もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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罪人の封牢

「じゃあ……罪人の封牢ってところに行ってみようかな?」

 ルカはレミナを出て、そう言う。

「……そんなに行きたいのなら、貴様らの好きにしろ。どうせ、そう遠くはない場所だしな。」

「俺は賛成だぞ!」

「しかしあそこは、魔物さえ近付かん地。何を好きこのんで、そんな場所に行きたがるのだ……?」

「何でだろう、自分でも分からないんだけど……」

 まるで、導かれるような感覚とでも言おうか。その場所に行かなければならない気がして、仕方がない。

「ルカがそう言うって事は、何もねぇ訳じゃねぇはずだ。」

「やれやれ。魔の大陸にまで来て、貴様らのドアホぶりに振り回されるとはな……」

 愚痴るアリスを引き連れ、一行は東へと向かったのだった

 

『罪人の封牢』とやらまで、そう遠くはない……そしてその途中、一体のモンスターに出会った。

 ヴァンパイア……そう、吸血鬼だ。

「この大陸に、人間がうろついているなんて珍しいわね……しかも、美味しそうな男……くすっ。」

 二人を上から下までまじまじと眺め、ヴァンパイアは笑みを浮かべる。

「くっ、ヴァンパイアか……」

「吸血鬼か……厄介そうだな……」

 ヴァンパイア……血や精を糧とする非常に有名なモンスター。強大な魔力を秘めた、上位妖魔の代表格的存在である。さすがは魔の大陸……こんなモンスターがうろついているなんて……

「ふふっ……私に血を吸われたい?それとも、精を吸ってもらいたい……?望むなら、りょうほ──」

「いただきっ!」

 ルカはヴァンパイアの懐に踏み込んで、魔剣・首刈りを放った。ドズッと首に剣が突き上げられ、彼女は宙に浮いた。

「ちぇっ、先んじられてやんの……」

 ヴィクトリーは気を収め、ルカとの戦いを見ることにした。

「ぐぇっ!?」

 不意打ちをかまされたヴァンパイアは着地し、ルカを見た。

「む、むぅ……不意打ちとは……」

「……連れが得意だからね、僕も真似してみた。」

 二人はぶつかり合い、攻撃を打ち合った。

「てやぁっ!」

「はっ!」

 振り下ろされたルカの剣をヴァンパイアは受け止め、ルカに掌を見せる。掌から気弾が放たれるが、彼はそれを避けた。

「ちっ!」

「これでどう!?」

 ヴァンパイアは手首でスナップを効かせ、ボディブローを放った。ルカはすんでの所でガードしたが、後退してしまう。

「あはっ!ほらっ!ほらぁっ!」

 ヴァンパイアは回転しながらエネルギーボールを放った。ルカはそれを切り弾きながら、彼女に迫った。

「だぁっ!」

 突きでの一閃が、直撃する。

「……っかはぁっ……!!」

 ヴァンパイアは着地し、体制を立て直す。

「……どうやら、本気を出す必要があるみたいです……ねっ!」

 そう言って衣服の胸部分を破き、胸を露にした。

「いや、何でだよ。」

 ……多分、俺が上半身裸になるのと同じだろうと思うけど。

「じゃあ、僕も全力だ!」

 ヴィクトリーのツッコミを横目に、ルカは風と土の力を解放した。

「うふふ……」

 ヴァンパイアの目が、妖しく光った。だがルカは目線を伏せ、突っ込む。

「だぁっ!」

 そして、彼女の顔面に両足蹴りして、ぶっ飛ばした。

「くっ!」

 ぶっ飛んでいる途中で回転し、壁を蹴ってルカに飛び蹴りをした。

「はぁああっ!!」

 彼は土の力を胸に集中させ、胸筋で受け止めた。

「なにっ!?」

「……ぐっ!」

 ヴァンパイアは、逆にぶっ飛ばされる。ルカはその隙に、土の力を全解放した。

「壊斧・大山鳴動っ!!」

 剣に剛力を込め、凄まじい兜割りを放ち、ヴァンパイアを真っ二つにした。

「これが……勇者の力……!?」

 真っ二つになった彼女は消散し、コウモリの姿になった。

「こんな強敵がうろついているなんて、とんでもない所だな……」

 ルカはそう言い、剣を納めた。

 ……と思えば、大地の向こうから大柄のモンスターが近付いてきた。

「次から次へと……息を吐く間もないみたいだね……」

「らしいな……」

 ルカは下がり、ヴィクトリーが指をボキボキ鳴らしながら、その魔物と対峙した……

「こりゃあ……」

「こんなところで、人間が何をしている……?この私に犯してほしいのか……?」

 黒褐色で、牛のようなモンスター……ベヒーモス。最上級の魔獣系モンスターで、その迫力は圧倒的だ。人間が足を踏み込まないような所に居るので、ほぼ伝説化してる魔物らしい。

「……俺の好きなタイプだ……!」

「へぇ……じゃあ丁度いいじゃないか、私の生殖相手にしてやるよ。お前の子種は、イキがよさそうだ……」

「それは今度の機会にしておく……!」

 ヴィクトリーは地面を蹴り、渾身の力でベヒーモス娘の顔面をぶん殴った。

「……っ!?」

 ベヒーモス娘は一ミリも退かず、ヴィクトリーをぶん殴り返した。

「んぶぅっ!?」

 ぶっ飛びながら体制を整え、着地する。

「武道家か……い〜いパンチだなぁ……」

「なんだと……!?」

 渾身の力で顔面をぶん殴ったにも関わらず、ベヒーモス娘はノーダメージだ。ほぼノーダメージではなく、完全にノーダメージ。鼻血すら出ていない。

「じゃあ、こいつでどうだぁっ!!」

 ヴィクトリーは、気を全解放した。そして、目にも留まらぬスピードでベヒーモス娘の腹に前蹴りを放った。

「うごっ……!?」

 これにはさすがの彼女もこたえたようだ。少しばかり退いたが……すぐさま剛腕で反撃した。

「ぐぁあっ!」

「さすがっ……ここら辺をうろついているだけはあるな……!」

 ヴィクトリーは地面に踏み込み、ベヒーモス娘を囲むようにフットワークして背後に回り、延髄切りした。

「〜っ!?」

「どうだっ!?」

 ベヒーモス娘はしばらく苦しんだが、尻尾でヴィクトリーをぶっ飛ばした。

「ぐぁっ!」

「はぁああーっ!」

 さらに彼女は角を向け、猛突進してきた。

「よっしゃああっ!!はっけよーい……」

 ヴィクトリーは相撲の構えをとってから、彼女と組み付いた。

「のこったぁ!!」

「ははぁっ!」

 両者は、真っ向から押し合う。

「ふんぎぎぎ……!!」

「や、やるな……!!」

 力と力の押し合いは、完全に互角。両者とも一歩も退かずに、相手を押す。

「ふっ……!」

 ヴィクトリーは気を解放し、ベヒーモス娘を押した。

「……なっ!?」

「がぁああああっ!!」

 地面を削りながら、ベヒーモス娘を押して……ついに、壁際にまで追い詰めた。

「な、なんだと……!!?」

「はぁっ!」

 彼女を突っぱね、その懐に入り、拳を連打した。

「あだだだだだ……!!」

「〜っ!!?」

「どぉらぁあああっ!!」

 顎を蹴り上げ、腹に拳を埋めさせ、顔面をぶん殴り、足払いをかけてすっ転ばせる。

「あぁっ……!?」

「だりゃああーっ!!」

 その足を掴み、グルグルとぶん回してから、岩盤へとぶん投げた人ならざる力でベヒーモス娘を叩きつけられた岩盤は粉砕する。彼女は、瓦礫に埋まった。

「に、人間ごときが……なんて力だ……」

 そう言って、ガクッと気絶してしまった。

「ふぅ……」

「モタモタしてると、次が来そうだね……」

「あぁ、さっさと行こうぜ。」

 二人は警戒を怠らないようにしながら、『罪人の封牢』へと進んだのであった……

 

「ここが、罪人の封牢か……」

「……」

 壊れかけた祭壇に、石碑のようなものがあるのみ。大罪人が封印されているということで、おどろおどろしいイメージを抱いていたが……予想に反し、静かで穏やかな雰囲気だった。なんだか、安らいだ気分になってしまうほどだ。

「あれれ……?ここ、なんだか前のマスターの匂いがする……」

 ルカの中に居たシルフが不意にそう言う。

「前のマスター?」

「えへへっ、とってもなつかしいな……」

 なんだか、シルフは上機嫌の様子である。ここで封じられている奴は、シルフの以前のマスターだったのか?

「この場所に、例の大罪人が封じられてんだよな?」

「ああ……肉体は朽ちているが、今も魂のみが封じられているという。こちらから話す事もできないし、向こうから接する事は不可能だがな。」

「へぇ〜、どんな奴なんだ?」

「え〜っと……」

 ルカはその石碑の名前に目を通した……

「……ハインリヒ・ハイン!?」

 そこで目にした名前……それはなんと、伝説の勇者ハインリヒの名前だったのだ。

「ハインリヒって、あの……」

「そんな、馬鹿な……同姓同名の別人か!?」

 五百年前に邪悪な魔王を滅ぼし、世界に平和をもたらした偉大な勇者。その魂が大罪人として封印されているなんて、そんなの有り得ない。

「ルカよ……人間達の伝承では、勇者ハインリヒはどうなったと言われているのだ?」

 アリスは、ルカに聞いてみる。

「魔王を倒した後、イリアスに導かれて天界に行ったって話だけど……」

「随分と曖昧だなぁ。」

 ヴィクトリーは頭を掻きながら、そう漏らした。

「結局、当時の魔王を倒した後のハインリヒの足取りは、知られてないという事ではないか。」

 アリスも同じように、ルカに向いた。

「もしかして、これは魔物の仕業なのか……?イリアス様が勇者ハインリヒを封じるはずなんてないから、次代の魔王か誰かが……」

「もしそうなら、余が知らないはずもない。それに……この強固な封印は、間違いなくイリアスの施したものだな。」

「……」

 いったい、何がどうなっているのか。あの勇者ハインリヒが、大罪人として封印されているなんて……

「……ルカ、イリアス五戒の一番重い罪ってなんだ?」

「え……女神に剣を向けるなかれ……イリアス様への反逆だけど……」

「……じゃあ、このハインリヒとやらはイリアスに楯突いたんだろうな……」

「だけど……ありえるのか?あの勇者ハインリヒが、イリアス様に剣を向けるなんて、ありえるのか!?」

「……」

 ヴィクトリーは石碑を撫でてから、しばらく黙る。

「……本当に、理由は神のみぞ知るって奴か。」

「そんな……いったい、どうなっているんだ……」

「……色々と悩む事はあるだろう。しかし、ここでいつまで立ち呆けていても始まらん。貴様らは、のんびり出来る立場でも無いのだろう?」

「そ、そうだよね……」

「そう言えば、そうだったっけ……」

 色々と気になる事はあるが、ここでぼんやりしても仕方がない。考え事は後回しにして、僕達はその場を後にするのだった……

「……ん?」

 石碑に背を向け、立ち去ろうとしたとき……ルカのエンジェルハイロウが、一瞬だけ輝きを放った気がする。

「どうかしたのか、二人とも……」

「いや、剣が何かに反応したような……」

「そうそう、一瞬だけど光ったような気がして……気のせいかな……」

 首を傾げながら、僕達は罪人の封牢を後にした。なぜここに、勇者ハインリヒの魂が封じられているか調べなければならない。しかし、それは今やるべき事では無いのだ。

 僕達に、のんびりしている暇はない。向かわなければならないのだ……魔王城へ……

流血表現

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