もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
おずおずと、柱の陰から出てきたのは──インプ。取るに足らない、下級の魔物だ。その少女特有の華奢な身体に比例して、胸だけはやたらと発達していた。
「わっ、勇者一行だ……!どうしよう、逃げ遅れちゃった……!」
彼女は大きな胸を揺らしながら、あわわと慌てる様子を見せた。
「小悪魔か……こいつじゃないよな?」
「ああ……こいつは、ただの魔物みてぇだ……おい!」
ヴィクトリーは、迷わずインプに話しかけた。
「この辺に、馬鹿みてぇにでけぇ気が近付いてる!気を付けろ!巻き込まれねぇうちに、どっか行け!」
「え、えぇ……で、でも……あ、あたし……おちんちんにいたずらするの、大好きだから……キミ達のおちんちんに、たっくさんいたず──」
言葉が終わるより先に、状況を判断したヴィクトリーが始動する。
彼はその健脚で床を蹴り抜き、一気に距離を詰める。そうして、拳を振り下ろした。
「きゃああっ!?」
しかし、彼女の生存本能はそれを捉え、慌てて避けた。
「も、もう少しで死んじゃうところだったじゃない!」
「あーっ!避けるんじゃねぇ!聞き分けのねぇ相手には、昔から拳骨って決まってんだ!」
こうして、二人は奇妙な鬼ごっこを始めてしまった。
「まてー!」
「待たないもんねー!」
ヴィクトリーは鬼で、インプが逃げる役。ばいんばいんと大きな胸を揺らしながら走ってるのにも関わらず、ヴィクトリーの健脚が追いつけないようだ。
その様子を見ていたルカは、頭を抱えて溜息を吐く。
そして、思った。『避けられるんなら、避けれないほどの攻撃をしてしまえばいいのでは?』と。
「──来い、シルフ。」
第一、風。シルフの疾風を、剣に纏う。
「──来い、ノーム。」
第二、土。ノームの剛力を、剣に宿す。
「──来い、ウンディーネ。」
第三、水。ウンディーネの水流を、剣に流す。
「──来い、サラマンダー。」
第四、炎。サラマンダーの気炎を、剣に込める。
四つの力は混ざり合い、圧縮し──大きな力となる。
「よぉーっし!」
「わーっ!」
ようやくインプを捕まえた、ヴィクトリー。
しかし、異変に気付いた二人は、すぐに異変の原因の方を向いた。
「な──」
ルカは、四精霊の力を剣に纏っている。混ざりあった四つの力は、比類なき黄金の気として、天井を衝く。そう、これこそが、嘗て伝説の勇者がアリスフィーズ8世をも滅ぼしたという、『最強奥義』──
「カドラプル・ギガぁあああーーー!!!」
叫ぶ。話に聞いたその技名を、叫びながら剣を振り下ろす。
「うわぁああああーーーっ!!?」
「やべぇっ!!」
ヴィクトリーが瞬間移動し、取り残されるインプ。彼女はそのまま直撃し、小さなコウモリの姿となって吹っ飛んでいった……
「……ふぅ。」
この魔王城には、沢山の魔物がいる。先程のインプは、ただの住人だったようだ。
「他の魔物に迷惑をかけないうちに、終わらせないとな──」
「あっぶねぇな!!」
いつの間にか背後に瞬間移動してたヴィクトリーが、ルカの頭に拳骨した。
「あいたぁっ!?な、なにするんだよぅ!」
「それはこっちの台詞だ!危うく消し飛ぶ所だったじゃねぇか!」
「こ、この剣なら死にはしないよ!当たったら、仙豆でも食えばいいじゃないか!」
二人は、ぎゃーぎゃーと口喧嘩をする。その最中であった。
先程の衝撃を聞きつけたのか、はたまた二人を嗅ぎつけたのか。猛獣の咆哮のようなものが、響く。
それと同時に、轟音。凄まじい轟音が響くのと、二人がそこを見上げるのは、ほぼ同時だった。
居たのは、なんと巨大な異形の魔獣。角の生えた人間の女の上半身と、様々な生物が複合されたかのような、巨大な獣の下半身。それが舞い降りて、彼らの前に立ちはだかったのだ。
「な、なんだコイツは……!!?」
「う、ウッソだろ……!!」
放たれるオーラは凄まじく、プレッシャーで息苦しくなるほど。それでいて、その雰囲気は無機質で、その目には光が無い。ガラス細工の方が、活き活きとしていると感じる程だ。
二人が驚いていると、巨獣の背中からひょっこりと、たまもの姿が見えた。
「わわわっ、とんでもない暴れ馬じゃー!」
なんて呑気な事を言いながら、悠々と乗りこなしている。
彼女はそうしながら、二人の方を見た。
「このギガントウェポンは、千年前の聖魔戦争の時に造り出された生体兵器。あまりの強力さに、ずっと封印されてきた伝説の魔獣なのじゃ。」
「──生体兵器、だって!?」
「──」
ならば、このギガントウェポンも人造人間の類なのだろうか。機械のような雰囲気は、その為か……
「そういうわけで、さらばじゃ!」
たまもはそう言い、ぴょこんと宙返りし──そのまま、姿を消した。
残ったギガントウェポンは、感情の籠らない視線で二人を捉える。
「目標を確認……破壊する。」
そう告げてから、気を解放してきた。その気の解放だけで、衝撃が巻き起こる。魔王城は揺れ、彼女の周囲には、巨体から漏れたエネルギーがバチバチと電光していた。
「!!!」
「す、すげぇ、すげぇ気だ……!!だけど──」
ヴィクトリーが、先に動く。
「界王拳ッッ──」
紅蓮の気を纏い、限界ギリギリのパワーに震えながら、尚も気を上昇させる。2倍、3倍、4倍、5倍、と、気は跳ね上がり──
「10倍だぁあああーーーッッッ!!!」
一気に、10倍の界王拳を出す。それは爆発するかのような衝撃を巻き起こし、彼の周囲のものは吹っ飛んだ。
「うぉおっ!?」
ルカはノームの力をその身に宿し、踏ん張る。
「ターゲット、粉砕許可あり。全力での突進攻撃を開始。」
ギガントウェポンは、淡々とした口調でそう言ってから、全力で走り出した。
「うぉおおおりゃあああーーー!!」
ヴィクトリーも迎え撃つように、床を蹴って全力で突進する。
そのまま両者はぶつかり合い、押しあった。力と力が押し合い、ほぼ互角の力比べになる──かに思えた。
「ッッぐぅ、ぐ、ぐ、ぅぅ、がぁあああ……!!!」
ヴィクトリーの靴の踵が、床を削る。そう、彼は押し負けているのだった。
「ぐ、ぐぬ、ぎぃいいい、ぐ、がぁああああ……!!!」
身体に限界以上の力を込めて押そうとするも、戦況は変わらない。
「ぐ、く……!!?」
こちらを押す怪力の少年を、ギガントウェポンは光のない目で見る。そして、
「……力を、解放。」
そう言い、フルパワーになる。
「!!!?」
あっという間にヴィクトリーは押し負け、ギガントウェポンに押されて壁に叩き付けられてしまった。
「あのヴィクトリーが、純粋にパワーで負けた……!!?」
ルカはそう言い、身構える。と、その背後に瞬間移動してきたヴィクトリー。
「ああ……どうやら、小細工を弄するしかねぇみてぇだ!!」
壁に叩き付けられる寸前で、瞬間移動して抜け出したらしい。
ルカにとってそれは予想の範疇だったので、一目確認してから、構えた。ヴィクトリーも、彼に合わせて構える。
「……目標を確認。粉砕する。」
機械音声のような声色で放つ、殺害宣言。二人はそれに臆することなく、彼女に突撃した。
「触手による広範囲攻撃を開始。」
ギガントウェポンの尻尾には、大量の触手が生えている。それを伸ばし、鞭のように振り回し、周囲一帯に乱舞させた。
「うぉおおおっ!!」
ルカが先陣を切り、風の力をその身に宿しながら、剣を振り回す。すると、二人に襲いかかってきた触手がバラバラに斬られた。
「はぁああああっ!!」
「おりゃあああっ!!」
二人は同時にジャンプして、ギガントウェポンの女体部分の眼前に迫る。そして、ヴィクトリーが拳を、ルカが蹴りを、その身に叩き込んだ。
「っ……!!」
彼女はそれに揺るぐも、腕をクロスする。
「はぁあああああーーーっ!!!」
咆哮──それも、およそ人間の声ではない、獣のような雄叫び。
「!!?」
「しまっ──」
それにはとんでもない威力が宿っており、彼らをぶっ飛ばしたのだった。
「っぐぁああっ!!」
「ど、どんな声量だ……!!」
床に転がりながらも、体勢を整え、なんとか相手の方を向く。
「攻撃オプションK──」
彼女は、頬を思いっきり膨らませてから、こちらへ火炎を吐き出してきた。火炎は渦となり、二人を包み込む。
「なにっ!!?」
「任せろ!!」
ヴィクトリーはルカを抱え、舞空術で飛び上がる。それで炎の渦からも脱出し、火炎も振り切った。
「かめはめ波ぁっ!!」
さらに、かめはめ波での反撃。青いエネルギーは一直線に伸び、ギガントウェポンの顔面で爆裂した。
「だぁあああー!壊斧・大山鳴動!!」
更にルカがヴィクトリーを踏み台に跳び上がり、その脳天へ重い兜割りを叩き込んだ。
「どうだ……!!?」
顔面へのかめはめ波に、ダメ押しの壊斧・大山鳴動。普通のモンスターなら、封印されているが──
「……破壊する。」
「!!?」
ギガントウェポンは眉一つ動かさないまま、頭を振って、角でルカをぶっ飛ばした。
「うわぁあっ!!」
「ルカっ!!」
駆け寄ろうとしたヴィクトリーにも、彼女は迫る。
「なっ……!!?」
予想外のスピードに、防御が間に合わない。そのまま、ただの叩き落としで床に叩き付けられてしまった。
「ぎゃあぁあっ!!」
「はぁっ、はぁっ……つ、強い……!!」
超強敵、ギガントウェポン──かつて聖魔大戦で猛威を振るった、古代兵器。これ以上とない、強敵だ。
だが──
「負ける訳にはいかない……!!ここで止まる訳には、いかないっ!!僕はッ、僕は四天王の所に行かなきゃならないんだぁああああ!!!」
ルカは炎の精霊の力を解放し、フルパワーを出す。
「ああ……!!俺はもう、止まんねぇええぞぉおおおおッッ!!!」
ヴィクトリーも界王拳を20倍に跳ね上げ、限界以上の全力を出し切る事にした。
燃え盛るが如く、紅蓮の気が二つ。ありったけの力を全解放し、なれる限りの最高状態になる。
「……いくぞ!!」
「おう!!」
二人は、ギガントウェポンに突撃する。
「目標、こちらへ突進……破壊する。」
彼女も助走をつけ、暴走する機関車のようなタックルをかます。
「どりぁあああああっ!!!」
しかしそれは、彼らの手によって止められる。
「ついてこい、ヴィクトリー!!」
「おめぇこそ、遅れるんじゃあねぇ!!」
言い合いながら、同時に攻撃を連打した。息をつかせる暇もないほどの拳と剣の攻撃連打。それは、確実にギガントウェポンに届いていた。
「っはぁああああーーーっ!!!」
彼女は危機を感じたのか、あの破壊の咆哮を巻き起こし、二人を吹っ飛ばした。
「ぐっ……戦闘力、倍以上に増大……!!」
そう言ってる間にも、二人は眼前へ戻ってくる。
「っ!!?」
「でりゃあああっ!!」
「だーーっ!!」
二人の拳が、ギガントウェポンの顔面を打ち抜く。それで、十数メートルはある巨体を、ぶっ飛ばした。
「っぐぁあ……!!ひ、被弾多数、ダメージ高……危機レベルに突入。自己再生開始……」
起き上がりながら、ダメージを再生していく。それも凄い速度で、回復していった。
「回復か……!!」
「くそっ……厄介だな……!!」
バカみたいに跳ね上げた火力と、手数……それにより、体力をゴリゴリと削る事が出来た。しかし、肝心の一手──決定打が、まだ足りない。
「どうやら、敵は回復機能を備えているようだな。」
ふと、そんな声が、ルカの中から聞こえた。サラマンダーの声だ。
「おそらく、回復能力を超える大ダメージを与えねばトドメは刺せんぞ。」
冷静に分析するサラマンダーに対し、ルカは汗を流しながら剣を握る手に力を込める。
「でも、僕の技じゃあ……」
「いや、ルカ……今のおめぇになら使える……かつて、俺を半殺しにした技……あのグランベリアの得意技をな……!!」
「……!!」
乱刃・気炎万丈──確かにこの目で、二回も見た紅蓮の奥義。しかし、今の僕に、あの技が出来るのか……?
「いいや、出来るとも!!やってみせる!!」
ルカはそう言いながら、自分の中の疑問を振り切る。
「行けるか、ルカ……?」
「ああ……!」
ルカは返事してから、猛ダッシュでギガントウェポンの前に迫る。
「紅蓮の炎を、この刃に託して……乱刃・気炎万丈!!!」
炎が巻き起こる。剣の刃が炎上し、熱風が吹き荒ぶ。その剣で、無数の斬撃が繰り出され、ギガントウェポンを切り刻んだ。
紅蓮の刃は再生したばかりの彼女を容赦なく切り崩し、ついには倒してしまったのだった……
「被弾多数、動力炉遮断……機能停止……」
その言葉を最期に、彼女は剣の効果によって、獅子のような姿へ封印されたのだった……
「や、やった……!ど、どうにか、倒せたみてぇだ……!」
「ふぅ……」
激戦を勝利で飾り、二人はようやく息を吐く。
「それにしても、今のやつは……」
ルカは疑問に思う。
レミナの廃墟を徘徊してた、キメラビースト……あれと、ギガントウェポンは何だか似ていた。かたや正体不明生物、かたや古代兵器……何故この二つが、似てるんだ?
「……ルカ。」
「ああ……今は、四天王か。」
そう言い、二人は先へと進んだのだった……
行く手を遮る魔物は出ず、辿り着いたのは非常に広大な広間。そこでは、四人の妖魔が待ち受けていた──
「ようこそ、ルカちゃんにヴィクトリーちゃん。まさか、ここまで来るとは思ってなかったわ……!」
サキュバスの女王、風のアルマエルマ──
「ギガントウェポンを倒してしまうとはのう。ウチも、そこまでは予想しておらんかったわ。」
九尾、土のたまも──
「わざわざ、私達に始末されに来るなんて……随分と、物好きなものね。」
スライムの女王、水のエルベティエ──
「…………」
魔族最強戦士の、炎のグランベリア──
四天王が、この場に揃い踏みしている。一人一人が、あのギガントウェポンより強いのだ。
圧倒的な迫力に、二人は息を呑む……が、怯みはしなかった。
ルカが、一歩前に出る。
「僕達は、お前達を倒したい訳じゃない。ただ、人間を苦しめるような事をやめてほしいんだ。それが、人間と魔物、それぞれのためにも良い事だと思う……」
「悪いけど、それは出来ないわ。」
そう言って来たのは、アルマエルマだった。
「私達が人間を力で威圧しなければ、人間の暴力は魔物全てに及ぶのよ。」
次に、たまもが来た。
「人間は、ウチ達魔物を過剰に敵視しておる。その悪意がある限り、ウチ達としても力に訴えざるを得んのじゃ。」
その次に、エルベティエが。
「人間が私達をさんざん苦しめておいて、今更何を言うの?」
最後に、グランベリア。
「問答無用、そんな事を言いに来た訳ではあるまい。」
……と、以上が四天王達の言い分だ。いずれも、話し合いなんかでは解決しないだろう。
「話し合いで済むんなら、それに越した事はねぇさ……だけど、今回はどうも、そういうわけにはいかねぇみてぇだな……」
ヴィクトリーがルカの隣に来て、指をボキボキと鳴らす。
「ああ……」
ルカも剣を抜き、静かに構えた。
「お前達妖魔は、強い者しか認めないんだろう……?だから、僕はお前達を乗り越える!お前達を打ち負かして、人間と魔物の共存を認めてもらう!」
「そうだ!そのために、ここまで来たんだ!」
勇ましく構えながら、言う二人──彼らを前に、アルマエルマが一番に笑った。
「そうね……私達を倒せる程の実力なら、説得力があるかも。私に勝てれば、考えてあげてもいいわよ……!」
そう言いながら、進み出た。
「……僕から行く。いいな?」
「ああ……」
ヴィクトリーは下がり、ルカが前に出る。
こうして、ルカとヴィクトリーは、四天王達と激突したのであった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい