仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~ 作:名もなきA・弐
本当は暗くしたかったのですが、作者の力量不足によりこうなりました。
レクスとシケーダ・オルフェノク歩兵態との戦いもまた、終わりに近づいていた。
というのも、シケーダは音波や槍による刺突の攻撃手段しかなく、手の内さえ分かれば何てことのない相手だったからだ。
「はぁっ!」
『がっ!?』
ジカンジャナックルによる一撃を腹部に叩き込まれた幼虫のオルフェノクが吹き飛び、地面を転がる。
しかし、弱々しい足取りで再び立ち上がり、武器を構える。
「何度やっても無駄だ」
先ほどから、ずっとこの繰り返しだ。
苛烈だが単調な攻撃を躱すか防ぎ、カウンター気味の一撃を浴びせる……普通ならば戦い方を変えるか撤退を選ぶが、シケーダは既に理性がないのか無意味な突貫を行うだけ。
致命的なダメージを与えているにも関わらず、倒れるどころか灰にすらないオルフェノクに痺れを切らしたレクスが、フィニッシュタイムに移行しようとドライバーに手を触れようとした時だ。
『……っ』
この場にいる全員の意識が途切れたような違和感が襲う。
一瞬の出来事であったが、レクスが視線を向ければシケーダの手にレプリカファイズのウォッチが握られている。
恐らく、今回の騒動を引き起こしたワールドハックが時間を止めたのだろう……レクスがそう判断するよりも速く、シケーダ・オルフェノクは地面を凄まじい勢いで掘り進める。
「待てっ」と制止する声が届くはずもなく、オルフェノクは地中へと姿を消してしまった。
「逃がすかっ!」
レクスが無謀にも追跡しようとする。
少なくとも、シケーダ・オルフェノクが事件に関わっていることを確信し、討伐するべく行動を起こす。
しかし。
【Exceed charge】
電子音声が響くと同時に、身体の動きが止まる。
強引に拘束されているような息苦しさを感じながらも、どうにかして首の向きを変えた瞬間。
「なっ」
右脚を突き出したファイズの姿が見えたと同時に、身体から受けた衝撃によって変身を解除させられた颯太の意識はブラックアウトした。
『この世界』では、全てのオルフェノクが討滅させられているわけではない。
少なくとも今のスマートブレインやオルフェノク対策課は衰弱したオルフェノクの保護や情状酌量のある場合を考慮して特別施設に収容される。
シュウジが面会をする相手もまたオルフェノクであり、今回の件で何か重要な情報を知っている可能性がある人物だ。
「何、俺に愛されたい女がいる?」
「誰もそんなことを言っていない」
白い服に身を包んだ気品のある男性の言葉にシュウジが短く両断する。
一方の男性『紺堂愛作』は「冗談だ」と返し、すぐさま本題へと話を切り出す。
「悪いが、ファイズ擬きの件なら俺も知らん。スマートブレインが開発したのはファイズ・カイザ・デルタの三本に、帝王のベルトは内一つが開発段階で中止し残りの一本は行方知れず……そこまでは君も知っているはずだが?」
「分かっています。だから、貴方に聞きたいのはイミテーションのことじゃありません」
コートから取り出したのはレプリカファイズと共に写っている蝉の幼虫を思わせるオルフェノク……シケーダ・オルフェノクだ。
何枚か写真を愛作に見せるも、その何れもシケーダがいる。
「我々は今まで確認されなかったオルフェノクを識別名『ヒグラシゼミ』としてイミテーションとの関係を調べています。ですが、俺には単なるオルフェノクとは思えない……だから」
「元ラッキークローバーである俺に話を聞きに来たと」
オルフェノク対策課は人を襲う可能性があるオルフェノクの調査も行っており、その情報量と監視によって対象を殲滅する姿から「葬儀屋」と皮肉られている。
その彼らでさえも知らないオルフェノク……だからこそ、シュウジは愛作に協力を願い出たのだ。
何処か子どものように見える蝉のオルフェノクの写真をしばらく見つめ、しばらく考える仕草を見せた後に口を開く。
「一つだけ、心当たりがある……あまり気分の良い話ではないがな」
「教えてください」
「……後悔だけはするなよ」
そうして、話が始まった。
悲鳴が、聞こえる。
焦土と化した見慣れた町が、家族が、すれ違うだけの人が、蹂躙されていく。
壊れる、ただ壊されていく。
消えることのない炎が絶望を糧に建物ごと燃え盛り、恐怖と悲哀の嘆きが広がり続ける。
「主人公の条件とは、悲しみの涙を流すこと……そんなことを誰かが言っていた」
呆然とする自分に話しかけるように、吟遊詩人が一人呟く。
手には槍のような凶器が握られ、先ほどまで刺し貫いていた『モノ』から引き抜く。
いつも着ていた制服が赤く染まる、打ち捨てられたモノは自分を庇った友達で……。
「大きな悲劇だ、悲しいことだ、最低最悪のバッドエンドだっ。苦しい、私は胸がとても苦しいよ」
そう言った吟遊詩人は今にも泣きそうな表情で、胸を抑える。
この惨状を引き起こしたのは彼であるはずなのに、まるで他人事のように涙を流している。
しばらく涙を流していると、思い出したように顔を上げる……既に泣くのをやめていた。
「おめでとう。君は主人公となった。復讐を胸に秘めて戦う孤高の戦士、素晴らしい……この想いを受け入れてこそ、私が望んだハッピーエンドに辿り着ける!」
純粋な笑顔を向け、血塗れの顔で微笑む顔はなんて狂気的だろう。
握られた両手には、懐中時計のようなウォッチが握られていた。奇妙な形をしたバックルも手渡されていた。何故か使い方も分かった。
「私に『喜劇』を見せてくれ」
その笑顔を必ず潰してやる。
探して探して見つけ出して、どんなに時間が掛かったとしても、どんなに世界を超えようとも。
怨みを、怒りを、報いを、自分たちが受けた理不尽を必ず……!
夢は、そこで終わった。
「っ。ここ……はっ」
気が付けば、知らない部屋にあるソファーで颯太は寝かされていた。
良い香りが鼻を刺激し、周囲を見渡せば自分に気づいた啓子が「おっ」と近寄って来る。
「気が付いた?」
「俺は、確か……」
「あー。思い出す前にお腹すいたでしょ」
「こっち」と軽く手招きされ、案内されるままに居間に向かうと姫香たちが食事をしていた。
胡瓜の糠漬けに豆腐とわかめの味噌汁、そして白米と生姜焼きといった定食メニューを頂いている。
そしてその席には……タクミ、即ち自分に必殺技を当てたファイズの姿もあった。
「お前……!」
「まずはお茶でも飲みな、別世界からのライダー」
今にも掴みかからんとする颯太を蔓久と唱也が諫める間も、タクミは気にすることなく急須から熱い緑茶を注いで彼に渡す。
流石に食事の場で暴力行為に出るわけにもいかないため、仕方なく来客用と思われる空いた椅子に座るとお茶を啜る、が。
「熱っつ!?」
適温どこから熱湯のお茶を噴き出しそうになるのを堪えるが、当のタクミは気にすることなく飲み干している。
「うん、丁度良い」
「そんなわけあるか、舌でも腐っているのか貴様はっ!?」
ヒリヒリする舌を姫香が別のコップに入れてくれた麦茶で冷やしながら怒りを吐き出すも、彼の態度を見て溜め息を吐くと、改めて席に座る。
「……何で俺を襲った?」
「話を聞きたかったのと、無駄に熱くなっていたから」
当たり前のように答えるタクミ。
彼の言い分としては、かつて通りすがった仮面ライダーと同じだと判断した彼は詳しい話を聞くために呼び止めようとしたが、肝心の相手は自分の声が聞こえていなかったため実力行使に出た。
行動の理由としては筋が通っているが、いきなり必殺技を叩き込まれた側からしたら釈然としない。
そんな視線に無視してタクミは食事を続けており、これ以上の会話は無駄だと悟った颯太も「頂きます」と一言告げて食事を始める。
「ふーん、僕たちの世界と混ざっているのか」
「あんまピンと来ねーなー。現に何処も変わっていないぜ?」
さして驚くことなく白米を食べるタクミと、実感を持てない唱也が味噌汁を啜る。
颯太が教えたのは異なる二つの世界が混ざっていることと、世間を騒がしている怪物の正体がファイズの贋作であること。
「けどよ、シュウジさんが言うにはイミテーションは何度も倒しているって聞いたぜ?」
「レプリカライダーの変身に使う道具は完全に破壊しなければ意味がない。確実に破壊するならオリジナルとなるライダーの力が必要だ」
ご飯をお替りする蔓久の問いに颯太も漬物を食べながら答える。
本来ならファイズのライドウォッチが欲しいが、ここで伝えたところで余計ないざこざが発生するのは目に見えている。
だったらレプリカライダーをファイズが倒し、事情を説明してブランクウォッチに力を注いでもらえば良い……今必要なのは力だ。
全員が殆ど食事を終えた時、啓子の携帯電話に着信が入る。
「もしもし。何でも屋『礒菊』……て、待雪さん?」
颯太は知る由もないが、相手は啓子たちの知り合いであるシュウジからだ。
しばらく応答を繰り返し、言われるままテレビを点けると、そこに映っていたのはレプリカファイズとシケーダ・オルフェノクの姿。
『住民の避難は終わっているっ、もし尾上君がいたら手伝ってくれるようお願いして欲しいっ!!』
「わ、分かりましたっ!タタ、タッ君っ!」
それを最後に通話を切った啓子は慌ててタクミの方を振り返ると、彼は何も言わずアタッシュケースを持って外に止めてあるバイクまで向かう。
慌てて颯太も彼の後を追うとバイクライドウォッチを起動させ、実体化した自分用に調整を施したライドストライカーに跨る。
「一緒に行くの?」
「当たり前だ、レプリカライダーは俺の敵だ」
「あっそ」
それ以上は何も言うことなく、二人はヘルメットを被ると自分たちの愛車で現場へと急行した。
『ガァアアアアアアアアッ!!』
「くっ!」
レプリカファイズが振り下ろした赤く発光する剣をデルタが防ぐ。
愛作からの話を聞き終えたタイミング部下から連絡を受けたが、そこで暴れていたのはヒグラシゼミとイミテーションの二体。
大規模な破壊活動を行う二体に挑むも、流石に分が悪く苦戦を強いられる。
『消えちゃえ』
レプリカファイズに意識を向けていたデルタの左脇に、シケーダの槍が迫る。
死角から放たれた一撃はスーツごと肉体を突き破る……ことはなかった。
「変身っ!」
【ARMOR TIME!】
【ガブッ!KIVA!!♪】
『がっ!?』
椋から借りたキバライドウォッチで変身したレクスがバイクの勢いを利用した低空キックで強引にオルフェノクの細い身体へ捩じ込む。
そんな彼から少し遅れて到着したタクミはヘルメットを外してバイクから降りるとベルト装着して変身コードを入力。
【Standing by】
「変身っ!
【Complete】
ファイズへと変身し、デルタの方へ走る。
そしてそのまま、鍔迫り合いをしていたレプリカファイズを蹴り飛ばす。
「大丈夫っすか?」
「面目ない、俺の未熟さ故だ」
「んじゃ。後は僕がやるんで」
そんな短いやり取りの後、右手を払うようにスナップしたファイズが大ぶりな斬撃を浴びせようとしたレプリカファイズの攻撃を避けて膝蹴りを鳩尾に浴びせ、雑に放った渾身のストレートで殴る。
身体全体を振るった一撃はレプリカファイズを大きく仰け反らせ、決定的な隙を見せると間髪入れずにバイクハンドルを抜き取ってファイズエッジの姿を露にする。
「はっ!」
『グォォォッ!?』
雑ながらも確実な一撃がレプリカファイズの身体を斬り裂き、蓄積していたエネルギーが火花を散らすように噴き出す。
一方のレクスは砲撃モードにしたジカンジャナックルでシケーダを狙い、今度は零距離で放ってシケーダを地面に転がした。
『やめろ触るな近寄るな。嫌だ嫌だ嫌だっ!』
「だったら大人しく倒されるんだな」
【KIVA! JIRIJIRI CANNON!!】
キバライドウォッチをジカンジャナックルに装着し、砲口を真上に向けて武器を掲げる。
瞬間、レクスを中心に地面が水面……仮面ライダーキバが持つフォームの一つ、バッシャーフォームが持つ疑似水中環境であるアクアフィールドを展開すると大量の水を纏った竜巻が発生。
両手でジカンジャナックルを添え、トリガーを弾いて巨大な水球を発射した。
強い水圧を放つ水球は不規則な軌道を描きながらも標的との距離を確実に詰め、やがて。
『ぐっぎゃああああああああっ!?』
シケーダ・オルフェノクを再び地面に叩きつけた。
一方のファイズもファイズエッジにミッションメモリーを装填してエクシードチャージを発動。
下から斬り上げるような動作で発生させた光波がレプリカファイズを捉えると、その身体は宙に浮いたような状態で拘束される。
「やぁあああああああーーっ!!」
地面を蹴って近づき、ファイズエッジを内側から外側に横薙ぎ一閃したファイズは更に下から逆袈裟に斬り上げた。
『ゴアアアアアアアアアアアアッ!!』
斜めに斬り上げたラインに沿うように「Φ」の記号が浮かび上がり、レプリカファイズが悲鳴と共に爆散。
変身者と思われる烏賊のようなオルフェノクがレプリカウォッチⅡを排出しながら倒れると、言葉を発する間もなく青白い炎を撒き散らしながら灰となって消滅する。
これで敵は満身創痍のシケーダのみ。レクスが止めを刺すべく一歩踏み出した時だ。
『……痛いっ』
短く、か細い声で呟かれる。
声の主は青白い炎が漏れ出ているにも関わらず、必死に身体を動かそうとする。
『痛い痛い痛い痛いっ!やめてやめてやめてごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ、もうぶたないで怒らないでっ!俺が悪かったです言いつけも守りますだからぶたないでください!』
蹲り、自分の身を守るような弱々しい姿にレクスの動きが止まる。
目の前にいるのは、自分の敵である怪人なのか……。
人を襲っていたのは間違いない、理性がないのも明白。だからこそ、このオルフェノクは自分が倒すべき悪なのか、僅かに躊躇する。
それは顔を背けたデルタも同じだった。愛作からの話が正しければ『彼』もまた、スマートブレインに弄ばれた被害者に過ぎないからだ。
「……僕がやる」
二人に迷いが生じたのを察知したのだろう。
ファイズは再び剣を構えるとレクスを押しのけ、止めを刺そうと腕を上げる。
その姿を見たシケーダが狂乱する。
『嫌だ嫌だ嫌だっ!ぶたれるのは嫌だ、無視されるのは嫌だっ!身体を弄られるのもお薬を打たれるのも全部全部全部全部!嫌だあああああああああああっ!!』
悲痛な鳴き声をあげて絶叫するシケーダの姿が、ヒトの姿へと戻っていく。
映像を巻き戻すように、人間の形を取り戻した先にいたのは、小さな少年だった。
髪の一部が白髪となり、入院着のような薄汚れた白い衣服のみを纏った身体にはいくつもの痣や火傷の痕跡があり、とても痛々しい。
だが、ファイズも動きを止めた。止めてしまった。
「ナツキ……?」
「死ぬのは、嫌だああああああああああああああああっ!!!」
幼い顔に紋様を浮かばせた少年……『日暮夏樹』の姿がシケーダ・オルフェノクへと再び変わる。
しかし幼虫のような歩兵態は、すぐに灰となって崩れ落ちると新たな姿へ覚醒する。
戦国時代の侍大将のような丈夫な鎧と翅のような陣羽織、頭部は蝉と兜が混ざり合った独特な形状へと変化している。
『シケーダ・オルフェノク 武将態』は自身の影に人間の姿を投影させる。
『死にたくないっ!死にたくないんだっ、何で俺ばかりこんな目に合うんだよ!?何で俺だけが苦しまなきゃいけないんだよっ!何でっ、何で誰も助けてくれないんだよっ!!』
「ナツキ、何で……お前がオルフェノクにっ?」
知り合いなのか、ファイズは動揺する。
しかし、シケーダは彼を覚えていないのか世界への理不尽しか叫ばない。その声は歩兵態以上の破壊力を秘めた音波となり、建物の窓ごと破壊している。
「くそっ!」
我に返ったデルタが鎮圧するべく、音声コードを入力しようとした瞬間。
世界が止まった。
意識のみが鮮明となっている状況に困惑する中、聞こえるはずもない足音がノイズの走った世界に響き渡る。
軽快で堂々とした足取りのまま、『それ』は姿を現した。
右半身が白で左半身が黒いアンバランスな衣装の上にSFチックな緑色の装甲が規則的に配置された歪な道化師。腰の横にはアナログ時計とデジタル時計をモチーフにした黒い人形と赤い人形が左右に吊り下げられている。
ノートを広げたような造形となっているシアンカラーのクリアな仮面には不気味な単眼が喜悦の色を宿し、口元には剥き出しになった牙が愉悦で嗤っているようにも見えた。
仮面には緑色で王冠のマークが刻まれており、顔の左側に記された『元となったライダーの名前』をデルタが呟いた。
「『
『その通り、この姿の名は「レプリカウォズ」!未来の創造者にして預言者が変身する戦士、の贋作であるっ!!』
自らの名を芝居がかったように告げた道化師……レプリカウォズは何処か粘着質な声色を響かせる。
そして、レクスにはその声に聞き覚えがあった。
全てが滅びゆく世界で聞いた忌まわしきあの声。怨嗟と悲嘆を、恍惚とした表情で受け止めていた『奴』の姿が重なった。
「貴様ぁっ!」
気が付けば、激情と共にレクスが飛び出した。
誰かが止める声を無視し、ジカンジャナックルを振り被るもレプリカウォズは全身から撒き散らした紙片を右手に束ねて罅割れた液晶画面を持つ戦斧を生成すると、軽々と横に吹き飛ばす。
叩きのめされたレクスは変身を解除され、呻く颯太の姿に彼は満足したような様子で喋る。
『私を覚えていてくれたんだね。あぁ素晴らしい、君は本当に素晴らしいよ少年……!』
単眼からの視線には侮蔑ではなく感動、自分の存在を記憶してくれたことへの感謝で溢れている。
一つしか存在しない眼球から止め処なく涙を零しながら、彼は自らが作り上げた喜劇を形にするべく共演者であり観客でもある彼らに両手を広げて声を響かせる。
『ありがとう、ありがとう!君たちのおかげで彼は「主人公」となれた!生に縋りつく少年は与えられた贋作の力を他者に与え、影武者たちを生み出した!』
「っ、まさか今までの事件は……!」
『そう、その通りなのだよ仮面ライダーデルタ!「本物」は彼だけ、贋作の力で最初に変身したのは成長が止まった少年一人だけっ!死にたくないと願った彼のために私がストーリーを作った……』
喜びを露わにするレプリカウォズは語る。
這いずった状態で停止しているシケーダの隣に立ち、彼は預言を告げるかのように朗々と。
『多くの影武者が集めたエネルギーは溜まり、準備はこうして整った……生を望んだ彼は王となり、死から逃れるためにありとあらゆる繁栄を奪い尽くす!』
レプリカウォッチⅡを高く掲げる姿を、誰も止めることが出来ない。
今この瞬間、彼らは主人公を引き立たせていた脇役でなければ悪役ですらない。
主催者が満足するだけの舞台を見せ続けられる、観客でしかなかった。
『九死に一生の「喜劇」を、私に見せてくれ!』
【FAIZ……!!】
再び起動したレプリカライドウォッチⅡがシケーダ……時間停止を解除された夏樹の近くに落ちる。
炎を思わせる青白いエネルギーが噴き出しているそれを慌てて拾うと、シケーダ・オルフェノクは貪るように取り込んだ。
巨大な口を開け、生ごみを漁る動物のように生を繋ごうと食べ物でない異物を必死に貪り、やがて完全に飲み込んだことで『変身』が始まる。
『あぁぁぁぁ……っ!』
赤紫色のエネルギーに包まれ、強烈なまでの赤い閃光が周囲を照らす。
その姿は骸骨のような身体に赤い血管のようなフォトンブラッドが張り巡らされたレプリカファイズだが、両脚には懐中電灯のようなポインターと銃口が装着され、右腕には錆びた銀の手甲がネジで強引に固定されている。
頭部にある黄色い複眼の内側に小さな眼があり、オルフェノクの命を象徴する炎のような装飾が施されているのが確認出来る。
名は『レプリカファイズ 災厄態』
本来の変身者と、レプリカウォッチⅡに凝縮された生命エネルギーによって誕生した完全なる形態。
世界を蹂躙せんと目に映るもの全てを喰らう破滅の象徴。
『おめでとう!君こそ、真の「仮面ライダーファイズ」だっ!!』
たった一人の拍手喝采を受けながら、唸り声を吐き出すレプリカファイズは両肩からスピーカーのような武装を新たに生やした。
鳴き声が印象的な蝉モチーフのオルフェノクがレプリカファイズになるのは公式が病気だったファイズサウンダーのパロディだったりします(笑)
今回の話で元ラッキークローバーが登場しましたがディケイドに登場したラッキークローバーとも関係があります。
まず、リ・イマジネーションのラッキークローバーは『四体の強いオルフェノクと、それを守護する候補生』で構成されています。
ディケイドに例えるならタイガー・オルフェノクが真のラッキークローバーで、残りの三人は彼を守護する部下或いは同士といった具合です。BLEA〇Hで例えるなら破面の十刃と従属管の関係です。
この構成にすることでラッキークローバーのメンバーが離脱しても、現時点で有力の候補生を空いた席に座らせることで四葉を欠けさせないようにしています。