仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
2014年・木組みの街にある、この街ではかなり高額な値段の中華料理店の一席に、彼らはいた。
北京ダックや回鍋肉、小籠包などの料理が並べられているテーブルから料理を摘まみながら、ファスティが口を開いた。
「『王様になる方法』ヲ、知っているかイ?」
「……あぁっ?」
そんな質問に眼鏡をかけた威圧感のある男性こと003が視線を向けた。
あまりにも突拍子のない、ビジネスとは無関係の話題に怪訝な表情で睨む彼にファスティは変わらぬ態度で話を続ける。
「誤解しないでヨ。『調整』は問題なく進んでいル……待っているのも退屈だから少し話をしようと思っただけサ」
ファスティの言う『調整』とは、文字通り異なる時間軸の調整だ。
レプリカウォッチⅡを起動した際に発生する異なる世界同士の融合は、世界を汚染させることで引き起こせるのだが、それはほぼ同じ時間軸同士でのケースでしかない。
繋ぎ合わせる世界の時代背景が大きく違えば、話は大きく変わってくる。
例えば、2017年と2018年は多少の齟齬はあれど問題なく繋ぐことは可能だが、2000年と2018年を繋いでしまった場合、目に見えるほどの矛盾が認識されてしまう。
ファスティたちのいる『ドライブの世界』は2014年、そして『ロワの世界』は2020年以降の未来……もし、調整を行わずにレプリカライダーを誕生させた場合、どんな事象が起こるか分からないのだ。
自分たちの存在が消えてしまうかもしれないし、下手をすれば『最高最善の魔王』や『世界の破壊者』が現れてしまう最悪のケースが発生する恐れがある。
故にファスティはレプリカウォッチⅡの調整を慎重に進めているのだ。
事前に彼から説明を聞いていた003は深い息を吐いてから箸を置くと、口を開いた。
「『王様になる方法』……だったか?そんなもん単純だろ。金とか権力とか、後は……」
「人を惹きつける魅力、でしょうか」
003の言葉に続くように少女の声が聞こえる。
身長は166cmの背筋を伸ばした女性であり、艶を持つ絹のような黒いロングヘアーをシニヨンに纏め上げたメイド服の女性だ。
長袖とロングスカートの黒い衣装、その上に白いエプロンドレスとホワイトブリムを身に着けており、極めつけは白い手袋と露出の一切を控えている。
しかし、胸元は大きく張り出しており、そこはかとない色気と母性が隠し切れない……女性に免疫のない男性ならば一瞬で委縮してしまうような魅力を放っている。
「『106』……」
「あっ!お、お話に割って入ってしまい、申し訳ございません!」
スカートの裾を両手の指で掴み、慌てて頭を下げる。
「106」と呼ばれたメイドの謝罪に「気にすんな」と頭を上げるように003が促す。
「そうそウ。こんなむさい野郎の会話に入ってくれてありがとウ!君は本当に素晴らしいネェ」
口では003の意見に同意しているが、その顔はだらしない笑みを浮かべているばかりか、伸ばした右手を彼女に向かって握ったり開いたりを繰り返している。
しかも視線の先は彼女の豊満な胸元……はっきり言ってセクハラである。
その意味に気づいた106は頬を染めると、隠れるように003の後ろまで下がる。
同時に、003が殺気の籠った視線をぶつけ始めたのでファスティも本題へと戻した。
「失敬。でモ、106ちゃんの『魅力』ってのはあながち間違っていないヨ。けド、それだけなら全員が王様になれル」
「じゃあ、何だっていうんだよ」
「ある世界デ、全てを治めた魔王がいタ」
北京ダックを食べながら、ファスティが続ける。
003も黙って茶を飲みながら耳を傾ける。
「その王はひたすらに己の未来を信ジ、自らが王になることを疑わなかっタ。例え世界が半壊しようとモ、例え時計の針が一巡しようとモ、最後の最後まで王への道を進み続けたのサ」
「とんだ自惚れだな。傲慢にも程がある」
「そウ、彼は『王になりたい』という強い願イ……欲望と言っても良いかナ。自分勝手にも等しい巨大な欲望、そしてその強烈なまでのエゴこそが魔王のルーツであリ、大言壮語な理想が人々を強く惹きつけたんダ」
新たに運ばれてきた料理……この店の珍味であるカエルの丸焼きが運ばれてくると、ファスティはそれを手に取って躊躇なく食べる。
「誰かが言っタ。『欲望が世界を救う』ト……ボクはレプリカライダーを生み出し続けていく内に確信しタ。歴史を塗り潰したいと願う人物こソ、贋作を本物レベルにまで昇華させられる王様になれるってネ」
そう語るファスティの眼を、003は見逃さなかった。
どす黒く、それでいて強い覚悟を秘めた鈍い光を放つ瞳は、内に秘めた欲望に染まっていた。
とあるスタジオにて。
「それで、華野ちゃんがプロデューサーさんの前でうっかりやらかしちゃって……」
「あはは。確かに華ちゃん、あの時はすごかったな」
赤いセミショートの可愛らしい顔立ち、翡翠の瞳を持つ赤い衣装の少女『
同時に、周辺からも大勢の笑い声が飛び交った。
「も、もう!だからあれは事故だって言ったじゃん!恥ずかしいんだから、あんまり言いふらさないでよ信菜ちゃんっ!それに白亜もっ、笑わないでよぉ!」
そう口をすぼめるのは紫色の衣装に身を包んだ少女『
茶髪のショートヘアーに紫の瞳を持った小柄な華野は恥ずかしそうに抗議している。
それに対抗するのはDOLLSのチームCのヤマダだ。
「何の何の、ウチのリーダーも負けてないっすよー。実は昨日…」
「ちょっと!何であの汚点をお茶の間に放送しようとしているのよっ!?」
「……ZZZ」
「ユキも寝ないでっ!今はトーク中ー!!」
何故か飛び火してきたアヤが自身の黒歴史を掘り起こそうとする彼女を制止し、これ幸いと居眠りしているユキを必死に起こす。
そんなカオスな光景が展開されているのだが、観客も楽しそうに笑っている。
その裏で、椋と颯太がいた。
「ヤマダ、目が輝いているね」
「今回の番組は、ゲストの趣味を披露するというコーナーがあるからな。合法的にゲームが出来ることにテンションが上がっているんだろ」
苦笑いする椋に颯太が溜め息を吐く。
今回の仕事は文字通りバラエティ番組の撮影であり、ゲストとして呼んだ若い人気芸能人の秘密や趣味をトークしていくという企画だ。
今回はバラエティ向きである個性派揃いのチームC……そしてアイドルグループ『AVARICE』がゲストとして出演している。
MCからの振りにキレキレなコメントをする双方のグループに観客からの笑いが止まらない。
ここで、AVARICEについて補足しよう。
彼女たちは最近になって徐々に人気が出ているアイドルグループであり、当初は信菜をリーダーにした三人だったのだが途中から二人参入したことで五人で活動するようになったらしい。
所属プロダクションの会長は「人間の欲望あってこと人は成長する」という信条を持っており、アイドルとしては「恋愛OK」という異色のグループなのだ。
彼女たちのグループ名も「貪欲」という、隠す気のないグループ名やぶっちゃけトークも相まって老若男女に知られるようになっている。
「そっちも大変みたいだなぁ」
「あ、高藤さん」
そんな二人に声をかけたのは一人の青年。
赤いメッシュの入った茶髪に赤い瞳の端正な顔立ちの長身で、黒いスーツに全身を包んでいる。
赤いシャツにはエスニック柄の赤いネクタイが巻かれており、襟には赤い羽根が取り付けられていた。
AVARICEのマネージャーである『
その顔には苦労が刻まれており、如何にあの面々によって振り回されているのかが伺い知れる。
「強引にスケジュールに詰め込みやがってあのくそ親父。絶対にただじゃおかねぇからな」
どうやら担当アイドルだけでなく、上司の会長にも無茶振りされているらしい。
物騒なことを口走る彼に労いの言葉をかけながらも、椋は小声で隣の颯太に質問する。
「……ねぇ、颯太」
「AVARICEなんてアイドル、聞いたこともテレビで観たこともない。それはあいつらや班目も分かっている。警戒を怠るんじゃないぞ」
そう、椋もマネージャーをしているため他のアイドルなどは知識として頭に入れている。
しかし、アイドルに多少の造詣があるサクラに事前に聞いてみたのだが、大した情報が得られなかった。
レプリカウィザード(レプリカウィッチ)の事件と同じく、世界同士が融合しているのかもしれない。
結論付けた颯太は珍しく椋と同行しているのだ。
しかし、そんな二人の事情など知る由もなく、トークは今も継続中となっている。
そんなやりとりを眺めていた、AVARICEのメンバーでお姉さん的存在でもある青いロングヘアーのモデル体形の少女『
「こーら、二人とも。今はカメラの前よ?」
「そうよ。『はしゃぎすぎてNG連発』……なんて笑い話にならないわよ」
「そっか。じゃあすいませーん!今のはNGってことでお願いしますっ!」
「いやこれ、編集されずにそのまんま放送される流れじゃない?」
鮮やかな緑色の、他のメンバーより露出が多めの衣装の奈青と露出の控えた愛依の言葉に信菜がカメラに笑顔を向けるも、華野のツッコミが綺麗に入った。
テレビ撮影特有のタイミングが合った笑い声がスタジオ中を飛び交う。
ここで撮影が終わり、休憩時間になった瞬間だった。
「うわっ!?」
スタジオ全体が大きく揺れ動いたのだ。
突然の地震に驚き、その場にいたスタッフたちが出演者やマネージャーの安否を確認する中、篤志が華野に何やら耳打ちする。
「っ!」
「えっ!?は、華野さんっ!」
篤志と共に出ていく華野に椋と颯太が後を追った。
スタジオの外を出ると、そこには不可思議な光景が広がっていた。
眼前に、巨大な日本城が存在していたのだ。
記憶が確かならば、あの場所はビルだったはず……それにも関わらず、妙な存在感を放つその城には奇妙な家紋が掘り込まれており、多くの視線を集めている。
「誰か出てくるぞ」
颯太の声に椋が一番上を見る。
現れたのは、金と黒の豪華絢爛な衣装に身を包んでおり和洋折衷を全面的に押し出している。
頭には黒い帽子を被っているが、その顔は髑髏の仮面で覆っており判別が出来ない。
困惑と奇異の視線を浴びながら、髑髏仮面の人物は持ってきたマイクスタンドを置き、仮面の下から口を開いた。
「皆の者、よく聞くが良い!」
若い男性の声。
何を話すつもりなのかと、用心する椋や颯太たちを無視して髑髏仮面の人物が両腕を大きく広げる。
大きくも、それでいて自身に満ち溢れた声色で彼は話を続ける。
「この会社は今から完全なる独立を宣言する。意見は求めない。この社の敷地は我が国土。そして日本の如何なる法律も通用しない!」
「そんな馬鹿な事が許されると思っているのかっ!?」
スーツの男性……恐らく城に変化した会社の社員なのだろう。
あまりにも荒唐無稽かつ、滅茶苦茶な宣言に声を荒げて反論すると、それに同調するように周囲の人々が「そうだ!」と続く。
しかし、髑髏仮面の男性は焦ることなく余裕の視線を持って彼らを見下ろしている。
「王である私に逆らう、その意気や良し。だが王への反逆は、最も罪深き所業である」
髑髏仮面の男性は取り出したのは銀色に輝く硬貨。
通常の硬貨よりも一回り大きな材質不明のそれに口付けを交わす。
そして、材質不明の硬貨……『セルメダル』を放り投げるように投擲した。
メダルは吸い込まれるように、先ほど声を荒げた会社員の元まで飛んでいき……いつの間にか額に出現していた投入口へと入り込んでしまった。
「あっ、な……!?」
音を立ててメダルを身体に入れられてしまった男性は何が起こったのか分からず混乱する。
やがて身体が震え、苦し気な呻き声を漏らすものの、すぐに変化が始まった。
『ヴアアアアアアアアアア』
薄汚れた布が会社員の男性を包み込むと、くすんだ黒い色を持つ異形へと変異する。
顔は黒い穴のような状態になっており、ぎこちない動きはまるでミイラを無理やり動かしているかのようだ。
それは近くにいた社員の方を振り向くと、覆い被さるように襲い始める。
「ひっ、うわあああああああああああっっ!!?」
人を怪物へと変えた髑髏仮面と人に襲い掛かるミイラの怪物、一瞬だけ動揺した周囲の人間はすぐさまパニックに陥り、逃げようとする。
しかし、上空から降って来た三枚のセルメダルは地上にいる人たちをミイラの異形となって人々を狙う。
阿鼻叫喚の光景を作り出した王を名乗る髑髏は再び声を張り上げる。
「見よ!彼らは私の忠実な僕となった!私に刃向かう者は皆、こうなるのだぁぁぁーっ!はーっはっはっはっはっはっはーっ!!」
そんな高笑いに応えるように、ミイラの異形が腰を抜かした男性に腕を伸ばした時だ。
庇うように立ち塞がった華野が蹴り飛ばすと、近くにいた篤志に向かって叫ぶ。
「『アッシュ』!これって」
「あの髑髏野郎が誰か知らねぇが……十中八九グリード絡みだろうなぁ」
「アッシュ」と呼ばれた篤志がミイラ擬き『屑ヤミー』の顔面に強烈な右ストレートを叩き込むと、水色のラインが入ったメダルホルダーを開き、赤・黄・緑のメダルを取り出す。
それは金で縁取られており、赤が鷹で黄が虎、緑がバッタと異なる生物が刻印されていた。
迫りくる攻撃を器用に躱しながら、応戦する華野に向かって三枚のメダルを見せる。
「さっさと片付けて仕事に戻る……おい『
「分かってる!」
「へ……エイシュンって」
篤志の出した言葉に椋が訝しむのも気にせず、彼は華野に向かってメダル『コアメダル』を投擲した。
それは寸分の狂いもなく放たれ、回し蹴りを炸裂させた華野が伸ばした右手の中に収まる。
右手にメダルを握り、逆の手には左右に三つの丸い窪みがあるバックルを腹部に当てる。
それからベルトのような帯が出現し、腰に巻きついて完全に固定すると赤いタカメダルと緑のバッタメダルを左右に装填。
そして、最後の黄色いトラメダルを装填するとバックルを斜めに傾けたと同時に右腰に備わっていた金のスキャナーを握る。
待機音声が響く中、バックルに装填させたメダルを『オースキャナー』で読み込んだ。
「変身っ!!」
可愛らしい声が響くと同時に、装填されたメダル型のエネルギーが華野の前に浮かび上がる。
同時に鳴り響くは、奇妙な歌。
【TAKA・TORA・BATTA! TA・TO・BA! TATOBA TA・TO・BA!!♪】
三色のメダル型エネルギーは一つのサークルとなって重なり、黒いスーツに身を包んだ華野の胴体に重なることで変身が完了した。
現れたのは、鷹を思わせる緑色の複眼を持った赤い頭部に虎を思わせる黄色い力強さを持つ両腕、そしてシャープな緑の両脚をバッタを彷彿とさせる。
かつて錬金術と呼ばれる古の技術が栄えた800年前、欲望と動物の力を組み合わせることで生まれた無限を超える古代の王。
その名はオーズ……『仮面ライダーオーズ タトバコンボ』!
三つの動物を宿した戦士が、女性社員に襲い掛かろうとする屑ヤミーを殴り飛ばした。
「あれは、オーズか!」
「オーズ……」
「動物の力を宿したメダルで戦う仮面ライダーだ」
【REX!!】
【WITCH!!】
そう言いながらも、颯太はジクウドライバーをセットしながらレクスライドウォッチとウィッチライドウォッチを起動する。
慌てて椋も襲われている人々を助けるべく、起動したロワライドウォッチとウィザードライドウォッチを装填する。
「「変身っ!!」」
【PLEASE! WI・ZARD!!♪】
【NOW! WITCH~!!♪】
ウィザードアーマーとウィッチアーマーを身に纏ったロワとレクスがジカンハカリバーとジカンジャナックルを構えてオーズの加勢に入る。
「せいっ!」
「オリャッ!」
火属性の斬撃と風属性の打撃を叩き込まれた屑ヤミーたちが吹き飛んだ様子に、オーズが変身した二人を見て驚く。
「君たちは……?」
「話は後だ、片付けるぞ!」
レクスの言葉にオーズも気を取り直すと両腕に展開したトラクローによる爪撃を使って屑ヤミーたちを切り裂く。
観れば上空からセルメダルが降り注いでおり、それを取り込んでしまった人間が変異してしまっているのだろう。
その光景に篤志が訝し気な視線を向ける。
セルメダルを投入された人間はメダルの怪人『ヤミー』を生み、生まれた後はセルメダルを蓄えるべく宿主の欲望を満たそうと行動を繰り返す。
そして、グリードによっては人間に寄生するタイプや群れで生まれるタイプが存在しているのだが、人間にセルメダルを投入して屑ヤミーが生まれるなど見たことも聞いたこともない。
「詠春!その屑ヤミーどもはセルメダルで変異した紛いもんだ」
「えっと、つまり!?」
「普通に倒しても問題ないってことだっ!さっさと片付けろ!」
ホルダーから取り出し、投げたのはクワガタが掘られた緑色のメダル。
それをキャッチすると『オーズドライバー』に装填したタカメダルを外し、緑色のクワガタメダルを装填してからオースキャナーで読み込み、音声を鳴らす。
【KUWAGATA・TORA・BATTA!】
瞬間、橙色の複眼とクワガタの顎を持つ頭部へと変わると双角に電流をチャージする。
そして、一気に解き放った。
「はぁっ!」
緑色の雷撃は正確に屑ヤミーのみを焼き、怯んだミイラ擬きの隙を逃すことなくロワとレクスがライドウォッチを装填し、フィニッシュタイムに移行する。
【WIZARD! CHIKUTAKU SHOOTING!!】
【WITCH! JIRIJIRI CANNON!!】
ハリケーンの竜巻弾で打ち上げられたところを、レクスのレーザービームが焼却する。
強烈なダメージを受けて地面に叩きつけられた屑ヤミーたちは気を失った状態で、元の人間へと戻る。
彼らの周囲には先ほどの変異に使われたセルメダルが数枚散らばっており、それを篤志が律儀に拾い集めている。
「ありがとうございます!あの、それで君たちは一体……」
「お前とは違う仮面ライダーだ。しかし、女のオーズが現れるとはな」
「えっと颯太。そのことなんだけど…」
「騒がしいな」
ロワの言葉を遮るように、声が響いた。
観れば城の入り口近くに先ほどの髑髏仮面が立っており、興味深そうに四人へ視線を向けている。
そんな彼に臆することなく、レクスが鋭い視線をぶつけた。
「さっきの髑髏か。王を自称した割には随分と腰が軽いんだな」
「ほう。わざわざ出向いてやった王である私を嘲笑するかこの愚か者めがぁっ!!」
髑髏仮面の奥にある瞳を輝かせながら叫ぶ彼に篤志が顔をしかめる。
「こいつやべぇ」と毒吐くのも気にせず、彼は自らを名乗る。
「我が名は『ムエルテ』……そして今、新たな力を手に入れたことで更なる爵位を得た!そう、新たなる私の名は……」
そうして、髑髏の仮面越しでも分かるほどの狂喜に満ちた声で生まれ変わった自らの名を告げた。
「『グランド・ムエルテ』だああああああああああああ!跪け愚民どもおおおおおおおおおおはーっははははははははあああああああああああああああああああっっ!!!」
『……』
両手を上げ、天に向かって絶叫するムエルテ基いグランド・ムエルテに一同絶句する。
恐らく全員が全員、彼の異常なテンションについて来れていない。
いや、ついて来れたらそれはそれで困るのだが。
そんな彼らに気にすることなく、Gムエルテが敵対者を睨む。
「私は、王だああああああああああああっっ!!!」
【OOO……!!】
黒く歪なエネルギーに全身を包まれた瞬間、鮮やかな光と共に姿を変えた。
翼が垂れ下がった鷹のような赤い頭部には緑色のレンズが埋め込まれており、その奥には猛禽類の如く鋭い瞳が光っている。
両肩に無数の小さな棘が生えた両腕は黒と黄で塗り分けられた、まるで虎を連想させるような巨大な腕からは鋭い鉤爪が生えている。
下半身は昆虫の如きしなやかさと強靭さを併せ持った緑色の脚になっており、こちらにもバッタのような棘が生えている。
統一性のない生物を繋ぎ合わせるように、胴体には錬成陣を思わせるサークルが記されていた。
その姿に、オーズは見覚えがあった。
白や青の意匠こそなかったが、一年前に初めて変身し戦った合成グリードと酷似していたのだ。
「マゼルッ!?」
「いや。コアメダルの気配はするが……」
オーズの声にアッシュが鷹の眼で変身した姿を睨む。
コアメダルとセルメダル、確かにグリードの特徴や話に聞いていた合成グリードに一致するのだが、コアメダルが存在していないのだ。
それに本来ならセルメダルはコアメダルを中心に集めることで人の形を保つのだが、目の前にいる怪人は肉体を覆うようにセルメダルで鎧を造っている。
コアメダルのエネルギーとセルメダルの武装……これではまるで。
「オーズみたいじゃねぇかよ」
『Good!私はオーズ、今から私こそがっ!仮面ライダーオーズとなるのだああああああああああああああああああああああああっ!!!』
そう叫んだグリード擬き『レプリカオーズ』は両腕を突き出すと、バッタの如き跳躍力を持って飛び掛かって来た。
オーズはトラクローでそれを防ぐが、続けざまに放たれる連続攻撃に防戦一方となってしまう。
ロワとレクスがオーズを援護すべく遠距離による銃撃と砲撃を放つが、レプリカオーズはそれを見逃さなかった。
「ふんっ!」
一瞬だけ頭部が青く光ったかと思えば、開いた口から高圧水流を噴出し相殺する。
「何っ」と驚くレクスやロワに見せつけるように、今度は両脚を黄色く光らせると風を切る音と共に二人に接近。
凄まじいスピードの脚力から繰り出された連続蹴りに二人が吹き飛ぶと、今度はオーズに向かって緑色に光った両腕を振るって斬撃を飛ばした。
「このメダルに変えろっ!」
篤志から投擲されたゴリラの顔が掘られた白いメダルをバックル中央部の窪みに装填し、再びオースキャナーでスキャンする。
クワガタの頭部にゴリラの胴体、バッタの両脚を持った形態へと姿を変える。
【KUWAGATA・GORIRA・BATTA!】
両腕を重厚なゴリラ型のガントレットを装着すると、斬撃の衝撃波を弾いてからバッタの跳躍力を使って一瞬で距離を詰める。
勢いのまま、強靭な一撃をレプリカオーズに叩き込み、その身体を吹き飛ばした。
『ヴェアッ!?おのれ、王の身体によくもっ』
「これで終わらせる!」
再びオースキャナーをバックルに装填したメダルを読み込ませようとした瞬間だ。
レプリカオーズとは全く別の方向から圧縮された水の球がオーズの背中に迫って来ていた。
しかし、事前に気づいたロワが風を操作して飛行し、横なぎに払ったジカンハカリバーで両断する。
オーズたちが攻撃を放った方向に身体を向ける。
『ふっふっふっふ……』
『……』
そこにいたのは二体の怪人。
一体はシャチを思わせる青い頭部とヒレを両腕と両脚に備え、チャイナ服とタコを思わせる白いフードと触手で全身を覆っており、ウナギを思わせる滑らかな細身のボディが特徴的だ。
その右手には無数のウナギが絡み合ったかのような黒いトライデントを持っており、水の球を放ったのは恐らく彼だろう。
もう一体はサイを彷彿させる頭部を持ち、巨大な角を額と両肩に生やしながらもゴリラの如き屈強な体格の上に象を思わせる白銀の装甲を纏った剣闘士の如き異形でゴリラの拳を模した片手ハンマーを引きずっている。
三つの動物が混ざり合ったような異形は紫と黒のバイザーを光らせながら歩いてくる二体の怪人にロワとレクスが身構える中、篤志が苦い顔で舌打ちする。
「ちっ!何でてめぇらが出しゃばるんだぁっ!?『アイシェル』、『テニィーレ』ッ!!」
『無論。私たちが仕える「王」のためですよ』
「あっ?」
彼らは『グリード』。
自らの核となるコアメダルとセルメダルで構成された生命体であり、オーズと篤志が敵対している存在だ。
首を傾げて睨む彼に気にすることなく、水棲系グリードのアイシェルと重量系グリードのテニィーレはレプリカオーズの元まで近寄ると、首を垂れる。
『ご無事ですか、我が王』
『……超、平気?』
『ふはははははははっ!!でかしたぞポチどもっ、王の危機に良くぞ助けたっ!』
落ち着いた男性の声と、物静かな少女の声にレプリカオーズが上機嫌に立ち上がる。
どうやら二体は忠誠を誓っているのか、「当然のことです」と頭を下げたままだ。
『民は充分に集めました。後は、あなた様の領土を広めるだけです』
『ご苦労。なら私は、新たな開国のために動くとしようかっ!ふぅーはははははははっ!!』
「待てっ!」
臨戦状態のロワたちと無視し、背中を見せて立ち去ろうとするレプリカライダーとグリードたちにレクスが攻撃を仕掛けようとするが、それよりも早くテニィーレが動いた。
『お前、超うるさい』
首を傾けて関節を鳴らした後、構え直したハンマーを思い切り地面に叩きつけて周囲が見えなくなるほどの土煙を発生させて動きを封じる。
ロワが竜巻で払って視界が明けた頃には、彼らは姿を消していた。