もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「よし、レミナに行ってみよう。」
「……」
魔の大陸の西部にある荒廃した町、レミナ……別世界から来た俺には無関係だが、この目で見てみたい。
「あぁ……」
アリスも、浮かない顔で頷くのだった。
こうして一行は、レミナへと向かったのであった……
「……こりゃあ……」
見渡す限り、ひたすらに広がる廃墟。まるで遺跡のように、あちこちに建物の残骸がある。また、人骨があちこちで野ざらしになっていた。
まるで、百年以上も前の遺跡のようだ。
「ルカ……三十年前、ここで大虐殺が……」
「あぁ……」
「虐殺のみならず、建造物の破壊も徹底しているな。まるで、住民が暮らしていた痕跡を消し去ろうとしたかのようだ……」
「いったい、誰がこんな事を……」
「……ゆるせねぇ……!!」
心を痛めながら、一行は歩を進める。かつて大通りだったと思われる道も、すっかり草に覆われていた。
「……見てくれ、アリス……あの骨……」
建物跡のそばに転がっている骸骨……その骸骨から下は、蛇のように長い。あれは、間違いなくラミアの骨だ。
「やっぱり、魔物も殺されてるんだな……いったい、ここで何があったんだ……?」
「さぁな……ただ地獄みてぇな事が起こったに──」
ここで、何か妙な気を感じ取った。
「二人とも、何かいるぞ……!」
アリスも気付いたようで、警戒した。
「ああ、分かってる……!」
「何だってんだ……?」
その時、廃墟の陰から奇妙な生物が飛び出してきた。
「……!?」
「な……なんだ、こいつ……!?」
目の前に現れたのは、見た事もない異形のモンスターだった。人間の女、カラスの羽根、獣の体、猛禽類の足、何だか良くわからない尻尾……それらが入り交じっている生物。そして、どこか無機質な感じがする……
「……こいつ……!」
「ああ……!」
精霊の森にいたキメラドリアード……あいつにそっくりだった。
「……このような魔物、余は知らん。」
アリスの言葉も、以前と同じものだった。
精霊の森を抜ける際に、僕達の前に現れたあのキメラドリアード……異質で異様な雰囲気が、そいつに酷似しているのだ。
なんで、こんな奴がレミナに……!?
異形の生物が口を開けると、無数の長い舌が伸び、ルカ達の方へ向いた。
「人間、妖魔、排除……」
おもむろにそいつは地面を蹴った。次の瞬間、ルカの眼前にまで迫る爪──
「ぐっ……!?」
彼はそれを、何とかかわした。
「排除する……」
そいつは重心を置いてから尻尾でスナップを効かせ、ヴィクトリーに振り下ろした。
「なにっ!?」
それを、腕をクロスしてガードした。ガードしても、腕がビリビリと痛む……
「い、いってぇ……!!」
「油断するな、二人とも!こいつ、身体能力が極めて高いぞ!」
「分かってる……!」
今の立ち回りを見れば、そんな事は嫌でも分かる。
「……おい……アレ……!」
不意に、ヴィクトリーが草むらに指を差す。その草むらから、もう一体、異形生物が現れた。
「まさか……二体もいるのか……!?」
「いや……二体どころではないぞ!」
確かに、気を感じてみれば……レミナの廃墟の至るところに、同じ気配が点在していた。この周囲には、謎の魔獣が大量に存在しているようだ。その数、百を超えるほどに──
「ど、どうなってんだ……!?」
「狼狽えてる暇も無いぞ!」
アリスは素早く疾走し、正面にいる異形生物の群れに飛び込んだ。吹っ飛んでいく異形生物を、尚も追撃していく。そして、彼女らはどっかに行ってしまった。
「おい、アリスっ!」
向こうには、更に多くの気がするのだ。さすがのアリスも、謎の魔獣百体以上を相手にするとなると無傷ではすまないはず。
二人はアリスを追いかけようとしたが……二体の異形生物が、僕達を囲んだ。
「攻撃対象、人間男性のみ……良質の遺伝子……補給……」
「ぐっ……」
こいつを倒さなければ、アリスの所には行けない……仕方ない、ここは相手をしてやるか……
「人間男性のうち一人サイヤ人……サイヤ人に狙いを絞る…… 」
「!?」
「何だと……!?」
今、確かにこの異形生物はヴィクトリーの事を『サイヤ人』と言った。こいつがサイヤ人である事は、僕達しか知らないはずなのに……!?
「お、おい!お前の世界にもこんな奴はいるのか!?」
「居るわけねぇだろ!俺が知りてぇ!」
そう言っている間に、ヴィクトリーを取り囲む異形生物は三体になっていた。
「ちっ……やるしかねぇか……!」
「……くっ、来い!」
二人は構え、気を解放した,
「……こいつの名前は……」
「キメラビーストとか、そんなものでいいんじゃないか?」
キメラビースト……なるほど。こいつらの容姿にぴったりな名前だ。
「おっしゃあ、来いっ!」
ヴィクトリーはいきなり10倍界王拳を使い、飛び上がった。
「排除する……」
「サイヤ人……」
「遺伝子……」
彼を追うように、三体も翼を羽ばたかせて飛び上がる。そして、空中で三体とぶつかりあった。ドカドカとぶつかり合う拳、爪、角、尻尾、頭突き……
「この爪……っ!」
ヴィクトリーは爪の攻撃を頬にかすらせ、キメラビーストの顔面をぶん殴った。
「まんま、猛禽類の爪じゃねぇか……!冗談じゃねぇ、モロにくらったら骨ごと持ってかれちまう……!!」
二体がヴィクトリーの背中に強襲し、攻撃を放った。だが攻撃は彼の姿をすり抜ける。
「……古い手に引っかかるんだから。」
残像拳で、二体の背後に回ってから着地する。三体もそれに合わせて着地した。
なんとか、三体のキメラビーストを正面に置くことに成功した。正面切って戦うというのなら、お手の物だ。
「ふっ!」
ヴィクトリーとキメラビーストはぶつかり合い、凄まじいラッシュの打ち合いを始めた。だが、流石に多人数を圧倒するのは難しい。ここは、防御と待ちに徹する。
「うぐ……ぐぐ……!」
キメラビースト達の猛攻に耐えながら、チャンスを待つ。そしてその絶好の好機は、意外にも早く来た。
「排除……」
「サイヤ人……」
「危険種族は直ちに排除する……」
三体が、同時に爪を振り上げた。
「……そこだぁっ!!」
ヴィクトリーは目にも止まらぬラッシュで、三体の頭を打ち抜いた。その頭がすっ飛び、地面に転がる。そして体だけ地面に倒れ、「じわぁ……」と血溜りが広がった。
「……呆気ねぇな……」
ルカの方も終わったらしく、ヴィクトリーの横に来る。
「何だったんだ、あの魔獣は……」
「不気味だ……動きは野生そのものなのに、生物らしさが全く無ぇ……まるで、人造人間みてぇだった……」
「人造人間……?」
「……いや、説明してやってる暇もねぇぞ。アリスの所に行かねぇと。」
「そうだ、アリスは……?」
風を感じてみると──アリスは無数の敵を巻き込み、段々と遠ざかっているようだ。どうやら、多数の魔獣を相手に暴れ回っているらしい。
「こっちか……!」
「みてぇだな……!」
アリスを追って、少し進むと……キメラビーストの屍が、三体ほど転がっていた。彼女の気に乱れはなく、かなり優位に戦っているようだ。
「おいおい、魔王なのに……いいのかよ……」
「……こいつらは、お前の思うような魔物なんかじゃねぇ……おそらくは、人工的に作られた魔物だ……俺達や魔物をぶっ殺すためにな。」
「なに……!?」
人造人間が、孫悟空をぶっ殺すために造られたように。魔人ブウが、全世界をぶっ壊すために造られたように──このモンスターは、人間と魔物をぶっ殺すために造られたのだろう。そんな意図が、この魔獣の気から感じられた。
「な……何で!?」
「分かんねぇ!今は考えるだけ無駄だ!」
そんな会話をしながら、アリスの暴れている方向に進むと──赤髪の白衣の女性が、一瞬だけ視界に映った。
「おい、見たか!?」
「ああ……あいつは……!」
慌ててその方向に駆け出しても、もはやその姿はない。しかし、あの白衣姿には覚えがあった。北のお化け屋敷ではクロムに技術を提供し、リリィの館にも姿を見せ──そして、グランゴルドの魔導研究所に未知の技術を提供した謎の女。確か、そいつはプロメスティンと言ったか。
そいつが、なぜここにいる……?
「まさか、レミナの生き残りなのか……?」
「馬鹿言うんじゃねぇ、ここが滅んだのはもう三十年も前だろ!?生き残りなら、こんな所うろつく意味がねぇ!」
「……だな……」
むしろ、レミナが壊滅した原因の方に関わっていると考えた方が自然だ……
「……っ!?」
「な、なんだ……!?」
不意に、背筋に悪寒が走っていた。周囲に、何か異様な存在がいる。
「ちっ……出てきやがれ!」
「そうだ、出てこい!」
二人は構えながら、気配の方に向かって叫んだ。この奇妙な雰囲気にも、やはり覚えがある……
そして、『それ』は姿を現した。
「おいおい、こりゃあ極めつけだぜ……!」
「こ、こいつは……あの……!」
以前に遭遇した、精霊の森での異様な魔物、キメラドリアード……
の、今度は食虫植物バージョンだ。キメラドリアード・ボアって所らしい。
「……」
やはり前の奴と同じく、寄生された人間部分は感情のない視線を投げかける。そして体中に寄生した食虫植物が、ざわざわと蠢きを見せた。
「おいおい……食虫植物はカナン姉妹で腹いっぱいだぞ……!」
「食べ放題ってわけか……」
いや……カナン姉妹どころでは無いぞ。かなりヤバそうな相手だ……これは、気を抜いた瞬間にあの世行きと考えても良さそうだ。
などと考えていたら、キメラドリアード・ボアは攻撃体制に入った。
「来るぞっ!」
「みたいだなっ!」
二人は気を解放し、攻撃を避けた。
消化液の滴るツタが地面に叩きつけられ、地面の石畳が溶けた。
「ひ、ひえぇ……!なんて奴だ……!」
「くらったら、即死か……!!」
戦士達はそう漏らしながら、まずはヴィクトリーが顔面に肘打ちした。キメラドリアード・ボアはよろめき、視線を戻す……
「てやぁっ!」
今度はルカの薙ぎ払いに当たり、ぶっ飛んだ。
「だぁっ!」
ヴィクトリーは跳び、回転して彼女の脳天に踵落としを決めた。
「……」
脳天に強烈な一撃を食らったにも関わらず、無表情をキープする。そのまま、彼の前にウツボカズラを向けた。
「なんだ……うわっ!?」
そのウツボカズラから芳香が噴き出し、咄嗟に避ける。
「はぁっ!」
ルカはそれを切り落とし、彼女に無数の斬撃を叩き込んだ。
「……死剣・乱れ星。」
ズバズバと切り刻まれ、キメラドリアード・ボアは後退する。
「かめはめ波っ!!」
ダメ押しにヴィクトリーは、かめはめ波を放った。直撃し、大爆発を巻き起こす。
「……」
爆煙の中から、例のツタが伸びてきた。
「うわっ!?」
「くそっ!?」
二人は避けながらそこら辺の建物の陰に隠れる。
「……いや、避けろルカっ!」
「えっ!?」
ヴィクトリーに言われるがままに体を傾けると、ツタは壁を貫通した。
「なに……!?」
「あいつは、気の察知が出来るんだ!」
ヴィクトリーがそう言うと、壁から無数のツタが貫通し、二人に襲いかかった。
「くっ!」
「ちぃっ!」
そのツタを避け、切り、いなし、対応していく。
「来る気か……!?」
「え……!?」
キメラドリアード・ボアは、壁を蹴破ってこちらに向かってきた。
「なに……!?」
「ほらな……」
どうやら、相手も本気らしい。ここは、もう全力でやる他はない。
「……おっしゃあ、遊びは終わりだ!」
ヴィクトリーは10倍界王拳を使い、突進した。
「……」
「だぁあああーーーっ!!!」
ヴィクトリーの両方の拳をハエトリグサとツタで受け止め、押し合いっこをする形をとった。
「だぁらぁあああーーーっ!!!」
「……」
バリバリと地面を引き裂きながら、ヴィクトリーの方が力勝ちし、壁にまで追いやった。
「がぁっ!!」
そして、渾身のボディブローを数十発も放った。ミスブロー無し、マッハの拳が、彼女に連打されたのだ。
「どうだっ!?」
「……」
彼女はフラフラになりながら、反撃した。
「よっしゃ、ルカーっ!!」
彼はギリギリで躱し、後退する。
「うぉおおおっ!!!」
ルカはサラマンダーの力を解放し、ヴィクトリーと交代するように突っ込んだ。そしてふっと消えてから、彼女に背を見せるように現れる。
「……死剣・乱れ星。」
そう言いながら剣を納めた時だった。灼熱の剣技で放たれた無数の斬撃が、彼女の全身に走った。
「……!」
「トドメ……!」
ヴィクトリーはよろめく標的を見据え、バーニングアタックを放った。バーニングアタックは見事直撃し、キメラドリアード・ボアを完全に消し去った。
「ふぅ……」
「はぁ……はぁ……何だったんだ、こいつ……?」
謎の魔獣に加えて、植物系の寄生モンスター。レミナは、こいつらに襲われて壊滅したのだろうか……
「……おい、ルカ。」
「ん……?」
ヴィクトリーは、白い羽根を拾い上げた。見ると、薄く光を放っていた。
「なんだこりゃ?」
「ここに住んでたハーピーの羽根かな……?」
しかし、この羽根からは神秘的な力が感じられる。思わず、首を傾げた時だった。
「……」
全身血まみれのアリスが、僕達の目の前に現れたのだ。
「わーっ!?」
「血まみれじゃないか!」
「ふん、全て返り血だ。奴等に負わされた手傷など一つも無いわ。」
「そりゃすげぇ……」
流石は、魔王。
周囲に散在していた魔獣達の気配も、すっかり消えて無くなっている。
「それにしても、どうなっているんだ……?得体の知れないモンスターはうようよいるし、変な白衣の女まで……」
「おまけに、こいつだ。」
「この羽根は……」
アリスは、ヴィクトリーの手から羽根をひったくった。
「あぁ、ここに落ちていたんだ。なんだこれは?」
「……これは、天使の羽根だ。」
「なに……!?」
「天使だって……!?天使の羽根が、どうしてこんな所に……?」
「……」
アリスはしばらく押し黙り……そして、二人へと視線を向けた。
「これ以上、町をうろついていた所で無益だ。どうせ、あの妙な魔物どもしかいるまい。そろそろ、ここを後にするぞ。」
「でも……何も分かってないじゃないか……」
「あぁ……あの合成魔獣、寄生植物、天使の羽根……謎が謎を呼んでるだけじゃねぇか。」
「だからといって、ここをうろついていても徒労に終わるだけだ。あの奇妙な魔物共を、根こそぎ退治したいのか?」
「確かに、そうだけど……」
やはり、妙だ。そもそも、最初にここに来たいと言い出したのはアリスのはず……
「……もしかして、何か分かったんか?」
「……貴様らが知るべき事ではない。」
「何でだよ、僕達は……」
「……貴様らは、世界を平和に導くためにここまで来た。違うか……?」
アリスは、ルカの言葉を遮ってそう言い放った。
「……」
「そ、そうだけど……」
「ならば、人と魔物がいかにして共存するかという事のみを考えろ。ここは、何十年も前に滅んだ町なのだ。貴様らの目的にも、理想にもなんら関係はあるまい。」
「……」
いいや、関係ない事はない。『レミナの虐殺』が、人間と魔物の決裂の決定的な引き金となったのだ。
「今のアリスに何を言っても無駄そうだ。ここは、全てが終わってから来ようぜ。」
「……そうだな。」
ヴィクトリーの言う通り、今は考えるだけ無駄だ。
いったい、ここで何が起こったのか……そして、アリスはなぜ黙秘を続けるのか……
不審と疑念を抱えながらも、一行はレミナを出たのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい