もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
あの翌朝……俺が来た時には、もうルカとアリスが居た。
「うぃーっす……」
「お前、遅かったな……今まで何してたんだ……?」
「寝てた。」
「寝てっ……!?」
あのラザロとの激しい口論の後、ルカとアリスは二人で話し合い、これからを誓い合うというシリアスな事をしていたのだ。
なのに、こいつは……
「悪いなぁ……色々と、疲れちまってたんだ……ほら、ず〜っと休んでなかったから……」
「……そうか……」
「それにしても……」
ヴィクトリーとルカは、神鳥の卵を見上げた。
「ついに、神鳥の羽化か……」
ルカは六つのオーブを取り出し、卵の前に並べた。まるで共鳴するように、各オーブの輝きが増す。
「それっぽくなってきたな……」
「次はどうすりゃあいい?」
「後は、呪文を唱えるだけだ。二人の祭祀が、呪文を唱えながら……あっ。」
アリスは、驚きの表情のまま固まってしまった。
「ど、どうしたんだ……?」
「神鳥羽化の儀式の際、二人の祭祀が魔素を卵に送り込まねばならん。つまり、魔物が二人必要というわけなのだ。」
「……人員が。」
「それ、結構厄介じゃないか?なんで、そんな難題を黙ってたんだよ……」
「仕方ないだろう、今まで忘れていたのだから。うち一人は余がやるとして、もう一人は……」
「この辺の魔物に協力してもらうとか……」
「余が魔王として命令すれば、逆らいはしないのだろうが……そういうのは、ルカが好まんのだろう?」
「う〜ん、どうしよう……」
「……いやっ!」
ヴィクトリーが手を叩き、ニヤリと笑う。
「ここにいるぜ……?魔物がもう一人……」
「え……?」
ヴィクトリーは手を後方に向け、エネルギー弾を放った。
「きゃあっ!?」
小規模な爆発が起きて、煙の中からごろごろとゴミ箱が転がってきた。
「こ、こいつは……!」
そう……残念なラミアこと、アミラが登場したのだ……
「……おめぇまだゴミ箱に居たのかよ……」
「イリアスクロイツは潰れたんだから、隠れる必要は無いんだぞ……」
「出られなくなったのよ。」
「そ、そうか……」
「それにしてもヴィクトリーの気の察知、なかなかの領域に至ったわね。まさかこの私の気が読まれるとは……」
「おめぇは気のコントロール出来ねぇだろ。」
ヴィクトリーは半笑いで、頭を掻きむしった。
「ともかく、こっそりと話は聞かせてもらったわ!私も魔物のはしくれ、その儀式の祭祀も出来るはずよ!」
「……アミラにも出来るのか、アリス……?」
ルカはアリスにおそるおそる聞いてみる。彼女は少し微妙な顔をした後、アミラの方を向いた。
「確かに、儀式には問題は無いが……良いのか、アミラ?相当に体力を消費するぞ?」
「構わないわ!ダーリンのためならば!」
アミラは、生き生きと返事をする。迷いのない、まっすぐな返事だ。
「……その前に、ここから出して。」
「あいよ。」
ヴィクトリーは、アミラをゴミ箱から引っ張り出した。
「とにかく、ありがとうアミラ。それじゃあ、儀式は任せるよ。」
「俺からも礼を言っとくぜ。サンキューな。」
すでに、オーブの設置は終わっている。あとは、二人の祭祀が呪文を唱えるだけなのだ。
そして、儀式が始まった……卵に向かい、アリスの言葉をそのまま反復するアミラ。
その様子を見ながら、ヴィクトリーはルカの隣に来る。
「……こうして、おめぇと俺がこうやって同じ方向を向き合うのも少なくなるかもな。」
「……あぁ、まぁな……」
儀式が進むにつれ、卵からエネルギーが溢れ出ていく。
「……おぉ……」
「孵るみたいだな……」
そして……
「いざ目覚めよ、ガルーダ!」
「いざ目覚めよ、ガルーダ!」
祭祀役の二人が、そう命じた時だった。
卵の殻が割れると同時に、眩い光が広がり……大きな妖鳥が、姿を表していた。
「わぁっ!お、大きい……!」
「で、でけぇ……!」
「ふむ、無事にガルーダが羽化したようだな。こいつは余達を親として慕い、言う事を聞くはずだ。」
「くえぇ……」
ガルーダは、同意するようにぱたぱたと羽根を振る。どうやら、すっかり懐いているようだ。
「……なんだか、意外と可愛い奴だな。」
「ところでアリス、かなり体力を消耗するって言ってたけど大丈夫なのか?」
「ふん、問題ない。一億二千万の体力から10吸われたところで、誤差程度にしかならん。」
「そして……11の体力から、10を吸われたのが私。」
白目を剥いたアミラは、すっかり消耗し切ってしまっていた。
「うわっ!?アミラ!?」
「あはは……よく頑張ったよ……大丈夫なんか?」
「私は大丈夫、意外にしぶといから……それより……私達の子に、名前を付けてあげないと……」
「その言い回しを次にやったら残りの1を俺がぶっ潰してやる。」
ヴィクトリーは、ボキボキと指を鳴らす。
「私の名前……アミラにちなんで、ラー〇アというのはどうかしら?」
「ダ、ダメだよ!何だか分からないけど、それは絶対にダメだ!」
「そうだよなぁ……ド〇クエじゃあるめぇし……」
「ダメだっつってんだろ!!」
ルカはアミラの入っていたバケツでヴィクトリーの頭をカチ割った。
「ぎゃあっ!?」
ヴィクトリーは、頭を押さえて悶絶する。
「……ガルダでいいのではないか?ガルーダだから……」
「う〜ん……それでいい……のかな?」
まんま、種族名な気がするが……まぁ、ドラ〇エのラー〇アよりはマシだ。
「じゃあ、お前の名はガルダだ!」
「くえぇ!くえぇ!」
名前を付けてもらい、ガルダも嬉しそうだ。
「じゃあアミラ、俺が宿屋まで連れてってやる。」
「そんな必要なんてない……アミラはクールに去るわ。」
そう言って、アミラは地面を這って行ってしまった。
「スピードワゴン?」
ヴィクトリーは彼女の背を見送りながら、意味不明な事を呟く。
「……思えば、あいつにも色々やらせちまったなぁ……」
「その恩に報いる為にも、僕達が人と魔物が共存できる世界を築かないとな……行くぞ、二人とも!」
「あぁ!」
「とうとう、魔の大陸だな……」
「くえぇ!!」
静かに頷くアリスと、待機するガルダ。
「では、乗るぞ。」
アリスは、ガルダの広い背にひらりと飛び乗った。
僕も続いて、おずおずと背中に乗っかってみる。ふわふわとして、意外に心地がいい。
ヴィクトリーも飛んで、ガルダの背に立つ。
「でも……このまま空を飛んで大丈夫なのか?振り落とされたりしないかなぁ?」
「大丈夫だ、神鳥だぞ。」
「何が大丈夫になるんだよ……」
……まぁ、神鳥なのだから大丈夫なのだろう。
「じゃあ、魔の大陸に出発だ!行くよ、ガルダ!」
「……」
ルカは呼びかけたが、ガルダは黙ったまま。
「ガルダ、魔の大陸まで我等を運ぶのだ。」
「くぇぇぇ……!」
ガルダは高らかに一鳴きすると、ぱさぱさと羽根をはためかせた。
「あれ、何か僕って……えっと……」
「あはは……アリスの方に懐いちまったみてぇだな……」
なんだか納得出来ないが……そんな事を言っている場合ではない。
ガルダは僕達を背に乗せ、一気に急上昇したのだった──
「うわぁ……飛んでる、飛んでるよぉ!」
「……当然だろう、神鳥が飛ばんでどうする。」
「うわ……あれ、ゴルドポート?ちっちゃ!海、広っ!こんなに海って広いのか……?潮風がぁ!潮風がぁ!」
空を体験したことのない少年ルカ。その景色は記憶に変わり、過去へと刻みつけられ……まるで、飛行機に初めて乗った子供のようにはしゃいでいた。
「……うるさい、少し落ち着け。」
「そうだぞ、子供じゃあるめぇし……」
一方、自前で飛べる魔王とサイヤ人は感動が薄いようだ……まぁ、当然か。
「それにしても、すげぇ速度だな……俺でもこんなに速くは飛ばねぇぜ……」
「だいたい、どのぐらいで魔の大陸に着くんだ?」
「ゴルドポートからだと……一時間ぐらいだな。」
「なにっ!?けっこうはえぇな!」
「そんなすぐなのか!?さすが神鳥だな……」
「くえぇ!」
僕達の賛辞に反応したように、ガルダは満足そうな鳴き声を上げる。
そして……たちまちのうちに、魔の大陸が見えてきた。
高らかな山に囲まれ、どんよりと雲に覆われた暗黒の大地。旅の終着点……魔王城のある、最後の大陸。
「いよいよだな……」
「あぁ……」
あらためて、二人の心身に緊張感と闘志が漲ってきた。この長い旅の最終目的地が、いよいよ目の前なのだ……
「……なんだ!?何か来るぞっ!?」
「……!?」
ガルダの背に乗り、魔の大陸に近づいていく僕達……そして、魔の大陸からも何か飛来物が接近してきたのだ。
それは、あっという間に目視できる地点まで来たのだ。
「な……ドラゴン……!?」
「いや……こいつはワイバーンだ……!」
ワイバーン娘はガルダの背に着地し、二人を睨む。
「まさか、ガルーダに乗った勇者達が来るとはな……しかし私は、魔王様直属の防空──」
「だぁあーっ!!」
ヴィクトリーが飛び、ワイバーン娘の顔面に両足蹴りをかました。
「あまいっ!」
ワイバーン娘はそれを避け、ヴィクトリーの方に向く。彼は浮きながら、彼女に向かっている。
「魔王様直属の戦士……不意打ちで先手をとれる奴でもねぇみたいだな……」
「……」
魔王の直属……?
ふと、アリスの方を見てみると……羽の中に、もぞもぞと隠れてしまっているらしい。
「空を飛べようが、空の戦いでこの私に敵いはしまい!みせしめとして、徹底的に陵辱してやろう!」
「へっ……なめんなよ……?」
飛べない僕がこの戦いに参戦しても……まぁ、負ける事は無いにしろ苦戦は強いられるだろう。ここは、ヴィクトリーに任せるか……
「だあぁーっ!!」
ズドドッと放つ連続の蹴り。その全てをくらいながら、ワイバーン娘は反撃する。
「うわぁっ!?」
ギリギリで避けるが……次の攻撃で、ヴィクトリーは叩き伏せられてしまった。
「くっそ……!!」
「ほぉらっ!」
ワイバーン娘はヴィクトリーを掴み……そのまま、海面へとぶっ飛ばした。
「うわぁあああーーーっ!!!」
「ヴィクトリーーーっ!!!」
ドッパァアアンという、物質が海面を打つ音が響き渡る。
「さぁて、次はお前だ……!」
「く……!」
僕は身構える。あの立ち回りを見るに、生半可な物理攻撃は通用しないらしい……
「……気力を……温存……」
「……?」
……不意に、サラマンダーが囁いてきた……気がした。
「……ん!?」
ワイバーンは、ふと下方を見る。すると、ヴィクトリーがもう上がってきたではないか。
彼は彼女と同じ目線まで来てから、ニヤリと笑う。
「悪いなぁ、俺はスロースターターなんだ……今の一撃で、完璧に目が覚めた……」
そう言いながら道着を破り、界王拳を使った。
「……ほう……?」
「決めさせてもらうぜ……!」
ワイバーン娘とヴィクトリーはぶつかり合い、激しい空中戦を繰り広げた。
「か、かってぇ……!!」
痺れ続ける拳、重い攻撃……まるで、ショベルカーを相手に殴り合ってる気分だ。
「く、くそ……!!」
「ふふ……どうした?人間……!!」
ワイバーン娘はじわじわと力を強め、ヴィクトリーを追い詰める。
「ま、まずい……!!」
「……今こそ、私の力を使うのだ!」
「え……?わ、分かった……!」
サラマンダーに言われるがままに、サラマンダーの力を解放する……すると、ルカの剣に業火が宿った。
「……!?」
「なんだ……!?」
突然にルカから放たれた気で、戦闘が止まる。
「こ、これは……!」
ルカの剣から、灼熱が出ていた。
「私の力により、お前の闘争心はフルパワーに上がった。気力が回復し、闘志が爆発しているだろう。」
「あ、ああ……それに、剣が熱い……!」
「そのまま剣技を繰り出せば、技に紅蓮の炎が宿るだろう。それにより威力を増した刃は、あいつの鱗をも引き裂くはずだ。」
「あぁ……!!」
ルカの闘争心が爆発し、気も荒ぶって熱風が吹き荒ぶ。
「おっしゃあ、俺も……フルパワーだぁあああーっ!!!」
ヴィクトリーは10倍界王拳を使い、ルカと並んだ。
「ふふ……戦うぞ……ヴィクトリーっ!」
「応よ……!」
「ほう……作戦を変え、二人でか……その方が無難だな……だがっ!!」
ワイバーン娘は羽根をブンッと振り、ソニックブームを放った。
「かぁっ!!」
それはヴィクトリーの気合によってかき消される。そして、その正面にルカが飛んできた……
「死剣・乱れ星っ!!」
刹那、ワイバーン娘の体中に斬撃が刻まれた。
「ぐぉっ……!?」
ワイバーン娘は揺らぎ、よろめくがすぐさま反撃にかかる。しかし間にヴィクトリーが入り、彼女の一撃を止めた。
「なにっ……!?」
「悪いな!もう俺もフルパワーだぜ!」
ヴィクトリーはそう言うと、ワイバーン娘の羽根を蹴り上げてから渾身のかめはめ波を放った。
「ぐぉあああっ!?」
「行くぞルカっ!」
「おおっ!」
二人のコンビネーションで圧倒されるワイバーン娘。トドメに二人の強烈な一撃がクロスし、彼女を貫いた。
「そ、そんな……申し訳ありません、魔王様……!」
全開パワーのダブルアタックで、ワイバーンは封印された。
そして二人はガルダの背中に着地し、ハイタッチを交わした。
何とか火の力と界王拳で、ワイバーン娘を倒す事ができた。
今のところ、他の魔物が接近してくる気配はないが……高らかに空を飛んでいれば、また強敵が襲いかかってこないとも限らない。
「よしガルダ、このまま魔の大陸に着陸だ!」
「……」
ルカが呼びかけたが、ガルダは動かない。
「ガルダ、このまま着地するのだ。」
「くえぇ……!」
アリスの指示を聞き、ガルダはそのまま着陸する……
「……何で僕の言う事は聞いてくれないの……?なんだか、軽く傷つくんだけど……」
「フラれちまったな……あははっ!」
「……ドアホめ……」
そんな事を言っている内に、ガルダは地面へと降りていった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい