もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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激突!魔物盗賊団!!

 数時間ほど歩き、イリナ山地に到着した一行。

「めぇったな……正確なアジトの位置が分からねぇとどうしようもねぇな……」

「そうだね……退治すると言っても何処にいるんだ……?」

 ヴィクトリーが額に指を起き、周囲を見渡す。

「……何してんの?」

「シッ……そんなドラゴンだのヴァンパイアだの居たらさ、それ相当のでけぇ気がある筈だ。だけど今の俺じゃ気を探るのにも相当な集中力が必要になってくるんだ……黙ってくれると助かるぜ。」

 彼はそう言い、目を瞑った。

「ほう……人間で脳みそ筋肉の素人武道家のくせにもう高度な生体察知ができるのか……なかなかのものだな。そう簡単に出来るものではないと言うのに。」

 集中するヴィクトリーの横で、アリスは嫌らしくブツブツと言う。

「……黙っててくれよ〜……」

 集中が散ってしまった彼は、ジト目でアリスを見る。しかし、彼女はふん、と笑った。

「貴様に食われた余のあまあまだんごの恨みだ。」

 そう言い、アリスはそれ以上は喋らなかった。ヴィクトリーはまた目を瞑り、眉をひそめる。

 しばらくしてから額から指を離し、ルカの方に向かい直した。

「……ダメだ。何処にも見つかんねぇし、何よりこの山地が広すぎる……」

 どうやら、広範囲に渡る察知は厳しいようだ。

「ふん……どうせその程度だと思っていたがな……」

「虱潰しに探すよりかはマシさ……だけど今回はそうするしかねぇみてぇだ……」

「そんな……」

 困惑しながら歩いていると、突如小さな影が飛び出してきた。

「やい!金目のものを置いていけ!」

 目の前に現れたのはちっちゃくて可愛い小鬼のモンスターだった。ただ、抱えているハンマーはその体格に不釣り合いな程大きい。

「おいルカ、アリスが居なくなってるし、それっぽい奴が来たみたいだぜ……」

「もしかして……魔物の盗賊団の下っ端か……!?」

 もしかしたら、アジトの場所を吐かせられるかも……

「下っ端ではない!ボクは盗賊団四天王の一人、ゴブリン!」

「なにっ!?」

「えぇ……四天王……?」

 こんな少女モンスターが、幹部級なのか……?

「気ぃつけとけルカ……このゴブリン娘、「見た目で強さを判断するな」のいい見本かも知れねぇぞ……」

「そ、そうだね……」

「怖気付いたか!ならさっさと金目のものを置いていけ〜!」

 ルカは一応、ゴブリン娘の説得を試みる。

「あの……僕達、勇者一行で、盗賊団をこらしめに来たんだけど……」

「えええ……?そんなに弱っちそうな二人組なのに勇者一行……?」

「うっせぇ!」

「弱そうなのはそっちも同じだろ!」

 まるで、傍から見ると完全に子供同士の喧嘩である。とにかく、この少女モンスターが幹部級のモンスターなら、アジトの場所も知っているはずだ。一般人に盗賊行為を行っている事も、事実らしい。

 こんな悪い子はこらしめなきゃ……そう思い、ルカは剣を抜き、それに合わせてヴィクトリーも構える。

「うわ!その剣、こわっ!てかキモッ!」

「……」

「……」

 確かにそれは、二人とも同感である。

「う〜ん……」

 ゴブリン娘は剣とルカとヴィクトリーを交互に見る。

「どうしようかな……剣はすっごくキモいけど持ち主とその仲間もへっぽこな感じだし……」

「悪かったなこんにゃろー」

 ヴィクトリーが、ゴブリン娘の言葉に敏感に反応する。

 彼女はしばらく考えてから、僕達を見据えて言い放った。

「よし、来い勇者一行!盗賊団四天王の一人、『土のゴブリン』が相手をしたげるから!」

「つ……」

「土のゴブリンだって!?」

 魔王軍四天王がそれぞれ四属性の技を使うように、盗賊団四天王も属性持ちなのか?だとすると、やはりヴィクトリーの言う通り、見かけより強力なモンスターなのか……!?

 そうこう考えている内に、ゴブリン娘が先制攻撃を仕掛けてきた。

「くらえ!サンドハリケーン!!」

 ゴブリン娘は足元の砂を掴むと、こちらに投げてきた。

「ってただの砂かけじゃねーか!!」

「どこがサンドハリケーンだ!」

 とっさに目を閉じてしのいだが、ルカは口に、ヴィクトリーは髪に少量の砂がかかってしまった。

「うぐ……ぺっ、ぺっ……何するんだ……」

「ひぃ〜!髪ん中に入るのはキツイもんがあるぞ〜!」

 ルカは砂を吐き、ヴィクトリーは髪をかいていて、戦闘どころじゃなくなった。

「スキあり!くらえ〜!大地の怒り〜!!アースクラッシュゴブリンだ〜!!」

 ゴブリン娘はそう言うと、ハンマーを振り上げ、ふらふらと近づいてきた。

「な、なんだあれ……予備動作が大きすぎて、当たる方が難しいんじゃねぇか……?」

「しかもアースクラッシュゴブリンだと大地に砕かれるのはゴブリンだし……」

 ゴブリン娘はパワーを溜めそして、渾身の大技を放った。

「てぇ〜りゃあ〜!!」

「っ!」

「まずいっ!」

 僕達は、その攻撃を難なくかわした。ゴブリン娘の放った攻撃は文字通り大地を砕いていた。決して馬鹿にできない威力だ。

「ひえぇ、おっかねぇ……大地が砕けてる……大振りで助かったぜ……」

「だけど、当たらなければ何の意味も無いね!破れたりっ!アースクラッシュゴブリン!!」

「……おめぇちょっと前まで同じことしてたじゃねぇか。」

「うぐっ……」

 精神攻撃は基本だが、僕に精神攻撃しろとは言ってないぞ。

「ま、負けないぞ〜!てやぁ〜!てやぁ〜!」

 ゴブリン娘はというとぶんぶんとハンマーを振り回している……というよりハンマーに振り回されてる。

「どうしたモンか……あれじゃ近づけねぇぞ……」

「いや……」

 見ていたら、ゴブリン娘は石につまずき、転んでしまった。

「ふぎゃっ!」

「あちゃ〜……」

「……気は済んだか?」

 ゴブリン娘は体力を使い切り、肩で息をする。

「う、うん……」

「……勝っちまったよ……」

「……アジトの場所、教えてくれる?」

「あっちの方……」

「言うのかよ。」

 ゴブリン娘が指さしたのは、そう遠くない山肌付近だった。

「あっちの方に洞窟があるから……」

「へっ、どうやらそこをアジトにしてたみてぇだな……」

「うん……でも、四天王は後三人残っているんだ!残りの三人はこんなに簡単にいくと思うなぁ!ラミアやヴァンパイアやドラゴンが相手なんだからぁ!」

 はぁはぁ言いながら立ち上がり、ゴブリン娘は啖呵を切った。

「お前らなんかやられちゃえー!」

 そう言い、ゴブリン娘は逃走してしまった。

「……なーんだあいつ……」

「どうやら、アジトの場所がわかったみたいだな。」

 アリスが、また戻ってきたようだ。

「ヴァンパイアとドラゴンは聞いていたけど、ラミアまで居るとはちーっとばかし想定外だぞ……」

 ラミアといえば上半身が女で下半身が大蛇の妖魔。弱いやつも居ればすげぇ強いやつもいるというイメージだ。現に、すげぇ強いラミアが目の前にいる。

「ラミア……ヴァンパイア……ドラゴン……厄介な相手ばかりだな……」

「だからよせと言っただろう。本当に無駄死にしたいのか貴様らは。」

「無駄死になんてするつもりは無いさ。でも、イリアスベルクの人が困っているんだ。それを黙って見過ごすなんて、勇者じゃない!」

「……ドアホめ。他人の為に、己の命を危険に晒すとはな……貴様も何か言ったらどうだ。」

 アリスは、ヴィクトリーの方に向く。

「ラミアにヴァンパイアにドラゴンか……ようやくファンタジーっぽくなってきて俺ちょっとワクワクしてきたぞ……」

「やはりドアホの仲間もドアホか。ドアホ共め……」

 アリスに呆れられながら、僕達はアジトの方へ進むのであった。

 

「……四天王一人、土のゴブリンがやられたみたいね。」

 この発言はラミアだ。そしてヴァンパイアがラミアの言葉に続いた。

「くくく……奴は四天王の中では最弱……奴を倒した所で何の脅威にもならぬわ。」

「うがー、その通りだぞ。」

 並びにドラゴンが言葉を放った。

「何であんなのが四天王の一員なのか不思議なぐらいなのだ……」

「それは……メンバーが不足してたからでしょ……」

 そんなラミアの発言を無視し、ドラゴンが言う。

「勇者一行はこっちに向かってきてるぞ。」

「のこのこやられに向かってくるとは……何と愚かな人間共よ……くくくっ……」

 ヴァンパイアが卑しい笑みを浮かべ、ルカ一行を嘲笑う。

「じゃあ、次は私が相手をするからね……くすくすっ……」

 ラミアがそう言い、不敵な笑みを浮かべる。それに続き残りの二人も笑った。

「わははははぁ!」

「くくくく……!」

 洞窟内に、妖魔の笑いが響き渡る。

 妖魔達は完全にこの勇者一行を敵と見なし、そして戦いを始めようとしていたのだ……

 

「このほら穴……か?」

「みてぇだぜ……」

 一見するとただのほら穴だが、アジトには悪くなさそうだ。だが、アジトの近くに盗賊団のメンバーがいない事も気がかりだ。

 何でアジトの周りに誰もいないんだ……?

「この中にドラゴンなど居るのか?どうもそんな気配は……」

 アリスが洞窟の前に立ち、くんくんと鼻を鳴らす。そして、おもむろにため息をついた。

「なるほど……そういう事か……」

 ヴィクトリーは不思議に思い、目を瞑る。

「……確かに気だ……魔物の気がする……」

「要するにそう言う事だ。貴様らは適当に済ませてとっとと帰ってこい。余はここで待っている。」

「な、何だよ……二人だけで納得して……」

「俺は納得し切れてる訳じゃねぇよ。」

 何だか気を探れる能力のあるヴィクトリーでもよく分からないらしいが、アリスは何かに納得していた。適当に済ませるというのも無茶な話だ。ラミアとヴァンパイアとドラゴンなんてそうそうたるメンバー、済ませるどころか無事に帰ってこれるかも難しい。でも、怯むわけにはいかない。こんな所立ち止まっていたら、魔王など倒せはしない!

「よし、行くぞ!」

 ルカは、先に洞窟の中に入っていった。

「……アリス……やっぱりおめぇ……」

 ヴィクトリーが、アリスを見て聞く。その表情は険しいものがあった。

「……貴様の察している通りだ。」

 アリスは俯き、何だか少し悲しそうな顔をする。

「……さっさと行け。貴様ら二人ならば適当に済ませられる筈だ。」

「……わかった!」

 ヴィクトリーもアリスを置いて洞窟の中に入っていった。

 こうしてルカ率いる勇者一行と盗賊団との戦いの火蓋が切られたのであった。

 

「お〜い!待ってくれよぉ〜!」

 ヴィクトリーが、ルカに追いつく。

「あっ、先々行っちゃってたかな……ごめん。」

「おめぇちょっとせっかちすぎるぜ……」

「……それにしても……」

 中は以外と広く、アジトにしては人影が全く無い。

 ここは本当に盗賊団のアジトなのだろうか……

 そう思い、二人で歩いていると、不意に声がした。

「ふふっ……来たわね……このわたしが相手をしてあげるわ!」

 二人はその声を聞き、臨戦態勢に入った。

「……誰だっ!?」

 ルカが動揺しながら声をあげる。

 そしてその目の前に現れたのは……小柄な少女ラミアだった。

「私が盗賊団四天王の「水のラミア」よ!」

「水のラミア……!?」

「お、お前が……ラミア……?」

 確かに下半身は蛇だが……何だかちっちゃいぞ。そして可愛い。さしずめ、プチラミアと言った所か。

「ふふふ……先に私に巻き上げられ、締め上げられ、苦悶に喘ぐのはどっちかしら……?」

「ぐっ……!!」

「えっと……その……」

 ヴィクトリーは間に受けているが、僕は当惑せざるを得ない。あれだけ覚悟を決めたのに、これでは拍子抜けだ。

「な、何ガックリしてるのよ!私に巻き付かれてもそんな顔ができるの!?」

 そう言い、プチラミアは率先をかけずにルカの体に短い尻尾を巻き付けてきた。

「……ありゃ?ルカ?」

「……」

 ……だが、全くきつくない。ちっちゃな尾が体を巻き上げ、くにゅくにゅと頑張って締め上げようとしていたのだ。力が全く足りてないので、締め上げとは程遠い。

「あははっ……ラミアに巻き付かれた感想はどう?もうあんたは締め上げられる獲物に過ぎないのよ……」

 そう言われても正直な所全然苦痛ではない。むしろ優しく揉みほぐされて気持ちいいぐらいだ。

「……」

 ヴィクトリーはぽかーんと拍子抜けしている。どうやら、傍から見ても力が入ってないのが分かるのだろう。

「ほらほら……私に巻き付かれ、苦悶の声を漏らしなさいよ。」

「えーっと……よいしょっと……」

 ルカはプチラミアの体を抱き上げ、体から離した。巻きついていた蛇部分もしゅるしゅると解けてしまう。この僕の力でさえ簡単に解けたのだから……

「こいつ、実はめちゃくちゃ弱いんじゃねぇか……?」

「……」

「……」

 ヴィクトリーの声が空気に響く中、プチラミアとルカの視線が合う。すると、プチラミアの目からじわっと涙が溢れた。

「……ふぇーん!何でうまくいかないのー!?」

「い、いや……何でって言われても……」

「わー!ルカが幼女泣かしたぞー!いーけないんだ!いけないんだー!」

「子供かお前は!」

 そう言いながら、そのままプチラミアを地面に下ろしてやる。すると、しゅるしゅると素早く地面を這いながら離れていった。

「ふぇーん!覚えてなさーい!」

 そんな捨て台詞を残して、プチラミアは逃走してしまった。

「……そう言えば水のラミアなんて言ってる割に水属性なんて使わなかったね……」

「……俺ちょっと拍子抜けしてるぞ……まさか残りの二匹もこんな感じとかじゃねぇだろうな……」

 ヴィクトリーは頭をかきながら、ルカはしばらく佇んだ後、二人で洞窟の奥に進んでいった。

 彼の言う通り、僕達の決死の覚悟は無駄になるのかもしれない……

流血表現

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