仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
もしかしたらところどころ追記するかもしれないです。
そこは暗く、外なのか室内なのか……それすら分からない。
あるのは、巨大な歯車……カチリカチリ、と幾つものの歯車が噛み合い、無機質な音を立てて動く。
それも当然だ。
ここは世界と世界の狭間。何者にも干渉することもされることもない空間に、マゼンタのメッシュを入れたシアンカラーの少女がいた。
黒いズボンに白いコート、ペレー帽を身に着けた少女は首に巻いた緑のストールを弄りながら右手に持った本を開く。
「仮面ライダーロワ。この物語の主人公は、戦いを終えたレジェンドからライダーの力を継承し、やがて王になる……というのが、本来のお話」
白銀の瞳を細め、ページを捲りながら彼女は言葉を紡ぐ。
まるで預言者のように、まだ見ぬ未来に心を躍らせるように、彼女は口元に笑みを見せる。
「けれど
嬉しそうに言いながら、少女は更にページを捲る。
しかし、そこから先は何も記されていない。
ここからは、彼女も知らない『先の物語』だ。
人々の自由を守るために戦った戦士たちの歴史、それこそが彼女の芸術意欲を掻き立てる。
「今回ロワが出会う物語の主人公は、仮面ライダーゴースト/空白尊瑠……感情を失った彼の残された命は後、三十六日」
時刻は深夜……フードを被り直したレプリカゴーストはとある墓石の前に立っていた。
まるで弔うように顔を俯かせたまま、透明化で姿を消している『彼』はフードをゆっくり外しながらレプリカライダーへの変身を解除する。
「……」
そこにいたのは、チェック柄の上着に白いシャツと青いジーンズを身に着けた一人の青年。
歳は丁度成人を迎えたばかりの、二十歳ぐらいであろう彼はそれに刻まれた名前を見つめる。
「ごめんな。レポートとか課題に追われたり、みんなも仕事や勉強で忙しくて……中々会えなかった」
「でも」と彼は少しだけ笑みを向ける。
その瞬間、彼の周囲には十四の眼魂が浮かび上がる。それぞれには異なる光を放っており、まるで意思疎通をするかのように明滅する。
「こうして、みんなが集まってくれた。みんな、お前に会いたかったんだ」
青年『
全員が全員、レプリカゴーストだった青年の行動に同意し力を貸している。
ここに眠っている人物のために……。
「後一つ……もうすぐ、もうすぐだからな。必ずお前を蘇らせてみせる」
【GHOST……!!】
まるで懺悔するように、彼は両手を握り締める。
同時にレプリカゴーストへと変身すると、その場から姿を消すのだった。
その少年は、いつから自分が幽霊なのか思い出せない。
名前や交友関係、家族構成などは覚えている……なのに死んだ理由を何一つ思い出せないまま、気付けば幽霊になってしまっていた。
消えた記憶を取り戻し生き返るべく、少年『空白尊瑠』は授かったゴーストドライバーで仮面ライダーゴーストとなり、英雄眼魂を集めながら異界から来た魔術師たちの末裔『眼魔』と戦っている。
彼は様々な軌跡を起こしてきた。
唯一残った魂を燃やし続け、自分のためではなく誰かのために戦い、その優しい心は出会った多くの人たちの心を繋いだ。
過程を重んじ人間の可能性を信じたグレートアイはその姿を見て、亡くなった尊瑠の両親を介して力を与える。
しかし、与えられた力には代償があった。
闘志の炎を滾らせる眼魂は尊瑠の肉体を焼き尽くし、そして無限の可能性を秘めた白き眼魂は……彼から感情を消し去った。
「……今の尊瑠を、戦わせることは出来ない。もし敵が自分より強大だとしても、きっとこの子は逃げずに立ち向かうでしょうね」
感情がないということは、感情を理解出来ないということ。
痛みを感じたとしても、それに何とも思わずに彼は戦い続けるだろう。例え眼魂が砕かれたとしても、白い眼魂の力で復活して勝ち目のない戦いに挑み続ける。
恐怖を知らない……それは人によっては勇気に見えるかもしれないが、家族や友人からすれば不安で心を圧し潰される。
恐怖するということは、最善を選べるということ、自分や周囲の人間が死なぬように知恵を巡らせることが出来るということ。つまりは、生きていることの証明なのだ。
「そんなことが……」
椋とサクラは絶句する。
思えば初めて出会った時からも、尊瑠は感情を見せることがなかった。
喜んだり悲しんだりする感情が全て消失していたのだ……ライドウォッチは、そのライダーの想いや感情をフィールとして取り込み形にする。
キバライドウォッチのように最初から力が入っている状態ならともかく、ゼロからライドウォッチを作ることなど不可能だ。
「問題はない。俺たちの目的はレプリカライダーを倒すこと……ライドウォッチを集めることじゃない」
颯太の言葉に椋が思い直す。
確かに、ライドウォッチを集めていたのはレプリカウォッチを確実に破壊するために必要なだけ。スペクターという同じ系列のライダーが目の前にいる今、気にすることじゃない。
「あのゴースト擬きに関しては私に任せなさい。二度と立ち上がらないよう、今度は完膚なきまでに叩き潰してあげる……!」
そう視線を鋭くした麻琴は指の関節を鳴らしてその闘志を漲らせる。
そこら辺の男よりも男らしい頼もしすぎる彼女に椋とサクラは苦笑いするが、後ろで恐怖で呆けているミサキの介抱をしていたシオリが思い出したように周囲を見渡す。
「あのう……尊瑠さんとヒヨさんは?」
『えっ?』
その言葉にメンバーが首を傾げる。
レプリカライダーのことで気が付かなかったが、彼女の言う通り二人が見当たらない。
「何処行ったのーーーーーーーーーーーっっ!!?」
椋の切実な叫びが事務所内に響き渡るのだった。
「待って、ヒヨちゃん」
「大丈夫、ダイジョーブ」
尊瑠はヒヨに手を引っ張られながら必死に後を追いかけていた。
ヒヨ自身、どんな話をしているのか全然分からなかったが尊瑠の感情がなくなっているというのは、何となく分かった。
なので、外の景色を見せて楽しい思い出を作らせようと思い行動を起こしたのだ。
今の尊瑠は見た目も相まって小さな子どものよう状態なので、ヒヨとしてはお姉さん風を吹かせている。
そして辿り着いたのは子供たちが遊んでいる広い公園だ。
何をするつもりなのか皆目見当のつかない彼にヒヨは可愛らしいドヤ顔を見せる。
「ヒヨに任せて!こういうのは外出て遊べば楽しいんだよ!」
「楽、しい……?」
太陽のような満面の笑みを見せる彼女に、尊瑠はただ首を傾げることしか出来ない。
どうして外に出ることが楽しいのか、どうして笑うことが出来ているのか彼には分からない。
そういう感情がなくなっているからだ。
でも、ヒヨの笑顔には邪気がないため、しばらくは一緒に遊ぶことを決めた時だった。
「んっ?」
ふと、公園のベンチで座っている男子に視線が止まった。
歳は十二歳ほどで、細い小柄な少年……服装も少し古いところを除けば至って普通。
しかし、何故か尊瑠も、ヒヨも気になった。
空を見上げていた少年は二人の視線に気が付いたのか、幼い顔を向ける。
「こんにちは……」
一言。
年不相応の大人しさを見せる少年が、そう静かな声で挨拶をした。
仮面ライダーネクロム……アインは気が付けば違う場所にいた。
最初は眼魔世界から来た刺客の仕業かと思ったが、昼夜を逆転する力など今の彼らは持っていないはずだし、何より自分の目の前に現れた奇妙な灰色オーロラ。
『まるで自分たちの世界とは異なる存在』……それを本能や直感で理解したからこそ、自分が今いるこの場所が別の世界なのだと判断したのだ。
ならば、自分の役目はただ一つ。
「いらっしゃいませーーーーー!!」
故郷を裏切り、ネクロムの能力によるエネルギー供給が出来なくなった彼が最初に経験したのは、三大欲求の一つ『空腹』だ。
空腹を満たすには食事をしなければならない。食事をするにはお金がなくてはならない。
ならお金を手に入れるにはどうすれば良いか?
完璧な戦士でもある彼は、すぐにその答えを導き出せた。
働くことである。
元々学習能力や吸収力の高いアインはウェイトレス・事務作業・出店などありとあらゆるアルバイトを極め、今の彼は完璧なアルバイター……バイト戦士アインへと至ったのだ。
最近では食うために働くというよりかは、アルバイトをするために食事をしているような気もするが多分気のせいだろう。
色々なバイトをするために資格勉強をしているのも、恐らく気のせいだ。
「ふふ、今日も稼げている。これならフラワーアレンジメントの資格勉強も捗りそうだ……!」
ファミレス店の指定制服の姿で楽しそうに笑う。
そんなことを考えている間にも、来客を告げるベルがなった。
表情を切り替えた彼は、入り口の扉まで早歩きで向かい笑顔を向ける。
接客の基本は笑顔、そして明るくはっきりとした声。
頭に入れたマニュアル通りに、アインは口を開いた。
「いらっしゃいませ……っ!?」
しかし、その言葉は最後まで言えなかった。
彼の前にいるのは女子みたいな髪の長い可愛らしい男子と、桃色の髪と薄緑色の髪をした二人の少女。そして青いジャケットの少女……。
「麻琴っ!」
「アイン、あなたも来ていたのね」
仲間である深淵麻琴だ。
仮面ライダーネクロムと仮面ライダースペクター……別世界でのまさかの邂逅にアインは驚きを隠せない。
一方の彼女はいつもと変わらぬ憮然とした表情でマイペースに返す。
「何でここにっ」と焦りを露わにするアインに彼女は軽く手で制して落ち着かせると、一先ずは指定された席へと椋たちを連れて座る。
アインも丁度休憩時間に入った為、麻琴の隣に腰を下ろす。
「ライドウォッチ、レプリカライダー……事情は粗方理解した。僕も手伝うよ」
彼女たちから事情を聞いた彼は与えられた情報を全て把握し、椋たちや自分の置かれている状況を理解する。
麻琴もそうだが、あまりにも突拍子のない状況を受け入れるのが早い。
アインは眼魔世界を治める王族が生み出した人造生命体……人間の亡骸に眼魔眼魂を埋め込むことで『たった一つの存在』として生まれ、養子となった。
そんな特殊な自身の出生もあるのだろう、突拍子もない出来事でも事実であるのならば受け入れるのが彼なのだ。
一先ず、情報と目的を共有した一同はレプリカゴーストについて考える。
「レプリカライダーに変身させられた人は、みんながみんな何かしらの理由を抱えていましたよね?」
「うん。颯太が言うには、ワールドハックの連中はそういった人たちを選ぶ傾向があるって」
シオリの言葉に椋が頷く。
レプリカウィザードを始め、レプリカドライブやレプリカクイズたちも復讐な自分の譲れない部分を持っていた。
ワールドハックも個人の傾向はあれど『後がなくなり追い詰められた人間』と契約している。
「じゃあ、今回のレプリカゴーストも何か目的があって動いているってことですか?」
サクラの疑問に麻琴も肯定する。
あの時、レプリカゴーストは女性スタッフの魂を抜き取って眼魂を生成していた。
彼女は現在意識を失っており、病院で入院をしている。
カナからの情報ではここ最近、同じように人々が昏睡し意識を失くすという事件が相次いでいるらしい。
その同時刻に『黒衣を纏った橙色の幽霊』の目撃証言もあることからレプリカゴーストで確定だろう。
そうなると、彼の目的……眼魂を集めて何をしようとしているかだ。
「私たちの世界じゃ、英雄の眼魂を十五個集めることで願いを叶えることが出来るの。」
「もしも、そのゴースト擬きの目的が願いを叶えることなら……!」
麻琴とアインの言葉に、椋は慌ててカナから借りたタブレットを操作して事件の詳細を読む。
書かれていた内容は襲われた人たちは何れも何かしらの才能や技術を持っていたこと。悪人とは程遠い人格者であったこと……所謂『英雄の素質を秘めた者』たち。
被害者は今日の女性を入れて十四人……つまり。
「後、一人でレプリカゴーストの目的が達成しちゃうっ!?」
「ええっ!?」
一緒にタブレットの画面を覗き込んでいたサクラが驚きの声をあげる。
丁度その時、椋のスマートフォンに着信が入る……颯太からだ。
『小野寺!レプリカゴーストの反応を見つけたっ、今から座標を送る!』
「分かった!」
送られてきた座標の位置を確認し、麻琴たちも急いで代金を払って店を出ようとする。
だが、アインだけは動かない。
「アイン!」
「すまない麻琴。完璧な戦士として僕はバイトを途中で抜けることは出来ない……!」
「分かっているわ。終わったらすぐに追いつきなさい」
そう微笑んで突き出した彼女の拳に軽く打ち付ける。
もちろん、本当に緊急事態ならアインはすぐにでも現場を離れて自らの心に従うだろう。
しかし、彼は信じているのだ。
麻琴を、尊瑠を……この世界で得たかけがえのない友を。
レプリカライダーのいる場所に急行した彼らの姿を見届けた後、アインはすぐにスタッフルームへと戻るのだった。
某高等学校のとある教室。
そこにレプリカゴーストと一人の青年がいた。
既に生徒たちは下校しており、教室はおろか校庭には誰もいない。
これはレプリカゴーストが生成した眼魂『気象予報士』の力で竜巻やら大雨やらを局所的に起こし、残っている生徒や教師たちを一か所に纏めたところで『薬剤師』の眼魂で邪魔が入らないように全員を眠らせたのだ。
眼鏡をかけた青年……このクラスの担任でもある彼は目の前にいるレプリカゴーストに怯えることなく、向かい合っている。
『……本当に良いんだな』
「ああ。俺の、俺たちの想いは変わらない……そうだろ?」
真っ直ぐと、歪みのない視線を向ける青年。
どうやら覚悟は決まっているらしい。しかし、身体は本能的に恐怖しているのか、腕が微かに震えている。
それを察したレプリカゴーストは申し訳なさそうに「すまない」と呟くと、すぐさま印を結ぶ。
『すぐに終わらせる』
青年の身体に光が灯り、今まさに眼魂が生成される……その瞬間だった。
「させるかっ!」
窓ガラスの割れるけたたましい音と少年の声。
それらが同時に聞こえた瞬間、レプリカゴーストの身体は吹き飛ばされていた。
荒っぽく教室内に着地した少年……颯太は回し蹴りを浴びせて無理矢理青年との距離を開けると、ジクウドライバーを腹部に当て、レクスライドウォッチを起動。
そして隣には、銃を構えるヤマダの姿もある。
「ふひひひ。ミサキさんの弔い合戦っすよ」
「別に死んではいないがな。変身っ!!」
【RIDER TIME!】
変身したレクスはレプリカゴーストに掴みかかると、すぐさま戦いの場を校庭へと変えて攻撃を開始する。
ジカンジャナックルの零距離砲撃で吹き飛ばされるも、空中で体勢を整えたレプリカゴーストは新緑の眼魂を取り出す。
『邪魔をするなっ!』
【EHONSAKKA!!】
音声が響くと、周囲に巨大なペンのようなものが出現し何かを描き始める。
それらは人の形を作っていくと肋骨のような白いパーツを持つ黒い身体とパーカーで全身を覆った異形が大量に出現する。
ゴーストの世界で眼魔が使役する使い魔『眼魔コマンド』だ。
その数は校庭を埋め尽くさんばかりに生み出され、レクスとヤマダを取り囲んでいる。
「ちぃっ!」
これではレプリカゴーストに攻撃出来ない。
舌打ちするレクスを見下ろしながら、教室に戻ろうと更に浮かび上がったその時だ。
【DAIKAIGAN!】
鳴り響く音声。
何もなかった虚空に出現したのはピラミッド型の巨大なエネルギー。
そこからブラックホールの如き勢いで吸い込まれた眼魔コマンドたちが、ピラミッドの内部へと放り込まれる。
そして、眼魔コマンドが粗方吸い込まれた瞬間。
【OMEGA FANG!!】
新たな音声と共にピラミッド内部から無数の刃が繰り出された。
まるで死神の鎌の如き鋭さを持つ斬撃は大量にいた眼魔コマンドたちを斬り裂き、粉砕する。
『何っ!?』
この現象に驚き、動きを止めてしまうレプリカゴースト。
それはほんの一瞬だったが、十分だった。
【DRIVE! CHIKUTAKU SHOOTING!!】
更に響く音の方向へと振り向けば、そこにいたのは仮面ライダーロワの姿。
「はぁっ!!」
赤いタイヤ型のエネルギーを射出したロワが思い切り蹴る。
すると、蹴り飛ばされたエネルギーは拡散し、高圧エネルギーの弾丸となる。
『ぐおおおおおおおおおおおっっ!!?』
透明化も間に合わず、直撃を受けたレプリカゴーストは煙り上げて地面へと落下。
オメガファングから逃れた個体は既にレクスとヤマダ、サクラとシオリたちによってほとんど殲滅されており、最後の個体もスペクターの攻撃で消滅する。
ターコイズブルーのパーカーを纏った『ツタンカーメン魂』のスペクターがガジェット『コブラケータイ』と連結することで鎌モードにしたガンガンハンドを肩に担ぐ。
ちなみにレプリカゴーストは知る由もなかったが、先ほどのピラミッドは彼女が放った必殺技である。
『くそっ!』
このままでは目的を達成出来ない……!
毒吐きながらもそう判断したレプリカゴーストは、起き上がるとフードを外す。
しかし彼らの攻撃はこれで終わらない。
【【FINISH TIME!】】
剣にしたジカンハカリバーと打撃モードにしたジカンジャナックルに、それぞれのライドウォッチをセットしたロワとレクスがレプリカゴーストに向かって直進する。
【LOI! PITTARI SLASH!!】
【REX! KACCHIRI BREAKING!!】
『うぐっ!?』
交差するように、二人の必殺技が炸裂した。
ロワの斬撃とレクスの打撃を叩き込まれたレプリカゴーストだが、身体をよろめかせるだけに終わってしまい、撃破するには至らない。
だが……。
【DAIKAIGAN! SPECTER! OMEGA DRIVE!!】
「はあああああああああああっ!!」
ゴーストドライバーを操作し、上空へと跳び上がっていたスペクター魂のライダーキックが追撃するように彼の胴体を捉えた。
青いエネルギーを纏った蹴りがレプリカゴーストに直撃した瞬間、凄まじいほどの火花が散る。
『ぎゃああああああああああああああああっっ!!!』
渾身の力で右脚を捻じ込まれ、絶叫と共に吹き飛んだレプリカゴーストが爆散した。
爆風の余波でパーカーの裾を靡かせたスペクターが地面へと着地する。
しかし、仮面の下にある表情には安堵していない。
確かな手応えは感じた……しかし、それ以上の悪寒が彼女に警戒信号を発しているのだ。
やがて爆炎の余波が治まると、想像通りレプリカゴーストは未だ健在だった。
『ぐっ、うぅぅぅぅぅ……!まだだっ、まだ俺は、俺たちは……!!』
赤・青・緑・白などの様々な光を虚ろに放つ眼魂が浮かび上がり、ロワたちを見つめる。
まるで、王を守るかのようにこちらに視線を向ける眼魂の中心に、レプリカゴーストはいた。
覚束ない足取りで立ち上がった彼の体内から『ある物』が飛び出した。
「……眼魂だと?」
橙色の光を放つ物体……恐らく自らの魂であろう眼魂を取り出したことにレクスが首を傾げる。
仮面ライダーゴーストの力を再現しているため、眼魂と肉体を分離させることは贋作でも可能だが、眼魂を砕かれれば命を落としてしまう。
自らの弱点を晒すような行為にロワたちが驚く中、レプリカゴーストに新たな変化が起こる。
【ZENKAIGAN……!】
擦れたおどろおどろしい不気味な音声が響いた瞬間、全ての眼魂はレプリカゴーストの身体へと吸い込まれていく。
そして最後の眼魂……晴天自身の魂がレプリカライダーへと吸い込まれた。
『ぐっ!うウッ……オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』
瞬間、その身体が輝き始める。
辺りを照らさんばかりの極光に全員が思わず目を覆う。
やがて光が収まり、そこにいたのは黒い異形。
錆びた黒い装甲に覆われており、各部には巨大な銀色のネジが飛び出している。
まるで、棺桶から出てこようとする亡者を無理矢理押さえつけるべく、トンカチとネジで身体ごと打ち付けたかのようだ。
両腕と両脚から見える隙間から、赤や青などの様々な色の充血した目玉が、獲物を探すように上へ下へと不規則に動く。
十五人……レプリカゴーストと協力した魂は選ばれた偉人たちと同じ数だ。
そして魂たちは各々が偉人たちへの敬意と才能を持っていた。同時に彼らは共通の想いを抱いていた。
だからこそ、その魂を収束させたレプリカゴーストは至ったのだ。
偉人に相応しい魂の集合体、偉大なる死者、レプリカゴーストは彼らの魂に感謝するであろう。
この贋作に新たな名をつけるとしたら……。
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!』
『レプリカゴースト グレイトフル魂』……十五の魂を我が物とした幽鬼が、魂を震わせんばかりの雄叫びをあげた。