もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

110 / 227
ギガントウェポン

 おずおずと、柱の陰から出てきたのは──インプ。取るに足らない、下級の魔物だ。その少女特有の華奢な身体に比例して、胸だけはやたらと発達していた。

「わっ、勇者一行だ……!どうしよう、逃げ遅れちゃった……!」

 彼女は大きな胸を揺らしながら、あわわと慌てる様子を見せた。

「小悪魔か……こいつじゃないよな?」

「ああ……こいつは、ただの魔物みてぇだ……おい!」

 ヴィクトリーは、迷わずインプに話しかけた。

「この辺に、馬鹿みてぇにでけぇ気が近付いてる!気を付けろ!巻き込まれねぇうちに、どっか行け!」

「え、えぇ……で、でも……あ、あたし……おちんちんにいたずらするの、大好きだから……キミ達のおちんちんに、たっくさんいたず──」

 言葉が終わるより先に、状況を判断したヴィクトリーが始動する。

 彼はその健脚で床を蹴り抜き、一気に距離を詰める。そうして、拳を振り下ろした。

「きゃああっ!?」

 しかし、彼女の生存本能はそれを捉え、慌てて避けた。

「も、もう少しで死んじゃうところだったじゃない!」

「あーっ!避けるんじゃねぇ!聞き分けのねぇ相手には、昔から拳骨って決まってんだ!」

 こうして、二人は奇妙な鬼ごっこを始めてしまった。

「まてー!」

「待たないもんねー!」

 ヴィクトリーは鬼で、インプが逃げる役。ばいんばいんと大きな胸を揺らしながら走ってるのにも関わらず、ヴィクトリーの健脚が追いつけないようだ。

 その様子を見ていたルカは、頭を抱えて溜息を吐く。

 そして、思った。『避けられるんなら、避けれないほどの攻撃をしてしまえばいいのでは?』と。

「──来い、シルフ。」

 第一、風。シルフの疾風を、剣に纏う。

「──来い、ノーム。」

 第二、土。ノームの剛力を、剣に宿す。

「──来い、ウンディーネ。」

 第三、水。ウンディーネの水流を、剣に流す。

「──来い、サラマンダー。」

 第四、炎。サラマンダーの気炎を、剣に込める。

 四つの力は混ざり合い、圧縮し──大きな力となる。

「よぉーっし!」

「わーっ!」

 ようやくインプを捕まえた、ヴィクトリー。

 しかし、異変に気付いた二人は、すぐに異変の原因の方を向いた。

「な──」

 ルカは、四精霊の力を剣に纏っている。混ざりあった四つの力は、比類なき黄金の気として、天井を衝く。そう、これこそが、嘗て伝説の勇者がアリスフィーズ8世をも滅ぼしたという、『最強奥義』──

「カドラプル・ギガぁあああーーー!!!」

 叫ぶ。話に聞いたその技名を、叫びながら剣を振り下ろす。

「うわぁああああーーーっ!!?」

「やべぇっ!!」

 ヴィクトリーが瞬間移動し、取り残されるインプ。彼女はそのまま直撃し、小さなコウモリの姿となって吹っ飛んでいった……

「……ふぅ。」

 この魔王城には、沢山の魔物がいる。先程のインプは、ただの住人だったようだ。

「他の魔物に迷惑をかけないうちに、終わらせないとな──」

「あっぶねぇな!!」

 いつの間にか背後に瞬間移動してたヴィクトリーが、ルカの頭に拳骨した。

「あいたぁっ!?な、なにするんだよぅ!」

「それはこっちの台詞だ!危うく消し飛ぶ所だったじゃねぇか!」

「こ、この剣なら死にはしないよ!当たったら、仙豆でも食えばいいじゃないか!」

 二人は、ぎゃーぎゃーと口喧嘩をする。その最中であった。

 先程の衝撃を聞きつけたのか、はたまた二人を嗅ぎつけたのか。猛獣の咆哮のようなものが、響く。

 それと同時に、轟音。凄まじい轟音が響くのと、二人がそこを見上げるのは、ほぼ同時だった。

 居たのは、なんと巨大な異形の魔獣。角の生えた人間の女の上半身と、様々な生物が複合されたかのような、巨大な獣の下半身。それが舞い降りて、彼らの前に立ちはだかったのだ。

「な、なんだコイツは……!!?」

「う、ウッソだろ……!!」

 放たれるオーラは凄まじく、プレッシャーで息苦しくなるほど。それでいて、その雰囲気は無機質で、その目には光が無い。ガラス細工の方が、活き活きとしていると感じる程だ。

 二人が驚いていると、巨獣の背中からひょっこりと、たまもの姿が見えた。

「わわわっ、とんでもない暴れ馬じゃー!」

 なんて呑気な事を言いながら、悠々と乗りこなしている。

 彼女はそうしながら、二人の方を見た。

「このギガントウェポンは、千年前の聖魔戦争の時に造り出された生体兵器。あまりの強力さに、ずっと封印されてきた伝説の魔獣なのじゃ。」

「──生体兵器、だって!?」

「──」

 ならば、このギガントウェポンも人造人間の類なのだろうか。機械のような雰囲気は、その為か……

「そういうわけで、さらばじゃ!」

 たまもはそう言い、ぴょこんと宙返りし──そのまま、姿を消した。

 残ったギガントウェポンは、感情の籠らない視線で二人を捉える。

「目標を確認……破壊する。」

 そう告げてから、気を解放してきた。その気の解放だけで、衝撃が巻き起こる。魔王城は揺れ、彼女の周囲には、巨体から漏れたエネルギーがバチバチと電光していた。

「!!!」

「す、すげぇ、すげぇ気だ……!!だけど──」

 ヴィクトリーが、先に動く。

「界王拳ッッ──」

 紅蓮の気を纏い、限界ギリギリのパワーに震えながら、尚も気を上昇させる。2倍、3倍、4倍、5倍、と、気は跳ね上がり──

「10倍だぁあああーーーッッッ!!!」

 一気に、10倍の界王拳を出す。それは爆発するかのような衝撃を巻き起こし、彼の周囲のものは吹っ飛んだ。

「うぉおっ!?」

 ルカはノームの力をその身に宿し、踏ん張る。

「ターゲット、粉砕許可あり。全力での突進攻撃を開始。」

 ギガントウェポンは、淡々とした口調でそう言ってから、全力で走り出した。

「うぉおおおりゃあああーーー!!」

 ヴィクトリーも迎え撃つように、床を蹴って全力で突進する。

 そのまま両者はぶつかり合い、押しあった。力と力が押し合い、ほぼ互角の力比べになる──かに思えた。

「ッッぐぅ、ぐ、ぐ、ぅぅ、がぁあああ……!!!」

 ヴィクトリーの靴の踵が、床を削る。そう、彼は押し負けているのだった。

「ぐ、ぐぬ、ぎぃいいい、ぐ、がぁああああ……!!!」

 身体に限界以上の力を込めて押そうとするも、戦況は変わらない。

「ぐ、く……!!?」

 こちらを押す怪力の少年を、ギガントウェポンは光のない目で見る。そして、

「……力を、解放。」

 そう言い、フルパワーになる。

「!!!?」

 あっという間にヴィクトリーは押し負け、ギガントウェポンに押されて壁に叩き付けられてしまった。

「あのヴィクトリーが、純粋にパワーで負けた……!!?」

 ルカはそう言い、身構える。と、その背後に瞬間移動してきたヴィクトリー。

「ああ……どうやら、小細工を弄するしかねぇみてぇだ!!」

 壁に叩き付けられる寸前で、瞬間移動して抜け出したらしい。

 ルカにとってそれは予想の範疇だったので、一目確認してから、構えた。ヴィクトリーも、彼に合わせて構える。

「……目標を確認。粉砕する。」

 機械音声のような声色で放つ、殺害宣言。二人はそれに臆することなく、彼女に突撃した。

「触手による広範囲攻撃を開始。」

 ギガントウェポンの尻尾には、大量の触手が生えている。それを伸ばし、鞭のように振り回し、周囲一帯に乱舞させた。

「うぉおおおっ!!」

 ルカが先陣を切り、風の力をその身に宿しながら、剣を振り回す。すると、二人に襲いかかってきた触手がバラバラに斬られた。

「はぁああああっ!!」

「おりゃあああっ!!」

 二人は同時にジャンプして、ギガントウェポンの女体部分の眼前に迫る。そして、ヴィクトリーが拳を、ルカが蹴りを、その身に叩き込んだ。

「っ……!!」

 彼女はそれに揺るぐも、腕をクロスする。

「はぁあああああーーーっ!!!」

 咆哮──それも、およそ人間の声ではない、獣のような雄叫び。

「!!?」

「しまっ──」

 それにはとんでもない威力が宿っており、彼らをぶっ飛ばしたのだった。

「っぐぁああっ!!」

「ど、どんな声量だ……!!」

 床に転がりながらも、体勢を整え、なんとか相手の方を向く。

「攻撃オプションK──」

 彼女は、頬を思いっきり膨らませてから、こちらへ火炎を吐き出してきた。火炎は渦となり、二人を包み込む。

「なにっ!!?」

「任せろ!!」

 ヴィクトリーはルカを抱え、舞空術で飛び上がる。それで炎の渦からも脱出し、火炎も振り切った。

「かめはめ波ぁっ!!」

 さらに、かめはめ波での反撃。青いエネルギーは一直線に伸び、ギガントウェポンの顔面で爆裂した。

「だぁあああー!壊斧・大山鳴動!!」

 更にルカがヴィクトリーを踏み台に跳び上がり、その脳天へ重い兜割りを叩き込んだ。

「どうだ……!!?」

 顔面へのかめはめ波に、ダメ押しの壊斧・大山鳴動。普通のモンスターなら、封印されているが──

「……破壊する。」

「!!?」

 ギガントウェポンは眉一つ動かさないまま、頭を振って、角でルカをぶっ飛ばした。

「うわぁあっ!!」

「ルカっ!!」

 駆け寄ろうとしたヴィクトリーにも、彼女は迫る。

「なっ……!!?」

 予想外のスピードに、防御が間に合わない。そのまま、ただの叩き落としで床に叩き付けられてしまった。

「ぎゃあぁあっ!!」

「はぁっ、はぁっ……つ、強い……!!」

 超強敵、ギガントウェポン──かつて聖魔大戦で猛威を振るった、古代兵器。これ以上とない、強敵だ。

 だが──

「負ける訳にはいかない……!!ここで止まる訳には、いかないっ!!僕はッ、僕は四天王の所に行かなきゃならないんだぁああああ!!!」

 ルカは炎の精霊の力を解放し、フルパワーを出す。

「ああ……!!俺はもう、止まんねぇええぞぉおおおおッッ!!!」

 ヴィクトリーも界王拳を20倍に跳ね上げ、限界以上の全力を出し切る事にした。

 燃え盛るが如く、紅蓮の気が二つ。ありったけの力を全解放し、なれる限りの最高状態になる。

「……いくぞ!!」

「おう!!」

 二人は、ギガントウェポンに突撃する。

「目標、こちらへ突進……破壊する。」

 彼女も助走をつけ、暴走する機関車のようなタックルをかます。

「どりぁあああああっ!!!」

 しかしそれは、彼らの手によって止められる。

「ついてこい、ヴィクトリー!!」

「おめぇこそ、遅れるんじゃあねぇ!!」

 言い合いながら、同時に攻撃を連打した。息をつかせる暇もないほどの拳と剣の攻撃連打。それは、確実にギガントウェポンに届いていた。

「っはぁああああーーーっ!!!」

 彼女は危機を感じたのか、あの破壊の咆哮を巻き起こし、二人を吹っ飛ばした。

「ぐっ……戦闘力、倍以上に増大……!!」

 そう言ってる間にも、二人は眼前へ戻ってくる。

「っ!!?」

「でりゃあああっ!!」

「だーーっ!!」

 二人の拳が、ギガントウェポンの顔面を打ち抜く。それで、十数メートルはある巨体を、ぶっ飛ばした。

「っぐぁあ……!!ひ、被弾多数、ダメージ高……危機レベルに突入。自己再生開始……」

 起き上がりながら、ダメージを再生していく。それも凄い速度で、回復していった。

「回復か……!!」

「くそっ……厄介だな……!!」

 バカみたいに跳ね上げた火力と、手数……それにより、体力をゴリゴリと削る事が出来た。しかし、肝心の一手──決定打が、まだ足りない。

「どうやら、敵は回復機能を備えているようだな。」

 ふと、そんな声が、ルカの中から聞こえた。サラマンダーの声だ。

「おそらく、回復能力を超える大ダメージを与えねばトドメは刺せんぞ。」

 冷静に分析するサラマンダーに対し、ルカは汗を流しながら剣を握る手に力を込める。

「でも、僕の技じゃあ……」

「いや、ルカ……今のおめぇになら使える……かつて、俺を半殺しにした技……あのグランベリアの得意技をな……!!」

「……!!」

 乱刃・気炎万丈──確かにこの目で、二回も見た紅蓮の奥義。しかし、今の僕に、あの技が出来るのか……?

「いいや、出来るとも!!やってみせる!!」

 ルカはそう言いながら、自分の中の疑問を振り切る。

「行けるか、ルカ……?」

「ああ……!」

 ルカは返事してから、猛ダッシュでギガントウェポンの前に迫る。

「紅蓮の炎を、この刃に託して……乱刃・気炎万丈!!!」

 炎が巻き起こる。剣の刃が炎上し、熱風が吹き荒ぶ。その剣で、無数の斬撃が繰り出され、ギガントウェポンを切り刻んだ。

 紅蓮の刃は再生したばかりの彼女を容赦なく切り崩し、ついには倒してしまったのだった……

「被弾多数、動力炉遮断……機能停止……」

 その言葉を最期に、彼女は剣の効果によって、獅子のような姿へ封印されたのだった……

「や、やった……!ど、どうにか、倒せたみてぇだ……!」

「ふぅ……」

 激戦を勝利で飾り、二人はようやく息を吐く。

「それにしても、今のやつは……」

 ルカは疑問に思う。

 レミナの廃墟を徘徊してた、キメラビースト……あれと、ギガントウェポンは何だか似ていた。かたや正体不明生物、かたや古代兵器……何故この二つが、似てるんだ?

「……ルカ。」

「ああ……今は、四天王か。」

 そう言い、二人は先へと進んだのだった……

 

 行く手を遮る魔物は出ず、辿り着いたのは非常に広大な広間。そこでは、四人の妖魔が待ち受けていた──

「ようこそ、ルカちゃんにヴィクトリーちゃん。まさか、ここまで来るとは思ってなかったわ……!」

 サキュバスの女王、風のアルマエルマ──

「ギガントウェポンを倒してしまうとはのう。ウチも、そこまでは予想しておらんかったわ。」

 九尾、土のたまも──

「わざわざ、私達に始末されに来るなんて……随分と、物好きなものね。」

 スライムの女王、水のエルベティエ──

「…………」

 魔族最強戦士の、炎のグランベリア──

 四天王が、この場に揃い踏みしている。一人一人が、あのギガントウェポンより強いのだ。

 圧倒的な迫力に、二人は息を呑む……が、怯みはしなかった。

 ルカが、一歩前に出る。

「僕達は、お前達を倒したい訳じゃない。ただ、人間を苦しめるような事をやめてほしいんだ。それが、人間と魔物、それぞれのためにも良い事だと思う……」

「悪いけど、それは出来ないわ。」

 そう言って来たのは、アルマエルマだった。

「私達が人間を力で威圧しなければ、人間の暴力は魔物全てに及ぶのよ。」

 次に、たまもが来た。

「人間は、ウチ達魔物を過剰に敵視しておる。その悪意がある限り、ウチ達としても力に訴えざるを得んのじゃ。」

 その次に、エルベティエが。

「人間が私達をさんざん苦しめておいて、今更何を言うの?」

 最後に、グランベリア。

「問答無用、そんな事を言いに来た訳ではあるまい。」

 ……と、以上が四天王達の言い分だ。いずれも、話し合いなんかでは解決しないだろう。

「話し合いで済むんなら、それに越した事はねぇさ……だけど、今回はどうも、そういうわけにはいかねぇみてぇだな……」

 ヴィクトリーがルカの隣に来て、指をボキボキと鳴らす。

「ああ……」

 ルカも剣を抜き、静かに構えた。

「お前達妖魔は、強い者しか認めないんだろう……?だから、僕はお前達を乗り越える!お前達を打ち負かして、人間と魔物の共存を認めてもらう!」

「そうだ!そのために、ここまで来たんだ!」

 勇ましく構えながら、言う二人──彼らを前に、アルマエルマが一番に笑った。

「そうね……私達を倒せる程の実力なら、説得力があるかも。私に勝てれば、考えてあげてもいいわよ……!」

 そう言いながら、進み出た。

「……僕から行く。いいな?」

「ああ……」

 ヴィクトリーは下がり、ルカが前に出る。

 

 こうして、ルカとヴィクトリーは、四天王達と激突したのであった……

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。