仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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 今回はムエルテの契約の経緯と少しだけエムの人物像を……短くまとめたいのに長くなる(汗)


TIME20 2016:アイムアドクター

時間は、ほんの少しだけ巻き戻る。

並べられたコンピューターや機械などが大量に設置された、オフィスのような薄暗い部屋に一つの影と一台のカプセルがあった。

影の方は髑髏の仮面を持った牧師のような青いコートと黒い上下の衣装を身に纏った白い手袋の人物……名はムエルテ。

その彼は今……。

 

「おのれっ!おのれおのれおのれおのれっ!!エグゼイドオオオオオオオオッッ!!!」

 

苛立ちを吐き出していた。

仮面の奥にある瞳を光らせ、机を何度も叩きながら怨嗟の叫びを周囲に響かせる。

カプセルには全裸の男性が眠っており、腰に何かのドライバーらしき物体が装着されている。

 

「神に歯向かうばかりか、神のベルトに傷をつけるなど……!!」

 

机を叩き、怒りを露にする。

ムエルテはカプセルの中で眠る青年『荒神クロト』が忠実な手駒として生み出したゾンビゲーム『デンジャラスゾンビ』のバグスターだ。

そのため自身の元になったゲームの製作者であり、自らの『命』を形にした創造主たる彼に絶対なまでの忠誠……狂信とも呼べるほどの感情を抱いている。

しかし、クロトは現在『エグゼイド』が作り出した『未知のゲーム』によって圧倒されたばかりか、要とも呼べるドライバーに直接攻撃するという掟破りの方法で攻略してきたのだ。

その修復を兼ねて現在はスリープモードに切り替えており、バグスターウィルスの生成と培養を繰り返している状態である。

それはムエルテにとっては好ましくない。

 

「神の作るゲームは、神の創る世界は必ずや愚かな人類を導く!そして神を再臨させることこそ我が使命、我が役目っ!!」

 

だが、肝心のクロトが眠っている今では計画は大きく遅れてしまうだろう。

最悪の場合、忌々しい連中に勘付かれてしまう危険性だってある。

故にムエルテは頭を抱えた。

神の再臨を全盛期以上のレベルを持つ存在へと昇華させる方法を考えようとするが、彼はバグスター。

生み出された存在では新たな発想や展開を生み出すことなど出来ないのだ。

 

「そんなはずはないっ!私なら出来る私には可能だ私になら不可能など決してないっ!!何故なら!私は(サンタ)・クロトに仕える使徒、ムエルテ・バグスターなのだからああああああああああああああああああああっっ!!!」

 

絶叫し、神を崇める言葉を叫ぶムエルテ。

最早自棄になったとしか言いようがない言動の最中、そこで異変が起こったのだ。

最初は叫び過ぎて全く気付いていなかったのだが、しばらくしてようやく異変に気が付く。

 

「な……っ!?」

 

時間が止まっていた。

まるでゲーム画面を一時停止したかのように、全ての事象が止められていたのだ。

 

「時間が止まっている……神ぃっ!!私にっ、私に加護を与えてくださったのですねえええええええええええええええええやったああああああああああああああっ!!」

 

このバグスター、生み出した人間の性質を色濃く受け継いだのか元からなのか定かではないが、どうも頭のネジが何本か外れているらしい。

全力のガッツポーズで歓喜の雄叫びをあげるムエルテだが、実際はそうではなかった。

 

「残念ですが、これはあなたの神が与えた力ではありませんよ」

 

響く少女の声に「誰だっ」と叫び、周囲を見渡す。

バグヴァイザーを握り締める彼の視界に入ったのは、フード付きの黒いロングコートで全身を隠した少女。

左手に嵌めたパペット人形を動かしながら、こちらへと接近してくる。

 

「……何だ、貴様はっ」

『俺ちゃんたちはワールドハック。あんたに力を与えに来たのさ』

 

両腕を動かしながら喋るパペット人形のロックスに続いて、シックはレプリカウォッチⅡを取り出す。

不気味な仮面を持つ怪人の顔が描かれた贋作の時計を見せながら、彼女は口を開く。

 

「あなたの神に興味はありませんが、我々はその傲慢を許します。覇王のため、その加護を与えましょう」

「……」

 

差し出されたアイテムを手に取り、しばらく眺める。

まるで構造を確かめるように、違和感の正体を突き止めようとあらゆる角度から観察を続ける。

刻まれた戦士の顔を見るや否や目を見開き、そしてゆっくりと深く息を吐いた。

 

「培養」

【THE BUGSTER……!!】

「っ!?」

 

レプリカウォッチⅡを放り投げ、いつの間にか手に持っていたバグヴァイザーをグリップに装填すると同時に、自らの変異を告げる単語が短く紡がれる。

腐った紫の肉体を覆う天使のような翼を広げたトーテムポールの骸骨……ムエルテ・バグスター本来の姿だ。

 

『ブゥンッ!!』

 

間髪入れずに鉤爪から放たれた三つの斬撃が衝撃波となってシックに迫る。この速度では時間を止めるのが間に合わない。

「くっ」と動揺を押し隠すように表情を歪ませた彼女も、自らの肉体を変身させた。

 

【IXA……!!】

 

覇王に狂信する歪な信徒にして先兵……白い騎士となったレプリカイクサが逆十字の大剣を召喚する。

間髪入れずに弾き、歪んだ造詣の仮面でゾンビのバグスターを睨む。

 

『……何の真似ですっ?』

『俺ちゃんたちは敵じゃないぜ……何をしでかすんだてめぇっ』

 

突然の蛮行、突然の奇襲。

理解の追い付かず苛立ちを露にする彼女に対して、ムエルテは気にすることなく答える。

 

『興味がないなぁ』

『『……は?』』

 

唖然とするレプリカイクサ。

しかし、そんな彼女に目を向けることなく背を向けたムエルテが続ける。

 

『貴様らの覇王とやらが与えるそんな力などどうでも良いっ!何故なら、私が興味あるのは神の創る世界、そして神の偉大なる才能……すなわち、我が創造主たる神のみなのだからああああああああああああああっははっはっはっはああああああああああああっっ!!!』

 

その答えは、あまりにも納得出来ない。

常識とかけ離れた叫びと笑い声に流石のレプリカイクサとロックスも言葉を失う。

レプリカキバの反省を踏まえ、今回は『我の強い人物』を目標に探していたが、完全に当てが外れた。

最早この世界に用はないのだが、時間停止には体内に埋め込まれたレプリカウォッチのエネルギーを解放する必要があり、変身している最中は時間を止めることが出来ないのだ。

それに、先ほどムエルテが捨てたレプリカウォッチⅡも回収する必要がある。

互いの得物を構え、対峙するレプリカライダーとバグスター……異なる世界、異なるルーツを持つ望まれざるイレギュラー。

レプリカイクサが大剣を握り直し、踏み出そうとした瞬間。

 

「そこまでだよ、シック」

『……ナイン』

 

両者の動きが止まる……否、止められた。

ワールドハックの持つ時間停止能力だ。

もちろん、レプリカイクサではない。自分とは違うワールドハック……ナインの手によって二人の身体だけが止められている。

変わらぬ笑みを浮かべたまま、ゆっくりと近づく彼はムエルテの前に立つ。

 

「申し訳ない、同胞が迷惑をかけたね。そのお詫びと言っては何だろうけど、この力を使って欲しい」

 

ポケットから取り出したレプリカウォッチⅡにムエルテが睨む。

しかし、彼の言わんとしていることを察しているのか、ナインは微笑みを絶やすことなく話を続ける。

 

「これは王の力。君が嫌う天才ゲーマーの力じゃない、複数の動物をその身に宿した無限の王……そのものだ」

『……何が見返りだっ』

「本物の王になってもらう、ただそれだけさ。そして本物の王になるには、君の好きなようにすれば良い……どうだろうか?」

 

臆することなく、笑みを崩さぬまま差し出されたレプリカウォッチⅡを見つめるムエルテ。

しばらく逡巡すると、今度は迷うことなく手に取った。

 

『貴様らの口車に乗ってやる。私は神に仕える王となる、そして!神の再誕を完全なものとするのだあああああああああああっ!!』

【OOO…!!】

 

起動したレプリカウォッチⅡを自身の体内に埋め込むと、世界を歪めるノイズと共に紫色のエネルギーがムエルテの全身を包む。

やがて鮮やかな光と共にその身をレプリカオーズへと変えた。

 

「ハッピーバースデイ。今日から君も『仮面ライダーオーズ』だ」

『力が漲るっ、力が漲るぞおおおおおおおおおおおっ!』

 

歪な祝福が贈られる。

溢れんばかりの力に歓喜するムエルテの変身したレプリカオーズが雄叫びをあげる。

『仮面ライダーオーズの世界』と『仮面ライダーエグゼイドの世界』……本来なら交わされるはずのない二つの世界は、レプリカウォッチを軸に混ざり合ってしまったのだ。

『仮面ライダーロワの世界』と一緒に……。

 

 

 

 

 

時間と場所は、仮面ライダーレクスとチームCが謎の戦士に助けられた後の話に戻る。

セーフルームと思わしき応接室に運び込まれたレクスは変身を解除し、自らの名前を告げた青年を見る。

その目は油断することなく警戒しており、手には再変身出来るようにライドウォッチが握られている。

 

「お前が、仮面ライダーエグゼイド……」

 

そう呟いた颯太に対し二ノ原エムは心底面倒そうに、深い溜め息を吐いてから改めて告げる。

 

「そっ。名前は二ノ原エム、ドクターなんて外れジョブを引いた外れプレイヤー」

 

「それで満足か」と言わんばかりに視線を合わせる。

その目は医者とは思えないほどの濁った瞳……恐らく疲労や過労などのストレスから来ているのだろう。

まるで薄汚れた水晶のような彼は、四人からの視線に長い溜め息を吐く。

 

「何だよ何だ何ですかその目は。『こんな腐った魚の目をした奴が医者かよ』って?はいはいそうですよ、だって俺研修医だし?親の金でドクターになったエリートどもとは違うし?どうせ俺はクソゲーを掴まされた底辺野郎だよ……って誰が最低のド底辺ドクターだ上等だよ喧嘩なら有能ゲーマーSHIGENが格ゲーで買うぞ表に出ろやこらっ」

「誰もそこまで言ってないし、一先ず落ち着きなさいよ」

 

別に何も言っていないのだが、口を開けば自意識過剰レベルの被害妄想を爆発させるエムにアヤが呆れたようにツッコム。

しかし、何らかのスイッチが入ってしまったのか止まることなく彼は続ける。

 

「俺だって本当はさ?『患者さんを笑顔にしたい!』とかキラキラした想いを胸に勉強したよ。けどまーリアルって最悪だよな、研修医は偉そうな看護師やドクターの意見聞かなきゃいけないし、何なら使い走りも良いとこだし?患者はまともに人の話を聞かないし?まともな休暇もないし夜に叩き起こされるし?ぶっちゃけしんどいし、心底面倒臭い」

「……今の心境は?」

「おいまて。何故そこで質問した」

「患者の笑顔?はいはい、勝手に笑顔になってろよ」

「お前も律儀に答えるな!」

 

ユキの悪意ない質問に爽やかな笑みで答えるエムに颯太がついに叫んだ。

この青年、思っていた以上に擦れているし何なら駄目人間に片足突っ込んでいる。正直に言ってしまえば理想を打ち砕かれた社畜だ。

頼りになるどころか不安要素の塊でしかない彼だが、二体のグリードを翻弄し助けられたのも事実。

それに彼は仮面ライダーエグゼイド……レプリカゴーストとの戦いで力を失ったエグゼイドライドウォッチを元に戻せるかもしれない。

 

「んじゃ、さっさと行きますか」

 

色を失ったエグゼイドのライドウォッチを握り締める颯太。そんな中、エムは白衣のポケットに両手を入れながら四人に背を向けた。

そのまま移動しようとする彼にアヤが「ちょっと!」慌てて止める。

 

「何処に行くつもり!?」

「帰るんだよ。こいつはもう限定的なパンデミックだ、碌な準備もしないで突撃したらゲームオーバーになるのは眼に見えてるし、今回の騒動に詳しそうだからお前らも一緒に来い」

 

有無を言わさず一方的にそう決めると、その目に僅かな光が灯る。

それは煤だらけの水晶から覗く、本来の輝き。

 

「他人様の人生(ゲーム)を勝手に仕様変更するくそ野郎が、天才ゲーマーSHIGENとの格の違いを教えてやる」

 

ほんの一瞬、颯太たちには分からなかったが一瞬だけ、この場にいない敵に向けた闘争本能に反応するように瞳が赤く染まった。

 

 

 

 

 

生まれた時、見上げた彼の視界に映ったのはくすんだ灰色だった。

聞こえてくる音は濁り、口に含んだ物体も辛うじて硬いか柔らかいかの違いしか分からない。

だからこそだろう。

生物の持つ全てを味わえない自分も、人間の真似事をする他のグリードも嫌いだった。

欲望からヤミーを生み出し、国の資源となるセルメダルを集め続けるだけの空虚、何故自分が生まれたという疑問すらも覚えないほどの生活が、ほんの少しだけ変わる。

 

────「グリード諸君。彼ら彼女らにコアメダルを投入しろ」────

 

呼び出した自分たちに、王はそう命令した。

後から知ったことだが、新しいコアメダルを製造させている傍ら、王は全てのコアメダルと大量のセルメダルを取り込もうと考えていたらしい。

人間にコアメダルを投入するとどうなるのか、そして人体は何処まで耐えられるのかを貧民街や城の家臣たちで実験し始めたのだ。

この実験が終了次第、錬金術師たちが取り込んだコアメダルを補填するということもあり、グリードたちはあっさりと了承した。

アッシュが担当することになったのは、十八歳ぐらいの目が見えない少女『フィーニ』……そして彼女の兄であり王の兵士だった『ポイニ』。

二人はこの時代に生まれてくるには相応しくない、善意に溢れた人物だった。

コアメダルを取り込み、目が見えるようになった彼女は様々なことを教えてくれた。

空が青いということ、果物には酸っぱいのと甘いのがあるということ、そして自分の身体や翼が美しい赤色だということを。

アッシュにとって懐いてくるフィーニは単なる実験体で自分に突っかかって来るポイニはただの監視役、人間に接するように話しかけてくる兄妹に苛つきながらも、何処か楽しみにしている自分がいることに気づかぬ振りをしていた。

そして、映像が切り替わる。

 

────「アッシュ。俺の、身体を使え……!」────

 

映るのは崩れ落ちていく国と、満身創痍の身体で地面に転がるポイニ。

その言葉に対し、自分は……。

 

 

 

 

 

「……うっ」

 

呻き声をあげ、アッシュは目を覚ました。

薄暗く、外から照らされる光だけしかない座敷牢がぼやけた視界に入る。

身動ぎしようにも身体が上手く動かない、ムエルテの攻撃が原因だがもう一つある。

 

「畜生がっ」

 

右手には鈍く輝く手錠が取り付けられており、今の彼では壊すことは難しいだろう。

少しでも情報を集めようと顔を動かした時だ。

 

「お目覚めかな?オリジナル・グリード君」

 

現れたのは骸骨仮面の男性……ムエルテだ。

先ほどの激情した様子とは打って変わって、その声色と態度には落ち着きがある。

衣服も金と黒を基調としているが、何処か宣教師を思わせるような服装へと変わっていた。

 

「最悪の気分だ、起き抜けに不細工な髑髏面を見せられるのはな」

「くくっ。まだ減らず口を叩く余裕があるか」

 

口元を歪めて嗤う彼にアッシュは眉を顰める。

先ほどまでは自分に歯向かう者に苛立ちを露にしていたが、今の彼には傲慢にも似た余裕に溢れている。

しかし、そんな疑問を考える暇もなくムエルテが口を開く。

 

「神の再誕、それも強大な力を持たせたるには膨大なまでのバグスターウィルスが必要になる。しかし、人間を感染させようにも我々を警戒しているCRの連中がすぐに邪魔してくる……忌々しいほどになっ」

 

「しかしっ」と両手を大きく広げた彼は叫ぶ。

まるで加護を与えられた信徒のように、恍惚とした様子で顔を見上げた。

 

「聖・クロトは私に試練を与えてくださった!異世界からの来訪者、神に託されたこの機会に便乗し、大量の人間にストレスを発生させることで活性化したバグスターウィルスによって、ようやく神は再誕されるのだっ!!」

 

ムエルテの目的、それは自身の創造主の復活に他ならない。

感染させた人間のストレスから生じるバグスターウィルスを地道に集める必要があるのだが、イレギュラーの来訪によって物語が変化してしまった。

クロトの眠るカプセル内にあるバグスターウィルスを活性化させ、それによる早期復活と大幅なパワーアップ……膨れ上がった欲望を持って彼はレプリカライダーとなったのだ。

 

「……はっ。オーズの偽物如きで神様とやらが復活出来るのかよ」

「だからこそだ。私の目が曇っていた、故に怨敵の力を使うことを忘れていた」

 

アッシュの挑発に怒ることなく、得意気な表情を見せた彼は埋め込まれたレプリカウォッチの力を解放する。

紫色のエネルギーに包まれると同時に、モザイク状となっているピンク色のエフェクトが弾けた。

 

【EX-AID……!】

 

変身した姿は、レプリカオーズではなかった。

橙色の鋭い眼球を保護する心電図のような線が入ったゴーグルに、何処か嘲笑っているようにも見える鋭い牙が並んだ口元……逆立ったピンク色の毛髪からは黒いケーブルが伸びている。

刺々しい装甲の下は発疹を思わせるような黒いシミが目立っており、宛ら役目を果たせていない防護服だ。

胸部の装甲背中にある巨大な仮面には「EX-AID」、更に背中の黒い複眼には「2016」と文字と数字が刻まれている。

仮面ライダーエグゼイドを模倣した究極の医療を目論む贋作『レプリカエグゼイド』へと変身を遂げた彼は、震える拳を握り締める。

 

『奴の力を使うのは気に食わんが、これも全ては我が使命のため!そう、これも神を再誕させるための必要な苦行なのだっ!!』

 

そうして、また自分の世界へと入るレプリカエグゼイド。

狂気的で、何一つ理解は出来ないが少なくとも彼は本気だ。本気で、自分の欲望を叶えて満たそうと躍起になっている。

例え、それでどれだけの被害や犠牲が出ようと止まることはないのだろう。

 

(……はっ、こいつは正真正銘の馬鹿だなっ)

 

あまりの欲深さに、アッシュが鼻で笑っていた。

荒唐無稽な彼に呆れたからではない。

自分と同じ人間でない癖に、人間並の欲望を持つ存在に一方的なシンパシーを感じていたからだ。

たった一つの欲望を満たすためにオーズと手を組んだ自分自身と……。

 

『さぁ、ゲームクリアの道筋を進めようではないか……彼女たちを使ってね』

 

レプリカエグゼイドが宙に出現させた映像へ視線を向ける。

連れて視線を向ければ、そこに映っていたのは……。

 

「てめぇ……!!」

『私が貴様らの弱点を把握していないとでも思ったか?』

 

怒りを露にするアッシュにレプリカエグゼイドが再び笑う。

そこには、拘束されて気を失っているAVARICEメンバーと、その近くに怪人態となったアイシェルとテニィーレの姿があった。

 

 

 

 

 

公園のベンチに座っている青年が双眼鏡を覗き込む。

その先にあるのは日本城へと変化したゲーム会社ビル……しかし、その顔は驚くでもなく恐れるでもなく、ただ楽しそうに笑っていた。

 

「ははっ!あれを見なよ『ジュラットン』。ムエルテの奴が面白そうなことをしてるよ」

『「ヴィルス」……笑っている場合じゃないだろう』

 

ピンクのシャツに黒いパーカーを羽織り、赤いメッシュの入った青い天然パーマの端正な顔立ちをした青年……ヴィルスと呼ばれた彼に呆れたように答えるのは、全身が青で統一された異形の怪人。

トリケラトプスの頭蓋骨を思わせる頭部に、ティラノサウルスを模した右腕の手甲にプテラノドンの羽根を模したブーツ、胴体はモササウルスの鋭い牙が並んだ恐竜と翼竜、そして海竜の要素を混ぜ合わせた禍々しい存在だ。

宛ら狩猟者を思わせるような外見とは裏腹に、落ち着いた男性の声でテンションの高いヴィルスを嗜めている。

しかし、自身の同胞である怪人……発売中止となったゲーム『ジュラシック・クライシス』のボスキャラをモチーフにした『ジュラットン・バグスター』に気にすることなくヴィルスは眼を輝かせる。

 

「だってさ、見たことない力と姿を手に入れたんだよ。おまけにエグゼイドの力まで持ち込んできた……どんなチートコード使ったかは分からないけど、テンション下げろって言う方が無理だって!」

 

ヴィルスが興奮しているのは、仮面ライダーともバグスターとも違う存在……すなわちグリードとオーズのことだ。

明らかに自分たちとは違う気配に、彼は興味を抑え切れないでいる。

 

「なぁジュラットン。ボクたちは『仮面ライダークロニクル』を再会するためにバグスター集める必要があるよね?」

『そうだな』

「だったらさ、ついでに邪魔してやろうよ。少しぐらい、休憩しても罰は当たらないさ」

『……好きにしろ』

 

彼の悪癖を理解しているのか、何度目かの溜め息を吐くバグスターに「さんきゅ」と感謝する。

そして、懐からグリップと長い端子が特徴のゲームカセットを思わせるネイビーカラーの奇妙なアイテムを取り出した。

 

「君も来るんだろ、エム……君は絶対にムエルテのところに向かう、だったらボクと一緒に楽しもうよ。このコラボイベントをさ」

 

そう呟いた彼はスイッチを押し、アイテムを起動させる。

 

【GURURU MONSTER MOON!!】

「……心が躍るぜ」

 

それは、至高のゲーム完成を目論む者の挑戦……バグスター参謀ヴィルス&バグスター隊長格ジュラットン、参戦。




 当初ムエルテはレプリカエグゼイドになる予定でしたが、本人が拒否したため代案としてナインがレプリカオーズの力を与えました。
 そのせいでオーズの世界とロワの世界が少しだけエグゼイドの世界と混ざってしまい、レプリカエグゼイドに変身したことで完全に三つの世界が混ざってしまいました。
 隠す必要もないので暴露しますが、最後に登場したヴィルスはパラドポジ、ジュラットンはグラファイトポジのバグスターです。
 名前の由来は「virus」をそのまま読んでヴィルス、「ジュラシック」+「グラットン」の造語でジュラットンとなっております。
 ちなみにエグゼイドの時系列的にはマイティアクションXXを入手した辺りですね。なのでヴィルスはパラドクスにまだ変身出来ません。
 ではでは。ノシ
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