギーはイクサカリバーへ流れ込み、その刀身を灼熱に染め上げる。

同時にイクサから眩いばかりの白き光が放たれる。

それは宛ら青空にある太陽の如く……。

レプリカイクサとレクスたちには、まるでイクサが赤く輝く太陽を背にしているように見えただろう。

 

「はああああああああああああああああああっ!」

 

イクサカリバーから繰り出される悪を裁く審判の一撃『イクサ・ジャッジメント』が振り下ろされた。

レプリカイクサは慌てて逆十字の大剣を盾にする。

火花を散らし、ぶつかり合う両者……。

 

『……ふんっ!』

「くっ!」

 

競り勝ったのは、レプリカイクサの方だ。

大きく振り上げた大剣によって、イクサは必殺技を弾かれるも空中で一回転して何とか着地する。

 

『へっへーんっ!残念無念また…』

【VOLTEX! TIME CRASH!!】

 

必殺の一撃が防がれた彼にロックスが嘲りの言葉を続けようとした瞬間、異なる電子音声が鳴り響いた。

レプリカイクサがすぐに視線を向ける。

そこには……。

 

「でやあああああああああああああああああっっ!!!!」

 

ビルドアーマーを纏ったレクスのタイムストライクによる跳び蹴りが放たれていた。

迎撃しようとするも、ナナミとヒヨの銃弾によって大剣が弾かれてしまう。

既に彼女は具現化した白いグラフによって拘束されており、逃げることも大剣によって防ぐことも出来ない。

滑車のように凄まじい速度と勢いで迫るレクスの蹴りがレプリカイクサの身体を捉えた。

 

『きゃあああああああああああああああああああっっ!!?』

 

爆発と悲鳴の後、変身を解除されたシックが地面を転がる。

荒い呼吸を吐きながら、先ほどとは正反対の憎悪の籠った視線で見上げる。

 

「このっ、この匹夫がっ!絶対に、絶対にあなたは許さないっ!!」

 

何とか立ち上がった彼女はオーロラのような灰色のカーテンを出現させると、這う這うの体でその中に入って退散する。

「待てっ」とレクスが叫んで追撃しようとしたが、そこで異変が起こる。

 

「……ちっ」

 

ドライバーにセットしていたビルドウォッチの色が一瞬だけ消え、すぐに元の色に戻る

それを交互に繰り返すように点滅すると、しばらくしてそれが治まる。

 

「そろそろ、限界か……」

 

変身を解除した颯太がビルドウォッチを手に取りながらそう呟くと、ロワとレプリカキバの戦いに目を向ける。

戦いは、ロワの優勢だった。

 

『グゥゥゥゥ……ガァッ!!』

 

よろめいたレプリカキバはすぐに態勢を立て直すと、右腕から砲丸のように象った水の弾丸を投擲する。

 

「うわっ!!」

 

瞬時に危機を察知したロワは横っ飛びにそれを躱し、疾走する。

高圧の水が当たった箇所は抉れ、如何に彼と言えども命中すればただでは済まないだろう。

 

『グルアアアアアアアアアアアッ!!』

 

レプリカキバは攻撃の手を休めることなく、今度は右足を振り上げて矢のような赤いエネルギーを乱射してくる。

今のロワならば回避出来るスピードだが、現段階では敵に近づくことさえ敵わない。

その間にも標的を失ったエネルギー弾は、周囲の景色を次々と変えていく。

 

「くっ!(このままじゃっ)」

 

押し切られる……!

そう判断したロワは、走る方向をレプリカキバに定めて全力で地面を蹴った。

 

『ハァッ!』

 

決定的チャンスを見逃さずにレプリカキバは、紅い矢のエネルギーを真っ直ぐに突進するロワに放つ。

もはや回避することも不可能、だが既に彼は次の行動を起こしていた。

 

「はっ!」

『ウウッ!?』

 

レプリカキバの驚く声を聞きつつ、ロワは迫り来る攻撃ごとレプリカキバを飛び越える。

無防備になっているその背後に回り込むことで、形勢は逆転した。

 

「はあああああああああああっっ!!」

『グッ、アアアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

逆転の好機に拳のラッシュが始まる。

キバの力を宿した連撃がレプリカキバの身体に休むことなく放たれる。

 

『ガッ!?グゥ……!』

 

止めに放たれた渾身のハイキックで吹き飛ばされたレプリカキバも耐え切れず、数メートル先の地面まで転がる結果となる。しばらく起き上がることは出来ないだろう。

 

『よし!チャンスだぜ!』

「椋君!」

 

叫ぶキバットと命音の言葉に頷いたロワは、ジクウドライバーにセットしたライドウォッチのスイッチを押してバックルを回転させた。

 

【WAKE UP! TIME STRIKE!!】

「はぁぁぁぁぁぁ……!!」

 

ロワが両手をクロスさせると、何処からともなく赤い霧が立ち込める。

それはこの世の理を歪め、空を黒く染めて一つの夜を作り上げる。

まだ夜になるには早すぎる時間……それなのにも関わらず、三日月だけが照らす常闇を呼び寄せたのだ。

それは、仮面ライダーキバが最も力を発揮する領域……愚者の夜を終わらせる三日月の夜。

 

『よっしゃー!』

「……ふっ!」

 

その姿と作り上げた夜を見て昔を思い出したのか……。

ロワがヘルズゲートを模した右脚を振り上げると、テンションがフォルテッシモになったキバットがその鎖を解き放つ。

中から現れたのは、赤い血のような悪魔の翼。

残った左脚で飛び上がり、真紅の翼をもって飛翔する。

空高く、それこそ周囲に見えなくなるかと思うほど跳躍したが、その標的を捉えたまま逃しはしない。

巨大な三日月を背に、彼は最大の武器となった右脚を吸血王の贋作に向けて勢いよく突き出した。

 

「はあああああああああああああああああああっっ!!!」

 

瞬間、ロワの身体は激しく急降下する。

その突き出された紅の脚は、風を切る音と共に光を放つ。

そして、狙いを定めたレプリカキバの胴体を砕き、彼女を地面へと張り付けるように叩きつけた。

 

「やあああああああああああああっっ!!!」

『ギアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

『ダークネスムーンブレイク』……キバの必殺の一撃を模したロワのタイムストライクは、レプリカキバの堅牢なアメジストの胴体を容赦なく砕き、その衝撃は彼女の中心に地面を抉るように削られ、そこには仮面を模した紋章が刻まれていた。

 

「……ぁっ」

 

ロワが足を放すと、レプリカキバの身体はステンドグラスのように砕け散り破壊されたレプリカウォッチと共に意識を失った蛍が現れる。

彼女を縛り付けた鎖が、ついに砕けた。

 

 

 

 

 

レプリカキバの暴走は全てなかったことになり、色を抜かれた被害者たちも無事に戻ることが出来た。

蛍に言い寄っていた生徒は静也が見事撃退し、不思議な三角関係は継続するらしい。

そして。

 

「皆さん、初めまして。私はチームAのサクラと言います」

 

サクラのデビューライブが始まろうとしていた。

まだ緊張している様子だったが、たどたどしくもその表情に不安や迷いはない。

頑張りたい、ここにいるドールズのファンに自分の歌声を少しでも届けたい。

かつて自分のように……。

 

「では、聴いてください……!」

 

そうして、歌が始まった。

曲名は『Doll's Destiny』。明るい曲調で、彼女たちの運命やその先の輝く未来を歌っているようにも感じる。

 

「……ふふっ」

「どうした?」

「何だか、すごいなって」

 

笑みを零す椋に、一人一人のダンスの癖を観察している颯太が怪訝な顔を向ける。

出会いと同時に彼女は命を失いかけ、国土調査院のドールズとなり、そして今はこうしてセンターで華麗な踊りと歌を観客たちの前で披露している。

悲しいことも辛いこともあった。それなのに、今いるサクラや彼女たちはそれを表に出すことない。

それがとても……。

 

「綺麗だって、心からそう思える」

 

その言葉に鼻を鳴らすが、それに嬉しそうに微笑むのはカナだ。

当然だと言わんばかりに彼女もドールズのライブに視線を向けた。

 

「だって彼女は……『アイドル』なんですから」

 

そのライブは、二人と二匹も遠くから見ていた。

ケイスケは満面の笑みで聞いており、妻へのお土産にCDでも買おうかと財布を取り出し、命音もその心地好いメロディーを口ずさんでいる。

 

「ケイスケさん、姉さん」

 

そんな二人に声を掛けるのは、一人の青年。

端正な顔立ちに、黒と茶髪の青年……紺色のスーツと白いシャツに、首には水色のスカーフを巻いている。

その人物を、彼らは良く知っていた。

 

「おおっ!『ワタル』君っ、こんにちはっ!」

「こんにちはじゃないですよ。急に反応がなくなったと思ったらこんなところにいて……」

 

マイペースな態度を崩さないケイスケに青年『紅音ワタル』は頭を抱える。

キバットから二人が消えたと報告を受け、慌てて調べてみれば別の世界にいて。いつの間にか戻ってきたサガークに聞けば変なキバ擬きや時計がある始末。

王は民や臣下を守るべきだが、この二人に至ってはフリーダムなためかなり胃に負担が来る。

そんなワタルを抱き締めるのは命音だ。

 

「ワタル~~~~~~♪♪」

「ちょっと姉さんっ!急に抱き着かないでっ」

「だって、久しぶりのワタルだもんっ。疲れたお姉ちゃんを癒してー♪」

 

満面の笑みでくっついてくる彼女に深いため息を吐くが、そこでケイスケが笑う。

 

「はっはっは!相変わらず仲が良いですねっ。まるで恋人同士みたいですよ」

「本当?すっごい嬉しいねワタルッ!」

「いや、別に姉弟だから嬉しくないし」

 

嬉しそうな命音とは対照的に、ワタルは辟易した表情を隠そうとしない。

しかし、そこでキバットから爆弾が投下される。

 

『ワタルー。カミさんが帰ったら話あるってよ』

「はっ?……いやいやいやいやいやいやっ!これは浮気じゃねーし姉と弟の素敵なスキンシップだし…あー何かすっげぇ殺意を感じるううううううううっ!!?」

『ワタル。ヨナキイクヨツ……!』

「やめろサガーク黙とうを捧げようとするなっ、ケイスケさんも早く訂正して……って、あんた何無言で十字切ってんだあああああああああああああああああっっ!!」

 

そんな騒がしい叫びが響くのであった。

 

 

 

 

 

そこは、青い地獄だった。

青白い蝶(プシュケー)が我が物で飛び回り、その土地を汚染していく。

まるで自分たちの住処だと証明するように、自分たちの楽園だと主張するかのように、ここは存在している。

しかし、そんなことは『少女』には関係なかった。

 

「ううっ、ひっぐ……ぐすっ」

 

ここが何処なのか、何も分からない。

分からないが、自分がいてはいけない場所だと、とても怖い場所だと小さいながらも分かっていた。

 

「助けて、誰か……助けてっ」

 

泣きじゃくりながら、少女はただ祈ることしか出来なかった。

そして……。

 

「んっふふふふふふふっ。興奮するものを見つけてしまいましたっ、じゅるるっ!」

 

青の地獄と、そこに巣食う怪物に恍惚とした表情を浮かべるトゥエムが目を輝かせるのだった。

その手に持った二つのレプリカウォッチを弄びながら……。




 キバ編のテーマは『怪物が人間に恋して良いのか』・『自分とは違う存在を、人は信じられるのか』となっています。
 リマジキバは家族の愛と、人を信じることがテーマになっていたのでそれを少しだけ意識してみました。
 ではでは。ノシ

レプリカキバ ICV志崎樺音
人間性を『色』で見る特技を持った女子中学生『虹峰蛍』がワールドハックのシック&ロックスと契約することで変身したレプリカライダーの一体。
モチーフの『仮面ライダーキバ ドガバキフォーム』の音色を再現したレプリカウォッチを埋め込むことで誕生した。
赤い瞳を持つ金色の蝙蝠を腰にぶら下げ、ステンドグラスのような体組織で全身に覆われているのが特徴。
右腕は魚類のヒレに似た装飾があるエメラルドグリーンに左腕は猛獣の飾りがあるサファイアカラー、赤い両肩は目玉にも見えるパーツにアメジストカラーのボディには引き千切ったような鎖の残骸。右脚は鮮血のように赤い。
赤と黄色のステンドグラスに似た頭部の眼に当たる部分は罅割れたており、その箇所には碧い眼球と吸血鬼のような白い牙が露出している。
キバに登場するアームズモンスターの能力が使える。劇中ではガルルの斬撃、バッシャーの水弾など披露した。また、右脚から赤い矢のようなエネルギーも放てる。
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