仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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 今回は「もしもジオウのウィザード編が2019年の事件だったら」というのを元に考えました。
 あの絶望展開は、ファントムからしたら恰好の餌ですよね。
 今回はウィッチサイドでのお話です。


TIME14 未知は危険

そこは、現実を隔てた異空間だった。

中央にある石の台を除き、周囲は黒い地面と上空には琥珀色の魔法陣が辺りを覆い隠さんばかりに埋め尽くされている。

圧倒的な魔力によって作られた、その『工房』に彼らはいた。

 

『……以上が、報告でございます』

 

一体のファントムが、その報告を最後に恭しく頭を下げた。

片膝をつき、深く首を垂れるその様子は絶望を愉悦とする魔力の怪物とは決して思えないほどの高潔さを保っている。

黒い甲冑と黒い獣毛に覆われた獣の如き容貌、しかしその洗練された所作と両腰のホルダーに収めた西洋剣は、宛ら西洋の物語に登場する『騎士』を連想させた。

 

『ご苦労だったな。「ウッドワス」』

 

その黒騎士の主君たる存在は、ファントムにとって怨敵とも呼べるはずの『魔法使い』……。

中指に琥珀色の指輪を持つ黒いグローブと、白いローブの如きボディ。

マスクはウィッチと同じ琥珀色だが研磨された彼女たちと比べて原石のような印象を与えるだけでなく、威風堂々とした荘厳さを併せ持つ。

ウィッチと同じワイズドライバーで変身しているであろう、白い魔法使いは自身に忠実な部下である猟犬のファントム『ウッドワス』に労いの言葉を掛ける。

「勿体ないお言葉です」と頭を下げたままの彼に背を向けたまま、魔法使いは提示された情報を確認する。

 

『ウィザードとウィッチの魔力を持った、歪な魔法使いか……』

『あの青年がゲートであったことは事実です。そうなると、生まれたファントムを抑え込んだの知った「ネクロマンサー」どもがドライバーを送り付けたのでしょうか?』

 

魔法使いが使う不思議な力、魔法……古の学問と称されたその技術は魔力というエネルギーを利用する。

魔力を手に入れるためには精神世界『アンダーワールド』に生まれたファントムを飼い慣らす必要があるのだ。

ウッドワスの推測に「それはない」と断言する。

そもそも、奴らの目的は魔法使いを増やすことではなくファントムを増やすことだ。

もしゲートの中にファントムがいることを知ったのなら、わざわざドライバーを送り付けることなどしない。むしろ絶望させようとするだろう。

しかし、あの歪な魔法使いになったことは向こうからしても想定外のこと。それはバジリスクの態度が証明している。

魔法使いと違う姿に変身する存在に、歪な姿を持つ魔法使い。

少なくとも彼らにとっても穏やかな話ではない。

しかし、魔法使いを増やすことを目的としているこちらとしては僥倖だ。

 

『如何致しましょう?あの様子だと戦闘とは無縁の様子、すぐに私が捕えて……』

『構わん、しばらく傍観に徹する』

 

白い魔法使いの言葉に、ウッドワスは驚きを露わに顔を上げるもすぐに下げる。

何か考えがあってのことだと、明瞭な彼は理解したのだ。

ファントム……野蛮で粗野、人間を苦しめるだけでなく同胞すらも顧みない邪悪な化け物。

自らの存在を唾棄すべき屑だと認識している彼にとって、主である白い魔法使いは『希望』そのものだ。

彼ならば、自身を含めた全てのファントムを滅ぼしてくれる……そう確信しているからこそ、ウッドワスは忠誠を捧げたのだ。

 

『異分子へ必要以上に関わる必要はない。ウッドワス、お前も少しは身体を休ませておけ』

『Yes.マスターワイズマン、全てはあなたの悲願のままに』

 

白い魔法使い『仮面ライダーワイズマン』の言葉に、黒騎士の猟犬は再び首を垂れるのだった。

 

 

 

 

 

狭い部屋の息苦しさに、颯太は渋い表情を浮かべたまま溜め息を吐いた。

パイプ椅子の背もたれに上体を預け、電灯だけの天井を見つめながら時間が過ぎるのを待つ。

 

「……好い加減正直に言いなさいっ!」

「だから、さっき説明しただろ」

 

しかし、そうならないのが現実である。

その部屋……0課専用の取調室にて颯太はマユに事情聴取をされていた。

テレポートの魔法で部署まで転移されたところまでは良かったのだが、ウィッチことマユに逃げられないよう手錠された挙句、この部屋まで直行されたのだ。

なお、誤解しないように説明するが颯太は説明をしたのだ。

ライダーの世界やレプリカライダーのことなど。そう……『正直』に。

 

「私とウィザードの偽物。そこは百歩譲って理解します、ですが別の世界とか仮面ライダーとか……納得出来るわけがないでしょう!」

 

机を叩く度に躍動する豊満な胸元から目を背けながら、溜め息と共に彼は呆れたように反論する。

 

「お前の基準で考えるな。納得しようがしまいが、事実には変わらない」

「それは……!」

 

その言葉に彼女が反論しようとした時だ。

 

「おー。珍しくヒートアップしてるな、煌羽」

 

ノックもせずに扉を開けて入ってきたのは一人の中年男性。

鍛えているのか体格は筋肉質ながらも細身でグレーのスーツを着こなした伊達男の印象を覚える。

整った顔には顎髭を蓄えており、温厚な笑みを口元に浮かべている。

 

「『和崎』さん……ノックをして入ってください」

「固いこと言うなって。それよりも、面白いことが分かってな」

 

「面白いこと?」と首を傾げる彼女に笑いながら男性『和崎繁』は近くの壁に寄り掛かる。

そして、とある名刺……颯太が使っている物を見せながらマユに質問を投げた。

 

「お前、『DOLLS』って知ってるか?」

「いえ」

「知らないよな?俺も知らない」

「だから何ですか」

「んで、他の連中や知り合いに聞いてみたら……こんな答えが返ってきた」

 

今話題の超人気アイドルグループじゃないですか……。

質問への返答はこれが殆どだ。

和崎はテレビ好きな妻と娘がいるため、ある程度の流行は分かるがそのアイドルグループのことは何も知らない。

念のため家族に尋ねても同じ答えだった……つい最近までの同じテレビを一緒に観ていたにも関わらずだ。

 

「改めて質問させてもらうぜ、仮面ライダー君……『今、俺たちのいる世界に何が起こっている』?」

 

そう尋ねた颯太を見る目は、狩人のそれだった。

普通の人間であるにも関わらず、飄々とした態度に潜んだ底知れなさの一端を感じ取る。

だからこそ、自分の知る限りのことを口にしていた。

 

「俺も分からない。だが、少なくとも『俺たちのいる世界』と『お前たちの世界』が混じっている」

 

今まではレジェンド……つまり、別世界の仮面ライダーがレプリカウォッチの力に引き寄せられる形で来ることがあった。

しかし、今回は違う。

ファントムの登場と魔法使いの出現、明らかに今までとは異なるケースだ。

質問が続く。

 

「原因は?」

「レプリカライダーだ。奴さえ倒せば世界は『なかったこと』として修復される、今までがそうだったからな」

 

目を反らさず、その視線に挑むように見据えたまま答えた。

しばしの沈黙が訪れる。

重苦しい時間を解いたのは、和崎だった。

 

「ありがとさん。んじゃ、方針は決まったな」

「和崎さん、あの」

「煌羽。お前、そいつと一緒にレプリカライダーを保護してこい」

 

いつもの笑みを浮かべながら言い放った指示。

上司からの命令を受け取り、しばらく逡巡する。

そして。

 

「「……はぁっ!?」」

 

間の抜けた声を出していた。

ついでに颯太も。

 

 

 

 

 

光流は一目散に自宅であるマンションの部屋に駆け込むと、ドアに鍵をしてカーテンを閉めた後、座り込んだ。

あの戦士は何なのか、あの怪物は何なのか……混乱する頭を冷静にしようと、荒い呼吸を整えていた時だ。

 

「……随分と疲れているな」

「うわっ!?」

 

自分しかいないはずの部屋に聞こえてきたのは男性の声。

それに驚くも、そこにいたのは自分に力を与えた人物……サーディスだ。

 

「よ、良かった!あんたに話があったんだっ」

「……」

「俺の正体がばれた!それに、俺と同じような奴らと怪物が襲いに来たんだ!」

 

光流の話にサーディスが腕を組んだまま壁にもたれる。

予想より早く勘付かれたことに舌打ちするも、焦りの色は見えない。

「どうしたらっ」と狼狽える青年に、言葉をかける。

 

「お前には贋作とはいえ魔法がある、心配することはない。それに怪物……ファントムは奴らにとっても敵だ、放っておけば勝手に倒してくれる」

「わ、分かった」

 

居間にあるタンスから取り出したのは、卒業時に結衣からもらったドッグタグ。

同好会の全員がもらっているそれは彼にとっては大切な希望……。

大事そうに首に垂らすと乾いた喉を潤すために、冷蔵庫を開けてお茶のペットボトルを取り出した。

そんな光流の様子を横目に、サーディスは思考を巡らせる。

 

(実験とはいえ、こいつは中々の逸材だ。そのためには、もっと傷つく必要がある……契約の対価って奴だ。悪く思うなよ)

 

すると、インターホンが鳴り始めた。

驚いた光流は慌ててドアに耳を近づける。

 

「光君、僕だけど」

 

その声は学生時代の先輩でマジックショーの先輩である『永山真久(ながやま さねひさ)』。

奇術同好会のメンバーでもあり、結衣とクラスメイトだった青年だ。

人当たりの良い性格と技術の高さから彼にとっても尊敬すべき人物でもある。

 

「はい」

「小屋の近くで騒ぎがあったって聞いてね。携帯も通じないから家まで来たんだけど……大丈夫?」

「え、ええ。大丈夫です」

 

その騒ぎに自分も怪物になって関与してしまったなど言えないし信じてくれるわけもない。

適当に相槌を打つ彼に疑問を持つこともなく、永山は「そうだ」と話を切り出す。

 

「少しだけ、話せるかな」

「は、はい!」

 

極力外には出たくなかったが、断るわけにもいかない。

周囲を警戒しつつも光流は部屋から出た。

 

 

 

 

 

その頃、マユと颯太はマジックハウスの経営者である結衣に事情を説明していた。

コンビを組まされたことは不肖だが、独断行動しようものなら問答無用で手錠をかけてくるため抵抗する気も失せた。

ちなみに結衣には「近くであった騒ぎに光流が巻き込まれている可能性がある」と伝えているため、疑うことなく話をしてくれている。

レプリカライダーの保護はゲートの保護でもあるため、内容をメモするマユ。

その横で颯太が光流のことを聞き出した。

 

「学生時代からの後輩で……元々手品が上手い子だったけど、あんなに上達して驚いたな」

「あれを披露するようになったのは?」

「二週間前ですね、プロポーズされた日なのでよく覚えてます」

「プロポーズッ!?」

 

メモする手を止めたマユが驚いて顔を上げるも、すぐに表情を引き締めて「失礼」と短く謝罪する。

話によれば元々の経営者であり一流の手品師でもあった祖父が亡くなってから売り上げが伸びなくなったらしい。

 

「そんな時、真久君が『小屋を畳んで、お爺さんの意志を別の形で一緒に継ごう』って言ってくれたんです」

 

嬉しそうに、照れたように笑う彼女にマユが興味深そうに聞く。

一方の颯太は話を続きを促すべく「それで」と返す。

 

「そんな時、光流君が不思議な手品を私たちの前で披露してくれて……客足も戻って来たんです。だから、私たちは本当に感謝しているんです」

「そんなことが……!」

 

予想もしなかった恋バナにマユのテンションが内心上がっている間、颯太は言いようもない不安を覚えていた。

彼女の話が確かなら、今回のレプリカライダーはこの小屋を……いや、彼女の想いを守るためにワールドハックと契約したということ。

もしも、それが叶わぬ願いだったと知れば。

そんな時だ。

 

『ピィー!』

 

慌てた様子で白い鳥のような使い魔『ホワイトガルーラ』がマユたちの元まで来た。

 

 

 

 

 

近くにある公園のベンチで、光流は永山からの話に絶句していた。

それは、マジックハウスを畳むということ。

 

「小屋を、閉めるんですか……?」

「うん、それは結衣さんも承諾している。だから、光流君にはここへ面接に行って欲しいんだ」

 

差し出されたのは『アーチメイジ』という店名が記された名刺。

それを手に取った彼に、永山は続ける。

 

「僕……結衣さんと結婚するんだ」

「……えっ」

 

血の気が引いた。

今、目の前にいる彼は何を言ったのだろう。

短く、聞き逃せない言葉が重く反響する。

徐々に混乱していく頭を落ち着かせる間にも、手品の師匠である先輩は真剣な表情で続ける。

 

「光流君、君も自分のために輝いて良いんだ!彼女も、小屋のために頑張る君を見て決心がついたんだ。それで今日、以前からのプロポーズを受けてくれて……」

 

永山が何を言っているの理解出来ない。

思考が回らない、相手の言葉を受け止められない。

手足が震え、嫌な汗が出る。

世界が、驚くほど色褪せていく。

そんな時だ。

 

『良い話、ありがとうございまーすっ!』

 

突如として割り込んできたのは蛇のファントム……バジリスクだ。

最初の戦闘後、報告のついでに上級ファントムでもあるオーディンたちに文句を言った後、尾行するよう命令されたのだが気が変わった。

むしろ、絶望するための布石が勝手に現れたのだ。

完全にカモがネギをしょってきた状況に喜びを隠しきれない彼は、永山を人外の力で突き飛ばすと光流の元まで近づく。

 

『いやぁ……あなた、彼らにすっかり騙されていたですねぇ!もしかして、魔法使いになれば「憧れの先輩とお近づきに!」とか考えていたんでしょ?あー滑稽!実に滑稽で笑いが止まりませんねぇっ!?』

「違うっ、僕と結衣は……!」

『違わないですよぉっ!ウィズさん、あなたの大好きな先輩はあなたの想いを知って利用した!けど充分稼げたから切り捨てた……そういうことなんですよ!!』

 

バジリスクの言葉は戯言、単なる嘘だ。

そもそも結衣は光流の気持ちに気づいていない、永山にとっても彼は大事な後輩でこの小屋を立て直してくれた恩人だ。

そんな彼を陥れるなど絶対にない。

だが、バジリスクの虚言はパニック寸前になっている光流を追い詰めるには充分だった。

 

「あ、あぁ……!」

 

その場から崩れ落ちる。

それでは、自分は一体何のために。

今まで何のために……。

呆然と、頭に響く鼓動の音が息を荒くしていく。

 

『残念……あなたの想いは、最初から一方通行!魔法使いじゃなくて道化師だったということっ!最初から全部無駄だったんですねぇっ!!』

 

バジリスクは首に下げた光流のドッグタグを引き千切って奪うとそれを地面に落として踏み砕く。

念入りに、相手に見せつけるように踏み潰しながら、尻餅をついていた彼を見下ろした。

 

『滑稽な見世物、ありがとうございます……ウィズさん♪』

 

想い出に、皹が入る。

深く、決定的な亀裂が音を立てて侵食していくような感覚。

バジリスクの言う通り、彼は観客もヒロインもいない舞台で踊るピエロ。

石橋光流(魔法使いの贋作)は、環結衣にとって最後の希望ではなかった。

 

「ふざけるな」

『あっ?』

「……光流君っ」

 

自然にその言葉が出てきた。

ずっと、ずっと彼女の存在があったから……きっといつか、この想いが伝わることを願って尽くしてきた。

しかし、それら全ては無駄だった。

学生時代から抱いていた想いは、そもそも叶わなかったのだ。

蓄積された感情は全て反転し、制御出来ない憎悪と怒りへ塗り替わる。

 

「何のために……何のため俺はあああああああああああああっ!!」

 

純朴な、人に好かれるその表情を激情へ染め上げた彼はバジリスクに向かって駆け出すと、宿したレプリカウォッチのエネルギーを解放する。

 

【WITCH……!!】

「光流君が、怪物にっ!?」

 

後輩が怪人へと変貌したことに驚きを隠せないでいる永山を一先ず無視して、変身したレプリカウィッチはバジリスクの首を締め上げる。

 

『がっ、ぎっ!?』

 

驚き、抵抗も出来ないまま吊り上げられる。

レプリカウィザードとレプリカウィッチは同系列のライダーであるため、その親和性や相性が極端に高く状況に応じての切り替えが可能になっている。

そして、このレプリカライダーには共通の固有能力がある。

 

『な、ん……この魔力っ、かはっ!?』

 

それは『変身者の絶望を魔力へと変換する』という能力……元々ゲートでもあった光流は充分な魔力を秘めていたが、先ほどの出来事によってファントム一体分の魔力を手に入れたのだ。

 

【ENGAGE】

 

詠唱を響かせたレプリカウィッチはバジリスクを締め上げたまま、腹部のレリーフ部分に手をかざす。

すると、ファントムの身体に魔法陣が出現し、その中へと手を差し込む。

その瞬間だった。

 

『ひぎゃあああああああああああっっ!!?』

 

バジリスクが絶叫する。

許容量を超えるほどの魔力を直接体内に流し込まれたことで全神経をズタズタにするような激痛が全身を襲っているのだ。

やがてバジリスクの身体は何度も痙攣し一際大きく震わせてから、そのまま動かなくなるとレプリカウィッチから解放される。

 

『……あー、うー』

 

同時に、バジリスクは生気のない動きで彼の隣に並んだ。

エンゲージは本来、人間の心に介入する魔法であり、ウィザードやウィッチが体内にいるファントムを打倒するために使用するものだ。

しかしレプリカウィッチはバジリスクの心に介入し、直接魔力を流し込むことで精神を破壊。魔力で動くただの傀儡にしたのだ。

コネクトの魔法でバジリスクを異空間へ収容すると、レプリカウィッチは次の標的へと身体を向ける。

 

『馬鹿にしていたんだろっ。あんたたちは俺を騙して、利用していたのかあああああああああああああああああっ!』

 

突き破られた絶望を力へと変えながら、レプリカウィッチが永山の元へ踏み出そうとする。

その時、彼を止める声が響いた。

 

「待てっ!」

 

動きを止め、声の方を見る。

そこにいたのは、自分に襲い掛かった少年と警察官の少女……颯太とマユだ。

付近にはホワイトガルーラが飛んでおり、役割を終えた使い魔は指輪へと戻る。

それを専用のホルダーに収めながら永山の元に駆け寄るマユ。

 

「早く逃げてくださいっ!」

【TELEPORT! NOW!】

 

魔法で0課の部署に転送させ、颯太の隣に並ぶ。

颯太がレプリカウィッチを強く睨んだ。

 

「やはりな。その力、お前に持たせていたら絶望しか生まない」

『黙れえええええええええええっっ!!!』

 

標的を逃がしたことで苛立ちを露にすると、魔力を剥き出しにして叫ぶ。

左手に嵌め込まれた指輪を鈍く光らせながら、言葉を続ける。

 

『この力は、俺のものだ……!』

 

その発言に、颯太とマユは顔を曇らせる。

善良だったであろう青年の声は狂気へと変貌し、他者を絶望へと至らせるファントムと同等の存在に成り下がっている。

しかし、そんな感情に浸っている余裕はない。

レプリカウィッチは口封じをするべく二人に魔法を放つが、それを回避すると互いにジクウドライバーとワイズドライバーを装着する。

そして、それぞれ変身アイテムを取り出した。

 

【REX!!】

【SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN! SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN!……♪】

『させるかっ!』

 

変身させまいと続けてレプリカウィッチがアローの魔法を放ち、強烈なエネルギーによる爆風が颯太とマユを襲う。

嘲笑うように勝利を確信したその時。

 

【KAMEN RIDER REX!!♪】

【WITCH! NOW!!】

 

変身を遂げたレクスとウィッチの姿があり、爆風は彼女が変身の際に出現させた琥珀色の魔法陣へと吸い込まれている。

 

「ライダーの力はお前には危険だな……ぶっ壊す!」

「拘束させて頂きます!」

 

宣言した二人から繰り出された拳と蹴りをレプリカウィッチはどうにか受け止めるのも、押し負ける形になってしまう。

そして、戦いの場は工場地帯へと変わる。

 

「はぁっ!」

「やっ!」

『ぐうっ!!』

 

ジカンジャナックルとウィッチガンドガンによる攻撃を受けたレプリカウィッチが火花を散らしながら、大きく仰け反る。

本来、戦闘とは無縁であるためか接近戦になるとどうしても対処が遅れてしまう。

このままではまずい……!

焦りを覚えたレプリカウィッチは指輪を腹部にあるレリーフへとかざす。

 

【GRAVITY】

「「っ!?」」

 

無機質な詠唱と共に彼は両手を宙へ向けると、周囲にあるドラム缶や置かれていた鉄骨が揺れ始める。

やがてそれらは、重力を無視したかのように浮き上がるとレクスとウィッチ目掛けて飛んできた。

 

「このっ」

「きゃっ!?」

 

迫りくる鉄骨などを躱す二人。

そして、彼らが態勢を立て直すころにはレプリカウィッチの魔法が発動していた。

 

【BLAST】

「ぐっ!?」

 

目に見える衝撃波をまとも受けてしまったレクスとウィッチが地面を転がる。

 

『ははっ、この力だ……この力さえあればっ!くひっ、あっははははっ!!』

 

その様子を見て、レプリカライダーは悦に浸ったような不気味な笑い声を工場内に響かせる。

理由は不明だが、明らかに自我の汚染度が速い上に最初の時は違い、明らかに力を使いこなしている。

長引けば不利になるのはこちらの方だ。

 

「ちっ!」

 

舌打ちと共に、レクスが取り出したのは赤と青のライドウォッチ。

そこには「2017」と記されており、ベゼルを回転させることでとある戦士の顔を浮かび上がらせる。

 

────「頑張れよ、仮面ライダー」────

 

それは、この世界とは違う『2017年の世界』……彼の知る情報とは違う仮面ライダーの力。

 

「力を借りるぞ、羽沢……!」

【BUILD!!】

 

それ『ビルドライドウォッチ』を起動させた後、反対側のスロットへと装填しバックルのロックボタンを解除する。

続けて、バックルを回転させた。

 

【ARMOR TIME! BEST MACH! BUILD~!!♪】

 

目の前にフルボトルのようなビジョンが現れ、その中には、右手にドリル武器を装備した赤と青のアーマーがポーズを取っている。

すぐさま蹴り飛ばし、分解されたパーツが飛んでくる鉄骨やドラム缶などの物体を弾き飛ばしながら、レクスの身体へと装備された。

正規の方法でライダーの力を継承した戦士『仮面ライダーレクス ビルドアーマー』は「BIRUDO」の文字を象った白い複眼を輝かせると、砲撃モードにしたジカンジャナックルの引き金を弾く。

すると、そこから発射されたのは青く光る矢のようなエネルギー弾。

まるで敷かれたレールで導かれるかの如く、レプリカウィッチの胴体へと命中し地面に叩きつける。

 

「皹の入ったその身体ごと研磨してやる!」

 

煙を上げて起き上がる敵との距離を詰めたレクスは、そのまま打撃モードから繰り出されるジカンジャナックルと、右手に装備したドリルCCの殴打を何度も叩き込む。

 

『がはっ!こ、この……!』

【WIZARD……!!】

【LAND】

 

身体を削り取るほどの衝撃に怯むレプリカウィッチはレプリカウィザードへとスタイルチェンジ。

そして、地属性の魔法であるランドで上昇した腕力で強引に攻撃を受け止める。

防がれたレクスに動揺の色は見られない。

何故なら。

 

【SCRATCH NAIL! NOW!】

「はぁっ!」

『ぐおっ!?』

 

戦っているのが彼一人だけではないからだ。

スクラッチネイルによる爪撃を背後から受けたレプリカウィザードは両腕の力を緩めてしまい、その隙を逃すまいとレクスがドリルCCを鳩尾に突き立てる。

 

『くそっ、くそっ!くっそおおおおおおおおおっっ!!!』

【HURRICANE】

 

胸元を抑えながら、レプリカウィザードが憎悪をぶつけるように禍々しい魔力を解き放ちながらハリケーンの魔法を発動した。

 

 

 

 

 

迫るエメラルドの暴風を躱すレクスとウィッチの戦いを、物陰からサーディスが観察していた。

 

「……」

 

自分が選んだ契約者は確かに素質こそあるが、如何せん相手が悪すぎる。

レジェンドの力を着実に継承しつつあるレクスと、幹部ファントムであるメデューサを倒したウィッチ。当然の結果と言えば当然だ。

このままだとジリ貧になったレプリカウィザードは撃破されるだろう。

本来なら加勢するところだが、今回はファスティの実験が主なため自分が出張るわけにもいかない。

 

「やれやれだぜっ」

 

コートのポケットから取り出したのは、レプリカウォッチではない白いライドウォッチ。

無機質なホワイトカラーをメインとしているが、ベゼル部分は鮮血のような赤で塗られた不気味な色合いの物で、ディスプレイも年代ではなく英語が刻まれている。

ベゼルを回転させ、それを放り投げた瞬間にライドウォッチから赤いエネルギーが放出される。

それは人の形を模した白い巨体へと構成させていく。

 

「トゥエムからの置き土産、存分に楽しみな」

 

帽子に触れながら、サーディスはその場を後にする。

白いライドウォッチ、そこに刻まれた名は。

 

Reaper(死神)……。

 

 

 

 

 

距離を詰められたレプリカウィザードが悲鳴と共に吹き飛ばされる。

先ほどまで魔法を使い続けてきたツケが回ってきたのだろう……魔力が切れて起き上がるのもやっとの様子にレクスがウィッチの方に顔を向けた。

 

『ぐっ、あぁっ』

「決めるぞ!」

「言われるまでもありません!」

 

レプリカライダーの撃破にはレプリカウォッチの破壊か同じ系列のライダーで倒す必要がある。

二つのウォッチが埋め込まれているため完全撃破が可能かは不明だが、ウィッチがいる状態ならば少なくともレプリカウィッチの力だけは倒せるだろう。

互いに必殺技の準備に入ろうとしたその時だ。

 

「「っ!?」」

 

不意に、強烈な殺意が襲った。

目の前にいるレプリカウィザードかと思ったが違う。

五感を震わせるほどの強烈な敵意。

明らかに人間ではありえない気配に戸惑う中、僅かな物音気づいたウィッチがコモンリングを発動した。

 

【BARRIER! NOW!】

「くっ!」

 

後方へ向き直り、コモンリングを填めた右手をかざしたのと赤い斬撃が襲ったのはほぼ同時だった。

その一撃は魔力で生成された琥珀色の盾に皹を入れ、粉砕すべく二撃目を放とうとした『敵』に向かってウィッチガンドガンの銃撃を放つ。

衝撃による火花を散らしながらも『敵』は自らの巨体をものともせずに高い跳躍力で距離を取る。

 

『……ッ』

 

それは、白く悍ましい怪物だった。

耳まで裂けたかのような口、皹が入ったかのような赤いライン……そして命を刈り取らんとする大鎌のような赤い爪。

それを、レクスは知っていた。

忘れるもはずもない、忘れられるわけがない。

 

「『リーパー』だと!?何故奴がここにいるっ!」

『~~~~~~ッッ!!!』

 

「死神」と名付けられた、白いピグマリオンが雄叫びをあげた。

かつて『新宿』との戦いで千切れた右腕は再生しており、鈍い輝きを放っている。

耳障りな悲鳴、否……逃し損ねた獲物を見つけた言わんばかりの歓喜に満ちた声が周囲を震わせる。

突如として現れた怪物に動揺するレクスとウィッチに、ピグマリオンのリーパーが爪を振るう。

その攻撃を回避し、集中している二人を見て動揺しながらもレプリカウィザードは魔力の切れた身体を引き摺りながら、その場から立ち去ってしまった。

追いかけようにも、リーパーの攻撃を躱しながらではそれも難しい。

横転して距離を取ったレクスに、ウィッチが詰め寄る。

 

「あの怪物は何ですか!」

「ピグマリオン……人を食らい、記憶を汚染する化け物だっ」

『~~~~~~ッ!』

 

レクスの簡潔した答えに再度叫び声を震わせるリーパーが両腕を振り下ろそうとした時だ。

 

【TYO-IINE……SPECIAL! SAIKO!!】

【GHOST! CHIKUTAKU SHOOTING!!】

「「はぁっ!!」」

『ッ!?』

 

異なる音声が響き渡ると同時に、ピグマリオンの頭上から緑色の矢と火炎が降り注がれた。

その一矢は目の前の獲物に集中していたリーパーの脳天を貫き、炎は白い全身を焼く。

 

『~~~~~~ッ!?』

 

当然、直撃を受けたリーパーは苦しみながらも火を消そうと地面を転がる。

その隙をレクスは逃さなかった。

 

【FINISH TIME!】

【BUILD!】

「くたばれっ!」

【VOLTEX! TIME CRASH!!】

 

ライドウォッチを再度起動し、ロックを解除したジクウドライバーを回転させて必殺技を発動。

白いグラフ状のエネルギーがリーパーを拘束すると同時にレクスが跳躍。

そのまま滑車の如く滑り落ちると同時に強烈な飛び蹴りを叩き込んだ。

 

『~~~~~~~~ッ!!』

 

貫かれたリーパーは爆散。しかし、レクスたちに気づかれることなく『リーパーライドウォッチ』は召喚者の元へと強制送還される。

レプリカライダーこそ逃走してしまったが、一先ずの戦闘を終えたレクスは妙な手応えのなさを感じながらも、ウィッチと共に先ほど攻撃を放った方向を見る。

そこから足音を立てて現れたのは、仮面ライダーロワと……。

 

「無事かい、お二人さん?」

 

赤いローブを身に纏い、ドラゴンの意匠が施された仮面ライダーウィザードだ。

気安い態度で近寄る彼にウィッチが一歩前に出る。

 

「助けてくれたことには感謝します。ですが、どういうつもりです?」

「あ、やっぱ分かる?」

「伊達にあなたを追っかけてはいません」

「やだ、照れちゃう!」

「褒めてません!」

 

互いに相容れないが、それでも通ずるものがあるのだろう。

友人同士のようなやり取りの後、ウィザードは変身を解いて怪盗としての姿を露にすると単刀直入に切り出した。

 

「取引しようぜ?万能の魔法使い」

 

不敵な笑みを浮かべ、右手を差し出した。




 次回はウィザードサイドのお話となります。
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