仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
暗いオフィスの一室に、一人の影が入り込む。
それは荒い息を吐きながら、自分の身体を引きずって置かれていたチェアに座り込む。
「おのれっ。忌まわしいドクターども、おのれエグゼイドッ」
王としての装飾が剥がれ落ちた人間態のムエルテは徐々に再生していく身体を見つめながら、自らの敗北に憎悪を滾らせる。
神の復活、バグスターウィルスの活性化を利用した作戦は完全に失敗。しかも忌むべき異教徒である仮面ライダーエグゼイドに敗北したという事実に発狂しそうになるのを必死に抑え込む。
最も忌々しいのは、エグゼイドに協力した時計やメダルを使った別の仮面ライダー……いや。
「待てっ。そもそも私はどうやって神を復活させるつもりだった?」
自分が神を復活させようとしたのは間違いないが、どのような方法だったのか思い出せない。
バグスターウィルスを応用した方法だった気もするし、本来の想定していた内容とは齟齬があったのかもしれない。
レプリカウォッチⅡが破壊されたことによる歴史修正……しかも異なる世界のウォッチを二つ使用したことで違和感を覚えるほどの障碍が発生してしまったのだ。
普通の人間だったのなら、欠落した記憶に戸惑うだろうが彼は神の復活を願う忠実なバグスター。
「どうでも良い!重要なのは、神の再誕に失敗したこと……それだけだっ」
自分の記憶よりも崇め奉る創造主のために動く。
それこそがムエルテ・バグスターの存在意義であり、彼の役目だ。
バグヴァイザーを構え、痛みの引いた身体を起き上がらせようとした時、奥にある装置が人知れず点滅を始める。
「充分ですよ、ムエルテ」
優し気な、男性の声が響く。
驚き振り返れば、装置が音を立てて開いており、そこから全裸の男性が出てくる。
短めの整った黒髪に優し気な笑みを浮かべた優男……といった雰囲気の彼にムエルテは身体を震わせる。
間違いない。ずっと求め焦がれた、神の復活。
「か、神いいいいいいいいいいいいいいっっ!!!」
目の当たりにした奇跡に絶叫し、涙を撒き散らす。
オーバーなリアクションに焦ることも動揺することもなく、全裸の男性……『仮面ライダーゲンム / クロト』は微笑みを向ける。
「おやおや、泣いてはいけませんよ。人々の命を救うまで、私は不滅なのですから」
むせび泣くムエルテの頭を撫でるクロトは完全に修復された専用のバグヴァイザーを腰に巻きつけて装着する。
両目を閉じ、両手を大きく広げてからしばらくする。
そして、勢いよく開眼して口を開く。
「ムエルテ、次なるステージへと進みましょう……私自身の才能でね」
再び、笑う。
しかし、その笑みは先ほどのような優し気なものではなく、執念を秘めた粘着質なものへと変貌していく。
【DANGEROUS ZOMBIE!!】
『エグゼイドの世界』で、新たなゲームが復活した狂気と共に始まろうとしていた。
どんなトラブルがあろうとも、AVARICEが止まることはない。
当人たちに問題がないのなら満足するまで歌って踊る……それが彼女たちだ。
ただし、それでも例外は存在するわけで。
「……たく。少しは怪我しないで戦うことは出来ねぇのか?」
「仕方ないだろ、変身して戦うんだから」
ステージ裏で頬にガーゼを貼った詠春が文句を零すアッシュに口を尖らせる。
一回だけとはいえコンボによる体力の消耗や連続での戦闘は流石にアイドル・詠春華野の活動を休止せざるを得ず、せめてものフォローとして裏方として無理しない程度に動いている。
アッシュも理解しているが、それでも彼女たちの動きを観察しながら溜め息を吐く。
「忘れてねぇよな。俺との『約束』をよ」
「……当り前じゃないか」
瞬間、穏やか雰囲気が変わる。
鋭くなった視線を向けられたアッシュもまた、不敵な笑みを浮かべる。
「僕は、フィーニちゃんにもう一度会うためにオーズとして戦い」
「俺に身体を渡したポイニとフィーニを復活させるために、お前を手伝う……必ず伸ばしてやる、あいつらに届くまでな」
共通するのは純粋なまでの欲望、長い時と短い邂逅で芽生えた二つの欲望。
透き通るほどの想いが何処まで届くのだろうか……。
颯太はエグゼイドウォッチを握り締め、今回の戦いを振り返っていた。
前回のウィザード&ウィッチの邂逅から発生している他の世界との一時的な融合……それによる歴史改変もだが、レプリカライダーの力が明らかに強くなっている。
仮面ライダーロワはライドウォッチを集め、確実に強くなっているのを感じる。本人は無意識だろうが、オリジナルのライダーと並び立てるほどの実力を身に着けつつある。
なら、自分は?
エグゼイドに発破を掛けられただけで、戦闘も彼の後を追うのに精一杯だった。
ライドウォッチを集めているにも関わらず、何処か力の差を感じてしまう。
────「私に喜劇を見せてくれ」────
ふと、思い出す。
家族が、友人が、当たり前に存在していた世界が壊れていくかつての記憶。
自分の日常が崩壊していく最中で、あの時の声が響く。
愉悦と好奇心が混じった、粘着質な忌々しいあの声が……。
「今のままじゃ、あいつらに勝てないっ」
手に入れたライドウォッチの重みから伝わる無力感、ワールドハックを倒すと決意したあの時から自分は何も為せていない。
自分の力だけで、自分の世界を滅ぼした怨敵を倒す力を……少年は、ただそれだけを願いながら街を歩く。
街灯さえも照らさない場所で淡い光が周囲を灯していた。
光源となっている青白い焔は力なく揺れ、その近くには大量の灰が散らばっている。
風が弱々しく吹く度に流され、何処からともなく灰は消えていく。まるでそこに最初から何も存在しなかったかのように、炎が自然に消えた灰は風と共に飛び去る。
「……」
そこに立っていたのは、一人の戦士。
夜の闇で詳細こそ分からないが、それを裂くように赤い閃光が身体中に走っている。
僅かに残った遺灰を掬い上げる……人間を捨ててしまった名も知らない者へ、せめてもの弔いに。それが何の救いにならないと分かっていても。
ふと、空を見上げる。
何も変わらない、間違いも正しさもない夜空だけが、その戦士を見下ろしていた。
Next Legend Rider……???
レプリカオーズ
『エグゼイドの世界』にいるバグスター『ムエルテ・バグスター』がワールドハックの手でオーズのレプリカウォッチⅡを投入することで変身した姿。
基本となる鷹・虎・飛蝗の力だけでなく、水棲系や重量系などの生物の力も扱える。
レプリカエグゼイド
同じくムエルテが変身した姿。エナジーアイテムの召喚やバグスターウィルスの操作を可能としている。
華道詠春 / 詠春華野(女装時) / 仮面ライダーオーズ ICV渕上舞
『オーズの世界』で仮面ライダーオーズとして変身する少年。現在は紆余曲折を経てこの世界の人気アイドルグループ『AVARICE』に新人アイドルとして活動している。
穏やかで礼儀正しいが、あまり物欲に拘らない一面も。キャラクターコンセプトは『二週目オーズ』
二ノ原エム / 仮面ライダーエグゼイド ICV斉藤壮馬
『エグゼイドの世界』で仮面ライダーエグゼイドとして活動している研修医。ダウナー気味で口は悪いが、何故か子どもに好かれる才能がある。休日では天才ゲーマー『SHIGEN』としてゲーム大会で優勝を重ねている。ちなみに趣味はチートで得意気になっている奴のプライドを粉々に壊すこと。