仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
今回から作風がかなり変わるのと、オリキャラが多数出現しますのでご注意ください。
とある商店街、そこにはひっそりと手品の開催を主とした小屋がある。
内部は観客席と舞台という、このご時世ではあまり見ない一昔前の内装だ。
その舞台には、一人の青年がいた。
笑顔を絶やすことなく、しっかりシャッフルしたトランプのカードによるパフォーマンスを披露する。
二十代という年齢からすれば驚き賞賛されるかもしれないが、それはプロならば出来て当然の技術であり、さほど驚くものでもない。
その証拠に観客の数はまばらであり、僅かな拍手は虚しさを覚えてしまう。
やがて全てのショーが終わり、観客全員がいなくなった席で先ほどの手品を披露していた青年が深い溜め息と共に腰を下ろしていた。
「光流君」
そんな彼に声をかけるのは、スーツ姿の女性。
若々しく、長い栗色のロングヘアーを靡かせた美人だ。
右にある泣黒子が魅力的に映る女性を見た青年『石橋光流』が慌てて立ち上がる。
「せ、先輩!」
「ごめんね。せっかく手伝ってくれているのに、何も出来ないで……」
「そんなっ!先輩はこの小屋を畳まないように頑張っているじゃないですか!俺の方こそ、お客さんを満足させる芸が出来なくて……すいません」
頭を下げる彼に『環結衣』は「顔を上げて」と慌てる。
この二人は、高校時代で部活の先輩後輩という関係であり、『奇術同好会』という部活に所属していたのだ。
「っ。ごめんね、お父さんから……」
「あ、はい」
一礼してから、環は小屋から出て行ってしまう。
少しだけ見えた彼女の暗い顔を見た光流は、頭を抱えたまま座席に腰を下ろした。
「やっと、やっと先輩に恩返しが出来る思ったのに……!」
暗かった学生時代、一人だった自分に声を掛けてくれたのが彼女だった。
同好会に誘われ、新しく作れた友人と一緒に手品を披露した……楽しい青春を送ることが出来たのは、彼女のおかげなのだ。
(一体どうすれば……!)
彼女は自分にとっての『希望』だ。
絶対に助けたい……。
座ったまま、暗い考えを張り巡らせていた時だった。
「随分と、辛気臭い顔だな」
低い、男の声が聞こえた。
驚いて顔を上げれば、少し離れた席に声の主と思われる男性が座っていた。
白いロングコートとズボン。白い帽子を深く被った長身で屈強な男性だ。
よく見れば、周囲の景色がまるで写真か何かのように止まっており、まるで時間その物が停止させられているよう……。
「な、何なんですか……あなたはっ」
「ワールドハックの『サーディス』」
短く、そう名乗った男性……サーディスは座ったまま懐中時計のような機械を掌で転がしている。
しかし時計のような外装こそしているが、毒々しい赤紫色のカラーリングが嫌に目についた不気味な機械だ。
「このままだと、この小屋は潰れる。これは紛れもない、事実だ」
「じゃあ……どうすればっ」
「方法ならある」
そう言って、光流に不気味な機械……レプリカウォッチを見せつける。
そこには砕けた赤い宝石の仮面が映し出されている。
何かあると、そう確信した。
理由は分からない、理屈もないが男の持っている時計が単なる玩具や道具でないことを理解する。
気づけば、問いかけていた。
「……それがあれば、この小屋をっ。先輩を助けることが出来るのかっ?」
「ああ。今からテメーが手にするのは、希望と万能の力だ」
鋭い視線を向けたまま、レプリカウォッチを見せるサーディス。
沈黙する二人。
やがて、意を決した光流は顔を上げた。
「わ、分かった」
「契約成立、だな」
【WIZARD……!!】
「ぐっ、ううっ!?」
響いた音声と共に埋め込まれたレプリカウォッチは再現した魔法使いの力を解放し、禍々しいエネルギーが光流の肉体を覆い隠していく。
『ああああああああああっ!?』
現れたのは、ボロボロのローブに身を包んだ宝石の魔法使い……最初に椋たちが遭遇した贋作の仮面ライダー『レプリカウィザード』だ。
体内に宿した魔力が余波となって外に放出されると同時に、一瞬だけ周囲の景色にノイズが走り、空間が歪むも変身者に気づかれないまま、すぐに消えてしまう。
変身させられた身体と与えられた力にレプリカウィザードは戸惑うが、サーディスは表情を変えないまま左に持ったもう一つのレプリカウォッチを起動させた。
「今日からテメーも、仮面ライダーウィザード……そして」
【■■■■■……!!】
「『仮面ライダー■■■■』だ」
二つの力を持つレプリカライダーが、この世界に誕生した。
そして、このまま時間が二週間も過ぎた。
「『マジックショー』?」
喫茶店兼宝石商『ジュエル』の店員である『
椅子に腰を下ろしながら、首を傾げる彼に少女が緊張した様子で説明する。
「その、最近になって急激に話題になっている手品師の方も出演されていて……これはその、ショーのチケットなんです!それで、そのっ」
目の前にいるのはレディース用のスーツに身を包んだ黒髪の女性。
腰まで伸ばしたロングヘアーは美しく、恵まれた長身は華奢ながらも女性らしさを決して損なっていない。
普段は凛とした表情の大和撫子なのだが、緊張によって可愛らしい年相応の表情のままだ。
しばらく、逡巡するも彼の答えは決まっていた。
「良いよ。別に暇だし」
「ほ、本当ですか!?」
表情が明るくなった。
彼女『
そして、待ち合わせ場所と時間を指定して足早に去ってしまった。
いつの間にか渡されたお代を握り締めながら呆然と見送るしか出来ない奏真。
そんな彼を背後からジト目で睨むのは、栗色のショートボブの少女。
「……お兄ちゃんが牛女に誑かされた」
「いや、別に誑かされた訳じゃ…」
「そうやって無防備だから誘われるのー!!」
口をへの字に曲げて「むむむ」と唸る少女『
幼いころから彼と兄妹のように育った彼女から見れば、今の光景は決して面白くはないだろう。
どうして面白くないのかは……それはまだ彼女にも分からない。
そんな彼女の暴走を止めたのは一人の老人。
「いつまでも兄貴におんぶしてもらうんじゃねぇチビツグ。泣いている暇があるならさっさと皿でも洗いやがれっ」
「うう、お爺ちゃ~ん」
「仕事時間中はマスター、もしくは店長だ」
年相応の白髪と顔立ちの男性……ボタンを一つ外したワイシャツと黒いズボンの男性『暦野
渋々とキッチンの方へ入っていく彼女を見届けた後、溜息を吐きながら奏真に向き直る。
「しっかしお前もお前だ。わざわざ警察の嬢ちゃんからの誘いに乗りやがって」
「じっちゃん。確かに『仕事上』だとマユちゃんは敵だ、でも今回は完全プライベート。女性の誘いは断れないって」
「ま、そりゃあそうか」
彼の『本業』を影から手助けしている李譜杜は一つの懸念を口にするも、別に正体が分かっている訳ではないので問題はない。
一先ず納得すると、「そうだ」と思い出したように向き直る。
「後で愛実の機嫌も治しとけよ」
「え、あれ怒ってんの?」
「お前って奴は……」
鈍感さは亡くなった祖父と親父譲りか……!
亡くなった親友の息子の忘れ形見である奏真の発言に、頭を痛めるのだった。
椋と颯太は隣の座席で様々なマジシャンたちの手品を見物していた。
今回、DOLLSの仕事として司会進行役としてレイナ、ナナミ、ミサキの三人が出演することに決まった。
シルクハットを被った手品師の衣装に身を包んだ彼女たちは、華やかなパフォーマンスを披露し、それに続くように出演した手品師たちが幻想的な奇術で魅せる。
「下らないな。仕掛けが分かっている癖にどうして一々驚く?」
「まあまあ。それを驚かせるようにするのが手品師の仕事でしょ」
小声で文句を言う颯太を窘めながら、目の前の奇術に目を輝かせる。
そこから手品師が代わるがわる披露したが、とうとう最後の手品師の出番となった。
「最後のマジシャンは、現在進行形で話題を作り続ける男……『ウィズ』!この小屋でスタッフとして働いている、私たち自慢のエンターテイナー!彼の起こす幻想を、お楽しみください!!」
この小屋のスタッフらしき男性が紹介を終えると、現れたのは黒い帽子を目深にかぶった黒いコートの青年。
彼が両手を広げた瞬間、本物の火が灯り、腕を動かすのに合わせて炎が躍る。
その光景に観客だけでなく他の手品師も驚き、目を奪われる。
ウィズの幻想は続く。
手を触れずに破壊した花瓶を復元し、ペットボトルの水を宙に浮かせてコップに入れるなど……明らかに手品の枠を超えている。
「……っ!」
最後に指を鳴らした瞬間、観客たち全員に一輪の花が握られていた。
ウィズが一礼をすると、周囲は盛大な拍手に包まれた。
もちろん、椋も目の前の光景に驚き興奮している。
「すごいっ!まるで魔法みたいだ!」
「魔法……?」
その言葉に、黙っていた颯太が反応する。
夢中で見ていたのではない。
見覚えのある現象だったため、静観していたのだ。
やがて、ウィズが舞台が去っていくのを確認すると、椋に耳打ちする。
「仕事が終わったらすぐに三人を呼べ。恐らくレプリカライダーの力だっ」
「えっ?」
椋が聞き返すと同時に、すぐに座席から立って外に出てしまった。
「奏真さん?」
「ごめん、ちょっと電話」
ほぼ同時に、『彼』も動き始めていた。
身支度を整えて、先ほどの光景を思い返しながらウィズ……石橋光流は何度目かの溜息を吐いた。
ショーも無事成功し、観客も上々の反応だった。
何より、先輩が嗤ってくれていたのが嬉しかった。
「でも、なぁ……」
肝心なことが言えない。
魔法の力を手に入れても、大事なことを伝えることが出来ない。
「でも、まだチャンスはあるっ!」
あの様子なら、小屋を畳むことはないだろう。
気合を入れ直した光流が自宅に戻ろうとした時だ。
「あのう」
突如として声を掛けられた。
振り返れば、そこにいたのは額縁眼鏡を掛けた七三分けの男性。
よれた灰色のスーツに身を包んだサラリーマンのような人物が、細い身体を揺らしながら口を開く。
「ウィズさん、ですよねぇ?」
「あの、そうですが」
「やっぱり!私、あなたの大ファンでしてねぇ!!握手しても?」
「は、はい」
緊張した様子で握手を交わす。
眼鏡の男性は嬉しそうに何度も頷き、話を続ける。
「感激ですねぇっ!!こんな形で会えるなんて、まさに運命!そうだそうだっ、どうしても見たい魔法があるんですよっ!!」
楽しそうに目を輝かせた彼は握手をしたまま続ける。
そして、次の言葉は光流の背筋を凍らせた。
「あなたが絶望して、もがき苦しむ様ですよぉっ!!」
喜色に満ちた声と笑顔で叫んだ眼鏡の男性は、かつて宿主だった抜け殻を脱ぎ捨てる。
煙のように揺らめく緑色の魔力を解放し、本来の姿を外へと露わにする。
サイケデリックな色彩を持つ緑を基調とした爬虫類の如き身体と鱗を持ち、赤い舌のようなロープを右腕に巻いており、頭部に蛇の顔を象った石仮面が印象に残る。
その姿は、まるで多くの伝承を残した幻獣もしくは幻霊……。
「う、うわああああああああっっ!!?」
『さてさてさーて。この「バジリスク」様のために、死の恐怖でちゃーんと……絶望してくださいねええええええええええっ!!!』
絶望によって生まれし魔力の怪物『ファントム』の一体である『バジリスク』は粘着質な声色でそう叫ぶと、悲鳴をあげる光流に向かって手を振り上げようとした時だった。
『ぐえっ!?』
横っ腹から来る衝撃によって吹っ飛ばされていた。
地面を転がったバジリスクは慌てて起き上がると、そこにいたのは一人の少年……颯太だ。
ただの人間に蹴り飛ばされたという事実に、露骨な不快感を見せる。
『何ですぅっ?たかが人間が私の邪魔をするなんて』
「俺もこいつに用がある。邪魔なのはお前だ」
【REX!!】
明らかに見下したような慇懃無礼な口調で話す蛇のファントムに臆することなく、颯太は取り出したレクスライドウォッチを起動。
装着したジクウドライバーにセットすると、ロックボタンを解除して構える。
「変身っ!」
【RIDER TIME! KAMEN RIDER REX!!♪】
変身したレクスはジカンジャナックルを構えながら、バジリスク目掛けて直進し強烈な打撃を繰り出す。
突然のイレギュラーに戸惑い、焦ることしか出来ないファントムの方はどうにか攻撃を躱すとバックステップで距離を取る。
『ななな、何なんですかあなたはぁっ!?その姿、まさか魔法使いなのですかっ!』
「違うな。俺は……
『うげぇっ!?』
許容量を超えたことで癇癪を起こすバジリスクの問いを一蹴したレクスは、すぐさま砲撃モードに切り替えると強烈なエネルギー弾を発射。
冷静さを欠いていたことで、碌な回避も出来ないまま地面を転がるバジリスク。
『こ、こいつううううっ!?』
未知の敵に恨めし気に睨みながら、立ち上がるも既に距離を詰めていたレクスがジカンジャナックルによる打撃を叩き込もうと拳を振り下ろす。
しかし、バジリスクも馬鹿ではない。
すぐさま片手剣を取り出すと、攻撃のタイミングに合わせて防御する。
その際にバジリスクの身体から小石のような灰色の破片がいくつか零れ落ちると、それらは禍々しい魔力を放ちながら、人型の鬼へと変貌する。
「『グール』かっ!」
『ご明察ぅっ!丸腰で仕事に挑むほど、私は間抜けじゃないんですよっ!!』
まるで自分の手柄のように、嬉々として語るファントムの期待に応えるべくグールの群れは光流の元へと迫る。
「ひっ!?」
その動きはゆっくりだが、確実にゲートへと距離を縮めつつある。
レクスがそちらに向かおうにも、それを妨害するかのようにバジリスクが剣に力を込める。
『おおっと!あなたの相手は私、でしょお?彼らの邪魔してもらっては困りますねぇっ!』
「こいつ……!」
粘着質な声と共に迫る蛇に舌打ちをする。
バジリスクは戦闘力こそ高くないが、重箱の隅を突くような執念深い精神性の持ち主……残忍な性質を持つどのファントムよりも姑息で、厄介な存在だ。
槍を持ったグールが、その矛先を光流目掛けて突き立てるべく掲げた時だった。
「や、やめろおおおおおおおっ!?」
【WIZARD……!!】
恐怖に耐え切れなくなった彼は、体内に埋め込まれた魔法の贋作を解放する。
エネルギーに包まれた瞬間、爆発するように放出された火の魔法が群がっていたグールたちを焼き払う。
その場にいたのは砕けた赤い宝石の魔法使い……レプリカウィザードだ。
鍔迫り合いを続けていたレクスは、待ちくたびれたと言わんばかりの態度で睨む。
「ふんっ。やっと本性を現したか」
『あ、ああああっ、新しい魔法使いですってぇっ!?そんなの、こっちは聞いてないですよっ!』
しかし、何よりも驚いたのはバジリスクだ。
自分に指示を出したファントムの話では、彼は魔法使いではなくただのゲート。変身など出来るはずがないのだ。
歪さこそあれど、その姿は間違いなく魔法使い。
だが、彼の放つ魔力は忌々しい仇敵の一人と同じものだ。
あまりにもおかしい、あまりにも不可解、まるで『本来の流れが乱れつつある』ような……そんな錯覚さえ感じてしまうほど、ファントムの思考はパニックになっていた。
しかし、バジリスクにとっての不運は更に重なってしまう。
「おいおいおいおい……何この状況?」
声が聞こえた。
バジリスクとレクス、そしてレプリカウィザードが視線を上へと向ける。
そこにいたのは、一人の青年。
黄昏色のセミショートに、端正な顔立ちなのだろうが白いドミノマスクで隠した人物。
白い手袋に覆われた両手の中指にはそれぞれ何かの宝石が埋め込まれた指輪が填められており、黒いタキシードスーツの上には赤いロングコートを羽織っていた。
その出で立ちはまさに……。
『怪盗……っ!!』
「何だと?」
忌々しいと言わんばかりの視線をぶつけるバジリスクの言葉にレクスも視線を向ける。
敵意と警戒、そして困惑の視線を一気に向けられた人物は動揺することなく、「その通り」と自ら名乗る。
「怪盗にして、世間を騒がす魔法使いさ」
不適な笑みと共に、そう答えた青年……怪盗の姿となった奏真はバジリスクの方に指を向けながら、右手にある指輪を腰のバックルにかざす。
そして、彼は予告する。
「ファントム……お前の絶望、根こそぎ俺が頂くぜ」
【DRIVER ON! PLEASE!】
音声と共に腹部に出現したのは黒い掌型のレリーフが施されたバックルを持つベルト。
それ『ウィザードライバー』の左右にあるシフトレバーで左側に傾けた。
【SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN! SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN!……♪】
ドライバーから響くは、やかましいほどにテンションの高い音声。
しかし、これはただの騒音ではない。
音声の符号化により簡略化された呪文による詠唱であり、魔法を最小限に最速で行使することが可能となっているのだ。
顔の前まで掲げた左手の中指にある赤い指輪……『ウィザードリング』のバイザーを降ろした奏真があの言葉を紡ぐ。
「変身」
【FLAME! PLEASE!】
バックルにある掌型レリーフ『ハンドオーサー』に指輪をかざした後、左腕を横に向けると赤い魔法陣が出現。
それは意思を持つかのように奏真の元まで移動していく。
そして。
【HI・HI! HI・HI・HI!!♪】
魔法陣を潜り終えた時、彼の姿は変わっていた。
怪人から絶望を奪い、無辜の人々に希望を取り戻す怪盗にして指輪の魔法使い……名は『仮面ライダーウィザード』!
「さぁ、ショータイムだ」
フレイムウィザードリングを輝かせたウィザードは、バジリスクとレクスが引き起こす戦場へと侵入する。
そして、バジリスクの攻撃を蹴りで弾くと、間髪入れずに強烈な回し蹴りを炸裂する。
『全く、魔法使いってのは邪魔をするのが仕事なんですかぁっ!?』
「そうさ。お前たちみたいな奴らから絶望っていう、腐った宝を奪い取るのが俺の仕事だよっ!!」
【CONNECT! PLEASE!】
入れ替えた指輪をバックルのハンドオーサーにかざすと、魔法陣が出現。
そこから銀色の大剣『ウィザードソードガン』を取り出すと、まるで曲芸の如く巧みに操る。
『ちぃっ!』
バジリスクは剣を振るうも、まるで舞をするかのように宙返りを決めながら躱す。
そして着地と同時に斬撃を浴びせた。
「うげっ」と唸り、怯むファントムにウィザードは剣先を向ける。
「また俺の知らない、ウィザード……」
その戦闘を、レクスは呆然と見つめていた。
記録で調べた情報とは違う、仮面ライダーウィザードの変身者に戸惑っていたが、自分のすべきことは変わらない。
レプリカウィザードを倒す……改めて、棒立ちのレプリカウィザードと残ったグールたちを睨み始めた時だ。
「止まりなさい!」
力強い女性の声に全員が振り返る。
そこにいたのは腰まで伸ばしたロングヘアーの女性……マユが警察手帳を掲げる。
「『警視庁国家安全局0課』です。怪盗と……そこのローマ字の人!そこにいるファントム二体は私が殲滅します。ウィザードはこれまでの魔法石盗難。そしてあなたは危険な道具による変身及び入手経路について詳しく聞かせてもらいます」
有無を言わさぬ口調で告げる彼女にバジリスクは歯軋りを、レプリカウィザードは「僕もっ!?」と狼狽している。
そんな彼女に、ウィザードとレクスの答えはシンプルだった。
「悪いね。そんなあっさり捕まるようなら怪盗なんてやってないよ」
「こいつの意見に賛同する気はないが、警察の世話になる気はない」
当然ノー。
そんな二人にマユは険しい表情の後、溜息を吐く。
そして、視線を鋭くした。
「抵抗するなら、あなたたち二人も纏めて拘束します!」
【DRIVER ON! NOW!】
怪盗時の奏真と同じように、右手に填めた指輪をかざすとウィザードライバーよりも荘厳な音声がコールされる。
それは黒いボディを持ち、赤く縁取られた黒い掌型のハンドオーサーがあるバックル『ワイズドライバー』だ。
シフトレバーを操作し、左側に傾ける。
【SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN! SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN!……♪】
ウィザードライバーとは少し音程の違う詠唱が流れる。
その音声をバックに彼女はその場で一回転しながら、琥珀色のウィザードリングのバイザーを降ろすと、空高く左腕を掲げる。
そして。
「変身!」
【WITCH! NOW!】
琥珀色の魔法陣が右斜め上に出現した琥珀色の魔法陣が彼女の身体を包むように降りた瞬間、姿を変えた。
紺色のスーツに膝下まで伸ばしたローブ。研磨された琥珀色のマスクを覆うバイザーと右肩に垂らした同色のマント……。
その名は万能の魔法使い『仮面ライダーウィッチ』は右手に装着した指輪『コモンリング』に宿した魔法の一つである『コネクト』で召喚した魔法陣に手を差し込む。
取り出したのは、掌型の黒いレリーフがある銀色に輝くリボルバー銃……『ウィッチガンドガン』を構えた彼女は目の前のファントムに向けて宣告する。
「さぁ、終わりの時よ……!」
構えた銃から発射された弾丸は、琥珀色の軌跡を描きながらバジリスクとウィザード、そしてレクスに向かって行く。
『このっ!』
「おっと」
「ちっ!」
三者三様の反応と共に、ウィッチの標的となった彼らは銀の銃弾をそれぞれの得物で防ぐも、その僅かな隙を狙って走り出したウィッチはコモンリングを再度かざす。
【HEAT! NOW!】
「はぁっ!」
『あっづうううううううううっ!?』
煙が立ち上るほどの高熱を纏った蹴りがバジリスクの鳩尾に炸裂した。
焦げるような嫌な音と共に悲鳴をあげながら吹っ飛ぶファントムに銃撃による追撃を行いながらも、今度はウィザードへと銃口を向ける。
「やれやれ。相変わらずだね美人な魔法使いさん」
「黙りなさい、指輪の。今日こそは神妙にお縄を頂戴します」
「それは勘弁……とっ!」
身体を捻ってバク転すると同時に放たれるのは強烈なサマーソルトキック。
まともに受ければ気絶は免れないその一撃を難なく躱したウィッチはブラストの魔法を発動。
目の前の魔法陣から放つ衝撃波でウィザードが吹き飛ばされてしまうも、左手の指輪をエメラルドのウィザードリングへと変える。
【HURRICANE! PLEASE! FU・FU! FUFU・FUFU!!♪】
風属性を纏ったエメラルドの魔法陣を潜り抜けると、赤い宝石型のマスクは緑の逆三角形へと変わり、赤い箇所は全て変化していた。
風のエレメントを宿した『ハリケーンスタイル』へとチェンジしたウィザードは、周囲の風を操り速度を落とすと壁に着地。
そしてそのまま突風の如く、飛び出した。
勢いのままウィザーソードガンを振り降ろすウィザード。
しかし。
「甘いっ!」
【SCRATCH NAIL! NOW!】
コモンリングで出現させた魔法陣が右手に現れると、ウィッチの右手に五本の刃を持つ鉤爪『スクラッチネイル』が装備される。
そのままウィザードの斬撃を防ぎ、弾き返した。
「前から思っていたけど、指輪変えずに色々な魔法を使うってずるくない?」
「ずるくありません。これが私の……魔法使いとしての戦い方です!」
スクラッチネイルの攻撃を防ぐウィザード。
その間にレクスがレプリカウィザードに殴り掛かろうとするも、丁度起き上がったバジリスクに邪魔されてしまう。
「邪魔だ蛇擬き!」
『それはこっちの台詞ですよ!こうなるのが嫌だから、さっさと終わらせたかったのに……あなたのせいで全部台無しだっ!』
八つ当たりに近い叫びをするバジリスクの攻撃を躱すレクス……しかし、そこに聞き覚えのある声が響く。
「颯太!……て、何この状況!?」
「仮面ライダーが、あんなに……!」
「ヒヨが見たら、喜びそうね」
喧噪に気づいた椋とミサキ、そしてレイナ。
前者二人はカオスに近い光景に驚き、レイナに至っては興味深そうに微笑んでおり余裕を崩していない。
すぐさまドライバーとライドウォッチを起動し、変身したロワにレクスが指示を出す。
「小野寺っ、ウィザードライドウォッチを使え!」
「わ、分かった!」
一度倒したレプリカウィザードがいることに動揺しながらも、言われた通りにライドウォッチを起動。
その際、ウィッチと交戦していたウィザードが「おっ?」と興味深そうにそのウォッチを一瞬だけ見つめていたが……。
『や、やめろっ!』
懇願するかのように、この場から逃走するに相応しい姿へとレプリカウィザードはエネルギーを全身に纏い、違う姿へと変身する。
その様子は、まるでウィザードのエレメントチェンジを彷彿とさせた。
【WITCH……!!】
現れたのは、琥珀色の仮面を持つ異形……しかし、目に当たる部分は深く窪んでおり、まるで罅割れた宝石のようだ。
宝石を象った仮面の下には黒い眼球と剥き出しになった歯が薄く見えており、後頭部に生えた輪と合わさって指輪を連想させる形となっている。
ボロボロになった灰色の衣装に身を包み、右肩のくすんだ琥珀色のマントには「WITCH」・垂らしたボロ布のようなローブには白く「2012」の記号……。
腰に巻いたベルトの中央は白骨化した人の掌のレリーフとなっていた。
「私と、同じ姿……!?」
動揺を隠せないウィッチが呟く。
先ほどと同じく、歪な姿ながらも自分……万能の魔法使いと酷似した姿だったからだ。
しかし、そんな彼女や周囲の反応に気にすることなく『レプリカウィッチ』は右手に填めた指輪を腹部のレリーフにかざす。
【ARROW】
呪文と共に右手を突き出すと前方に無数の矢を模した琥珀色の魔力がレクスとバジリスク、魔法使いたち目掛けて放たれる。
魔力の矢が引き起こす爆発に全員が防ぐことしか出来ず、彼に近づくことすらも出来ない。
『ああもうっ!こんな状況でゲートの絶望とか、やってられませんよ!!』
吐き捨てるように叫んだバジリスクは、グールを盾にしつつ身軽な身体を活かしてそのまま逃走。
ウィッチが「待てっ」と追跡しようとするも、レプリカウィッチの魔法によってそれは叶わない。
しかし、このままでは周囲にも被害が及んでしまう……そこまで判断した彼女の行動は早かった。
たまたま自分の近くにいたレクスの元までワイズドライバーを操作しながら駆け寄り、彼の肩を掴む。
ウィザードの方も同じ思考に至ったのだろう、椋たちの元まで向かっていた彼の右手には異なる指輪が填っている。
【【LUPACHI MAGIC TOUCH GO! LUPATCH MAGIC TOUGH GO!……♪】】
「おいっ!何を…」
「良いから来なさいっ!」
「お嬢さん方、ちょっとだけ大人しくしててね」
「えっ?」
瞬間、彼らはバックルに指輪をかざした。
【TELEPORT! NOW!】
【CONNECT! PLEASE!】
呪文がコールされた途端、ウィッチとレクスは白い光のような魔法陣と共にこの場から安全な場所へと転送され、ウィザードたちも等身大にまで出現させた魔法陣を潜って逃走。
『はぁっ、はぁっ!』
脅威が去ったことに気づいたレプリカウィッチは荒い呼吸を整えると、滅茶苦茶になった惨状に驚いてしまう。
そして、慌ててその場を後にするのだった。
『見たこともない戦士に、魔法使いだと……』
その様子を、一体のファントムが見ていたことに気づかずに……。
今回、ロワたちが出会ったライダーたちはリマジウィザード……『仮面ライダーウィザードVS仮面ライダーウィッチの世界』です。
この世界ではファントムと仮面ライダーウィザードの他に、仮面ライダーウィッチというオリジナルライダーがいます。ルパンVSパトレンの作風を参考にしました。