仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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 短いですが、新年一発目。


TIME25 2003:555イミテーション

冷たい風が吹く季節でも、中央公園は変わらず人が集まる。

家族団欒で、恋人同士の幸せで、独り身を誤魔化すためと理由はそれぞれだが、誰もが当たり前の日常を送っていた。

その時、営業終わりに休憩していたサラリーマンの視界に違和感が入る。

 

「……」

 

顔を上げて確認すると、それは一人の男性だった。

髪は乱れ、薄汚れたジャケットとズボンを身に着けている彼は覚束ない足取りで公園を歩いている。そして、しばらく歩いたかと思えば座り込んでしまった。

触らぬ神に何とやら、周囲の人……特に家族連れはほんの少しの警戒心と共に少しだけ距離を取って再び自分たちの日常を謳歌する。

季節と同じ世間の冷たさに溜め息を吐いたサラリーマンの男性は彼に近寄って声を掛けようとする。浮浪者かもしれないが、黙って座っているほど薄情な人間でもない。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「……」

 

返事はない。しかし、顔色は悪い様子もない。

特に救急車も呼ぶ必要もないと判断したサラリーマンが一先ず自分の座っていたベンチまで運ぶために肩を貸そうとした時だ。

軽い衝撃が胸元を中心に走った。

 

「……えっ」

 

見れば自分の心臓辺りに男性の右腕が入っており、そこから青白い炎と砂のような灰が噴き零れている。

同時に、その異様な光景に周囲も呆然とすることしか出来ない。

何が起こったのか、それを理解する前にサラリーマンの身体は瞬く間に灰となってこの世から消滅した。

たった今奪った目の前の命や周囲の視線を気にすることなく、手に残った青白い炎を男性は口に運ぶと地面に残った灰を飢えた獣のように貪り始める。

 

「足りないっ、足りない足りないたりないっ」

 

うわ言のように、虚ろな眼で何度も同じ言葉を繰り返しながら、一心不乱に命の残骸を喰らう。

しかし、髪を自身の両手で掻き毟ると突如として上体を起こした。

 

「こんなンジゃ死んじマう……シにたクナいっ。死にタく、なイんダよぉぉぉおおおオオオオッ!!」

 

錯乱した叫びと恐怖に追い詰められた鬼気迫る表情と共に、男の身体は赤紫色のエネルギーに包まれて変化していく。

 

【FAIZ……!!】

 

全身に走る血管のような赤いケーブルライン、彫像を思わせる白と灰が入り混じった骸骨のような肉体……右脚には懐中電灯を模した銃口が一体化している。

日常の中に現れた非日常に人々がパニックになって逃げ惑うも、大量の獲物を見つけた怪人は貪欲なまでの視線で睨みつける。

 

『ヨコセ、オマエラノイノチヲ、イキルタメニヨコセエエエエエエッ!!』

 

暴走する本能のまま、怪人が一歩踏み出そうとした時だ。

一発の銃声が、悲鳴と混乱の間に鋭く響く。

唸り声をあげて振り向けば、そこにいたのは黒一色で武装した数人の人間と、黒いコートと黒いネクタイで統一した喪服のような衣服を着こなした青年。

白い手袋を嵌めており、その右手には黒いアタッシュケースを持っている。

武装した戦闘員の上司であろう彼は一般市民の避難を指示すると、目の前の異形に視線を逸らすことなく口を開く。

 

「識別名『イミテーション』、大人しく投降しろ。そうすれば…」

 

その言葉を遮るように怪人……『イミテーション』が雄叫びをあげて前進した。

突進する異形を横転で躱し、彼は説得を続ける。

 

「やめろっ!このまま暴れても意味なんかない、だから」

『ガアアアアアアアアアアッ!』

 

『イミテーション』が獣のように吠える。その姿に理性はなく、血に飢えた野獣そのものだ。

言葉も通じない、その事実に悲痛な表情を浮かべた彼は「SMART BRAIN」と書かれたロゴのアタッシュケースを開いた。

そこに入っていたのは銃器……ではなく、右側に三本の白いラインが刻まれたベルトのような機械と奇妙な形状をした無線機。

白い三重線が彫られた無線機は外側と内側で黒と銀で塗装されており、耳に来る部分には黄色く小さなアンテナがある。

僅かに躊躇しながらも、ベルトを装着した彼『待雪シュウジ』は右手に持った無線機『デルタフォン』のトリガーを弾きながら口元に近づけ、あの言葉を叫んだ。

 

「……変身!」

【Standing by】

 

無機質な音声による認証確認を終え、ベルトの右腰にあるデジタルカメラ型ウェポン『デルタムーバー』に接続する。

再び地面を蹴った『イミテーション』が拳を振り下ろした時には、既にシュウジの姿は変わっていた。

 

【Complete】

 

全身に白いラインが走ると同時に、同色の閃光が周囲を眩しく照らす。

自身の掌で難なく受け止めたその姿は、無機質な天使だった。

黒一色のスーツに纏わりつく複雑な紋様を描く白いライン……高い出力の『フォトンブラッド』は禍々しくも何処か神秘的だ。

ギリシア文字の「Δ」を模した頭部と橙色の複眼を併せ持つ戦士は、攻撃を防いでいる手とは逆の手で空いた腹を殴り飛ばす。

 

『グエッ』

 

苦しそうに呻き、地面を転がる『イミテーション』の姿に顔をしかめながらも、これ以上の犠牲を出すまいと『仮面ライダーデルタ』は暴力への嫌悪感と恐怖で震える拳を掌に打ち付けると、今度は自分から距離を詰めて戦闘を開始する。

 

『グガァッ!』

 

『イミテーション』が銃口と一体化した右脚を向けると、そこから赤い光弾を放つ。

しかし、デルタは迷わず突貫すると異形の身体を掴んで膝蹴りを叩き込み、怯んだところに肘と腕による流れるような追撃を加える。

 

「ふっ、ふっ、ふっ」

 

仮面の下で行うのは一定の浅い呼吸……今ある雑念を払う合気の如き軍隊格闘術『システマ』をベースにデルタは攻撃を続ける。

『イミテーション』の攻撃を強引に抑え込むのではなく利用し、無力化すると同時に相手の身体を確実に壊していく。

最早、猛獣のように暴れるだけの『イミテーション』では相手にならない。

それでも目の前の餌を喰らわんと咆哮をあげる異形に、デルタムーバーに接続したデルタフォンを構えたデルタは、ベルトから抜き取ったミッションメモリーを装填。

 

【Ready】

「……check(チェック)」

【exceed charge】

 

短く呟かれた言葉による最終認証を終えると、フォトンブラッドの白い光がベルトから右腕を経由してデルタフォンへと収束。

狙いを定め、両手で構え直してからトリガーを弾き、薄紫色に染まった三角錐状のエネルギーが射出されると同時に『イミテーション』を捉えて拘束する。

 

『グッ、ガッ、アァッ』

 

再びデルタフォンを右腰に戻すと、必死に藻掻く『イミテーション』に向かって跳躍。

そのまま、右脚による飛び蹴りを繰り出した。

 

「はぁぁぁぁああああああっ!」

 

ポインターに吸い込まれるように一体化すると、まるでドリルのよう激しく回転を始めて衝撃を加速させていく。

やがて、相手を貫通したデルタが『イミテーション』の背後に降り立った。

 

『ガアアアアアアアアッ!?』

 

同時に青紫のΔを模した紋章が浮かび上がり、毒々しい赤い炎の爆発を起こした。

倒れ込んだ『イミテーション』は元の男性へと戻るが、ボロボロになった身体を引きずって必死に逃げようとする。

 

「あ、嫌だ。死にたくない、死にたく…」

 

その言葉を最後に、男性の身体は自分が糧としたサラリーマンのように灰となって朽ち果てた。

やりきれない溜め息と共に変身を解除したシュウジは「これで何度目だ」と独りでに呟く。

突如として起こった暴走事件……被害者はオルフェノクや人間関係なく襲われ、その命を貪るように食われてしまう。

しかも、犯人は生物を模したオルフェノクではなく『555』と酷似した異形であり、その異形の正体も人間やオルフェノクと移り変わっていくのも異質さが際立っている。

ファイズのベルトは『とある人物』が肌身離さず管理しているし、新しいベルトが製造されたという話も聞いたことがない。

かと言って、オルフェノクと判断にするには、あまりにも不気味な容貌だ。

故に、識別名はイミテーション……『555の模倣品』の意味を持つ怪人として対処に及んでいる。

オルフェノクの王とオルフェノクの災厄が消えた世界で、人もオルフェノクも被害者という事件にシュウジたち『オルフェノク対策課』も頭を悩ませているのだ。

そして、この事件には共通点が更にある。

 

「……また、『これ』か」

 

赤紫色の時計のような物体、戦闘による撃破などで寿命が切れて灰化した犯人の近くに必ず転がっているのだ。

押収しようと歩き始めた時だ。

 

「っ、くそっ!」

 

転がっていたはずの時計がなくなっていた。

突如として消える証拠品……これもまた、事件の不可解な要素もでもあった。

しかし、悔しさを露にしたところで解決するわけでもない。

 

「……市民の避難は?」

「完了しております。被害者は一人だけで公園にいた人たちに怪我はありません」

 

部下の報告を受け、救えなかった命に胸を痛めながらシュウジは事後処理をするべく現場へと戻った。

空から、雪が降って来る。

亡者を弔うように、黒い死を隠すように……。

そして。

 

「……ふふっ」

 

一人の影が、回収した時計を弄びながら先ほどの戦闘を鑑賞していたことに気づかずに。

 

 

 

 

 

「……くしゅんっ!」

 

寒空の下、厚着をした颯太のくしゃみが外に響く。

上着のポケットに手を入れながら、雪を降らし始めた曇り空を恨めしそうに睨む。

 

「急に冬になったにも関わらず、殆どの人間が違和感なく過ごしている……となれば、ピグマリオンや異常気象の類じゃない」

 

スマートフォンの時計やニュースでは世間はクリスマスムードとなっており、DOLLSの仕事もいつの間にか冬に関連するイベントやスケジュール内容へと変わっていた。

原因は既に分かっている、レプリカライダーの仕業だ。

恐らく混ざり合った世界が冬時だったのだろう、その影響でこの世界も季節が切り替わっているのはすぐに分かった。

 

「小野寺たちは仕事でいない……なら、俺一人で倒すだけだ」

 

今回、DOLLSのメンバー総出での撮影があるため椋も付き添いで事務所を空けている。

結果としてフリーとなった颯太は班目とカナに許可をもらった上で、調査を開始していた。

目星は既についている。

人間の灰化現象……テレビや新聞ではそう表現されているが、都市伝説などを扱うSNSでは怪物が人間を灰にして食っていたという噂が広がっている。

 

「……人間が灰になる、とすれば十中八九オルフェノクの仕業に違いない」

 

まずは情報を集める必要がある、混ざり合った世界にいる仮面ライダーとコンタクトを取れば、自ずとレプリカライダーにも会えるだろう。

白い息を吐き、行動すべく町中を歩き始めた時、一人の人物とすれ違った。

何の変哲もない、至って普通の……自分と同年代ぐらいの少年。

敢えて奇妙な点があるとすれば、何処か旅人や吟遊詩人を思わせるコートを羽織っていることぐらい。

滅んでいく世界で見た、『あの人物』と同じ。

 

「っ!」

 

気づけば、颯太は少年の後を追っていた。

歩いている人に時折ぶつかりながらも、逃がすまいと必死に走る。

追いかけられる形となった少年は、上機嫌な足取りのままだ。

普通に歩いているだけにも関わらず、距離は縮むどころか遠のいていく一方。

 

「待てっ!」

 

そう叫ぶも、少年が止まることはない。

むしろ相手を翻弄するかのように、気にせず歩き続けている。

追い付けない事実が、焦燥と苛立ちを颯太に募らせる。

やがて、少年の姿が曲がり角に入ったの見て自身も勢いのまま曲がった。

だが。

 

「うおっ!?」

「きゃっ!」

 

荷物を持っていた女性と鉢合わせし、危うくぶつかりそうになってしまった。

「済まない」と一言謝罪して周囲を見渡すが、少年の姿はない。

姿を見失ったというよりは、まるで最初から存在しなかったかのように、忘れることのなかった忌むべき奇妙な後ろ姿がいなくなっていた。

 

「……ちっ」

 

逃がした。

その事実が余計に苛立ちを増すが、すぐに白い息と共に吐いて気持ちを落ち着かせると当初の目標へと行動を移す。

歩いていた道に戻ろうとした時。

 

「ちょーっと良いかな」

「んっ?」

 

振り向けば、そこにいたのは先ほどの女性だ。

茶髪のセミロングにチェック柄のマフラーを巻いた、強気な印象を与える表情で美人の部類に入るだろう。

最も、颯太からすれば興味はないので訝し気に視線を向けていたが、女性は気にせず彼の身体を観察し、納得したように何度も頷く。

 

「うん、合格!」

「おい、さっきから何なん…」

「はいはいはい。こっちに来てねー」

「待て待て待て、おいいいいいいいいいっ!?」

 

有無を言わさず、当初の予定が完全に崩れた事実を本能的に理解してしまった颯太の悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

巨大な歯車無機質な音を立てて動く狭間の世界で、颯太にジカンジャナックルを渡した「宮廷画家」を自称する少女は首に巻いた緑のストールを弄りながら開いていた本を閉じる。

 

「そろそろ、私たちも動く必要があるわね」

 

神妙な面持ちで、後ろの玉座にちょこんと座っていたもう一人の少女に向けて言葉を続けながら、持っていた本を投げ捨てる。

 

「物語の流れが読めなくなった。それはつまり、ワールドハックに滅ぼされるという決定された結末がなくなったことを意味するわ」

 

それはつまり、自分たちイレギュラーがようやく動けるようになったことに他ならない。

奥にいる少女に向かって、彼女は今後の方針を共有する。

 

「私は、レクス■■■■ともう一度接触する。あんたはもう少しだけ待機していて」

 

その指示に、少女が不満げなオーラを放つ。

呆れた表情を向けながら、彼女は理由を続ける。

 

「『今の時点』じゃ、あんたはあの世界にとって劇薬みたいなもの。下手すれば物語その物に大きな破綻を起こしかねない……後は言わなくても分かるでしょ?」

 

短い付き合いだが、少女との関係や友好で信用に値する……不承不承といった感じで、宮廷画家の言葉に仕方なく頷いた。

 

「それじゃ、ほんっっっとーーーーーーっに!大人しくしてなさいよ。分かったわね」

 

少女にもう一度念を押す。まるで遠足前の小学生のように期待でそわそわしている彼女に改めて視線を合わせる。

 

「あんたは、ワールドハックを倒す希望になるんだから。頼むわよ……『仮面ライダーロワ』」

 

それを最後に、今度こそ宮廷画家の女性は狭間の世界から出ていった。




 本作の555編もリ・イマジネーション、つまりディケイドが通りすがった555の世界が舞台となります。時間軸としては最終回後以降に該当しますね。
 ディケイドの世界ではオルフェノクの存在が広まっているのもあり『オルフェノク対策課』という部隊が治安を守っています。彼らは死した存在であるオルフェノクをもう一度殺すために設立された部隊であり、隊員たちは一貫して黒いスーツにネクタイを装着しています。そのため、一部のオルフェノクや人間からは「葬儀屋」と皮肉った名前で呼ばれています。
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