仮面ライダーロワ ~歴史を守護する仮面の王~   作:名もなきA・弐

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後編です。

※後書きにミニストーリーがあります。


補完計画コラボスペシャル! 戦士たちのパーリーナイト(後編)

しばらくの格闘の内、何とか二人を引き離した颯太が本題へと入っていた。

 

「はぁっ、はぁっ!……落ち着いたかっ?」

「ぜぇー、ぜぇー……!お、おおっ」

 

引き剥がされたことで冷静さを取り戻した天介が北斗からリモコンを奪い、次のシーンを再生した。

 

 

※※※※

 

 

倒れたクローズに跨り、レプリカクローズは攻撃を続ける。

 

『お前に分かるかっ!?目の前で日常が崩れていく様を見せられた俺の気持ちがっ!お前に分かるかっ!?訳も分からないまま妹が意識不明になった時の気持ちがっ!お前に分かるかっ!?ベッドから起き上がらないまま眠るましろの姿を見た俺の気持ちがっ!』

 

叫びと共に蒼炎が襲う。一撃一撃が地面を揺らすほどの威力であり、それは感情の高ぶりに呼応するかのように更に上がっていく。

それに対し、クローズチャージは……何もしなかった。

防御態勢すら取らず、ただレプリカクローズの拳を一方的に受けるだけだ。

ロワが加勢しようとするも群がるデッドファンタズムたちのせいで向かうことが出来ない。

 

『俺は絶対に許さないっ!あんなふざけた世界にしたお前たちをっ、妹をあんな目に合わせたお前たちをっ、俺はっ!俺はああああああああああああっっ!!!』

「経堂さんっ!」

 

レプリカクローズがレバーを回していく。

すると、右腕に龍の死骸を模した蒼いエネルギーが発生し纏わりつく。

その炎を、無防備なまま攻撃を受け続けるクローズチャージ目掛けて振り下ろした時だった。

しかしそれは受け止められた。

他ならぬ、クローズチャージ本人にだ。

 

『なっ!?』

 

レプリカクローズが驚く。

今のは最大の一撃だ。なのに目の前にいる敵はそれをあっさりと受け止めた。

そもそも何故動ける?あれだけの攻撃を受けた奴が何故……!?

動揺する彼の視界に映ったのは、迫り来るクローズチャージの頭部と鈍い衝撃。

 

『がっ!?』

 

仰け反ったレプリカクローズから離れた彼は立ち上がり、震える足を殴って強引に止める。

そして、ゆっくりと息を吐く。

 

「……分かった」

『何っ?』

「俺は馬鹿だ。お前に何を言えば良いか分からない。でもお前の気持ちは分かった」

 

経堂東馬は馬鹿だ。

相手に気を利いた言葉なんて思いつかないし、どう行動に移したら良いかなんて全然分からない。

だから。

 

「俺は、めっちゃ痛いお前の気持ちを受け止めた」

 

何も分かってもらえないのは、辛い。

自分の気持ちが伝わらないのが、言葉や顔に出せないことが一番辛い。

だからこのやり方を選んだ。冷酷な仮面に隠したままの彼を知りたいから、抱えている苦しみや悲しみを知りたいから……あえて全部受け止めた。

本気の拳は嘘を吐かない。格闘技をやっていた彼なりの考えだ。

 

「お前のことを救うことは出来ない。俺には無理だ」

 

「だけど」と続けながらビルドドライバーを代わりに巻き付ける。

しかし装填するのはクローズドラゴンではない。拳を象ったオレンジ色……まるで燃え上がるマグマのようなデバイスに黒いボトルをセットしスロットに叩き込んだ。

 

【CROSS-Z MAGMA!】

「お嬢は笑顔に出来る。お前たちの悲しみも苦しみも、お嬢たちが全部笑顔にしてやる」

 

熱い音声が響き渡る。

そして、レバーをゆっくりと回してナックル型の『マグマライドビルダー』が背後に出現する。

内部には溶岩型のエネルギーが煮え滾っているのが見える。

 

「まずは、お前の中にある何とかウォッチをぶっ壊す」

【ARE YOU READY?】

 

覚悟を問いかける音声に応えるように、クローズチャージは自身の掌に拳を叩きつけて再び叫ぶ。

 

「変身っ!」

 

そこから大量のエネルギーがぶち撒けられた。

それはスーツと装甲を溶かし、足元から八頭の龍が伸び上がると瞬時に冷めて全身に固着する。

 

【極熱筋肉!CROSS-Z MAGMA!!】

【アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!】

 

ライドビルダーが後ろから押し割ることで変身が完了した。

そこに現れたのは灼けた鋼鉄や溶岩を想起させるメタリックブラックの装甲にオレンジのスーツ。そこからは白い煙が立つ。

 

「力が漲る」

 

この姿は、めっちゃ力が沸き上がってくる。

 

「魂が燃える……!」

 

この力は、心を熱くさせる。

焼き尽くすのは彼を縛る龍の贋作のみ。

 

「俺のマグマが、迸るっ!!」

 

この熱は、誰にも止められない!!

仮面ライダークローズマグマが、その感情を爆発させて直進した。

 

 

※※※※

 

 

「カッコ良いな、流石クローズ」

「しれっと自画自賛するんじゃないよ。まぁ、熱いシーンなのも否定しないけど」

「実際にめっちゃ熱いからな。変身解除するとちょっと焦げた臭いがする」

「言っておくけど、物理的な話じゃないからな?」

 

微妙に噛み合わない会話をするベストマッチ組を横目に、颯太は溜息を吐く。

さっきからビルドリ組のシーンしかないからだ。

 

「そんな顔するな颯太、次はお待ちかねのシーンだから。それじゃ、VTRどうぞ」

 

 

※※※※

 

 

その言葉を聞いた瞬間、ビルドは覚悟を決めた。

まだまだ彼は未熟だろう。けれど確信を持てた。

彼は、いや彼らはきっと……誰かの明日を創るために戦える戦士になれる。

ベストマッチな奴らの片割れに出来ることを、ビルドは知っている。

変身を解除し、懐に入れていた色のないビルドウォッチを取り出す。

それは優しい光を灯すと元の赤と青の配色に戻り、完全な復活を果たした。

天介は傷だらけの颯太にビルドウォッチを差し出す。

 

「お前……」

「やっと分かった気がする。どうして『俺』が自分の歴史を託せたのか」

 

まだ未熟な少年に、あの戦士に託したのは……きっと『戦う理由』を見つけたからだ。

だからこそ『天介』は自分の力を、主人公の役割を彼に継承したのだ。

 

「俺たちの物語を……受け継ぐ覚悟はあるか?」

 

それは、あまりにも重い力。

差し出したその手に、颯太は答える。

 

「あるかそんなもん」

「……てっ!ここまで来て遠慮するんじゃないよ」

 

苦笑いする天介に、別れを決めたような面持ちの天才に対して彼は言う。

 

「俺は、誰かの物語を継ぐつもりなんてない。知らない歴史を押し付けられるのは御免だからな」

 

「だから」と彼は、自分の想いを告げる。

 

「繋いでやる。お前たちが今も戦っていることを、例え歴史から消えたとしても……お前たちが仮面ライダービルドの登場人物だったことを繋ぐ」

 

それだけ一方的に言うとビルドライドウォッチを奪うように受け取り、ベゼルを回転させてスイッチを押し起動する。

 

【BUILD!!】

 

ビルドの顔が浮かび上がったそれをレクスライドウォッチと共に装填。

怒りで地団太を踏むレプリカビルドを見据えながらも、隣にいる天介に呼びかける。

 

「行けるか、天才科学者」

「……たく。最っ悪だ!」

 

完全に空回りする形になるも、何処か吹っ切れた天介は頭を掻くと、ラビットボトルとタンクボトルを振ってからビルドドライバーへと装填。レバーを回して変身準備へと入る。

同時に颯太もロックボタンを解除して大きく回した腕をバックルに持っていく。

 

【ARE YOU READY?】

 

覚悟は良いかと問い掛ける。

聞かれるまでもない……二人はそれに応えるように叫んだ。

 

「「変身っ!!」」

【ARMOR TIME!】

 

目の前にフルボトルのようなビジョンが現れ、その中には、右手にドリル武器を装備ししたビルドを模した赤と青のアーマーがポーズを取っている。

それはすぐにパーツ状に分解されると変身したレクスの身体へと装備される。

最期にローマ字で「BURUDO」と記された白い複眼が収まると同時に、天介の方も変身が完了した。

 

【BEST MACH! BUILD~!!♪】

【鋼のムーンサルト!RABBIT TANK!!】

【イェーイ!】

『あなたたちはぁ……!!』

 

レプリカビルドが憎悪の瞳で睨み唸り声をあげる。

それに気にすることなく、仮面ライダービルドとビルドアーマーへと変身したレクスは不敵に名乗る。

 

「俺たちはビルド」

「創る・形成するって意味のビルドだ……よく学習しとけ」

 

ビルドとレクスはレプリカビルド(平和に狂う破壊兵器)に宣戦布告するように、言い放つ。

 

「「勝利の法則は決まった!」」

 

 

※※※※

 

 

ビルドの継承シーンに「流石俺」と自画自賛する天介に困ったように笑いながらも、椋は烏龍茶を一口飲んで疑問を口にする。

 

「正直天介さん、ライドウォッチ継承したら歴史が消えると思ってましたよね?」

「序盤でウォッチを渡すの色々屁理屈捏ねて拒否していたしな」

 

豚トロを食べながら睨む颯太に天介が言葉を詰まらせる。

 

「ほら、くろすと本編の俺は歴史が消えるの覚悟してたし……その記憶を見たら勘違いするだろ?」

「だったら僕たちの話も聞いてくださいよ……」

 

最もな意見に反論出来ず、無理矢理話題を変えるためにリモコンをスクリーンに向けた。

 

「さーて……おっ?次は北斗と四谷さんのシーンだな」

「よっしゃあ!くろすとじゃ時間軸の都合で出番なかったからなっ、グリスの活躍シーンだ!刮目しろっ!!」

 

 

※※※※

 

 

「だからさっさと掴めって言ってんだろうがっ!いつまで手こずってんだ!」

「届かないと言っているだろっ!同じことを何度も言わせるなクソガキッ!」

 

閉じ込められた牢屋の中で、二人の大声が響き渡る。

セリフから言い争っているのが分かるが、その光景は一癖も二癖も変わっていた。

北斗は自身の長身を必死に伸ばし、肩車のような姿勢で、その上にいるのは当然というべきか西哉だ。

さっきから必死に脱出の糸口を探すべく行動を開始しているのだが如何せん上手くいかない。

二人がいる牢屋は普通のとは違い、出入り口は天井にある扉だけなのだ。

仮面ライダーになれない二人にとっては、そこだけが唯一の脱出口……そのため必死に手を伸ばそうとしているのだが、全てが無駄に終わっている。

 

「ここまで必死に背を伸ばしながら、むさい三十路のおっさん肩車している俺の気持ちを考えろやっ!良いからさっさとしやがれ!!」

「まだ二十代後半だっ!お前こそ年長者の年齢ぐらい正確に把握しろクソガキッ!!」

 

唯一届きそうな方法である肩車をしているのだが、如何せん届きそうで届かないのが現状である。

野郎二人の肩車は両者にとって屈辱以外の何物でもないらしく、こうして口喧嘩しながらも実行に移しているのだが喧嘩の内容が何とも大人げない。

しかし。

 

「「うおおおおおおおっっ!!?」」

 

そもそも肩車程度で脱出可能なら、最初からそんな牢屋などに押し込めたりしないだろう。

肩車は呆気なく崩れ落ち、そのまま地面へ背中を叩きつけた。

 

「くっそ……もう少し身長活かせクソガキッ」

「うっせーダボカスッ」

 

子ども染みたやり取りをしながらも、二人は天井にある出入口を睨む。

仮面ライダーに変身さえすれば、あんな出入口に届くことなど容易いが、今の彼らにはない。

いくらネビュラガスを注入されたとしても、ボトルがなければその力を十二分に発揮することも出来ない。

万策尽きた……そも思った時だ。

 

「おんやー?なーんか負け犬の臭いがすんなぁ?」

 

聞き慣れた声、何処か幼い印象を持つが彼らにとっては不愉快にも等しい声。

ブラッドスターク……赤羽大地だ。

因縁浅からぬ少年の登場に北斗と西哉は睨みつける。

 

「てめぇ……何しに来やがった」

「おいおい。随分な言い草だなぁ、ドルオタ君よぉ」

 

警戒し、敵意を込めて見上げてくる二人に大地は余裕の表情を崩さない。

それどころか、嫌な笑みを濃くすると後ろに組んでいた両手を解く。

その手の先にあったのは……。

 

「「ドライバー……!」」

 

そう、彼らのスクラッシュドライバー、そしてロボットスクラッシュゼリーとクラックフルボトルなどのアイテム一式。

何故彼が持っているのか分からないが、この場から脱出するのに必要な物だ。

 

「どうした。お前らが今欲しいのは、これだろ?」

「いります!」

「なら、それ相応の対価が必要だよなぁ?」

 

にやついた笑みと共に、大地は人差し指を地面へと向ける。

見下ろすような態度と動作で、相手が自分たちに何をさせたいのかすぐに分かった。

 

「はっ、土下座かよ」

 

北斗が露骨に顔を顰める。

元々ヤンキーだった彼にとって、土下座とは相手に舐められていることと同義であり絶対にやりたくない行動の一つだ。

 

「んな見っともない真似が出来っか…」

 

その言葉は最後まで言えなかった。

隣にいる西哉が正座し両手を地面に触れていたからだ。

 

「……て、待て待て待てっ!正気かよおっさん!!」

「おっさん言うな!……頭一つ下げてベルトが戻るんだろ?安いもんだ」

 

慌てて止める北斗に対し西哉は何の躊躇もなく両足と両手を地面に着けている。

しかし、いくらベルト奪還のためとはいえ、敵であり気に食わない相手に頭を下げようとしている。

仲間であり、腐っても年長者である彼にそんなことをさせるのを許すわけにはいかない。にやつく大地を睨みつけようとする北斗を制したのは、外ならぬ西哉だ。

 

「覚えておけ、クソガキ」

「あっ?」

「大人になれば、出来ることが増えるだけでなく、気に入らない相手とも嫌でも付き合うことになる。そんな奴に頭を下げる時だって来る」

 

彼は続ける。

その顔は真剣そのものであり、その瞳は自棄になっている者の眼でもなければ短絡的に考えている訳でもない。

 

「大人が頭を下げるのは、いつか届く自分の想いのためだっ。今は届かなくても、今は辛くとも、その先にある想いのためにっ!大人は頭を下げ続ける!!」

「おっさん……」

「頭に刻み付けろクソガキどもっ!これが俺の……OTONAのDOGEZAだああああああああああああああああっっっ!!!!」

 

ここから先は西哉本人のため、何があったのか割愛させて頂こう。

しかし彼が頭を下げたことで、結果として二人は大地から変身アイテム一式を取り戻すことに成功し、天介と椋たちがいる場所へと駆け付けることが出来たのだ。

ちなみにOTONAのDOGEZAを見た北斗と大地は後にこう語ったという。

 

───「何か普通」───

 

 

※※※※

 

 

「……て、待てやごらぁっ!!」

「うるさいよ。何だよ一体?ちゃんとした活躍シーンでしょうが」

「何処がだぁっ!野郎二人の合体シーンをリプレイして何の意味があるこのマッドサイエンティストがぁっ!!」

 

映像を見終えた北斗と四谷が天介に掴みかかった。

何食わぬ顔で首を傾げる彼の胸倉を四谷が掴むも、それを見た椋と颯太が必死に止める。

ちなみに東馬は何食わぬ顔で大量の肉を焼いて食べており、あろうことか白飯のお代わりを注文している。

揺さぶられている天介はそれでもなお、言い訳を続けようとする。

 

「いやだって、これが一番印象に残ったし…」

「ざけんなっ!活躍シーンってのはな、こういうのだよっ!」

 

リモコンを奪い取った北斗と西哉が再生を開始した。

 

 

※※※※

 

 

「激昂っ!!」

『きゃあっ!?』

 

強烈な右フックがレプリカグリスの胴体に炸裂した。

先ほど以上の威力を秘めた一撃が彼女の身体を怯ませる。

その隙をグリスは見逃さない。

 

「激情っ!激闘ぉっ!!」

【TWIN!】

 

左手に装備したツインブレイカーの二つのスロットに装填するのはパンドラボトルの一つであるパレットフルボトル、そして不死鳥の成分を秘めたフェニックスフルボトル。

その瞬間、ツインブレイカーを中心にその身を不死鳥の炎で纏った彼は翼を羽ばたかせてレプリカグリスへと迫る。

エネルギーを凝縮させた黒い砲弾を全て焼き溶かしながら、ツインブレイカーに桃・藤・青・黄・緑の淡く優しい……パステルカラーのエネルギーが宿る。

 

「オラァッ!!」

『ぎっ!?あああああああああああああっっ!!!』

 

ツインブレイカーの一撃がレプリカグリスの装甲を抉り抜いた。

激痛による悲鳴と共に火花を撒き散らしながら勢いよく地面を転がる。

 

『何でっ、何で私が押されてるのっ?私の方が、遊び慣れてるはずなのにぃっ!!』

 

二本のフルボトルによるツインブレイクの直撃を受けながらも、煙を上げて起き上がったレプリカグリスが叫ぶ。

無理もないだろう。仮面ライダーグリスの力と培った戦闘経験を持つ自分が押されている理由が分からない。

駄々を捏ねるような様子に、息を整えたグリスが答える。

 

「てめぇは……戦う理由を持ってたか?」

『はぁっ?』

 

グリスの問いに、レプリカグリスは首を傾げる。

……弥生北斗と石狩彗星。この二人は北都の武装部隊に所属し人体実験に志願した。自身の身を顧みずに力を求める点は恐らく共通しているだろう。

しかし。

 

「俺はっ、推しのアイドルのためならっ。彩ちゃんたちパスパレの努力や笑顔を護るためならっ!!富士山だろうが諏訪湖だろうがネビュラガスだって吸ってやるよっ!!!」

『何を言って…』

「守るもんがねぇてめぇにっ!!俺が負ける訳ねぇだろうがよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

助走からの痛烈なドロップキックの直撃で再びレプリカグリスが大きく後退するも、追撃と連撃が止まることはない。

グリスが、北斗が戦うことを決めたのはPastel*Palettesの身柄保護と……天介たちには言っていないがスカイウォールの発生で両親たちと離れ離れになった子どもたちの生活のためだ。

大切な人を守ると誓ったからこそ、彼は自ら兵器になることを決めた。

だが、レプリカグリスこと彗星は違う。彼女が自衛隊に入ったのは力が欲しかったからで、デッドアナークの候補者に志願したのも戦場で全てを蹂躙するための玩具を手に入れたかったからだ。

心の火を燃やし続けるグリスと違ってレプリカグリスには何もない。

守るべき民も、守るべき思想も何もかも存在しない破壊だけの機械。

心火すらも燃やせない贋作が、本物に後れを取るのは当然だった。

 

【SCRAP FINISH!!】

「俺の前に……ひれ伏せダボがああああああああああああああああああっっ!!!」

 

ドライバーにあるレンチ型のレバーを再度押し込んで電子音声を鳴らしたグリスがレプリカグリスの顎を殴る。

アッパーカットで空高く打ち上げられた贋作よりも高く、勢いよく噴出した黒いヴァリアブルゼリーを使って跳躍した彼は赤い複眼を輝かせながら右脚を突き出した。

 

「オラアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

『嘘っ、嘘よっ!私がこんなっ、嫌ああああああああああああああああああっっ!!!』

 

迫るスクラップフィニッシュの一撃を回避出来ず、直撃を受けたレプリカグリスは身体を貫かれて爆散。

何かの部品と共にレプリカウォッチが地面に落ちると同時に、それは小さく爆ぜるように消滅。

戦闘が終わったのを確認したグリスが着地すると一息つく。

 

「やったぜ、彩ちゃん……パスパレのみんなっ」

 

それは間違いなく、心火を燃やし切ったグリスの勝利宣言だった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、ローグVSレプリカローグは……。

 

『はっはっはぁっ!!どしたどしたどないしたぁっ!そんなもんですかい四谷の坊ちゃんよぉっ!?』

「ぐっ!」

 

レプリカライダーが両腕に生やした無数の棘から繰り出される攻撃によってローグが押されていた。

異常な防御力を持つ両者だが、実力が拮抗しているのと互いに隙という隙がないため決め手に欠けている状況なのだ。

一方のローグも反撃を行っているのだが、強靭な防御力を持つレプリカローグは意に介することなく攻撃を続けている。

 

「……ふっ!」

『おっと!』

 

距離を取るべく放った回し蹴りをレプリカライダーは難なく跳躍して回避する。

今更それで倒せる相手出ないことは良く分かっている。レプリカローグが自身を軽んじていることも充分に理解している。

だからこそ、それが狙いだった。

 

【FUNKY BREAK!!】

『はっ?ぐおおおおおおおおおおおおおおっ!?』

 

クロコダイルクラックフルボトルを装填したネビュラスチームガンによる必殺のエネルギー弾が着地した贋作の身体を吹き飛ばし、ダメージによる皹が入り始めた。

自身の持つ防御力に高を括っていた結果であろう

しかし。

 

『まだやボケエエエエエエエエエッッ!!!』

 

ダメージよりも格下と侮っていた相手に不意を打たれたことが屈辱だったのだろう。

怒りと殺意を滾らせたレプリカローグが自身の下半身を凶暴なワニの頭部へと変形させ、鋭い牙を持ってローグへと食らいつく。

 

「がぁっ!?」

 

四肢を噛み千切ろうと言わんばかりに力を加えられたことで、その身体に火花が散り内部のエネルギーが暴発する。

このままではローグの消滅も時間の問題……。

しかし、彼には奥の手がある。

 

「はぁっ、はぁっ……ぐっ!」

 

掌にあるのは、紫を基調に流れ星のレリーフが刻まれたフルボトルだ。

ローグは何とかそれを使おうとするも、激痛に苛まれているせいで手の中からそれを落とさないように耐えるのが精一杯だ。

しかし。

 

『所詮は落ち零れのヒーローごっこやったなぁ!……それにしても、あの時見た猫耳嬢ちゃん、ガキの癖にええ身体してたなぁっ』

「……あっ?」

 

完全に勝利を確信したレプリカローグの言葉に、ローグの雰囲気が変わった。

しかし、それに気づかない彼は我欲に満ちた欲望をぶちまけ続ける。

 

『へっへへ!丁度ええわ。あんたを噛み砕いたら今度はあの嬢ちゃんに「色々」と癒してもらわなっ!!』

 

その一言が……己の保身のためだけに軽いプライドを捨て続けた贋作の言葉が、彼の覚悟に火をつけた。

 

「おいチンピラ」

『ああっ?』

「手負いの相手を前に油断するのは、ド三流のすることだ……!!」

 

挑発とも取れる言葉に、怪訝な様子でレプリカローグが振り向いた瞬間。

 

【FUNKY SHOT!!】

 

必殺技の電子音声と眩いばかりの光、そして両目への衝撃が襲い掛かった。

 

『ぎっ、ぎぃあああああああああああっ!!?』

 

両目から伝わる激痛にこの世の物とは思えない絶叫が周囲に響き渡る。

勝利を確信し、意識が向いている間にローグがスチームブレードと合体させたライフルモードに、装填した流れ星フルボトルの銃撃がレプリカローグの眼を撃ち抜いたのだ。

変形を保てなくなったことでローグは拘束から解放されると、両手で顔を抑えながら地面で悶えるレプリカライダーを見据えながら、震える身体を鼓舞し立ち上がる。

 

「はぁっ、はぁっ……彼女は俺がっ。この国はっ、俺たちが取り戻すっ!!」

【CRACK UP FINISH!!】

 

地面を蹴って走り出し、軽く跳躍して両脚を獲物へと突き出す。

激痛が引いたレプリカローグがよろめくように起き上がるころには、もう遅かった。

 

『ひっ!あぐっ、あ……ひぎぃっ!?』

「はあああああああああああああああああああっ!!」

 

ワニの顎と牙を象った紫色のエネルギーが宿る強烈な鋏み蹴りが炸裂。

悲鳴をあげる敵を気にすることなく、身体を捻って地面に叩きつけるように回転する。

宛ら回転して獲物を捩じ切る『デスロール』を彷彿させる回転の一撃を繰り返し、その勢いのまま遠くの壁へと吹き飛ばした。

 

『ぐがぁっ!?』

 

再度叩きつけられて致命傷を受けたレプリカローグは受け身を取ることすら出来ず地面へと落下。

全身に皹が入った箇所から漏れ出すエネルギーを手で抑えながら必死に耐えようとする。

 

『がっ、ああ……バカなっ。何で俺がっ……!!』

「……俺は、生まれてからずっとコンプレックスとプライドを持っていた」

 

ローグ……四谷西哉は家族に捨てられた男だ。

あらゆる才能に恵まれず、かといって父親に正面から反抗することも出来ず、ただただ才能へのコンプレックスを膨らませるだけでプライドも捨てきれなかった。

だが、仮面ライダーになったことでそれらを全て捨てた。

家族よりも、人々と国を守る大義のために戦うことを決めたのだ。

 

「捨てたプライドの重さが違う、出直してこい」

『くっそがあああああああああああああああああああああっっ!!!』

 

納得出来ない敗北理由に、レプリカローグは屈辱と怒りの悲鳴と共に爆散した。

 

「……ありがとう」

 

この場にいない、しかし力を貸してくれた彼女の想いが宿ったパンドラボトルを握り締めると、天介たちの加勢に入るべく動くのだった。

まぁ、無理して必殺技を放ったせいで限界が来ていた脚がもつれ、顔面から転んでしまったことに関しては目を瞑ろう。

 

 

※※※※

 

 

映像を観終えた北斗と西哉がドヤ顔する。

「どうだ」と言わんばかりの様子で天介の方を見るも……。

 

「すいませーん。特上カルビ六人分お願いしまーす」

「「おぉいっ!?」」

 

椋たちと普通に食べていた。

しかも、流し観しながら追加の肉を注文する始末である。

 

「何人の活躍シーンにコメントなく肉焼いているんだ理系っ!」

「観てたって!」

 

慌てながらも、詰め寄る北斗に対して天介は「ほら」とテーブルにある電子時計を指差す。見れば、時間は後五分とない。

 

「食べないのか北斗?」

「食べますよ!食べますけど……あーもう自棄だ!全メニュー制覇するぞおっさん!」

「おっさんやめろ!丁度良い……秘伝のタレの効果、見せてやる!」

 

東馬の言葉に毒気が抜かれた北斗は大袈裟に溜め息を吐くと、自家製秘伝のタレを注ぎ直した西哉と共に網の上で躍る肉へと箸を伸ばすのだった。

その後は、途中でダウンした西哉を覗き、サイドメニューのデザートまで完食し、見事全メニューを達成するのだった。

なお、今回のMVPは底なしの胃袋だった東馬と、実は健啖家だった椋なのも追記しておこう。

 

 

ビルドリスペシャル これにて閉幕!




おまけ ただいまムーンサルト
宴も終わり、店を出てそれぞれが自分たちの帰る場所へと向かった。
東馬はハッピースマイルなお嬢様を迎えに徒歩で全力疾走し、椋と颯太もDOLLSのメンバーと合流すべくその場を後にし、西哉と北斗はマネージャー『京橋まど香』が自家用車で迎えに来たので、どっちが後部座席に乗るかで喧嘩しながら収容されていった。

「あんな食ったのに、何でまだ元気なんだよあいつら……」

残った天介は、呆れた溜息を吐きながら足を動かした。
ゆっくりと歩きながら、ふと夜空を見上げる。
この場所からだとスカイウォールは見えない。
だからこそ、強く輝く一番星が見える。白い息を吐き、星を眺めながら天介は一人帰路に着く。
今日はビルドラボには戻らない。
いや、戻るつもりだったのだが事前に義妹から小言と同時に家に帰ってくるように言われたため、こうして徒歩で歩いている。
ふと思う。
もしも自分が記憶喪失でなかったのなら、もしも自分が『羽沢天介』でなかったとしたら……。
自分はこの街にいたのだろうか。平和に暮らせているのだろうか。彼女たちとは出会えていたのだろうか?
不意にそう考えることがある。そんなIFを口にすれば、可愛い妹分たちから睨まれるのでしばらく口にしなかったが、今夜はそんな想いが頭に過った。
そこまで考えて、やめた。
今自分はこうして生きている。仮面ライダーとして戦っている。物語が続いている……。
そんなことを考えながら歩き、やがて天介は足を止めた。
目の前にある喫茶店は今の天介の実家であり、家族がいる場所だ。
少し躊躇いながらも、鍵の開いている扉をゆっくり開けた。

「あ……」

いた。
両親は既に寝ているのだろう。テーブルに上半身を預けて寝落ちしている義妹だけがいた。
帰りをずっと待っていたのだろう。寝間着姿のまま彼女は規則正しい寝息を立てていたが、外から流れた冷気で目を覚ます。
眠たげな眼を擦り、顔を上げれば義兄の姿が映る。

「わわっ」

彼女は慌てて立ち上がり、髪を整えて立ち上がる。
そして彼の顔をじっと見つめる。
何を言おうとしているのか、天介はすぐに分かった。
少しだけ逡巡するも、下手な誤魔化しは効かないことも理解していたため、観念した彼はようやく口を開いた。

「……ただいま」

天介は「ただいま」という言葉が苦手だ。
記憶を失くした、得体のしれない自分がこんな優しい家族の一員になって良いのか……『自分』を見つけてからも、それだけがずっと心の中にあった。
それはブラッドスタークに敗北してから徐々に大きくなった。
怪物を生み出し、人間とは違う身体にされ、挙句の果てに彼女たちの『いつも通り』を奪った自分が、どの面下げて帰れる。
どんな顔して帰れば良いか、分からなかった。
だけど不思議とそれを言うのは、何故か悪い気はしなかった。





兄さんは、「ただいま」という言葉を使いたがらない。
私たちに気を遣っていることはすぐに分かった……だけど、そこを強く言うことが出来なかった。
それを言えば兄さんが持っている『何か』が壊れそうな気がして、深く関わることを恐れた。
それでも私は兄さんを家族として迎えたい。だから今度は、私たちが『あなた』を支えたい。
この想いが『家族』じゃなくなったとしても、私は言いたい。

「……おかえりっ」

私は、この言葉が好きだ。
この時この瞬間だけ、あなたの家族として迎え入れることが出来るから。
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