仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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番外編です。


ANOTHER TIME 偽王たちの報告会

左右を向いても、上を向いても……灰色のオーロラが視界を埋め尽くす。

代り映えのしない光景を、ワールドハックの吟遊詩人が一人歩いていた。

その足取りは軽く、ともすればステップを踏んでいる姿に誰もが上機嫌だと判断するだろう。

実際、今の彼は機嫌が良い。

自分の見出した主人公が生きていて、ハッピーエンドに辿り着くべく奔走していることが分かったのだ……なんて幸運なのだと、声を大にして叫びたいほどに彼は歓喜していた。

しかし、自身の使命は疎かにしてはならない。

自分の存在意義を与えてくれた『覇王』の意に背くことなど決してあってはならないと、その忠誠心を否定することもしなかった。

故に吟遊詩人はオーロラの中を進み、やがて目的の場所へと辿り着く。

 

「……あぁ、相も変わらず殺風景だ。遊び心もなければ汚さも品もないっ」

 

顔を手で抑え、天を仰ぐように嘆く。

誰に聞かせるでもなく、舞台劇に登場する道化の如く大袈裟な身振り手振りで時空の狭間に生成された『会議場』に溜息を吐いた。

円卓にはそれぞれの玉座が一定の距離を保ったまま備わっており、足元には00~11の数字が大きく刻まれている。

中央の長い針と短い針から、まるで巨大な時計を連想させる。

玉座には既に現存するメンバーが腰を下ろしており、様々な視線が吟遊詩人へと向けられると彼も大人しく自身に刻まれた数字の椅子へと改めて座った。

 

「……では、本日の報告を行います」

 

短い針は「00」と刻まれた空の玉座を指したまま、長い針が「6」の玉座へと向けられる。

そこにいたのはパペット人形のロックスを装着したシックだ。

内容は至って簡単、自分たちが造り出したレプリカライダーが仮面ライダーに撃破されているという……分かりきったもの。

 

「ファスティは何処に?」

「色気がない場所に来る気はしないのとレプリカドライブを造っている最中だってさ」

 

オーロラに入る前に届いた通知の内容を吟遊詩人が聞いたシックがロックスと共に「後で絶対泣かす」と盛大な舌打ちをする。

しかし、今回の会議においては問題はないだろう。

本題は、仮面ライダーに気づかれないように支援していたレプリカライダーの『お披露目会』でもあったからだ。

 

「うぉー!ここが王様たちが集まるっていう会議場かっ!!」

 

快活な声が、似つかわしくない空間に響き渡る。

何人かが視線を「9」の玉座にいる青年……ナインの後ろへと視線を向ける。

グレーのスーツに清潔感のある白いワイシャツと成人男性らしき人物が周囲の視線に気にすることなく、人懐っこい笑顔をナインに向けたまま尋ねる。

 

「ナインッ!俺も王様になれれば、この場の全員とダチになれるってことだよな!?」

「もちろん」

 

優しく微笑みながらの簡素な回答。

それを聞いて満足したのか、男性は「よっしゃ!」と握った拳で軽く自身の胸元に二回ほど叩いた後、それを吟遊詩人たちの方へと向ける。

 

「必ずお前たちともダチになるからなっ!まずは俺の世界にいる奴らと全員、ダチになってみせるぜ……目指せ、青春のランナウェイだーーーーっ!!」

 

両腕を大きく天に向かって伸ばし、決意のままに熱く叫んだ彼に視線を向けずにナインは扉サイズのオーロラを出現させる。

要は「さっさと帰れ」ということだが、彼の小さな皮肉に気にすることなく男性は全速力でそのオーロラを潜って元の世界に戻っていく。

 

『おいおいおいおいおいおい、随分と煩い奴をレプリカライダーにしたなぁ?』

 

長針が「10」の数字へと向けられる。

呆れたような声で文句を零すのは、左右が違う色で塗り分けられた継ぎ接ぎのようなレプリカライダー。

「10」の玉座に座る彼の姿に、吟遊詩人は驚いた顔を見せる。

 

「『ワンゼ』……そういう君は久しぶりに姿を見せたね。過去の世界で時の王者に倒されたと聞いたが」

『おかげさまでな。ティードの馬鹿に乗せられて、そこら辺のアンチ野郎に憑依したのが最大の不運だよ……ま、覇王様がレプリカウォッチに俺の意識を映してくれなきゃ今頃おっちんでいたけどな』

 

ワールドラックの一人、ワンゼは自身の肉体を持たない。

レプリカウォッチに意識を宿した彼が変身しているということは、彼と波長の合う人間にようやく出会えたことを意味している。

そんな『喜劇』に内心、拍手と喝采を送りながらも長針は自動的にシックの方を指し示す。

 

「……王とは神、神とは救済の義務を果たす者。あぁ、どうか人類を救う資格を俺にください」

 

そう祈りを捧げるのは一人の男性。

シックの横で喪服に身を包んだ彼は白衣を羽織っており、まるで科学者のようだが丈の合っていない様子から宗教の教祖を彷彿させる。

虚ろな瞳で語る彼はその後も狂気的に祈りを捧げていたが、発言権は「11」の玉座に腰を下ろしている次のワールドハックへと変わる。

 

『トゥエムが敗北したことで「2」の玉座も空いてしまった。我らが覇王のため、我々は一刻も早く王のレプリカライダーを誕生させる必要がある』

 

お洒落なスーツを羽織った伊達男が長い脚を組んだ状態で口を開く。

しかし、その顔は紙袋に覆われており、目のある個所に開けられた穴から覗く双眸が彼らを品定めしている。

 

「一先ず、ファスティの動きが終わるまで待ちましょう。彼が成功しようと失敗しようとも、機を見計らって彼らにレプリカウォッチⅡを与えるように」

 

一先ずの方針が決定し、全員が席を立つ。

オーロラのカーテンが全員を覆い、役目を終えた会議場は再び姿を消した。

 

 

 

 

 

時間を刻む音だけが静寂に響く中、短針と長針が「00」を指す。

空の玉座に、一人の王が腰を下ろす。

 

『歴史は決して消えはしない。例え虚飾の過去であろうと、剪定された行き止まりの未来であろうと……』

 

ノイズに包まれた声が一人で語る。

その瞳に映るのは、マゼンダに彩られた破壊者の姿。

 

『ディケイド。お前は役目を終えるタイミングを見誤った』

 

無機質に響く声が糾弾する。

全てを繋いだ仮面ライダーは、旅の行く末を間違えたと。

次に映ったのは、歴史を刻んだ時の王者。

 

『ジオウ、貴様は生まれてはならなかった』

 

墓守の使命を果たせなかった愚王に向けられたノイズの声。

今ある時代を受け入れ、継承した仮面ライダーを覇王は否定する。

 

『この身体は取り残された骸、この記憶は焼け落ちた情景、この想いは奪われた時間』

 

なればこそ、取り戻さなければならない。

世界を支配し、我々こそが正しく生きる者たちを従えるに相応しい王なのだと。

 

『我が名は……』

 

自らを証明しようと告げられた名前は、濁流の如き歴史と時間によってかき消された。




 今回はワールドハックのお話。
 ふわふわした会話内容ですが、これはメタ的なフィルターを掛けているだけで実際のところは真面目に話し合ったりしています。
ワールドハックはレプリカライダーを使って王を作り出すこと。王となったレプリカライダーは世界を渡る能力に時間停止が変身前の状態限定で使えるようになります。同時に時計の数字を捩った名前を与えられます。
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