仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
リマジゴーストの世界なので原典とはかなり違う世界観になっていますのでご了ください。
『この世界』には、かつて「魔術師」と呼ばれる人種が存在したという。
神秘や奇跡の再現を可能にした彼らは、自らの出身国の文化や思想を基盤に魔術を生み出し地球への貢献を果たしていた。
しかし人間とは常に変化をする生き物だ。
思想は欲望に、欲望は傲慢へと変貌を遂げたことで彼らは命を軽んじるようになる。もちろんそうでない者もいたが、その悪行そのものが人々の目に触れるようになった。
結果として、魔術師とは総じて道徳の欠けた人間……いや人と呼ぶのもおこがましい全く別の種族として扱われるようになった。
だが、そんな命を軽んじる者には遅かれ早かれ天罰が下る。
新たに生まれた技術……科学の発達が彼らの末路を決めた。
瞬く間の発展を遂げた科学は魔術以上の結果を残し、魔術師の存在価値がなくなってしまったのだ。
彼らの栄華は、一瞬にして砂の城へと変わった。
辺りを響かせるような轟音が空気を震わせる。
爆弾のような衝撃が赤い炎を撒き散らし、着弾したと思われる地面が黒い煙を上げながら抉られた箇所を露わにする。
そんな渦中において、黒煙とコンクリートの埃を払いながら姿を見せるのは、白いボディに映えるライトグリーンのラインと装飾が入った黒いパーカーらしき装束を纏う戦士。
マスクはライトグリーンの単眼を覆うようなゴーグルからはまるで潜水服を彷彿させる。
左腕には点眼薬の容器を思わせるような黒いデバイスを巻き付けており、そこには黒と緑で構成されたアイテム『眼魂』を装填しているのが分かる。
彼は『仮面ライダーネクロム』……二つの故郷を守るべく戦う完璧なる戦士。
英雄の魂を宿した眼魂『英雄眼魂』と共に戦う彼は自らに芽生えた心に手を当てながら、更なる闘志を燃やす。
所持している英雄眼魂と武装の少なさこそ目立つが、それでも与えられたスペックを最大限に活用し完璧な立ち回りを見せる。
『……ああああああっ!妬ましいなぁっ!!どうしてっ?何でそんなにしぶといのさぁっ!?』
そんなネクロムを見て中性的な声色でヒステリックに叫ぶのは緑色の異形。
錨と鎖の鎧に身を包み海賊帽らしき頭部を持っており、人型になった犬の身体へ無数の蛇が絡みついたような外見となっている。
しかしその顔面と胸元などには紋章らしき印が刻まれた目玉を思わせる紫の球体が埋め込まれている。
眼魔世界の神である存在『聖杯』に選ばれた使徒である眼魔『ガンマイザー・シンズ』……その中でも『嫉妬』の称号を与えられた『ガンマイザー・エンヴィー』は明らかに格下であるはずのネクロムに対し、感情を更に昂らせる。
『僕はあんな不気味な奴に従わなきゃいけないのにっ、どうして君やグリードたちはそんな自由なんだよぉっ!?こんな羨ましいことっ、あって良いはずがないいいいいっ!!』
手前勝手な被害者意識を増幅しながら、身勝手な言葉で地団太を踏みながら身体に巻き付いた蛇を伸ばし、標的に襲い掛からんと迫る。
しかしネクロムはそれを躱し、迫る蛇にはエネルギーを纏った拳で粉砕しながらエンヴィーとの距離を徐々に詰める。
「僕は、僕たちは『
『眼中にないだとっ!?そんな力を持っている癖に自分のために使わないなんてふざけるなぁっ!!だったら僕に全部よこせよおおおおおおおおっっ!!』
【MAGNET!!】
ネクロムの言葉を挑発と受け取ったのか、エンヴィーは取り出したガンマイザー眼魂を起動するとその両腕を彼に向かって突き出す。
すると青い波動と共にネクロムの身体が引っ張られた。
マグネットの力で引き寄せられた彼だが、それでも焦ることはない。
既にこのガンマイザーへの分析は最初に戦った時に完了しているからだ。
「一度戦った相手に後れを取るほど、僕は不完全じゃない」
ブレスレット型デバイス『メガウルオウダー』を操作し、最大の攻撃を放つ準備を開始する。
【DESTROY! DAITENGAN! NECROM!】
【OMEGA URUOUDO!!】
逆らうことなく、それどころか磁力の吸引に導かれるようにそのまま地面を蹴って軽く跳躍する。
彼の目的に気付いたエンヴィーがすぐに能力を解除しようとするが、時既に遅し。
「……はぁっ!!」
『がっ!?ぎいやああああああああああああああああっ!!』
緑色に輝くエネルギーを右腕に収束させ、渾身の一撃を持って放たれた必殺技は嫉妬深きガンマイザー・エンヴィーの身体を貫通し、爆散させた。
しかし、聖杯から不穏因子の存在を断罪する役割を与えられた彼らは不滅の存在。
すぐに目玉の紋章が刻まれた石板のようなプレートに戻り眼魔世界へと強制送還されたが、特に気にすることもなくネクロムは変身を解除する。
「ふぅ……」
変身を解除したのは年端も行かない少年。
白髪に赤い瞳……所謂アルビノの風貌からは儚さを秘めており、線の細さもあってか華奢な印象を受けるが、目には活力に満ちている。
白いシャツの上には黒い上着を羽織っており、ライトグリーンのストールで口元を軽く隠している。
「何処に行ったんだ。尊瑠……!」
このまま時間が過ぎてしまえば、彼は消滅してしまう……。
それだけではない。今の尊瑠が英雄眼魂を揃えて善なる意思『グレートアイ』を呼び出したとしても、決して願いは叶わない。
この世界で得た友を探すべく、少年『アイン』はストールを靡かせながらその場から去ろうとした時だった。
「なっ!?」
突如出現した灰色のオーロラが、彼の視界を遮った。
「……」
「どうしたの?」
仏頂面にしている颯太に怪訝な表情を向けたのは、缶コーヒーを取りに先ほどまで席を外していた椋だ。
三つ分の缶コーヒーを置き、隣の席に腰を下ろした彼はブラックコーヒーを飲みながら、続きを促す。
「新宿に出てきたあのピグマリオン擬き……あれがどうも気になってな」
颯太が警戒しているのは、新宿で対峙したデッドファンタズム……班目たちからはペタルダと名付けられたあの不気味な異形たちだ。
ピグマリオンとは違う存在、そしてリーパーの腕に組み込まれていた機械など明らかに何者かが介入していたことは間違いない。
「ワールドハックの仕業、なのかな?」
「断定は出来ない。だが、奴らが絡んでいるのならその野望ごと叩きのめすだけだ」
力強く宣言した颯太に椋が頷いた。
一先ずその話題を置くと、颯太は改めて問いかける。
「それで。これは一体何なんだ?」
「所謂コラボ企画って奴らしいよ。ヤマダダチャンネルのね」
椋の答えに颯太は「ああ」と思い出す。
ニッチな層からダラドル(ダラダラしているアイドルの略)として一定の評価を得ている彼女だが、その不真面目さが鬼所長こと班目の目についたらしい。
遊んでいたゲームのアカウントを停止させられた挙句人質のような形になったしまったため、動画投稿者としてDOLLSの宣伝を行っているのだ。
今回はそんな動画企画の一つらしく、以前別番組で共演した映像技術専門の女性スタッフとの共同制作を行い、特別に許可を頂いて廃校となった中学校に改良を加えたらしい。
内容としては脱出ゲームなのだが、そこにお化け屋敷の要素を組み合わせたものらしく雰囲気もかなり出ている。
『いやああああああああああお化けえええええええええええっっ!!!』
『おお、落ち着いてくださいミサキさん!』
モニター内には現在謎解き真っ最中のメンバーが映っているのだが、同行している女性スタッフが仕掛けた最新技術による恐怖体験で、ミサキが凄まじいまでの絶叫をあげている。
酷い時には窓から飛び降りようとしてサクラとシオリに止められている始末だ。
マイクが壊れるのではと思うほどの悲鳴をあげ、身体を震わせている姿を見てにやにや笑っているヤマダ。
『ふひひひ。良いっすよミサキさん~、すごく良いっすよー』
((完全に確信犯だな))
明らかにミサキ一人を狙い撃ちにした今回の動画企画者に二人の気持ちが一つなった。
ただ、今回スタッフルームにいるのは彼らだけではない。
「これ、楽しいの?」
そう小首を傾げるのは椋たちとは違う茶髪の少年……椋より年上の十八歳で、幼さの残る顔立ちだが何処か儚さを残した端正な顔立ちをしている。
しかし衣服は僧衣を現代服にアレンジしたようなデザインであり、オレンジ色の装飾が少し目立つ。
彼は『
家族のことや住んでいる場所を聞いたのだが、どうやら別の世界から来たらしい。
普通なら「何を馬鹿な」と言うところだが、颯太という人間やレジェンドライダーと邂逅している以上、そうとも言い切れないのが現状。
何処となく危なっかしいのでしばらく保護することにしたのだ。
「うーん。ミサキの反応はある意味テレビ受けするし、楽しいと思いますよ?」
「これを仕組んだ主犯はかなり笑っているしな」
困ったように笑みを浮かべる椋と颯太の言葉に尊瑠は「ふぅん」とモニターを見つめている。
……どうも彼はそういったことに疎いのか感情の起伏が少ないのだ。
すると、モニターに視線を戻した颯太が椋に呼びかける。
「あれも企画の一つか?」
ミサキたちの前に現れているのは、黒い幽霊のような異形……詳細は分からないが、何やらカボチャのようなオレンジ色の頭部が光っているように見える。
「いや。ヤマダに聞いた限りだと、ハロウィンみたいなモンスターは出さないって……」
颯太の問い掛けに首を傾げる。
確かヤマダに聞いた限りだと学校の怪談をイメージしたため、世界観を壊すようなモンスターなどは極力出さないようにしたらしい。
しかし、現にモニターにはその黒い幽霊が不気味に動いている。
やがて明確な姿が椋たちとミサキたちの前で明らかになる。
裾や袖がボロボロになった、鋲が至るところに打ち込まれた黒いパーカーのような装束を羽織っており、白髪のような頭部にはフードを被っている。
頭部は黒く鋭い歪な眼があり、橙色に染まった顔には骸骨を思わせる鼻と口が不気味に浮かび上がっている。
宛ら、黒いパーカーの幽霊が腐乱した亡骸に寄生し取り憑いているようにも見える。
しかし、椋と颯太は背中に描かれている文字を見つけた。
「GHOST」……そして「2015」の不気味な白い文字。
「レプリカライダー!」
それに気づいた颯太がスタッフルームへと飛び出した。
一方、黒い幽霊を直視したミサキは半ば気絶している状態だった。
「あ、あわわわわわわっ」
完全に腰を抜かした彼女をサクラが必死に呼び戻し、シオリとヤマダが前に出て対峙するが黒い幽霊は取り出した『何か』を押すと彼女たちの身体を拘束して動きを封じる。
やがてその不気味な風貌を女性スタッフへと向けた。
「ひっ!?」
明らかに作り物ではない、本物の怪物を間近で見て恐怖で身体を震わせる彼女に気にすることなく、黒い幽霊は彼女の元まで顔を近づけると耳元で何かを呟く。
「……えっ?」
『……』
スタッフの女性は囁かれた内容に恐怖を忘れ、思わずその不気味な顔を見る。
怪人は何も言わなかったが、何もせずにただ彼女を見つめている。
「そっか。それなら、うん……分かった」
悲し気な微笑みを見せた女性の前で幽霊が何かの印を結ぶと女性の身体が淡く光り、体内から何かの球体のような物体が出てくる。
それを躊躇なく幽霊が掴み取った瞬間、女性の身体から力が抜けて倒れる。
しかしその顔は安らかであり眠っているようにも見えた。
『……これで十四っ』
そう呟いた黒い幽霊の身体は、思い切り蹴り飛ばされていた。
壁に叩きつけられた幽霊は慌てて振り向けば、そこにいたのは先ほどまでスタッフルームにいたロワとレクス。
モニター越しに見えた文字と数字からレプリカライダーだと確信した椋と颯太が一早く現場へと駆け出した二人がすぐさま変身し、開かなくなった扉を蹴破ったロワが先制キックを浴びせたのだ。
「思わず蹴っちゃったけど、本当にレプリカライダーなの颯太っ!?」
「間違いない」
その言葉を聞いたミサキがようやく我に返る。
あれはお化けじゃない、レプリカライダー……つまり、普通の人間が変身している怪人だ。
「行くわよサクラ、シオリ、ヤマダ」
先ほどまでの怯え振りは何処へやら。
すぐさまいつもの凛とした表情に戻ると、臨戦態勢へと入る。
そんな彼女にチームAの二人と流石のヤマダも苦笑いしていたが、今は気にすることではない。
しかし。
「あの数字と名前……あれは幽霊の仮面ライダー、ゴースト…」
「いやあああああああああああああああっっ!!?」
その名前を聞いた瞬間、再び顔を青ざめたミサキが悲鳴をあげた。
踵を返し、部屋の隅まで移動し縮こまるまで0.12秒……ナンバーワンは伊達ではない。
そんな彼女に慌ててサクラが彼女の元に駆け寄る。
「ミ、ミサキさん!落ち着いてくださいっ、あれはレプリカライダーです!」
「お化けのレプリカライダーでしょっ!?無理っ、あんな奴と相手するなんて無理いいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」
「すいませんマスター、私たちはミサキさんの正気に戻します!」
「分かった!こっちはこっちで何とかするから!!」
一先ず戦力外になったミサキをサクラとシオリに任せ、ロワは黒い幽霊『レプリカゴースト』に掴みかかると戦う場所を変えるべくその場から移動する。
やがて体育館へと場所を変えると、振り払ったレプリカライダーに向かって地面を蹴り、再び攻撃を仕掛けた。
しかし、レプリカゴーストはその身体を揺らすと同時にその姿を消し、ロワはそれに驚くも勢いを殺すことが出来ずに周囲の備品へとぶつかってしまう。
「痛ててっ。あいつ透明化するのかっ」
「ならっ!」
頭を押さえながら振り向いた先には再度実体化したレプリカゴーストが立っている
戦闘用ドレスを纏ったヤマダは武装した二丁拳銃で銃弾を放つ。
ロワもジカンハカリバーで銃撃を開始するが、レプリカゴーストの身体が突如として浮き上がった。
まるでワイヤーに吊るされているかのような、重力を感じさせないようなトリッキーな浮遊で銃弾を回避していく。
そして銃弾の雨の中を潜り抜けながら距離を詰めると、頭部と同じオレンジ色のエネルギーを纏った掌底が二人の身体を吹き飛ばした。
「あっちゃー……こりゃあ所謂ミスト系っすね。物理しかない今のヤマダにはちょーっと相性悪いかもっす」
「だったら物理以外で攻めれば良いだけだ!」
起き上がったヤマダの言葉に返したレクスがクイズライドウォッチを取り出す。
ロワも立ち上がり、ウィザードライドウォッチを起動しようとした時だった。
「……悪いことは、しちゃ駄目」
体育館内に響く少年の声。
入り口にいたのは、先ほどまでスタッフルームにいた尊瑠だ。
目の前で起こっている先頭に困惑することも恐怖することもなく、ただ虚ろな目をレプリカゴーストに向けている。
そして両手を自身の腹部へとかざした瞬間、ロワが仮面の下で目を見開いた。
「あれって!」
「ゴーストドライバーだとっ!?」
一瞬だけ人魂のような炎が発生すると、そこにあったのはレプリカゴーストが腹部に張り付けている物体と酷似した青白いバックルとオレンジ色のベルト。
そして懐から何かを取り出そうとした時だった。
「……何すかこの音っ?」
「どうした?」
「いやー、バイクのエンジン音みたいなのが徐々にこっちに……」
瞬間、体育館の裏口を破壊しながら一台のバイクが乱入してきた。
けたたましいエンジン音をまき散らしながら、その運転手は銀色の鎖が巻き付いた青い車体『マシンフーディー』ごと跳躍すると、フロントにある双角を空高く浮遊していたレプリカゴーストへと叩きつける。
『なっ、ぎゃあああああああああああっっ!!?』
完全に不意を突かれたレプリカライダーは透明化も間に合わず、車体に圧し潰されるような形で地面へと叩きつけられる。
一方、激突する寸前にマシンから飛び降りて着地した人物はヘルメットを外し姿を晒す。
スレンダーな体系で分からなかったが、バイクの主は少女だった。
黒髪のセミショートに紺色の瞳は鋭く凛とした表情を崩していない。青を基調とした黒いライダースジャケットを身に着けており、黒いスパッツから覗く長く白い両脚は引き締まっていて美しい。
「尊瑠っ!」
レプリカゴーストや呆然としているロワたちに気にすることなく、モデルのような長身の少女は尊瑠の元まで近づき彼を優しく抱き締める。
目の前の美少女に抱き締められているにも関わらず、尊瑠は表情を変えることなく彼女を見上げる。
「麻琴姉ちゃん?何でここに」
「話は後、今は下がっていなさい」
頭を撫でた少女『
「あなたたち。尊瑠を連れて下がりなさいっ」
ロワたちに有無を言わさずそう叫んだ彼女の腰には尊瑠が持っているのと同型のドライバーが装着されており、彼女も同じく仮面ライダーであることが分かる。
ゴースト眼魂を手に取ってスイッチを押すと内部に「S」のマークが浮かび上がり、開いたカバーの間に眼魂を落とす。
そしてポーズを取りながらカバーを力強く閉めた。
【アーイ!】
【バッチリミロー!バッチリミロー!……♪】
独特なリズムを刻む待機音声が流れるとゴーストドライバーからは袖や裾、フード部分には水色に近い青の装飾が施された黒いパーカーのような幽霊『パーカーゴースト』が出現。
華奢ながらも長い手足をゆっくりと伸ばしながらも少女は身体を支えるように腰を落としていく。
「変身っ!!」
右手を強く握り締めながら、グリップトリガーを強く引っ張った。
瞬間、彼女の身体は心電図のように張り巡らせたラインを発光させる黒いスーツに覆われ、その上にパーカーゴーストが装着される。
【KAIGAN! SPECTER!】【READY GO覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!!♪】
韻を踏んだ変身音声と共に現れたのは、青の装飾が入った幽霊のような戦士。
狂戦士を思わせるような凶悪な表情が刻まれた青いマスクに、二つの角が生えた姿はまるで日本の昔話に登場する鬼を彷彿させる。
「はぁっ!」
被ったフードを外しながら、勢いよく走り出した『仮面ライダースペクター』はレプリカゴーストまで直進し、握り締めた拳で思い切り殴る。
『ぐうっ!?』
小細工抜きで真っ直ぐに肉弾戦を仕掛けてくるスペクターに動揺するも、すぐに態勢を立て直したレプリカライダーは空中浮遊を開始する。
そして先ほどのロワとレクスを翻弄した透明化で再び奇襲を行おうと……。
「鬱陶しいっ!」
『がっ!?』
するよりも早く、長い脚から繰り出される後ろ回し蹴りが炸裂した。
足刀蹴りを身体に食い込ませたレプリカゴーストが呻き声をあげることも気にせず、掴みかかったスペクターが壁を粉砕しながら外へと飛び出す。
「あっ、ちょっと!?」
慌ててロワたちが後を追い、外へ出ると教室にいたサクラたちとも合流を果たす。
ちなみにミサキは腰が抜けていいたため、サクラがおぶってシオリたちと共に外へ出ていたのが、まぁ問題はないだろう。
情け容赦なくレプリカゴーストを投げ飛ばして地面へと叩きつけたスペクターは、紫色のゴースト眼魂を取り出しスイッチを押す。
「出番よ!『ノブナガ』ッ!」
その眼魂に封印されしは、かつて戦国の世を力で切り開いた英雄。
バックルから外したスペクター眼魂の代わりに、それをセットすると袖のない戦国武将を思わせるような紫色のパーカーゴーストがゴーストドライバーから出現する。
【バッチリミロー!バッチリミロー!……♪】
【KAIGAN! NOBUNAGA!】【我の生き様!桶狭間!!♪】
羽織りを思わせるような紫色のパーカーに金の装飾が施された出で立ちは、まさに第六天魔王『織田信長』の雄姿そのもの。
二挺の火縄銃を交差させたような紫のマスクを持つ『ノブナガ魂』へとゴーストチェンジを果たしたスペクターは間髪入れずに取り出した武器『ガンガンハンド』を構える。
先端部分が人間の手を模したそれを銃モードへと変形させると、照準を目の前の贋作に向けて躊躇なく武器のトリガーを引いた。
『ぎっ、ぐはっ!!』
レプリカゴーストは為す術もなく、乱射されたエネルギー弾の的にされる。
透明化や空中浮遊の隙を与えずに銃撃を続けながら徐々に距離を詰めていく情け容赦ない姿は、敵対者には決して手を緩めなかったノブナガの魂を扱うに相応しい。
やがて至近距離まで近づくことに成功したスペクターはガンガンハンドをバックルにかざし、アイコンタクトを開始する。
【DAIKAIGAN!】
音声が鳴り響き、銃口に膨大なエネルギーが蓄積されていく。
同時にノブナガ魂の武器複製能力を発動し、銃モードにした大量のガンガンハンドを左右に展開させた。
その隊列は歴史上に存在する長篠の戦いで実行したとされる三弾撃ち……それを必殺技として再現したものだ。
ヤクザキックで無理やり距離を開けられたレプリカゴーストに向けられた、複数の銃口が標的を捉える。
【OMEGA SPARK!!】
「はぁっ!」
『ぐおあああああああああああああっっ!!?』
ガンガンハンドから放たれた強烈なエネルギー弾の雨が、大量の火花と煙を散らしたレプリカゴーストの身体を再び吹き飛ばした。
しかし撃破するには至っておらず、変身が解除されないまま地面に大の字になって動かない。
「や、やったの?」
「知らん。だが、倒したのならウォッチが排出されるはず……」
鬼神の如き強さを発揮したスペクターを横目にびくびくした様子で伺うロワに対して、レクスも呆然としながらも倒れたまま動かないレプリカゴーストを睨む。
一方のスペクターは止めを刺すべく、逃げないようにその身体をしっかりと踏みつけてから銃口を向けた瞬間だった。
【KAIGAN……!】
暗く、おどろおどろした音が響く。
発生源は間違いなく倒れているレプリカライダーから発せられたものだ。
全員が視線を向けた瞬間、それは始まりを告げた。
『っ!』
スペクターの足を振り払ったレプリカゴーストが起き上がったのだ。
しかし、それは死霊のようなゆっくりとした動きではなく、宛ら曲芸師のような身軽なものだ。
勢いよく跳ねて起き上がったその贋作は顔を俯かせたまま動かない……しかし、既に開眼は終わっている。
スペクターの必殺技が、きっかけを作ったのだ。
ゴーストは、一度死んで蘇る……!
『……っ!』
変身したスペクターと同じように、フードを乱雑に外したレプリカゴーストが地面を蹴った。
しかしその動きは不鮮明な亡者ではなく、宛ら英雄の如きはっきりとした戦士の動きだ。
一瞬でスペクターに接近すると、鋭い回し蹴りを炸裂させる。
「なっ!?」
手にした武器で辛うじて防ぐも、次は拳による連打と途切れることなく攻撃が続く。
しかし、スペクターもただ押されるばかりではない。
ガンガンハンドによる刺突を行うも、柔軟な身体を思い切り反らして躱したレプリカゴーストは何処からともなく取り出した眼魂……スペクターの所持している物は違う不気味なアイテムを起動させる。
【KENDOU!】
赤いそれを起動した瞬間、レプリカゴーストの手には竹刀のような鉄棒が握られていた。
それを振るい、一度距離を取ると両手で握り、構えてから一歩踏み込む。
「くっ!」
「ちっ、行くぞ小野寺!」
「うんっ!」
上段から振り下ろされた一撃を躱すも、矢継ぎ早に繰り出される巧みな剣術に為す術がない。
状況の悪化に気付いたロワとレクスもスペクターへの加勢に入ろうとしたが、既にレプリカゴーストは次の行動を開始していた。
【JU-DO!】
【KAITAIGYOU!】
水色と白の二つの眼魂を起動し、ジカンジャナックルでパンチを放とうとしたレクスの腕を掴んで一本背負いを決め、長い柄のハンマーを召喚すると、攻撃を仕掛けてきたロワをスペクターごと巻き込むように殴り飛ばした。
『……これは警告だ』
「えっ?」
『俺たちに首を突っ込むのはやめろ。俺たちは、正しいことをしているんだっ』
それだけを言い捨てると、禍々しい橙色の竜巻を発生させたレプリカゴーストはその場から立ち去った。
しばらくして、DOLLS事務所。
気絶したミサキを寝かせ、未だ警戒を解いていない彼女に椋が説明を行う。
「……なるほど。ここは私たちとは違う別世界、ね」
椅子に座り、両腕を組んだ麻琴の表情は浮かない。
レプリカライダーやこの世界のことは全て説明したが、信じていないというよりは面倒ごとになった苦い表情だ。
どうも尊瑠は死んで幽霊になってしまったことで命のタイムリミットが存在するらしく、一刻を争う事態であるらしい。
「方法としては、あのレプリカライダーを倒せばどうにかなると思います。だから…」
レプリカライダーが出現する際、必ずその世界に対応する仮面ライダーが現れ、ライドウォッチを託して撃破すると彼らは元の世界に戻ったのだ。
確証はないが、レプリカライダーさえ倒せば元の世界に戻れるかもしれない。
「良いわ、協力してあげる」
その言葉に「やった」と表情を明るくするが、「ただし」と彼女は付け加える。
「その、ライドウォッチとやらにゴーストの力を宿すのは諦めた方が良いわ」
「何っ?」
「今の尊瑠には、それにフィールって奴を入れるのは無理なのよ」
「あの、どういうことですか?」
怪訝な表情を向ける颯太とサクラに麻琴は一呼吸置いた後、口を開いた。
「尊瑠は、この子は優しさ以外の全ての感情が消失しているのっ」
それは、仮面ライダーゴーストのライドウォッチが手に入らないという事実だった。
深淵 麻琴 ICV生天目仁美
『ゴーストの世界』で仮面ライダースペクターに変身する少女。ゴーストである尊瑠とは姉弟のように育った幼馴染だったが、とある事件によって疎遠になっていた。
物語の最初では英雄眼魂を狙うライバルとして登場。しかし、その目的はゴーストになってしまった尊瑠を生き返らせることだった。
蒼いライダースジャケットに短パンの美女であり、黒髪のセミショート。スレンダーな体型で本人も気にしているが、白く長い脚は同性が羨むほどの美脚。
性格は基本的に原典のマコト兄ちゃんで行動方針もマコト兄ちゃんだが、意外にも特技は料理……しかし、眼魔世界から脱走したこともあってか基本的にサバイバル思考であり、蛇が意外と美味しかったらしい。虫は自分の口に合わなかったため苦手。
アイン ICV斎賀みつき
『ゴーストの世界』で仮面ライダーネクロムに変身する少年。魂のなくなった人間の器に眼魂を埋め込むことで誕生した人間に近い生命体。
ネクロムに変身した直後は故郷や家族のためにゴーストたちと敵対していたが、「トモダチ」だった麻琴が操られたことで自らの世界に疑問を持ち、尊と共に眼魂の謎を調査することになる。
緑色のストールを首に巻いており、口元を隠している。性格は純真無垢で丸い物が好き。