仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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 コラボ編の導入を書きつつ、ウィザード&ウィッチ編のお話です。
 一日遅れのクリスマスプレゼント(自惚れ)ですよ皆さん、そして長いよ馬鹿野郎。


TIME15 1202:ナウ&プリーズ!

緑色のシャツを着た青年『福井順平』は公園を走っていた。

両手に抱えたカバンを離さないように両腕で抱えながら、慌てた様子で必死に目的の場所へと向かう。

 

「ああもう!どうしてこんな時に打ち合わせが長引くのかなぁっ」

 

そんなことを一人ぼやきながら、喫茶店『ジュエル』へと向けた足の速度を上げた。

絵本作家を職業とする彼は元ゲートであり、ファントム・ジャックランタンの卑劣な手段によって絶望したところを怪盗を警察に助けられたことがある。

それからはウィザードの正体が奏真であることを知ってしまったのもあるが、魔法使いたちへの恩返しとして協力をしている。

もちろん、自分の書く絵本への参考にするという個人的な理由もあるが……。

 

「……て、うわっと!?」

 

慌てていたからか、微妙な段差に足を引っかけてしまったことで盛大に転んでしまった。

その際、両腕からすっぽ抜けたカバンが宙へと飛んで近くの噴水へと……。

 

「よっと」

「痛たた。えっ?」

 

落ちなかった。

鼻を抑えながら焦って起き上がると、視線の先にある噴水の近くにいたのは小さな茶髪の少年。

可愛らしく幼さの残る、白のワイシャツとサスペンダー付きの黒い短パンを履いた少し上品さを感じさせる男の子だ。

しかし、その上には幼い身に不釣り合いな真紅のコートを羽織っており、袖も丈が合っていないせいでダボダボになっている。

そんな特異な外見にほんの少しだけ驚いたが、すぐに起き上がると自分の荷物をキャッチしてくれた少年にお礼を言う。

 

「ありがとう!大事な仕事道具が入っているからさ、本当に良かった~」

「いやいや、僕は当たり前のことをしただけだよ。困っている人は助けなきゃ!」

 

そうあどけない笑顔を見せる彼に釣られて順平も笑う。

もう一度お礼を口にし、今度はカバンを背負ってからジュエルまで向かおうとする彼に少年が「待って」と止める。

振り向いたところに渡されたのは黒いアタッシュケース。

 

「これ、あげるね!」

「えっと、これって……」

「開けてみて」

 

言われてケースを開けてみれば、そこに入っていたのは翡翠色の大きな石のような物体。

不思議な輝きを放つそれはまるで原石のようで、何処か人を魅了するかのようだ。

しかし、順平は見覚えがあった。

それは以前に絵本のネタに使いたいという理由で、李譜杜の工房を見学した時……。

 

「『魔法石』っ!?」

 

あの時に見せてもらった宝石と同じ輝きを持つ原石だったのだ。

慌てて顔を上げるが、既に少年はその場から消え去っていた。

まるで煙のように、最初から存在しなかったかのようにいなくなっていた。

 

「え、あれっ!?」

 

あの少年は何だったのか、何故魔法石を持っていたのか、それを何故自分に渡してくれたのか。

様々な疑念に混乱しながらも、アタッシュケースを抱えながらジュエルへと向かった。

 

 

 

 

 

穏やかな平日の午後、いつもならそこそこの多忙さを見せる喫茶店ジュエル。

しかし、その日は『貸し切り予約』ということで店内には一部の人しかおらず、かといってコーヒーを片手に談笑をしている様子もない。

それも当然だろう。

 

「「……」」

 

席には怪盗服で素顔を隠した奏真と、黒いスーツに身を包んだマユが睨み合っていたからだ。

最も、警戒しているのは彼女だけで奏真の方は特に身構えず、リラックスした様子でミルクと砂糖を入れたコーヒーを啜っている。

店員である愛実と李譜杜は二人が話しやすいように距離を取っており、この空気に落ち着かないのは椋だ。

ミサキとレイナ、ナナミは慣れた様子で事の行く末を見守っているが、元々普通の高校生である彼はこういった状況にまだ慣れていない。

そうなると、隣で座っている人に声を賭けたくなるのは当然というわけで……。

 

「ね、ねぇ颯太」

「空気読め、大事な話をしているだろうが」

 

一蹴された。

仕方なく黙って座り直す椋だが、奏真とマユの話は進んでいた。

 

「……では、あなたは彼から魔法石として魔力を盗む気はないと?」

「まぁね。それに代わるお宝は既に頂いたからさ」

 

そう言って取り出したのはウィザードライドウォッチ。

奏真が持っていることに目を見開いた颯太が椋に小声で詰め寄る。

 

「おいっ」

「ご、ごめんっ。でも、ライドウォッチを渡したら協力するって言われて」

「私は反対したんですよ。でもマスター、あっさり渡しちゃって」

 

慌てる彼に対してナナミがジト目で睨む。

実はジュエルに避難した後、椋たちはレプリカライダーなどの事情を説明。

愛実らは協力することを約束してくれたのだが、奏真はある条件を提示したのだ。

彼は人々から希望を奪うファントムから護るために戦っている。

そのためには新たな魔法……即ち魔法石が必要なのだ。

そこで椋が彼に渡したのがウィザードライドウォッチ。

 

「それに、奏真さんはライドウォッチ自体が欲しいわけじゃないですよね?」

「あ、ばれた?」

【STEAL! PLEASE!!】

 

奏真が指輪をバックルにかざす。

魔法の詠唱が流れた瞬間、ライドウォッチから魔力が溢れると一つの形となっていく。

やがて、その魔力は塊……魔法石へと変わった。

仮面ライダーウィザードのオリジンから託されたライドウォッチには、充分な魔力がある。

だからこそ彼は協力するための条件として提示したのだ。

 

「ま、そんなわけで……どうかな、ウィッチちゃん?」

 

未だに余裕を崩さない怪盗にマユが睨む。

しばらく逡巡したが、やがて深く息を吐いた。

 

「……分かりました。あなたの提案に乗ります」

「そうこなくっちゃ」

「ですが!私はあくまでも、あなたに報酬を強要された小野寺君たちのために戦います。あなたとの共闘はその延長線上でしかありません。間違えないでください」

 

差し出された手を握ることなく、マユは正面から奏真を見据えた。

市民のために戦う彼女もまた、絶望から人々を助ける魔法使いなのだ。

奏真は彼女の正義を知っている。

自分よりも正しい心と倫理があることも知っている。

龍堂奏真という人間として出会ったからこそ、怪盗ウィザードとして彼女と激突したからこそ、彼女の希望が人々を照らしているのだと理解している。

彼女の態度に口元が緩んだ途端、窓を叩く音がした。

窓の方を見れば、獣のような体躯と鳥の頭部と翼を持った緑色の小さな使い魔が嘴で窓を叩いているのが見える。

プラモンスター『グリーングリフォン』だ。

 

「あの、あれって……」

「獅子神さんの、ってことは!」

「見つけてくれたってこと、そんじゃ行こうか!」

 

奏真はそう言うと、すぐさま店を出る。

「待ちなさい」と後を追う彼女に、慌てて椋と颯太も続くのだった。

 

「私たちはどうしますか?レイナさん」

「ここはマスターたちに任せましょう」

 

ピグマリオンでない以上、自分が出来ることは少ない。

それに万が一のためにここで李譜杜と愛実を守る必要があると考えたレイナは敢えて、待つことを選択した。

ミサキもそれを理解したのか、コーヒーを飲んだまま席を外していない。

そんな中、貸し切りになっているにも関わらず慌てて店の扉を開けた青年が入ってくる。

 

「はぁっ、はぁっ!あれっ、奏真さんたちは!?」

「もう出てったぞ」

「そんなぁ……走って来たのに」

「あはは。とりあえず、お水をどうぞ」

 

李譜杜に言われて崩れ落ちる青年……順平に苦笑いしながら愛実が冷たい水をコップに注ぐ。

「ありがとう」とお礼を言ってから、疲れた身体に水分を補給をしたが思い出したようにアタッシュケースを李譜杜に見せた。

 

「そうだそうだ!店長さん、これを見てください!」

「あん?お前よぉ、こんな厳重にしてまでエロ本を持ってくんなよ。ちなみにジャンルは?」

「誰もエロ本って言っていないでしょエロ爺!とにかくこれ!」

 

李譜杜の本気とも冗談とも取れるボケにツッコミながらケースに入った魔法石を見せる。

瞬間、彼の目が変わった。

 

「……詳しい話は後で聞いてやる。工房まで運ぶの手伝え」

 

元宝石職人である彼のスイッチが入った。

 

 

 

 

 

時刻は、奏真とマユたちが取引している時まで遡る。

薄暗い高架下のトンネルを結衣は一人歩いていた。

あれから永山や光流と連絡が取れなくなったことに不安を抱く。

二人の安否を祈っていた時だ。

不意に人の気配を背後に感じ、振り返る。

そこには憎しむに彩られた表情の光流がおり、いきなり結衣の首を絞める。

 

「かは……ひ、光流君っ?」

「何でっ!俺はあの小屋のために、先輩のために頑張ったのにっ!」

 

怨嗟の感情を込めて吐き出す光流。

既に彼の中では、結衣が自分の想いを踏み躙ったことになっていた。

だが、事実は違う。

そもそも結衣は光流の想いに気付いていないし、むしろ彼女にとって恩人である。

それどころか光流の将来を思い、小さな見世物小屋からもっと広い世界に羽ばたいて欲しいとすら思っている。

しかし、光流の欲しいものはそんな想いではない。

故に混乱した感情はひたすらに空回り、彼女が裏切ったと自己完結してしまった。

昂る感情と同調するように、彼の顔に浮かび上がるのは砕け散った宝石の如き異形の顔。

 

「何でだよ、何でえええええええええっ!!」

【WIZARD……!!】

「ひっ……!?」

 

解き放った魔力と共に、光流はレプリカウィザードへと変身する。

知人にいきなり襲われる恐怖。そして、それが怪人へと姿を変える恐怖に結衣の顔は血の気を失う。

 

『許さない……絶対、絶対にっ!!』

 

完全に愛情と憎悪が反転してしまったレプリカウィザードは、腰を抜かしたまま後退る彼女の首に指を喰い込ませようとする。

しかし、それを止める声があった。

 

「待て待て待て待て!ちょーっと待ったー!」

 

場違いなほどに明るい青年の声。

それと同時にレプリカウィザードの身体に衝撃が走る。

側面から何者かの体当たりを受けたことで、そのまま壁に叩き付けられる。

自らを抑え込む人物は茶髪の青年で、人当たりの良い端正な顔立ちをしている。服も赤いシャツの上にライトブラウンのジャケットを羽織っている。

靴は黒いブーツであり、まるで冒険家のようだ。

 

『このっ、離せっ!!』

「吃驚仰天、本当にウィザードそっくりじゃねぇか……て、うおっ!?」

 

歪ながらも、知り合いの変身した姿に酷似したレプリカライダーに彼の持つ好奇心が刺激されたのか、抑え込みながらも注意深く観察しようとする。

しかし、レプリカウィザードの人知を超えた力で振り払われるが、慣れた動きで受け身を取ると結衣を庇うように立ち上がる。

しかし。

 

「ま、待ってください!あの怪物は……!」

 

結衣が、彼の手を掴んで止めた。

未だ混乱していたがレプリカウィザードが光流だという事実を受け止めた彼女は、彼を傷つけてもらわないように懇願しようとする。

一方の青年は、不敵に答える。

 

「委細承知、皆まで言うな!あんたの後輩は俺が元に戻してやる、そんで……」

 

白い指輪……まるで何かの扉を思わせるような指輪を嵌めた手を見せつけ、宣言する。

 

「お前にある大量の魔力、ガッツリ食わせてもらうぜ!」

【DRIVER ON!】

 

腰のバックルにかざすと同時に鳴り響く詠唱。

それは金色の輝きと共に白い扉のようなバックルとベルトへ変形する。

 

『まさか、お前も……!?』

「しかと刮目しな!」

 

新たに左の中指に装着されるのは獅子の意匠が掘られた金色の指輪。

そのまま天へと左腕を伸ばす。

 

「変……身っ!」

【SET!】

 

手首を返しつつ、手の甲を見せる。

そのまま両腕が交差するように円を描き、それが一定の位置まで動くと、青年は獲物に飛び掛かる前の肉食獣の如く身を低くし、両腕で逆向き「C」の字を形作る。

そして、左手の指輪をベルトの側面にある窪みに押し当て、そして捻った。

 

【OPEN!】

 

扉は開かれた。

封印された野獣が餌を見つけたかのような神々しくも獰猛さを秘めた獅子のレリーフが顔を見せると同時に金色に光る角ばった魔法陣が解き放たれる。

 

【L・I・O・N!ライオーン!!】

 

ウィザードやウィッチの物とはまるで異なる魔法陣は青年の身体を通過すると、その身体を変身させた。

黄金の鬣を持つ仮面と緑の複眼、黒いアンダースーツと白いグローブ。

左肩には仮面と同じく獅子を象った金の装甲。

野に放たれた獣を封じたベルト『ビーストドライバー』の使い手たる青年の名は……。

 

「俺の名は『獅子神コウスケ』。獅子奮迅の海内無双を見せる古の魔法使い……『ビースト』だ!」

 

古き魔法を使う現代に生きる魔法使い『仮面ライダービースト』は「さて」と両手を組み、告げる。

 

「食前方丈、ランチタイムだ!」

 

バックルのレリーフからダイスが内蔵されたサーベルやフルールを思わせる剣『ダイスサーベル』を取り出しながら、地面を蹴った。

 

『邪魔をするなぁっ!!』

【WATER】

 

レプリカウィザードはフレイムの魔法で水流を放つが、ビーストはそれを両断すると勢いのままダイスサーベルを振り下ろす。

当然、近距離の手段を持たないレプリカウィザードは直撃したことで身体から火花を散らす。

仰け反ったその隙を逃すことなく、ビーストは強烈なニーキックを浴びせた。

 

『がぁっ!?』

「奏真から聞いたぜ。お前、本当は人間なんだろっ?だったらこんなことやめろようぜっ!」

『黙れっ!お前に、お前に何が分かるっ!?』

「だぁもう!軽慮浅謀ってレベルで話が通じねぇ……ならっ!」

 

ファントムとは違う怪人というのを事前に聞いていたため、どうにか説得しようとするも自我が汚染されているレプリカライダーは彼女を襲おうと躍起になる。

早々に話し合いが不可能だと判断したビーストは距離を取ると、赤いレリーフが掘られた指輪を取り出し、右手の中指に嵌める。

そして、ベルトの右側面に押し当てた。

 

【BUFFA!】

【GO! BU・BU! BU・BU・BU・BUFFA!!】

「猪じゃねぇけど……猪突猛進!行くぜっ!!」

 

詠唱と共に右肩に装備されたのは深紅のマント。

金に輝く双角を生やす屈強な生物……バッファローの持つ能力を宿す『バッファマント』を靡かせたビーストはそのまま直進する。

しかし、その勢いは力強さを秘めており、彼の蹴った地面が罅割れているのが分かる。

 

『なっ!?こ、来いっ!』

『うー』

 

当たればまずい……!

直感的にそう理解したレプリカウィザードは異空間に収納していたファントム・バジリスクを召喚。

廃人化した蛇のファントムは傀儡のようにビーストを抑え込もうとするが……。

 

「ガルァッ!!」

『あぎっ』

 

近接戦闘に特化していないバジリスクの細腕で止められるはずもない。

バッファローの如き力を持ったビーストの強烈なタックルによって壁に叩きつけられると、バジリスクはそのまま動かなくなってしまう。

しかし、元来の高い耐久力のおかげで撃破されていないのは流石と言うべきか。

相手の戦力を一体、無力化させたビーストはダイスサーベルを肩に担いだまま、悠々と歩く。

 

『くそっ!俺はっ、俺は……!』

「暗雲低迷……もう大人しく俺に食われな」

 

血が噴き出さんばかりに拳を強く握るレプリカウィザードにビーストが止めを刺そうとした時だ。

 

【GORGON】

 

不気味な声が響いた途端、目を光らせた無数の蛇が周囲を襲った。

それは辺りを破壊し、ビーストにも迫るが地面を叩くことで生じた衝撃波で何とか粉砕する。

やがて煙が晴れた先にいたのは……。

 

「ファントム……!?」

 

見慣れた怪人、ファントムの姿。

白い彫刻のような女性型の身体を持ち、金色に輝く嘴状の装甲を持つ身体と同色のクロークを覆ったその姿は一見すると天使や神のようで、ファントムには見えない。

しかし腹部は縦に裂かれており、そこに潜む『何か』が双眸を奥底から不気味に光らせている。

悍ましさがあるにも関わらず、その姿はまるで奇跡の子を産み落とした聖母のようにも見えた。

明らかにこれまでとは違う雰囲気を感じ取ったビーストはグリーングリフォンを召喚し、奏真たちのいる場所へとこっそり飛ばす。

 

『……素晴らしい』

 

儚くも美しく、それでいて母性を感じさせる柔らかな声にレプリカウィザードは狼狽えながらも警戒を解かない。

ビーストが攻撃しようとするも、腹部から出した無数の蛇が妨害する。

 

「うわっと!?」

『あなたは今、絶望という試練に挑み愛を得ようとする信徒……我々の目的と無関係とは言え、愛に応えようとする勤勉な者を見捨てるなど、私には出来ません』

 

そう祈る白いファントムは次にバジリスクへと視線を向ける。

しかし、廃人となった彼は焦点の定まらない視線を彷徨わせるだけだ。

 

『ああ、バジリスク……ただのファントムでありながら上昇志向が強く、心を砕かれてもなお生き延びようとする意志を私は尊敬します』

 

物言わぬ人形と化しているバジリスクに感銘を受けた白いファントムは両手を組んで祈りを捧げる。

そして、穏やかな物腰のまま彼女が近づく。

 

『その想いに、私の愛を持って応えましょう』

【RAUM】

 

自らの裂けた腹部に手を入れて取り出したのは、球状にした魔力。

鳥人間のようなファントムの姿が一瞬だけ映った魔力の球体を、躊躇なくバジリスクへと押し当てた。

瞬間、それは音を立てて蛇のような身体へと入り込んでいくが、それだけでは終わらない。

 

【VALKYRIE】

【SIREN】

【KELPIE】

 

体内から球体として取り出した魔力……彼女が肉体ごと喰らい、吸収したファントムの力を次々と注ぎ込む。

やがて、最後の魔力を埋め込んだ途端だった。

 

『ギッ!ギギッ、ギシャアアアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

異なるファントムの魔力を強引に取り込んだバジリスクは胸元を苦しそうに掻き毟ると、その姿が変質していく。

肉体が泡立ち、抑えきれなくなった魔力のカクテルがファントムから溢れ出てくる。

不気味な色の魔力の放出が終わり『それ』は姿を見せた。

 

『アアアアアアク……』

 

それは、一言で表すならば鳥と蛇が混ざり合った怪人。

緑色だったバジリスクの顔と身体はそのままに、馬蹄型の装甲を手足に纏い、背中には左右合わせて四枚の異なる翼を生やしている。

怖気の走る悪夢のような光景、悍ましい悪夢のような合成ファントム。

もし、新たな名をつけるのだとしたら……。

 

『さぁ、お行きなさい。「ナイトメア」』

『ムムムウウウウウウウンッ!!』

 

悪夢を見せる夢魔と同じ名を持ってしまったバジリスクだったファントム……『ファントム・ナイトメア』が再度悲鳴のような雄叫びをあげた。

翼を広げ、中央部分が折れてしまったかのような短槍を二刀流で構えるとビースト目掛けて突っ込んでくる。

ダイスサーベルで受け止めるも、先ほど以上の馬力に押されてしまう。

 

「動揺動乱、何だこりゃっ!?それにお前は一体……!」

『私は「マリア」。そう、ただのマリアです』

 

聖母マリアと同じ名を持つ『ファントム・マリア』は一方的に自らをそう名乗ると、魔力で発生させた高圧水流をビーストに放ち、彼を吹き飛ばす。

流石に二体同時の攻撃を防げるはずもなく、地面を転がったビーストは結衣に危害が加えられぬようにと橙色の指輪を装着し、隼の能力を宿す『ファルコマント』を装備。

レプリカウィザードに突っ込み、そのまましばらく宙へと飛ぶが当然マリアとナイトメアは見逃さない。

ナイトメアが凝縮した禍々しい魔力の弾丸を口から放ったことで撃ち落とされてしまうも、充分な距離は稼げた。

広い場所へと戦いの場を移し、態勢を整えたビーストがダイスサーベルを構える。

 

『アクゥゥゥ……!』

『古の魔法使い。ネクロマンサーが与えてくださる愛のために、礎となりなさい』

 

自分の手助けをするマリアを訝しみながらも、衝動に突き動かされているレプリカウィザードはフレイムの魔法を発動する。

両手を掲げると、そこから火属性の魔力が集まっていく。

それらは凄まじい速度で生成・圧縮されると巨大な火の玉へと変わる。

 

『これで……消えろぉっ!!』

 

火属性の魔力を凝縮させた火炎弾を振り下ろさんとした、その時だった。

赤と琥珀色の軌跡を描いた銀の銃弾が迫る。

それは、二体のファントムとレプリカウィザードに狙いを定めるように追尾する。

 

『ムゥッ!』

『……』

 

マリアとナイトメアは水の魔法と手に持った武器で相殺するも、攻撃の途中だったレプリカウィザードは防御も回避することも出来ず。

 

『グギャアアアアアアアッッ!!?』

 

顔面へと命中してしまった。

当然、上空に留まっていた火球は霧散。直撃を受けたレプリカライダーは地面を転がる結果となる。

煙を上げる頭部を上げた先にいたのはフロント部分が赤い宝石のようになっているバイク『マシンウィンガー』に跨った青年と青と赤に塗り分けられたマシンウィンガーと酷似した『マシンエレメンター』に乗る少女。

そして、色の違う二台のライドストライカーを駆る少年たち。

 

「やっと見つけたぜ、ファントムさんよ」

「石橋光流さんですね。あなたを保護します」

 

それぞれがバイクから降りると、ウィザーソードガンとウィッチガンドガンを構えた奏真とマユが告げる。

しかし、レプリカウィザードは激情に任せて叫ぶ。

 

『ふざけるなっ!何度も何度も、俺の邪魔をしやがって!!』

「そりゃあ。魔法使いはお前たちみたいな奴を邪魔するのが仕事なんでね」

 

そう告げた彼に続くようにマユが一歩前に出る。

 

「あなたは、魔法使いになる資格はない。最後まで誰かのために魔法を使えないあなたに、私たちの力は使わせない!」

「同感だな。現にお前は私怨で自分の恩人に手を掛けようとした、少なくともお前に魔法は似合わない」

『黙れ黙れ黙れぇっ!!』

 

吐き捨てた颯太の言葉にレプリカウィザードが地団太を踏む。

今の彼は正常な判断が出来ていない、ただただ自分を否定する存在を今すぐにでも消したい衝動で動いている。

 

『俺は万能と指輪の魔法使い!お前たちが俺に勝つなんて、万に一つもあり得ないんだよぉっ!!』

「はっ。あり得ないこと…」

「一念通天。あり得ないことをすんのが、魔法使いなんだよ」

 

四人に並び立つのは、ビーストだ。

セリフを勝手に取られた奏真は仮面の下で露骨に顔をしかめる。

 

「人の言おうとしたセリフを勝手に使うなよ」

「たまには取られろ、怪盗」

 

馴れ馴れしく肩に腕を乗せようとするビーストを軽く払いつつ、ウィザードライバーを装備した奏真はウィザードリングを中指に装着する。

それは、フレイムスタイルの指輪とは違う装飾が加えられた赤い魔法の指輪。

レバーを下ろして詠唱を鳴らした彼に続き、マユもまたドライバーから詠唱を鳴らしながらウィッチの指輪とは異なる白と黄色のウィザードリングを装着する。

椋と颯太もジクウドライバーとライドウォッチを起動した。

 

【【SHABA DOOBIE TOUCH HENSHIN!……♪】】

『変身っ!!』

【【RIDER TIME!】】

 

まずは椋と颯太がロワとレクスに変身。

そして、奏真とマユもウィザードリングをバックルのレリーフへとかざした。

 

【FLAME! DRAGON! BO・BO! BO・BO・BO!!♪】

 

赤い魔法陣が出現すると、そこから西洋の竜を象った炎の幻影が出現する。

それは空を浮遊すると、魔法陣を潜り抜けて変身したウィザードの身体へと重なった。

瞬間、強化された火のエレメントと体内に封印されたファントムの力が融合する。

現れたのはロングコート状の赤い魔法衣を纏い、頭部にドラゴンの装飾が施された魔法使いとしての更なる姿『フレイムドラゴンスタイル』。

 

【WITCH! MAGICA! MAJIKA・MAJIDE! MAJIKA MAGICA~!!♪】

 

白と黄色の二つの魔法陣が重なり、マユの身体を魔法使いへと変える。

左肩に装備されたマントはアゲハ蝶を思わせるような綺麗な紋様が掘り込まれており、風で靡く度に美しい光を放つ。

琥珀色のマスクには昆虫の複眼を思わせる薄い黄色のバイザーが装備され、魔法帽とカブトムシの角が混ざり合ったような頭部へと進化する。

マユが抑え込んだファントム『オベロン』の力を解放した姿『ウィッチマギカ』だ。

 

「さぁ、ショータイムだ」

「終わりの時よ」

「捲土重来!ランチタイムだ!!」

「「はぁっ!」」

 

三人の魔法使いと、二人の仮面ライダーが地面を蹴った。

ロワとレクスはレプリカウィザードを、ウィザードとウィッチはマリア、ビーストはナイトメアを相手する形になる。

 

『アクムゥゥゥゥン!!』

 

ナイトメアが短槍の二刀流を振るい、ビーストを切り刻もうとする。

しかし、それらの攻撃はダイスサーベルによって防がれただけでなく豪快に繰り出された一撃によって全て潰されてしまう。

 

『アッ!?』

「ガルァッ!」

 

続けて振り下ろされた斬撃がナイトメアの身体を削る。

肩を掴み、強引に引き寄せたところを強烈な膝蹴りが何度も叩き込まれる。

「クゥッ」と呻くのも気にせず、獣の如き獰猛なビーストの攻撃がナイトメアを追い詰めていった。

 

『ムムムゥゥゥ!』

 

苦痛を追い払うように、乱暴に身体を動かしたナイトメアは翼を広げて空中へと避難する。

心を失い、ファントムの魔力を新たに注入されたそれは本能で理解する。

忌々しいが地上では勝ち目がない。

だが、自由に飛行出来て豊富な攻撃手段を持つ限り、奴に勝ち目はない……!

そう判断し、ビーストを見下ろす。

 

『アクッ!?』

 

ビーストの姿が消えていた。

自分は視線を外さなかった。それにも関わらず、ビーストは忽然と消失していたのだ。

慌てて周囲を見渡し、五感を鋭敏にする。

もしもナイトメアがバジリスクとしての意思が残っていたのなら、ありとあらゆる手段を使っただろう。

単なるケダモノとなっていることが、致命的となった。

 

「そらよっ!」

『ムッ!アッ!?』

 

突如、ロープのような見えない何かが首を締め上げたのだ。

同時に右肩に爬虫類のシンボルがある緑色のマントを装備したビーストが姿を現した。

カメレオンの特性を宿した『カメレオマント』で音と姿を消し、動揺し集中力が乱れるのを待っていたのだ。

伸ばしたロープ……鞭のようにしなる舌を操り、地上へと思い切り叩きつける。

 

『クッ、ムゥゥゥゥッ』

 

激痛にもがくナイトメア。

古の魔法は動物の特性を宿している。

それはつまり、獲物であるファントムを確実に仕留めるために進化し続ける狩猟生物の持つ本能を魔法へと落とし込んでいるのだ。

暴走するファントムなどビーストの敵ではない。

彼にとっては格好の餌、魅力的な香りを放つ極上の獲物にしか過ぎないのだ。

 

「一攫千金!メインディッシュだ!!」

 

宣言と同時にルーレット状になっているダイスサーベルの柄を思い切り回転させる。

そして、左手に持ち帰ると右手のリングを押し込んで止めた。

ダイスに目は、四!

 

【FOUR CHAMELEO! SABER STRIKE!!】

「オラァッ!!」

 

ダイスサーベルを振り下ろした瞬間、その斬撃は金色の魔力を宿す。

そしてそれは四体のカメレオンへと変化すると、槍の如き鋭さを持つ舌を突き出して突進した。

 

『アアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

身体を貫かれたファントム・ナイトメアは爆散。

そしてその魔力はビーストの魔法陣に組み込まれると、そのままビーストドライバーへと吸い込まれていった。

撃破したのは一体だが、実質五体分の魔力を喰らったビーストは息を漏らす。

 

「一挙両得、一石二鳥……ごっつぁんっ!!」

 

満足そうに両手を合わせるのだった。

その光景を見ていたのはマリアが嘆く。

 

『ああ、ナイトメア。あなたもまた、試練に打ち勝つことが出来なかったのですね」

 

悲しみに打ちひしがれながらも、両手に持った刃のない槍……ハンマースピアでウィザードとウィッチの攻撃を捌いている。

コピーの魔法で増やしたウィザーソードガンの二刀流による巧みな剣技と、ウィッチマギカ専用の槍『ライドスクレイパー』の高速の斬撃を受け流し、防ぐ。

そんな時だ。

 

「怪盗さーん!!」

 

突如聞こえた声に振り返ると、そこにいたのは順平……そしてミサキとレイナだ。

その隙を狙って、マリアがファントム・ミノタウロスの力を発動。

ウィッチが跳躍して何とか躱し、ウィザードも武器を使って防ぐが吹き飛ばされてしまう。

 

「順平っ!?お前、何で……」

「李譜杜さんが作ってくれた指輪です!受け取ってくださーい!!」

『させません』

 

マリアがハンマースピアを振るってウォーターカッターを飛ばすが、それをミサキとレイナが片手剣を使って防ぐ。

投げられた指輪をどうにかキャッチし、確認。

緑色の簡易的な物と龍の装飾が象られたハリケーンの指輪。

 

「サンキュ、使わせてもらうぜ!」

【HURRICANE! DRAGON! BYU・BYU! BYUBYU・BUYBYU!!♪】

【TYO-IINE……SPECIAL! SAIKO!!】

 

エメラルドの魔法陣と風を宿したドラゴンの幻影が重なり、ウィザードを新たなスタイル『ハリケーンドラゴン』へと変身させる。

すぐさまスペシャルを発動し、ドラゴンの翼を具現化させると凄まじい速度と共にマリアに迫る。

 

『くっ!』

【SYLPH】

 

渦巻いた風が人型になったような青いファントムが一瞬だけ映ると、マリアの周囲を風が覆う。

そして、空中へと飛んでウィザードの攻撃を受け止めた。

そのまま二度三度と激しい打ち合いが続き、しばらくそれが繰り返されると思ったが……。

 

「私がいることを忘れては困ります!」

『なっ、がっ!?』

 

ウィッチの強烈な飛び蹴りが炸裂した。

見れば左肩のマントから淡い光が漏れており、ライドスクレイパーの持つ飛行能力を強化させたのだ。

まるでスケボーのような巧みな操作でマリアの攻撃を躱す。

多種多様なファントムを喰らい、自らの力へとしていったマリアだがあくまでも『使えるようになるだけ』で戦闘経験が蓄積されるわけではない。

それが、今回の命運を分けた。

 

「フィナーレだ」

「ラストコール!」

【TYO-IINE……THUNDER! SAIKO!!】

【YES……SPECIAL! UNDERSTAND!!】

 

態勢を大きく崩したマリアにウィザードは雷を纏った暴風を、ウィッチは光のエレメントを宿したレーザービームを放つ。

それをマリアは全て受け止めようとするも。

 

『帰るぞ、マリア』

『っ!?オーディン……』

 

いつの間にか現れた白い包帯を巻きつけたような割れた紫色の仮面を持つファントムによって強制的に転移させられていた。

逃げられたことに動揺するも、一先ずの脅威が去ったことを確認したウィザードとウィッチは地面に降り立つ。

 

「……ふぃー」

 

安堵の息を吐きながら、ロワとレクスの方を見やる。

彼らはまだ戦闘中でありウィッチの姿へとスタイルチェンジしたレプリカライダーの魔法に苦戦している様子だ。

すぐさま助太刀に向かおうとするウィッチを止める。

 

「何のつもりですか!?」

「良いから良いから」

 

何か言い返そうとする彼女を制止させると、彼らの戦闘に視線を戻した。

 

『俺は、俺はただ先輩のために!先輩が喜んでくれると思ったから、だからっ!!』

「だから守ろうとしたんですよね!魔法の力で」

 

地面から伸びた魔力の鎖がジカンハカリバーで砕きながら、ロワが問う。

魔法を発動しながらも、レプリカウィッチが「そうだ」と叫ぶ。

 

『この力があれば全部上手くいった!それなのに……!』

「自惚れるな。ライダーの力は独りよがりを叶えるための力じゃない」

 

衝撃波をレクスのジカンジャナックルが相殺する。

そして次の魔法が発動する瞬間を狙って、ロワの銃撃が炸裂する。

 

『がぁっ!?』

「僕がこの力を手に入れたのは、誰かが泣いている姿を見たくないと思ったから。もうルリちゃんみたいな子が増えてほしくないから……だからこの力を受け入れた!」

『うるさいっ!俺だって、俺だって結衣先輩のために……あの人のために俺はっ!』

「『希望になろうとした』……そう言いたいのか?」

 

ロワの言葉に一瞬だけ動揺するも、すぐさま頭を振って魔法を発動しようとする。

しかし、レクスの言葉がそれを止めた。

そう。自分がこの力を求めたのは、全部彼女のためだったのだ。

困っている姿を見たくなかったから、彼女の涙を宝石のような美しい笑顔に戻したかったから。

瞬間、顔面に強烈な打撃が叩き込まれた。

 

「この大馬鹿野郎っ!!」

 

レクスの強い言葉が突き刺さる。

吹き飛び、地面を転がるレプリカウィッチにロワが叫ぶ。

 

「好い加減にしなよ!だったらどうして大事な先輩たちを傷つけようとしたんですか!?そんなのは希望なんかじゃない。本当に必要だったのは、想いを伝える勇気でしょ!」

「俺は誰かの希望を潰すことに躊躇はしない。それが罪なき人を害するというのなら、完膚なきまでに粉砕する」

 

事実だった。

最初からそうだった。結衣の言葉に了承したのは、彼女を喜ばせたいと思ったから。

学生時代から好意を抱いていた彼女に、成功した自分の姿で想いを告げたいと思ったから!

しかし、ここで認めてしまったら。

一体何のために、自分はこの力を手に入れたというのだ。

 

『ああああああああああああっっ!!!』

【SPECIAL】

 

レプリカウィッチが魔法を発動する。

魔力が極限まで高まったことで可能となったスペシャルの魔法は、赤い魔法陣からレプリカウィザードの幻影を出現させる。

そして、新たなスタイルへの変身が始まった。

 

『ガアアアアアアアアアアアッ!』

 

現れたのは龍の魔人。

龍の骨と甲虫を素体に、赤・青・黄・緑と琥珀色の宝石が埋め込まれた装甲を持つローブを羽織った魔法使い……しかしファントムのようにも見えるその姿は人間と怪物の狭間を行き来しているかのよう。

レプリカライダーの性質を持った『ファントム・ダイモーン』は雄叫びを上げるとフレイムの魔法で周囲を一掃する。

どうにか回避したロワとレクスだが、このままでは近づけない。

そんな時だ。

 

「椋!」

「最矩君っ!」

 

変身を解除した奏真とマユが投げ渡したのはライドウォッチ。

前者はウィザードライドウォッチだが、後者は颯太が忘れていったのを密かに回収したブランクウォッチだ。

しかし、それはレクスがキャッチした時には琥珀のボディと白いベゼルに変化していた。

その意味を理解した二人はウィザードライドウォッチと『ウィッチライドウォッチ』を起動。

 

【WIZARD!!】

【WITCH!!】

 

バックルに装填してからロックボタンを解除し、回転させた。

 

【【ARMOR TIME!】】

【PLEASE! WI・ZARD!!♪】

【NOW! WITCH~!!♪】

 

魔法陣を潜り抜けたロワはウィザードアーマーを装備。

レクスは右から現れた琥珀色の魔法陣を潜ると、琥珀色の装甲とマントが両肩に装着される。

そして左腕にカブトムシを彷彿させるパイルバンカー、マスクの複眼には「WICCHI」の白い文字が刻まれた。

『仮面ライダーレクス ウィッチアーマー』の誕生である。

 

「さぁ、ショータイムを始めるよ」

「お前に終わりを刻んでやる!」

 

レクスが地面を蹴ってダイモーンへと直進。

当然、無数の魔法を放つもレクスはバリアの魔法を発動して防御。

強引に攻撃魔法の雨を突破するとパイルバンカー『ウィッチスピアー』でダイモーンを殴る。

 

『ウゲッ!?』

 

仰け反ったところで一歩踏み出し、今度はジカンジャナックルを構えた右腕で思い切り殴る。

その際、左右の手にヒートとブラストの魔法を発動させており、衝撃波の走る刺突と高熱を持った打撃を叩き込まれる結果となった。

 

『ギッ』

「させない!」

 

ウォーターの魔法で激流を放とうとするよりも早く、ロワがブリザードの魔法を発動。

激流を動きを止めて凍結、砕け散ってしまうとすぐさま距離を詰めたロワが火属性を纏ったジカンハカリバーで相手を切り裂いた。

吹き飛び、地面を転がるダイモーンを見据えたままロワとレクスがライドウォッチのスイッチを押す。

 

【【FINISH TIME!】】

「あなたの時間は、ここで止める!」

「その歪んだ歴史、俺が打ち砕く!」

 

満身創痍のダイモーンに向かって、自らの言葉を叫んだ二人が必殺技を発動した。

 

【STRIKE! TIME STIKE!!】

【STRIKE! TIME CRASH!!】

 

ロワの前方に火・水・土・風の魔法陣が出現すると、それらを潜り抜けるように側方倒立をしてから回転跳びをし、そこから捻りを加えて飛び蹴りの構えを取って最後に現れた四色の魔法陣を潜る。

レクスはダイモーンに標準を合わせるように出現した琥珀色の魔法陣に向かって走る。

 

「やあああああああああああっっ!!!」

 

急降下して繰り出されたロワのタイムストライクが起き上がったダイモーンの身体を直撃した。

苦し気な呻き声を漏らしながら、どうにか逃れようとする。

しかし、この世界には指輪の魔法使いと。

 

「はあああああああああっ!」

 

万能の魔法使いがいる。

光属性を宿し、眩いばかりの光を放つウィッチスピアーが装備された左腕をレクスは突き出した。

それは、ダイモーンの胴体を貫き内側から光の魔力を大量に流し込む。

 

『ギッ、ギヤアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

それぞれの想いを抱え激突しながらも、希望を守り抜こうとする二人のライダーと繋がったダブルライダーの必殺技を耐え切れるはずもなく、ダイモーンは悲鳴と共に爆散。

気を失った状態で光流が倒れると、その近くに転がったウィザードとウィッチのレプリカウォッチの二つが砕け散る。

それは紛れもなく、希望を守り抜いた未熟な魔法使いたちの勝利だった。




次回は後日談じゃよ。

レプリカウィッチ ICV緑川光
リマジウィザードこと『ウィザードVSウィッチの世界』にいるゲートの手品師『石橋光流』が、ワールドハックのサーディスと契約することで変身したレプリカライダーの一体。
モチーフである『仮面ライダーウィッチ』の魔力を模倣したレプリカウォッチで誕生したためウィザード以上の豊富な魔法を持つ。また、レプリカウィザードもだが『絶望によって魔力が上がる性質』を持つためゲートでもあった光流は暴走時には膨大な魔力量となっていた。


バジリスク ICV子安武人
サイケデリックな色彩を持つ緑を基調とした爬虫類の如き身体と鱗を持ち、赤い舌のようなロープを右腕に巻いており、頭部に蛇の顔を象った石仮面が特徴。
片手剣と身軽な動きを武器とするが、粘着質な人格のためか生き延びることを優先するため、かなり厄介。
ロワたちが関与しなかった場合 :光流を絶望させることに成功するも、ハリケーンドラゴンに変身したウィザードにボコられて撃破された。ちなみに光流の中で生まれそうになったファントム・ダイモーンもウィッチによって倒された。
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