仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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さて、オーズ編完結です。


TIME19 0905:コンボマスター

背中から伝わる硬い床の感触と、空間を揺らす轟音が眠りを苛ませた。

最初の内は顔をしかめながらも睡眠を続行していたが、規則的に響く爆発にも似た物音が意識を覚醒させた。

 

「んっ、うるっせぇな……」

 

徹夜明けの重い頭と身体を起こしながら、不機嫌な声色を隠そうともしない『彼』は周囲を見渡す。

最初は寝ぼけ眼だったが段々とはっきりしてくる意識と同時に、自分が座敷牢に囚われているという異常事態に気づく。

 

「何処だここっ?」

 

一眠りする前のことを思い返す。

確か自分は会社のビルにいて、空いている部屋で昼寝をしていたはず……それで間違いはない。

しかし、自分が今いる場所は清潔でお洒落なオフィスではなく、テレビや漫画などで見るような重々しい座敷牢の中。

一瞬、過労で異世界転生でもしたかと思ったがどうも状況が違うらしい。

鉄格子に近づいて外の様子を見れば、大穴の空いた通路や破壊された牢屋などが見える。

そして自分の座敷牢の鍵は……壊れている。

 

「あー……面倒臭ぇな」

 

気怠さを隠すことなく、そうぼやいた彼は寝癖の付いた頭を掻くと扉を開けた。

 

 

 

 

 

風を切る音と共に赤い残像が走る。

狭い部屋を縦横無尽に駆け回るのは、ドライブアーマーへとチェンジしたロワだ。

ミニツの銃弾を避けながらジカンハカリバーの斬撃をすれ違いざまに浴びせようとするも、柔軟な身体を持つ彼女に躱されてしまう。

それだけではない。

 

『ふっ!』

「うわっ!?」

 

発生させた竜巻によって動きが阻害されてしまい、思うように攻撃が出来ないのだ。

おまけにミニツの銃撃は段々と命中するようになって来ている。

一方のレクスもヌスゥが身体から切り離した飛蝗の群れに装甲を抉られており、徐々にダメージが蓄積されていた。

 

「くそっ」

『カッコ良く申し出た割には大苦戦だね。ま、オーズを行かせたところでアイシェルとテニィーレがいるし、結果は変わらないけど』

 

銃弾を撃ち込まれ、膝を着いてしまったロワにミニツが感慨もなく呟くと二丁のマスケット銃の照準をロワに合わせる。

引き金を弾こうとした、その時だ。

 

『っ!!』

 

背後からの気配に気づいたミニツが素早い動きでバックステップすると、先ほどまで自分がいた場所に巨大な戦槌が叩き込まれた。

子の武器を振るえる人物は、敵以外で『彼女たち』しかいない。

 

「お待たせ、マスター!」

「……人質の安全、確保しました」

「ふひひ、ハイパー無双タイムの時間っすよー」

 

チームC……アヤ・ユキ・ヤマダの三人だ。

テアトルを使って囚われた人たちの安全を確保した後、敵の注意を引くために滅茶苦茶に暴れ回っていたのだ。

おかげで、周囲を徘徊していた屑ヤミーたちも殆ど残っていない。

 

「小野寺、お前はオーズのところに行け」

「えっ」

「レプリカライダーさえ倒せば、こいつらは世界の修正で元の世界に戻る。時間稼ぎ程度なら俺達でも稼げる」

「美味しいところは譲ってあげますよ」

 

ビルドアーマーを装備したレクスの隣で、剣を構えたヤマダが好戦的な笑みをグリードたちに向ける。

それぞれの武器を構えたユキとアヤの目を見て、一瞬だけ迷いを見せる。

しかし。

 

「分かった。でも、無理だけはしないで」

 

仲間を信じることを学んだロワの脚は、真っ直ぐに詠春たちの元へと進んでいていた。

 

 

 

 

 

「侵入者だとっ!?グリードどもは何をしているっ!!」

 

伝達に来た屑ヤミーの情報を受けたムエルテが怒りを露にする。

その際に苛立ちに任せて頭部を粉砕したが、アイシェルの作った屑ヤミーであるため割れたセルメダルを残して消滅する。

 

「おのれっ。礼拝中に襲撃など、肉体という枷に囚われた奴らは何故こうも愚かしいのだ……!」

 

忌々し気に呻くムエルテが今いる場所は礼拝の間……彼の崇拝する神が奉られた祭壇が存在する部屋であり、グリードたちが足を踏み入れることを禁止としている。

しかし、侵入者が来たとなれば話は別だ。

すぐにアイシェルとテニィーレを呼ぼうと壁にかけていた電話機に手を伸ばそうとする。

その時だ。

 

「変身!」

【TAKA・TORA・CHEETAH!】

 

詠春の変身したオーズが扉を蹴破って侵入してきた。

チーターのような斑点模様のある両脚はしなやかさがあり、加速に特化した特性を秘めている。

しかし、ムエルテにとって最も許せないのはオーズが現れたことではない。

 

「神の眠る祭壇に土足で入り込むなあああああああああああああっ!!!」

【OOO……!!】

 

怒りを吐き出しながら変身したレプリカオーズが両腕と両脚に白と緑の光を纏うと、飛蝗の跳躍力で接近してゴリラの如き威力を秘めて一撃を叩き込もうとする。

しかし、オーズは単調な軌道を回避し、鍔にレバーが備わった青い大剣『メダジャリバー』で身体を斬り裂いた。

 

『ぎぃっ!このっ』

 

青い光を両腕に纏い、雷撃を纏った鞭のようなエネルギーを使って拘束を試みる。

チーターレッグを駆使してどうにか躱すオーズを睨みながら、レプリカオーズが緑色の光を宿した頭部から稲妻を放つ。

 

「っ、まずいっ!」

 

鞭に気を取られていたオーズだが、防御が間に合わない。

ダメージを抑えるべく、メダジャリバーを構えようとした時だ。

 

【PITTARI GIRI!】

「はっ!」

 

振るわれた斬撃が電撃を消し、レプリカオーズと対峙するようにロワが前に立つ。

 

「大丈夫ですか!?」

「は、上出来だ」

 

アッシュがほくそ笑むと、思わぬ増援に贋作が肩を震わせる。

 

『あの役立たずどもがあああああっ!』

 

黄色く光らせた両腕の鉤爪から衝撃波を放つが、それに臆することなくロワが紺のボディと橙のベゼルで構成されたライドウォッチを取り出す。

ベゼルを回転させて「2017」の数字から龍の顔を持つ戦士へと切り換えると、スイッチを押した。

 

【CROSS-Z!!】

 

起動したライドウォッチをスロットに装填すると、召喚されたアーマーが弾き落とす。

「ならば」と巻き上がった強烈な竜巻が命中するよりも早く、ロックボタンを解除したジクウドライバーのバックルを回転させた。

 

【ARMOR TIME!】

【WAKE UP BURNING! CROSS-Z!!♪】

 

ロワが装着したのは紺色のドラゴンで両肩には四角い龍を模したガジェットが特徴的だ。

炎を思わせる橙色の装飾に鏡文字の複眼には「クローズ」と記されている。

レプリカビルドの事件でいつの間にか手に入れていたライドウォッチ……知性を代償に並外れた火力と筋肉を持つ仮面ライダークローズの力を宿した『仮面ライダーロワ クローズアーマー』が竜巻に向かって拳を突き出した。

途端に竜巻はロワの拳から生じた爆炎によって相殺され、土煙を撒き散らすだけに終わってしまう。

 

『何っ……ぐぼあっ!?』

 

動揺したレプリカオーズが見せた一瞬の隙を逃すことなく、凄まじい勢いで突進した龍の二撃目が顔面に炸裂した。

よろめくレプリカライダーから意識を反らすことなく、滾る力を確かめるように拳を握って開くを繰り返し、確かな手応えを実感する。

 

「行ける、これなら……負ける気がしないっ!」

 

叫んだロワは懐に入り込むと、蒼炎を纏った両の拳でレプリカオーズの身体に何度も叩き込む。

同時に身体に取り込んでいたセルメダルが衝撃で零れ落ちる。

相手に能力を使わせる時間を与えずに攻め込む戦闘スタイルを見せる彼に「すごい」とオーズが思わず呟く。

そして、それを見たアッシュがホルダーからライオンが彫られた黄色いメダルを一枚取り出す。

 

「詠春!『コンボ』でさっさと片づけろ!!」

 

投擲されたメダルをキャッチしたオーズはバックルの位置を元に戻す。

そして、タカメダルを外してから『ライオンメダル』を装填すると再びバックルを傾けてオースキャナーを手に取る。

そして『色と属性』を統一させた三枚のメダルを読み込ませた。

 

【LION・TORA・CHEETAH! LATA・LATA~! LATORATAH!!♪】

 

胴体に刻まれた猫系の紋章が刻まれると同時に、軽快な歌が流れる。

太陽を見間違わんばかりに金色の輝きを放つ水色の複眼を持ったライオンの頭部・全てを捉え引き裂く強靭な腕力と爪を持つ虎の両腕・細身ながらも引き締まった筋肉で構成された黄と黒の反転を持つチーターの両脚が身体を支える。

『コンボ』……それはオーズが持つ特性の一つであり、統一された生物のメダルをスキャンすることで可能となる固有形態。

体力の消耗が激しいが、一点に特化した能力を宿している。

そして、オーズがチェンジしたのは風と猫系の力を宿した灼熱コンボ『ラトラーターコンボ』だ。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

獣の雄叫びをあげたオーズの全身が眩いばかりの光に包まれる。

否、それは光などではない。ラトラーターコンボが持つ固有能力の熱線だ。

それは周囲にある装飾や祭壇すらも溶かし、焼き尽くしている。

それを目撃したレプリカオーズは、激昂した。

 

『き、ききっ!き、貴っ様ああああああああああああああああっ!!』

 

我を忘れて飛び掛かろうとする贋作の顎をロワが殴り、吹き飛んだところをチーターレッグの加速能力で跳躍したオーズの鋭いトラクローが炸裂する。

 

「でりゃりゃりゃりゃりゃっ!」

『ぐべべべべべべべべべっ!?』

 

倒れたところに連続キック『リボルスピンキック』を叩き込まれ、レプリカオーズから更にセルメダルが飛び散る。

更にどうにか起き上がったところを、オーズの爪とロワの拳によって地面を転がされた。

 

「椋君、決めよう!」

「はい!あなたの時間は、ここで止めるっ!」

【SCANNING CHARGE!!】

【FINISH TIME!】

 

オースキャナーでメダルをスキャンする彼に応えるように、ロワも二つのライドウォッチを押して必殺技を発動。

右足に蒼炎の龍を宿した隣で、オーズは三つのリングをレプリカライダーの前方に出現させるとチーターレッグからスチームを噴出させて加速。

最初に動いたのはロワだ。

 

【DRAGONIC! TIME STRIKE!!】

「でやっ!」

『ぐおっ!?』

 

蒼炎を纏った強烈なボレーキックを叩き込むと、怯んだところにオーズが迫る。

リングを潜るごとにその身体には熱線が宿り、レプリカオーズの視界を完全に遮断する。

やがて極限まで膨れ上がった灼熱が獅子を象り、トラクローへと宿った両腕を振り下ろした。

 

「セイヤーーーーーーッッ!!!」

『ヴヴェアアアアアアッ!』

 

爪撃『ガッシュクロス』の直撃を受けたレプリカオーズは爆散。

セルメダルが周囲に撒き散らされ、疲弊した身体をムエルテが必死に起こそうとする。

転がるレプリカオーズのウォッチには皹が入っており、完全な消滅も時間の問題だろう。

 

「おのれおのれおのれぇっ!!よくも、王の身体をっ、私の身体をおおおおおっ!」

 

崩れ落ちそうになる身体を支え、悔しさのあまりに床を執拗に殴り叫ぶ。

レプリカライダーの力を失った今、彼に抵抗する力など残っていないだろう。

オーズが彼を取り押さえようと一歩踏み出そうとした時、オーズの身体から火花が散った。

 

「ぐっ!」

「詠春さんっ!?」

 

駆け寄るロワに「大丈夫」と返しながら、ダメージを受けた身体を起こす。

 

「よくも、よくもっ!王である私を……()()()()()()()()()()()()()()を傷つけてくれたなああああああああああっ!!」

 

叫び、立ち上がったムエルテが手に持っていたのは拳銃……などではなく、ゲームパッドのような形状をした紫の機械。

中央のある正方形の黒いディスプレイを挟むように「A」・「B」と記された赤と薄紫のボタンが二つ配置されている。

赤いボタン側には赤い銃口が存在しており、硝煙が立ち昇っていた。

 

「貴様らだけは、貴様らだけはぁっ!!」

 

怒りのまま、ムエルテが赤いボタンを押し込むと同時に低い待機音声が鳴り響く。

嫌な予感を覚えたオーズとロワが止めようと動くも、地面から這い出るように出現したいくつもの腕が脚などを掴んで行く手を阻む。

一定のリズムで流れる不協和音を鳴らしながら、いつの間にか右手に装備していた黒いグリップにデバイスを装填した。

 

培養(ぶぁぁぁぁいよぉぉおおおう)っっ!!!」

【INFECTION!】

 

怨嗟の叫びとデバイス『ガシャコンバグヴァイザー』の音声が重なる。

両手を胸の前で組み、静かに虚空を見上げるムエルテの身体に異変が起こる。

 

【LET'S GAME! BAD GAME! DEAD GAME! WHAT'S YOUR NAME!?♪】

 

祈りを捧げる彼に加護を与えるように、ムエルテの肉体が紫と黒の入り混じった不気味な色の瘴気によって、徐々に汚染されていく。

やがて汚染が全身へと行き渡った瞬間、『本来の姿』を露にした。

 

【THE BUGSTER……!!】

『……あぁ』

 

腐食した紫色の肉体に、人骨のような白い装甲を身に纏った歪なトーテムポールのような姿。

メタリックブラックの髑髏マスクには下顎が存在しておらず、錆びた金色の十字架に噛み付いたような悪魔の如き風貌。

しかし背中に生やした六枚の翼は、まるで神の僕たる天使をも連想させた。

 

「グリードじゃ、ないっ!?」

「何者だ、てめぇっ!!」

 

新たな怪人へと姿を切り替えたムエルテに動揺するロワの横で、アッシュが叫ぶ。

いくつもの動揺と困惑を向けられた彼は、自らの名を告げる。

 

『我が名はムエルテ。偉大なる神が造りしゲーム「デンジャラスゾンビ」のナビゲーターにして、荘厳なる神の使い……そしてっ』

 

怪人となった髑髏の顔を向けながら、『それ』は眼を光らせた。

 

『人類を救う使徒「ムエルテ・バグスター」だああああああああっ!!』

「「うわっ!!」」

「ちっ!」

 

両腕に装備した鉤爪を振るって生じた衝撃波を放ち、オーズたち諸共周囲を破壊する。

互いに持っていた装備と武器で致命傷を避けた二人は拘束を無理やり剥がし、再び地面を蹴って走ろうとした瞬間。

 

『ナインッ!ナイイイイイイイイインッ!!』

 

ムエルテが自らに力を授けた『人物』の名前を叫んだ途端、世界が停止した。

意識は正常だが、それ以外の時間が止められているのだ。

 

「なっ!?」

「まさか……!」

 

動揺するオーズやアッシュだが、ロワだけは心当たりがあった。

そして現れたのは彼が予想した通りの人物。

赤いジャケットに黄色いスカーフを巻いた青年と。不気味なパペット人形を手に装着した黒いローブの少女……ワールドハックのナインとロックスだ。

呆れた様子を隠そうともせず、ナインはムエルテの元まで歩く。

 

「そんなに叫ばなくても聞こえているよ。それで、用件は?」

『「あの力」を寄越せっ!もう手段は選ばんっ、神を再臨させるためならば……例え怨敵の力であろうと利用する!それこそが我が使命、我が忠義!さぁっ、さぁっ!!』

 

迫るムエルテに「やれやれ」と溜め息を吐いたナインは隣にいたロックスに目配せすると、懐から取り出したレプリカウォッチⅡを取り出す。

そして、スイッチを押して起動した。

 

「覇王の加護を与えましょう」

『こいつは決定事項だ、ちゃーんと受け取りな』

【■X■A■■……!!】

『ぐぅっ!!うお……!』

 

ウォッチを埋め込まれた途端、呻くムエルテ・バグスターの身体が変わっていく。

紫色のエネルギーが全身を包み込み、新たな贋作の仮面ライダーへと変身する。

 

『ヴェアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

新たなレプリカライダーとなったムエルテが雄叫びと共に、体内から一気に膨れ上がったエネルギーを解き放つ。

同時に時間停止を解除されたことで時間の流れが正しく動き始める。

書き換えられた城全体が罅割れていく。

それは壁や天井だけでなく、半壊していた祭壇から無機質なカプセルが露になると同時に、ロワたちの立っている床にまで段々と広がっていき……。

 

『これでGAME OVERだ、不信心たる愚者どもおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

レプリカライダーが叫びと共に罅割れた箇所に思い切り脚を振り下ろした。

すると、皹はまるで彼の意思を宿したかのようにロワたちの元へと進んでいく。

それはあまりにも唐突で、あまりにも突発的な出来事。

為す術もなく、二人は深い穴へと吸い込まれるように落下していった。

 

「「うわあああああああああっ!!?」」

「詠春っ!」

「おっと」

 

逃れたアッシュがオーズの手を掴むために赤い鳥の右腕を伸ばそうとするが、既に見抜いていたナインが強烈な膝蹴りを鳩尾に叩き込んで昏倒させる。

障害を排除したレプリカライダーは笑う。自らのエンディングを、自らの使命を果たす時がようやく来たのだ。

今の自分に敵う者など、神の眷属たる王となった自らに勝てる者など誰も存在しない。

後は、最初の目的を達成するだけ。

 

『もうしばらく、後少しだけお待ちください神よっ!必ずや、必ずやあなた様をより強く、より強大な力を持って復活させます!この、究極の医療を持って!!』

 

レプリカライダー……ムエルテの笑い声は、まるで全てを塗り潰すように、再び大きく嗤うのだった。

 

 

 

 

 

グリード二体の相手を引き受けたレクスたちもまた、追い詰められていた。

ミニツの熱風を纏った弾丸の直撃を受けたレクスが吹き飛び、ヌスゥの鋭い雷撃によってアヤたちが地面を転がる。

 

『ま、ただの人間たちにしては粘った方じゃない?』

『散々俺たちの邪魔をした礼だ、跡形もなく消し飛ばしてやるっ!!』

「っ、まずいっ!」

 

マスケット銃と大剣に風と雷のエネルギーを集めるグリードたち。

大技が来ると直感したアヤが巨大な戦槌を盾替わりにしようと前に出る。

無駄な抵抗を見せる彼女の様子を鼻で笑ったヌスゥが容赦なく、剣を振り下ろした。

 

『……がっ!?』

 

だが、それは阻止された。

彼の顔面に向かって飛んできた物体が寸分の狂いもなく命中し、強引に攻撃が中断されたのだ。

「誰だっ」と怒りを膨らませたヌスゥとミニツと共に振り向く。

 

「……」

 

そこにいたのは、白い人型の『物体』。

物体と表現したのは、それが人間だったのか初見では判断に困るような外見をしていたからだ。

ずんぐりとした体格に人間の髪の毛を模したマゼンタカラーの鋭いパーツの頭部、そしてアニメキャラクターのような橙色の瞳を持っている。

白い装甲のようなパーツで覆われているその姿は、まるで防護服のようにも見える。

右手にはブラウンカラーの四角いブロックを遊ばせており、恐らくヌスゥに向かって投げた物と同じものだろう。

二頭身キャラクターが現実世界に出てきたかのような奇抜な存在に対して、チームCも困惑せざるを得ない。

 

「……マスコットキャラ?」

「色違いのガチャ〇ン?」

「どう考えたって違うでしょ」

「じゃあ何だって言うんすかリーダー」

「えっと……ゆるキャラの化身?」

 

首を傾げるユキと軽く引いているヤマダの珍妙な回答にアヤがツッコミを入れるも、正直に言って彼女も同じような答えしか浮かばない。

それほどまでに、目の前の存在は異形なのだ。

答えを明示したのは、レクスだ。

 

「どれでもない。あれは、あのドライバーは……」

 

彼が注目していたのは、それが腰に装着しているドライバーだ。

蛍光グリーンと蛍光ピンクで塗り分けられたバックルと、そこに装填されているマゼンタのアイテム。

考えが正しければ、恐らく『彼』は。

 

『珍妙な見た目で俺を苛立たせるなあああああああああっっ!!!』

 

戦場に似つかわしくない外見に、怒りのボルテージを振り切ったヌスゥが突撃した。

しかし、白い存在……戦士は慌てることなく手に持っていたブロックを投擲。

 

『二度も同じ手を喰らうかっ!!』

 

大剣で粉砕し防ぐも、白い戦士は焦る様子はない。

何しろ彼の目的は相手の隙を作ること、そしてブロックの中に入っていた『アイテム』だ。

 

「馬鹿が」

 

挑発するように呟いた戦士は、見た目とは裏腹に素早い動きでヌスゥ目掛けて前進。

そして弾かれるようにブロックから出てきた赤いコインのようなアイテムを、手に取った。

 

「アイテムゲット!」

【マッスル化!】

 

何処からともなく音声が響き、戦士の身体が一瞬だけ赤く光る。

そして、短い腕をカウンターの要領で思い切り振るった。

 

『ぐっごばああああああああっ!!?』

 

直感で身の危険を感じ取ったヌスゥが慌てて大剣を使って防御したが、その刀身ごとへし折りながら戦士の拳は甲殻を粉砕し、吹き飛ばした。

壁に激突するヌスゥに驚くも、冷静さを取り戻したミニツは二丁から銃弾を放つが、軽業師のようなバク転で回避されてしまう。

更に、銃弾はいつの間にか周囲に出現していたブロックへと命中し、中から先ほどのようなコインが飛び出てくる。

 

「ラッキー!」

【高速化!】

 

今度は黄色く光るアイテムを手に取ると、音声と共に彼の身体は淡く黄色い光へと一瞬だけ包まれる。

すると、戦士の動きが素早くなった。

 

『なっ、ぐうっ!?』

 

スピードの乗った体当たりを受けたミニツがよろめくと、戦士はレクスたちの元まで移動。

そのまま四人を一気に担ぐと。

 

「じゃあな」

 

高速移動でその場を後にしてしまった。

完全に敵を見失った彼女は息を吐くと、グリードの姿から人間の姿へと切り替える。

 

「……何あれ?」

 

メダルとは違う奇妙なコインを使う、珍妙な見た目の、妙に強い人のような何か。

そう言いたくなるのも仕方がないだろう。

だが、自分たちの『敵』であることだけは、はっきりした。

 

「アイシェルに報告、した方が良いよね」

 

「面倒」とぼやぎながら、まずは吹き飛んだヌスゥを回収すべく彼の方へと足を進めた。

 

 

 

 

 

一方、少し広めの応接室までレクスたち四人を運んだ戦士はやや雑に床に下ろすとドライバーからアイテムを引き抜いた。

すると、その正体が露になる。

マゼンタカラーの天然パーマに端正ながらも何処か気怠さを含ませた雰囲気を持った青年だ。

ジーンズとオレンジのシャツに、お洒落なシューズなどファッションは今風だが印象に残るのは彼が羽織っている上着だ。

多少汚れてこそいるが、丈の長いコートのような『白衣』と首に掛けた聴診器のような形状の機械。

それはまるで。

 

「……お医者さん?」

 

ユキがそう呟く。

信じられないことに、この気怠さを隠そうともしない青年は人の命を預かる者……医療関係者なのだ。

驚くアヤの隣で、変身を解除した颯太が尋ねる。

 

「お前は、一体」

 

それに対して、「俺?」と振り向いた青年は深い息を吐いてから口を開いた。

 

「俺は『二ノ原エム』……くそったれな人生(ゲーム)を、くそったれな職業(スキル)で浪費しているクソゲープレイヤーだよ」

 

面倒そうに、くすんだ水晶玉のような瞳で彼は自らをそう告げた。

 

Next Legend Rider……EX-AID




ジオウだと神が王になっていたり、一人で二つの異なるライダーに変身したりと面白い設定があったので一辺に採用しました。
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