仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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 後編です。今回はテンションが上がりきった弊害による大判振る舞いとなっております。どうかお楽しみください。





濁ったような灰色のオーロラに包まれた景色……そこにある作業机に、白衣を羽織った一人の男性が座っていた。

「ふン、ふんふーン♪」

上機嫌な鼻歌をしながら、背中を丸めた彼はルーペを使いながら両手に持った道具を使って繊細な作業を続けていく。
やがて、最終工程を終えた彼はルーペを外して一息を吐いた。

「終わったか」

そんな彼に声をかけたのは体格の良い、190cmもある長身の男性。
丈の長いロングコートは白く、ズボンと目元を隠すほど深く被っている帽子も全身白で統一されており、近寄りがたい雰囲気を出している。

「やア、よく来てくれたネ」

そんな威圧的な空気を発している男性に気にすることなく、白衣の男性ことファスティは先ほどまで弄っていたデバイスを見せる。
それは当然のことながらレプリカウォッチ……しかし、紫で統一されていた外装は赤紫へと変わっており、禍々しいエネルギーが迸っている。

「レプリカウォッチの改造、か……」
「近々、他のメンツにも同じ改造を施すつもりサ。だけド」

そこで一端、言葉を切ったファスティはロングコートの男性に別の改造レプリカウォッチを投げ渡す。
両手でそれを受け取った彼に、言葉を続けた。

「まずは正常に動くかの実験サ。頼んだヨ、『サーディス』」
「……」

名を呼ばれた白いロングコートの男性は、ポケットにそれを捻じ込むとその場から立ち去る。
一人背もたれに寄り掛かったファスティは、これから起こるであろう事象に心を躍らせながら、ほくそ笑むのだった。


TIME12 レッツゴーゴースト!1004

彼と相対した瞬間、人間でないことはすぐに分かった。

生きている人間とそうでない人間……幽霊になっていた尊瑠はそれを見分けることが出来るようになっていからだ。

しかし、目の前にいる少年に敵意はない。

その証拠に、今はヒヨと律儀に遊んでくれているからだ。

しばらく遊んで満足したのか、彼女に手を引かれてこちらへ戻ってきた少年は尊瑠に声をかける。

 

「あはは。こんなに遊んだのは初めてかな?生きていた時は身体が悪かったからね」

「そう、なんだ」

 

その言葉に、どう言葉をかけたら良いのか分からない。

感情を喪失した自分には、難しい話題だ。

彼もそれが分かったのだろう……本題へと入るべく、表情を引き締めた少年が尊瑠の眼を真っ直ぐ見つめると、口を開いた。

 

「お願い、僕の家族を助けて」

 

 

 

 

 

十五の眼が、彼らを睨む。

邪魔をするなと、願いを叶えると、様々な感情の入り混じった目玉が蠢く。

まるで日本古来に登場する妖『百々目鬼』のようだ。

だが彼は妖怪ではない。

 

『ガアアアアアアアアアアアアッ!』

 

仮面ライダーの贋作・レプリカライダー……その中でも強化フォームを疑似的に再現した異質な存在。

新たな姿へと変身したレプリカゴーストは雄叫びを轟かせると、頭部にある橙色の目玉をロワたちへと向ける。

 

「この力……!?」

 

まるで尊瑠の変身するグレイトフル魂と同じ力に、スペクターが身構える。

凄まじいまでの重圧に全員が身動きを取れず、ただ向かい合うことしか出来ない。

それほどの存在感と力を、周囲に叩きつけているのだ。

 

『グゥゥゥゥ……!!』

 

唸り声をあげるレプリカゴーストが一歩踏み出したその時。

全ての時間が止まった。

 

「……これはっ」

 

ジクウドライバーの仮面ライダーと、イレギュラーであるスペクターたち違う世界からの仮面ライダー。そしてDOLLSの全員は意識を保ったまま停止させられた周囲を見渡す。

時間が止まっているのは、一歩踏み出さんとしたレプリカゴーストのみ。

そんな世界に響くブーツの音。

 

「驚いた。王にならないで覚醒するなんて」

 

そう独り言ちるのは、赤いジャケットの青年。

その姿を見たレクスが敵意と憎悪を剥き出しにする。

 

「貴様はっ!」

「初めまして、かな?僕はワールドハックのナイン……一応、彼と契約している」

 

それだけを告げると、ナインは体内に埋め込んだレプリカウォッチを起動させる。

禍々しい紫色のエネルギーに包まれた身体は、一瞬だけ蛹のような形状になるとすぐに砕け散り、その容姿を露にした。

 

【KABUTO……!!】

 

不気味な音声と共に赤い甲殻が太陽の光に反射して輝く。

頭部にはカブトムシを思わせる赤い大型の角が生えており、顔の眼に当たる部分には人間の手を思わせる白い指が入り込んだのような造形になっている。

身体中に昆虫類の脚を所々に生やした異形……名は『レプリカカブト』

 

『こうなった以上、彼には王になってもらわなきゃ困るんだ。ここでお暇させてもらうよ』

「待…」

【CLOCK UP……!】

 

擦れたような音声が響くと同時に、時が止まったままのレプリカゴーストに触れたままレプリカカブトはそのまま姿を消してしまった。

瞬間、時間停止が解除されるとロワたちは変身を解除する。

圧倒的なまでの重圧に解放されたことで椋は思わずへたり込んでしまう。

 

「しっかりしろ」

 

颯太が肩を貸してくれたことに「ありがと」と短く返している間に、麻琴も先ほど標的にされていた教師に話を聞いている。

教師の方は、何も言わずに黙っているだけだ。

「それなら」と麻琴はカマをかけてみる。

 

「何か秘密でも握られているの?あの怪物に…」

「怪物なんかじゃない!」

 

その単語に顔を上げて叫ぶ。

予想通りの反応を見せた彼は、堰を切ったように言葉をぶつける。

 

「あいつは、晴天は夢夜のために行動しているんだっ!あいつだけじゃないっ、俺やみんなだって夢夜のために……!」

 

そこまで言って、彼は沈黙する。

その表情は苦しく、良心の狭間で揺らいでいるようにも見える。

肩を借りたまま、椋は教師の青年に改めて問いかけた。

 

「お話、聞かせてください」

 

 

 

 

 

少年『御霊夢夜(みたまユメヨ)』に肉親はいない。

物心付いた時には施設に預けられていた孤児だった。

それでも、彼は実の両親を憎んだことは一度もない。

悲しかったが、自分を生んでくれたことだけは素直に感謝していたからだ。

それに、施設長や職員たちも実の子のように可愛がってくれたし、自分と同じ同年代の子どもたちもたくさんいた。

だから、寂しいと思ったことはなかった。

 

「僕は、みんなが将来のことを話しているのが好きだった」

 

ベンチに座ったまま、夢夜は尊瑠とヒヨに話を続ける。

教師になりたい、科学者になりたい、明るい話をキラキラした顔で話している姿は自分の心も明るくしてくれた。

だが、そんな日は続かなかった。

 

「不治の病って言うのかな?気付いた時には、自分の病気がもう手遅れになっていた」

 

早期発見が遅れたために、最後は病室で眠るように亡くなっていた。

何度か見舞いに来てくれた時の悲しい顔をした家族の顔が、今でも鮮明に思い出せてしまう。

だが、それなら何故彼はここにいるのだろうか。

 

「自分がこの世にいるって分かった時、嫌な予感がしたんだ。その方向に進んでいくと、晴天……僕にとっての兄貴分だった人が怪物にさせられていた」

 

赤いジャケットの青年の手でレプリカゴーストへと変身した彼は、かつての仲間たちの魂を集め始めたのだ。

集めたのではない、彼らは自分を読みがらせるために魂を捧げているのだと確信した。

 

「僕は、止めたい……!」

「どうして?」

 

尊瑠は首を傾げる。

最初に見たあの怪人、レプリカゴーストは無差別ではなく合意の上で魂を抜き取っていた。

ならば悪いことではない。

夢夜もまた、大人になれずに死んでしまった子どもなのだ。

それなのに、何故彼はこんなにも辛い顔をしているのだろう……。

 

「そっか。夢夜君は悲しいんだね」

 

ヒヨが優しく彼の頭を撫でる。

悲しい?それは一体、何のだろう。

今の辛い様子が、悲しいということなのだろうか……。

 

「僕は、みんなの犠牲で生き返りたくなんかないっ。僕のことなんか、忘れて自分の道を進んでいてほしいんだっ!ただ、それだけなんだ……!」

 

彼の瞳から何かが零れる。

それは一体何だろう?

でも、尊瑠から見た夢夜はあまりにも辛そうだ。

胸が苦しくなる。

どうにかしようと、尊瑠が口を開いた時だった。

 

「忘れられるわけがないだろ」

 

そこにいたのは、チェック柄の服を着た青年……青空晴天だ。

だがおかしい。

夢夜は今は肉体のない魂だけの存在、つまりは尊瑠と同じ幽霊。

それなのに、何故姿が見えているのか……。

そんな尊瑠や夢夜の動揺に応えるように、晴天は続ける。

 

「どうやら。俺に埋め込まれた時計が、お前の姿を見えるようにしてくれたみたいだな……本当に久しぶりだ。夢夜」

「晴天っ、みんなの魂を解放するんだ」

「それは出来ない……親なしの俺たちがここまで生きてこれたのは、お前がいたからだ。お前が話を聞いてくれたことが、俺たちを肯定してくれたことがっ!どれだけ救いになったか分かるかっ!?」

 

親に捨てられたという事実が、自分たちをずっと苦しめていた。

そんな自分たちと同じであるにも関わらず、一番の年下だった彼はずっと笑顔でいたのだ。

自分たちの話を聞いて笑ってくれる彼のおかげで、自分たちは生きていて良かったと思えるようになった。消えそうになっていた心を、夢夜が繋いでくれたのだ。

 

「お前は、俺たちの英雄なんだ。だから、今度は俺たちがお前を助けるんだ。十五の魂と……」

 

そこで言葉を切った晴天は、視線を向ける。

夢夜の方ではなく、尊瑠へと。

 

「根源に繋がるお前を器にしてなぁっ!!」

「危ないっ!」

 

叫びと共に彼の手から火球と劇薬のエネルギー弾が生成されると、躊躇なく放つ。

ヒヨは尊瑠の前に立ち、手にした長剣で斬り裂く。

しかし、その隙を狙うように続けて放たれたもう一つは防ぐことが出来ない。

もう一つの武器でどうにか防御しようとした時だ。

 

「駄目だっ!!」

 

劇薬のエネルギーを、夢夜が受け止めた。

これにはレプリカゴーストやヒヨたちも驚愕する。

そんな彼らとは対照的に、夢夜は口を開く。

 

「はぁっ、はぁっ!僕だって、僕だってみんなに助けられたよ」

「えっ」

「僕は、みんなが笑っているのが好きだった。みんなが僕の分まで生きていることが、本当に嬉しいんだよっ!」

 

また、瞳から何かが零れ落ちる。

尊瑠の胸が締め付けられる。

何なのだろう。あれは一体、何なのだろう。

この辛い気持ちは、何を意味しているのだろう。

 

「心は、繋がっているんだよ。晴天……だから、君やみんなにはこんなことをしてほしくないんだっ」

 

そう話す彼の身体は、徐々に透けて消滅していく。

恐らく、この場に留まるための時間制限が迫っているのだろう……しかし、彼は尊瑠の元まで近づくと、そのまま優しく抱き締める。

 

「お願い、晴天とみんなを助けて……!」

「……!」

 

その想いが、思念が尊瑠へと流れ込む。

彼の過去が、思い出が走馬灯のように映し出されていく。

そうして彼は理解した。

夢夜の抱いていた感情の正体が、自分の胸を締め付けている辛い気持ちの意味が……。

そうか、これが。

 

「後は、任せて」

 

尊瑠がそう告げる。

夢夜は流した涙を拭うと、精一杯笑ってから消えてしまった。

きっと、本来のあるべき場所へ帰ったのだろう。

 

「どうしてっ!何でだっ、待ってくれ夢夜っ!夢夜おおおおおおおおおおっっ!!

 

晴天が叫ぶ。

ようやく家族に会えると思った。生きる意味を与えてくれた恩人を助けることが出来ると思った。

それなのに、彼は泣いていた。

ごちゃ混ぜになった感情を整理出来ないまま、晴天は叫んだ。

地面を殴り、拳から血が流れることも気にせず、吐き出すように殴り続けながら「何でっ」と叫び続けた。

尊瑠とヒヨも、その光景に何も言うことが出来なかった。

やがて、しばらくして彼はゆっくりと立ち上がる。

その顔には、何の感情もなかった。

 

「認めない……っ」

【GHOST……!!】

 

晴天は体内に埋め込まれたレプリカウォッチを起動させて変身する。

 

『俺たちが生きて、あいつが死んだままの世界なんて、絶対に認めないっ!!認めてたまるかあああああああああああああっっ!!!』

【ZENKAIGAN……!】

 

叫びと共にレプリカゴーストは自らの魂を含めた十五の眼魂を体内に再び取り込んでグレイトフル魂へと変貌。

すると、それに呼応するかのように巨大な目玉の紋章が出現。

 

『ギシャアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

そこから姿を現したのは、複数の眼と強靭な灰色の鱗に持った蛇のような巨体……尻尾の先端らしき部分には鋭い爪のような刃が生えた生物だ。

逸れの名は『グンダリ』……『ゴーストの世界』に存在する眼魔たちの使い魔である。

理性の失った叫びを、まるで泣き叫ぶかのように吠えるレプリカライダーを見据えた尊瑠が立ち上がる。

 

「分かる。今なら分かるよ……その『悲しみ』が」

 

締め付けられるような心を押さえ、顔を上げる。

彼の眼からは一筋の涙が零れており、痛いほどの感情が今の彼には理解出来ている。

だからこそ……。

 

「あなたたちに、これ以上こんなことはさせない。その悲しみも、彼が流していた涙も……俺が止めてみせるっ!!」

 

その想いに応えるかのように、尊瑠の腰にはゴーストドライバーが出現。

最初の朧気な様子とは違う。

それは涙の意味を、悲哀という人間の持つ想いを一つ取り戻したからだ。

悲しみの連鎖を終わらせることを誓った尊瑠の想いに呼応し、ブランクライドウォッチに力が宿る。

橙色の外装を持ち、英雄との心を繋ぐ幽霊の力『ゴーストライドウォッチ』だ。

 

『グオアアアアアアアアアアアッ!』

 

叫ぶレプリカゴーストと対峙する尊瑠。

だが、この世界には彼らが……仮面ライダーがいる。

 

「尊瑠さんっ、ヒヨ!」

「マスター!」

 

バイクで騒ぎのある現場に急行した椋が二人の元に駆け寄る。

後ろには麻琴と颯太もおり、レプリカゴーストから視線を外さないようにしている。

 

「尊瑠さん、実は……!」

「大丈夫。話は全部分かっているから」

「えっ?」

 

先ほどとは違う、何処かはっきりとした喋り方に戸惑う椋。

しかし、気にすることなく尊瑠はゴーストライドウォッチを譲渡する。

驚く椋に、その幽霊は少しだけ微笑む。

 

「行くよ、椋君。俺に力を貸して」

「……はいっ!」

 

それ以上、言葉はいらなかった。

想いを繋ぐべく、椋もまたジクウドライバーを装着して彼の隣に並び立つ。

レプリカゴーストは変身を妨害するべく動き出そうとする。

しかし、それは叶わない。

 

「僕を忘れてもらっては困る」

 

白いガンガンハンド『ガンガンキャッチャー』から銃弾を放ったのはアイン……バイトを終え、速攻で戦場へと馳せ参じた彼に麻琴は笑みを見せる。

 

「早かったわね、アイン」

「君が言ったんじゃないか。終わったらすぐに来いって」

 

そう微笑んだアインが二人の隣に並び立つと、取り出したそれぞれのアイテムを起動する。

 

【REX!!】

【DIVE TO DEEP……】【アーイ!】

【ギロットミロー!ギロットミロー!……♪】

「「「変身っ!!」」」

 

颯太は仮面ライダーレクスへと変身。

麻琴はゴーストドライバーのサイドレバーを、アインはメガウルオウダーのボタンを押してセットした眼魂の力を解放する。

それぞれのデバイスから召喚されたパーカーゴーストたちは宙を舞い、全身をスーツで覆った二人に憑依するように装着する。

 

【GENKAIGAN! DEEP SPECTER!】【GET GO覚悟!ギ・ザ・ギ・ザ・ゴースト!!♪ 】

【TENGAN! NECROM! MEGAURUOUD!】【CRASH THE INVADER!!】

 

赤い目玉の紋章を持った銀色のスーツに、刺々しい紫のパーカーを羽織った戦士……深淵を覗きし者『仮面ライダーディープスペクター』だ。

アインもネクロムへと変身し、我が物顔で空を飛び続けるグンダリの元まで走る。

そして……。

 

【LOI!!】

【GHOST!!】

【アーイ!】

 

椋もロワライドウォッチとゴーストライドウォッチを同時に起動し、尊瑠も眼魂を取り出す。

自らの魂を封じ込めたオレ眼魂を左の掌で押した後にカバーを外したドライバーに装填。オレンジの装飾を持つパーカーゴーストを召喚する。

 

【バッチリミナー!バッチリミナー!……♪】

 

空を舞い、韻を踏んだ軽快な音声に合わせるように彼は印を結び、時計のエフェクトを出現させた椋と共にあの言葉を叫んだ。

 

「「変身っ!!」」

【ARMOR TIME!】

【KAIGAN!】

 

ドライバーを操作し、二人はそれぞれのアイテムに宿った力を解放する。

パーカーゴーストは尊瑠が変身した黒い素体へと覆い被さり、そのマスクは橙と黒へと変わる。

そして、変身したロワも目の前に出現・分割したアーマーを装着した。

 

【KAIGAN! GHOST!!♪】

【KAIGAN! ORE!】【LET'S GO覚悟!GO・GO・GO・GHOST!!♪】

 

緑色に輝く「ゴースト」と象った鏡文字、橙色と黒い装甲と両肩の眼魂型の装飾を纏った戦士……英雄と心を繋ぐ幽霊。

並び立ったロワの姿を見て、何か思うところがあるのか尊瑠の変身した戦士は彼の腕を軽く叩いて何やら耳打ちする。

その内容に頷いた彼は素直に声を揃える。

 

「「命、燃やすぜっ!!」」

 

レプリカゴーストのオリジナルたる『仮面ライダーゴースト オレ魂』と『仮面ライダーロワ ゴーストアーマー』が直進した。

 

『ガアアアアアアッ!』

 

レプリカウォッチの力がそうさせたのか、本能による危険信号を即座に受信したレプリカゴーストは鉄の竹刀を取り出し、赤い斬撃を飛ばす。

 

「でやっ!」

 

召喚したガンガンセイバーを居合い抜きのように振るい、斬撃を相殺したゴーストはロワと共に走る。

初弾を防いだゴーストたちに苛立ちの籠った唸り声を漏らしながら、レプリカゴーストはクレー射撃に用いられる散弾銃を召喚し、照準を合わせると薬剤師の力で生成した猛毒の弾丸を次々と放つ。

 

「「ふっ!」」

 

だが命中するよりも前に、ゴーストとロワの肉体がゆっくりと透明になる。

当然毒の弾丸は当たることなく擦り抜ける。その様子はまるで実体のない幽霊のようだ。

 

『グゥッ!?ガアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

「「はぁっ!!」」

 

動揺するレプリカゴーストの一瞬の隙を狙うかのように、二人の戦士が放った飛び蹴りが炸裂する。

後退った幽霊の贋作は巨大なハンマーを召喚し、霊体でも通じるであろう電気と冷気を秘めた一撃を振り下ろすも、ロワの放った連続蹴りが炸裂し、ゴーストはムサシ魂となってガンガンセイバーによる二刀流でダメージを与えていく。

一方、グンダリにダメージを与えていたディープスペクターはドライバーのグリップを握り締める。

 

「私の怒りは、有頂天に達している……!」

「それを言うなら頂点だぞ、麻琴」

「今の言葉も含めて、今頂点に達したっ!!」

 

先ほどの言い間違いを棚に上げ、グンダリに怒りを宿した彼女はグリップを引いて押し込んだ。

 

【GENKAIDAIKAIGAN! GEKIKO SPECTER!】【DEAD GO激怒!ギ・リ・ギ・リ・GHOST!】

【闘争!暴走!怒りのソウル!!♪】

 

背中には刺々しい翼を生やし、限界を超えた力が全身に漲る。

心の深い内に秘めた怒りを解き放ったディープスペクター……否、ゲキコウスペクターはガンガンハンドとディープスラッシャーの二丁で銃撃を開始する。

先ほどよりも強い威力を秘めたエネルギーの乱射を受けたグンダリが煙を上げて空中でもがき苦しむ。

ネクロムとレクスも勝機を見出し、ゲキコウスペクターと共にデバイスへと触れる。

 

「私の生き様、見せてやるっ!!」

「心の叫びを聞けっ!」

「砕け散れ……!」

【KYOKUGEN DAIKAIGAN! DEEP SPECTOR!】

【DESTROY! DAITENGAN! NECROM!】

【EX-AID! JIRIJIRI CANNON!!】

 

まず、エグゼイドライドウォッチを装填して先制攻撃を仕掛けたのはレクス。

全てのエネルギーを武器に集中させ、渾身の力を込めて放つ。

その際、エグゼイドのライドウォッチは力を失い、色がなくなってしまう。

しかし、ハンマーを模したその砲撃はグンダリの身体に命中し、黒煙を上げながら抵抗を弱めていく。

それを二人は逃さない。

それぞれの必殺音声を鳴らしたゲキコウスペクターとネクロムは空高く跳躍し、グンダリに向けて右脚を突きつけると膨大なエネルギーを纏った。

 

【GIGA OMEGA DRIVE!!】

【OMEGAURUOUD!!】

「「はああああああああああああああっっ!!!」」

『ギシャアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

直撃を受けた単眼の巨大な蛇は断末魔の悲鳴と共に爆散。

地面を削りながら着地を果たした二人は、巨大な爆発を背後に拳を軽く打ち付けた。

ベンケイ魂の力でレプリカゴーストをハンマーモードにしたガンガンセイバーで殴り飛ばしたゴーストは新たな眼魂を取り出す。

 

【ムゲンシンカ!】【アーイ!】

【バッチリミナー!バッチリミナー!……♪】

 

ゴーストが取り出し、起動したのは尊瑠が持つ可能性を秘めた白き眼魂。

「∞」を象ったそれをすぐさまゴーストドライバーにセットし、パーカーゴーストを召喚する。

 

【TYO KAIGAN! MUGEN!】

【KEEP ON GOING! GO GO GO! GO GO GO! GO GO GO! GOD GHOST!!】

 

白い羽根を舞い散らしながら、無限と夢幻の力を宿したパーカーゴーストはゴーストに覆い被さり、その姿を変える。

ロングコート状になった白いローブを靡かせ、クリアカラーのバイザーに覆われたマスクには橙色の複眼が見える。

頭部に生やした虹色に輝く一本角を持つ戦士『仮面ライダーゴースト ムゲン魂』はフードを外すと、ブレードモードにしたガンガンセイバーの柄を握り、ドライバーのレバーを引っ張って押し込む。

ロワもジクウドライバーに装填した二つのライドウォッチのスイッチを押してからバックルを回転させた。

 

「人間の可能性は、ムゲン大だっ!!」

【INOCHI DAIKAIGAN! KANASHIMI BREAK!!】

「僕は、僕を信じるっ!!」

【OMEGA! TIME STRIKE!!】

 

取り戻した『哀』の感情と、自らの可能性を信じる心が戦うためのエネルギーとして湧き上がる。

浮かび上がった橙色の紋章は力の奔流となってロワの右脚に収束すると同時に、宙へ浮かぶ。

それを迎撃しようとレプリカゴーストが無数の武器を召喚して投擲するも、ゴーストのガンガンセイバーに込めた一撃が弾き、相殺する。

そして、その大剣を下段に構え直進した。

 

「はぁっ!!」

『ゴ、アアッ!?』

 

擦れ違い様に放たれた青い一閃がレプリカゴーストの身体を斬り裂いた。

刻まれた傷痕から十四の眼魂が零れ落ち、引き寄せられるように何処かへと飛んでいく。

 

『ゴッ、ア……カラダガ、ツなギあゲたっ、チカラがぁっ!?』

 

恐らく本来の肉体へ戻っていったのだろう……最後に残った眼魂もレプリカゴーストに戻ったことでグレイトフル魂が解除されてしまう。

理性の戻った苦し気な呻き声と共にたたらを踏む幽霊の贋作……しかし、ゴーストはその隙を見て追撃する様子はない。

その必要がないからだ。

何故なら……。

 

「やあああああああああああっっ!!!」

 

自らの力と想いを繋いだ英雄(ロワ)がいるからだ。

急降下する跳び蹴りをレプリカゴーストは腕を交差させて防御する。

 

『くっ、ぐぅぅぅぅぅ……!!』

 

力を込めて自らに突き出された右脚を防ぐ。

しかし、未練に縛られた贋作と……。

 

「オリャアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

人間の可能性と、強い意志を理解した『本物』には決して勝てない。

彼らの想いを受け取ったパーカーゴーストたちも眼魂から飛び出し、ロワとゴーストのサポートを行うべくレプリカゴーストを翻弄する。

攻撃を耐えていたレプリカライダーの防御が、ついに途切れた。

 

『がああああああああああああああっ!?』

 

オメガタイムストライクを胴体に打ち込まれたレプリカゴーストは吹き飛び、悲鳴と共に爆散。

気を失った晴天が地面を転がると同時に、排出されたレプリカウォッチも音を立てて砕け散った。

レプリカゴーストが撃破されたことで、彼の介入した事件や出来事が全て修正されていく。

 

「……元の世界に、帰れるのね」

 

スペクターがそう呟きながら、淡い光に包まれていく世界と自分の身体を見る。もちろん、ゴーストやネクロムもだ。

本来、この世界に存在しない彼女たちは現れたのは歴史の歪曲者を正すために選ばれた抑止力のようなもの……役目を終えれば、元の世界に帰るのが道理だ。

 

「しっかりなさいよ、この世界の英雄さん」

「迷った時は他でもない。自分の心に従うんだ」

 

ロワとレクスにエールを残し、スペクターとネクロムは『ゴーストの世界』へと強制帰還される。

最後に残ったゴーストも変身を解除するとロワの方に向き直る。

 

「ヒヨちゃんに、ありがとうって伝えといて」

「はい」

「それと……君たちの心と繋がれて、本当に良かった」

 

そう微笑むと、今度こそ彼も元の世界へと戻った。

先ほどまでいた場所をしばらく見つめると、ロワの変身を解いた椋がゴーストライドウォッチを見つめる。

きっと、彼は元の世界で感情を取り戻すべく戦うのだろう。

でも一人じゃない。

心を繋いだ、仲間や英雄たちと一緒に歩んでいくのだ。

 

「マスター!颯太さん!」

 

サクラの声に振り向けば、DOLLSのみんながこっちに向かってくるのが見える。

 

「マスター、颯太君っ!行こっ!!」

 

太陽のように笑うヒヨに引っ張られるように、椋と颯太は彼女たちの元まで向かうのだった。

 

 

 

 

 

闇夜を、紅い影が躍る。

それはまるでダンスのように、あるいは曲芸師のように、幻想的で掴みどころのない動きは見る者全てを魅了する。

それはまるで神秘の使い手……『魔法使い』

 

「よっと!」

 

障害物を躱し、手に持った原石を落とさぬよう足を止めることなく進む。

紅の宝石を輝かせながら、舞い続ける魔法使い。

そう、彼は伊達や酔狂で踊っているわけではない。

 

「待ちなさいっ!」

 

凛とした女性の声が響く。

琥珀色のマスクを持つ、右側に同色の肩マントを羽織った魔法使いが黒い手形の装置が組み込まれた銀色の片手銃を向ける。

銃口から発射される弾丸は彼女の魔力で生成された魔の者を討つ銀の銃弾。通常の兵器ではありえない軌道で迫るそれを、魔法使いは宙を回転して躱す。

しかし魔法使いの動きが止まる。

 

「あら?」

 

行き止まりだ。

つまり、まんまと誘われてしまったのだ。

後ろには銃を構える琥珀色の魔法使い。

本来なら、ここで終わりなのだろうが彼には関係がない。

有り得ないことを起こすのが、魔法使いなのだ。

 

「Arrivederci.美人な魔法使いさん」

 

バックル部分にある黒い手形に、右手にある指輪をかざすと周囲に眩いほどの閃光が走る。

暗闇からの強烈な光に思わず顔を覆い隠す。

そして、閃光が収まる頃には魔法使いは姿を消していた。

 

「……くっ!」

 

悔しさに地面を蹴った琥珀色の魔法使いは変身を解除する。

また逃げられた……!

しかし、今度は絶対に捕まえて見せる。

改めて決意を固めたその女性は、魔法使いの名を口にした。

 

「怪盗……指輪の魔法使い『ウィザード』!』

 

Next Legend Rider……WIZARD&???




 劇中では触れませんでしたが、晴天が尊瑠を襲った理由はワールドハック・ナインの入れ知恵です。
 「十五の偉人に近い人間の魂と根源に接続した人間の魂を器にすれば願いが叶う」と吹き込まれたことで襲ってきました。ちなみに事実がどうかは彼のみぞ知るです。
 さて、次回はリマジウィザード編!ちなみに魔法石の世界ではなく、また違うリマジの世界となっております。
 ではでは。ノシ


空白 尊瑠(そらしろタケル) ICV下野紘
『ゴーストの世界』で仮面ライダーゴーストに変身する少年。幽霊になった時の記憶が喪失しているため、当初は記憶を自分を蘇らせるべく、眼魂を集めていた。
ムゲン魂になったことで、優しさ以外の全ての感情が喪失してしまう『感情奪還編』だったため、ぼんやりとした性格になっていたが、本来は喜怒哀楽のある心優しい人物で、根っからのスケベ。
特に女風呂や女子更衣室を覗くことに並々ならぬ熱意と情熱を持っているが、毎回麻琴に絞められるのがオチとなっている。好みのタイプは巨乳。

レプリカゴースト ICV斎賀みつき
大学生『青空晴天』がワールドハックのナインと契約することで変身したレプリカライダーの一体。
モチーフの『仮面ライダーゴースト』の力を再現したレプリカウォッチを憑依させることで誕生した。
裾や袖がボロボロになった、鋲が至るところに打ち込まれた黒いパーカーのような装束を羽織っており、白髪のような頭部にはフードを被っている。
頭部は黒く鋭い歪な眼があり、橙色に染まった顔には骸骨を思わせる鼻と口が不気味に浮かび上がっているなど、黒いパーカーの幽霊が腐乱した亡骸に寄生し取り憑いているようにも見える。
背中には「GHOST」と「2015」の不気味な白い文字が記されている。
抜き取った生者の魂から眼魂を生成する能力を持ち、それを使用することが出来る。また、透明化や空中浮遊なら宛ら幽霊のような動きや身軽な動きから繰り出す格闘戦も得意としている。
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