もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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風のアルマエルマ

 遂に激突する勇者達と魔王軍四天王。第一戦はアルマエルマとルカが戦うことになった。

「そういうわけで、一番手は私よ……以前に言った通り、たっぷりと遊んであげるわ。この手で、この胸で、このお口で、アソコで……ルカちゃんのおちんちんに、あらゆる快楽を与えてあげる……」

「ぐっ……」

 甘い誘惑の言葉に、僕の心は揺らぎそうになる。必死で心を強く保ち、誘惑を受け流した。

「ところでルカちゃん、明鏡止水とやらに目覚めたみたいね。私の風とどっちが速いのか、速さ比べをしてみない……?」

「相変わらず、そういう遊びが好きなんだな……」

 ため息を吐きながら、靴の先を潰しながら、足の指をボキボキと鳴らす、

「でも、明鏡止水はただ速く動く技なんかじゃない。それは、心の置き方なんだ……」

「そういう難しい理屈、私は好きじゃないの。あんまり小理屈を並べてると、食べちゃうわよ……」

「しょうがないなぁ……はぁっ……!」

 ルカは心を水の流れに委ねた。

「へぇ……それが明鏡止水なのね。なんだかゆらゆらして、おかしなルカちゃん。じゃあ、ちょっと試してあげるわ……」

 アルマエルマはルカに迫り、腹に拳を放った。

 回避が遅れ、まともに食らってしまった。

「がはっ……!?」

「な、なんだと……!?」

 場外にいるヴィクトリーも驚いているようだ。

 信じられないスピード──流れに乗っているはずの僕を、純粋な速度だけで凌駕してきたのだ。

「あらあら……水の流れより、私の風の方が速いみたいね。」

 アルマエルマは腹を押さえて悶えるルカの前に現れ、彼を見下ろす。

「いくら動きを先読みしても、戦いの流れに乗っても……元の速度に差がありすぎるから、回避が間に合わないのよ。」

「そ、そんな……!」

「る……ルカの明鏡止水が……通用しねぇ……!?」

 明鏡止水の心構えでさえ、アルマエルマのスピードの前では無力。相手は、それを無視できるほどのスピードで動いているのだ。

 まさに、圧倒的なスピード。防御の隙すらない速度。

「くっ……!」

 ルカは立ち上がり、構えて腕をクロスした。

「おっ?」

「はぁっ!!」

 シルフの力を解放し、疾風の動きを宿す。

「はぁあ……!!」

「最初の頃に比べれば、かなりマシにはなっているけど……ルカちゃんは、まだまだ風を使いこなしてはいないようね。」

「なんだと……!?」

 ルカは剣を構え、アルマエルマに斬りかかった。彼女はそれを避けながら、その顎を撫でる。

「風の泣き声が聞こえないのかしら……?もっともっと速く吹き乱れたいって、泣いてるのが……」

「……」

 僕は一旦止まり、風の声に静かに耳を澄ます。

 耳を傾ければ傾けるほど、風が深く訴えかけてくるのがわかる……そこに、シルフが彼の前に出てきた。

「……私、もっと頑張るよ。ルカと一緒なら、もっともっとがんばれるよ!だから、ルカも私を信じて。私の声を聞いて、私と一緒に吹き荒れるの……」

「ああ……分かった。風となって駆け抜けよう、シルフと共に。」

「ふふっ……聞こえたようね、風の声が。ほぉら、思うがままにに吹き乱れてごらんなさい。私の風とどちらが速いか、競争よ。」

 ルカは深呼吸をする。耳を澄ませ……風の声に……

 (はや)く──(はや)く……(はや)く……(はや)く……!!

「……はぁっ!!」

 ルカの動きに風が宿る。そしてその風が爆発して、吹き荒れる疾風そのものとなった。

「うぉっ!?」

 ヴィクトリーの所にも、暴風が吹き荒れる。

「凄いのう!」

 たまもはいつの間にか、彼の肩に座っていた。

「……いや、何でだよ!」

「よいではないか!お主の肩が一番座り心地がいいのじゃから!」

「い、意味分かんねぇ……!」

 その頃、ルカは自分の手を見ながら、今の自分に宿った力を確認する。

「す、すごい……これが、真の風の力……!」

 まるで、体が風そのものとなったみたいだ。どこまでも速く、遠く駆け抜けることが出来る……

「じゃあ、速さ比べをしましょうか……私とルカちゃん、どっちが速いか確かめてあげる!」

 アルマエルマはルカの懐に潜り込み、顔面と股間に掌底を放った。掌はそのまま、顔面と股間を捉えた……かに思われた。

「うふふっ……やっぱりルカちゃんね……」

 刹那、ルカはスウェイバックして、掌底を避けた。直撃の寸前の回避で、避けてみせたのだ。

「ふふっ……私の風についてこられるみたいね……」

「……」

 アルマエルマの動きが、目で追える。そして、十分についていける……この速度なら、互角の攻防が出来るはずだ。

「はぁっ!」

 ルカは剣を寝かせ、瞬剣・疾風迅雷を放った。

「痛っ……!」

 それは見事に直撃し、アルマエルマを揺るがせた。

「この私に、攻撃を当てたのね。やるじゃない、ルカちゃん……今のあなたは、私と同じくらい速いみたい!」

 軽く笑い、アルマエルマはマントの汚れを払った。

「仕方ないわねぇ……後に三人も控えているし、勝ちは譲ってあげるわ。」

 涼やかな笑いと共に出たのは、降参の台詞だった。

 あの時も、そして今も……アルマエルマは、あっさりと僕に勝ちを譲ったのだ。

「……いつも負けを認めるのが早いんだな、アルマエルマ。」

「あら、そうかしら……?」

「……戦う前に『自分が一番手』と宣言したよな、アルマエルマ。絶対に勝つという信念があるのなら、『一番手』なんて言い方はしない。」

 ルカは笑いながら、挑発的な態度で続ける。

「最初からお前は、まともに勝つ気なんてなかったんじゃないか?適当に戦って、適当な所で勝負から抜けるつもりだったんだろう?気まぐれに吹き荒れるだけで、真剣にぶつかる事はない……お前の風は、そんな空虚な風だよ。」

 船上での戦いでも、コロシアムでの戦いでも……そしてアリスの話では、魔王選抜の儀式の時でも……アルマエルマは、いつもたやすく相手に勝ちを譲ってきたのだ。まるで、真剣勝負から逃げるかのように……

「それだけ強いのに、真剣勝負が怖いのか……?本気で戦うのが、そんなに嫌なのか……?」

「……」

 アルマエルマの眉が吊り上がり、青筋が浮かぶ。僕達の前で、初めて見せる表情だ。

「……何が言いたいのかしら、ルカちゃん?」

「……こんな勝ち、僕は認めない。僕には、絶対譲れないものがある!それをお前達に認めてもらうために、僕は戦っているんだ!だからお前も本気を出せ、アルマエルマ!たまには手を抜かず、最後まで本気で戦ってみろ!」

「……」

 アルマエルマの青筋が増え……そして、それは頬にまで伝わった。

「ふぅん……随分と勇者してるじゃない。立派になったものね、ルカちゃん……いや、勇者ルカ。」

 アルマエルマの声がドスの効いた声に変わり、ビリビリと闘気を放つようになる。

「そうまで言うのなら……本気で相手をしてあげようかしら。クィーンサキュバスのこの私が、勇者あなたに対して……!」

 アルマエルマは気を解放し、構えた。

「望むところだ、来い!!」

 僕は改めて構えた。構えた瞬間、押し寄せてくる圧倒的な威圧感。今までとは違う、甘さと冷たさが入り交じった妖気だ。

 これが、アルマエルマの本気か……

「……はぁっ!」

 アルマエルマは突進し、顎と胸と膝にジャブを放った。

 だがルカはそれを全部避け、左手で拳を握り、彼女の顎にアッパーカットした。

「っ!?」

 打たれた!?この私が!?いや……ルカちゃんがアッパーカットを!?

「おぉおおおっ!!すげぇっ!」

「る、ルカが……アッパーカットとは……」

 ヴィクトリーとたまもは湧き上がる。

「……」

「……」

 グランベリアとエルベティエは、無表情のままその戦いを見つめるのみだった。

「はぁっ!!」

 ルカが、アルマエルマの腹に前蹴りを放った。それも、確実に腹を捉え、打ち抜く。

「んぐっ……!?」

「だぁああッ!!」

 土の力を利用した兜割り──壊斧・大山鳴動をその脳天に炸裂させ、彼女をダウンさせた。

「ぐぅっ!!」

 アルマエルマはダウンした状態から、ローキックを放ってくる。

「よっと!」

 しかし、ルカはそれを足で止めてみせた。

「なっ……!?」

 明らかに不意打ちにも近い、ダウンしてからのローキック。それが、あっさりと止められてしまった。

「……そんなものか、アルマエルマ!」

「くっ……!」

 彼女は立ち上がり、ラッシュを仕掛けた。彼はそれを切り返し、受け流し、防御する。

 疾風の極みに辿りついた者同士の、互角の攻防は、凄まじい速さで行われた。まるで、嵐同士がぶつかり合っているかのようだった。

「はぁああっ!」

「……」

 アルマエルマが、ルカの胸を指でなぞった。

「……?」

 思わず、攻防を止めてしまった。

「……甘いわ、ルカちゃん。」

 次の瞬間、その胸に寸勁(すんけい)が放たれた。

「がはぁっ!!」

 ルカは6〜7m近くぶっ飛び、倒れた。

「あ、あれは……!」

 ヴィクトリーが、その技に反応する。

 超龍閃撃の元になっている技、寸勁(すんけい)。武闘派だとは察していたが、そんな技まで使えるなんて……

「ふふっ……!」

 だけど、ルカも伊達ではない。

「あ、あやつ、既に土の力が極まっておるのか……!」

「ついでに、火も極まってるぜ。」

「はぁっ!!」

 ルカはアルマエルマに突進し、連続で斬撃を放った。

「うぐ……ぐぐぐ……!!」

 彼女は防御しながら、反撃のチャンスを伺う。

「そらっ!」

「きゃっ!?」

 ルカはアルマエルマに足払いをかけた。彼女の体が半回転し、彼はその足を掴んで、乱暴にぶん投げた。

「くっ!」

 アルマエルマは羽を羽ばたかせ、投げの威力を殺してから壁に足をつき、壁を蹴って飛び蹴りした。

「くそっ!」

 ルカは腕をクロスして、ガードする。その飛び蹴りの威力で靴を床に擦らせながら、後退してしまう。

「まだまだよ……!」

 アルマエルマは跳んで、ルカの顔面に膝蹴りを放った。

「ぐぁっ!」

 彼は直撃を許してしまい、鼻血を噴き出しながらぶっ飛ぶ。

「そこっ!」

「っ!?」

 アルマエルマはぶっ飛んでる最中の彼の足を掴み、地面へと叩きつけ、顔面を踏みにかかった。

「ぐっ!」

 彼はそれを避けて立ち上がり、再びアルマエルマに挑む。

「このっ!」

 彼女は、その顔面に正拳突きを放った。

「はぁっ!」

 彼はなんと、その正拳突きを額で受け、流血しながらも突っ込んでくる。

「はぁっ!?」

 これには、流石のアルマエルマも驚いた。

 ど、どんなタフネスしてるのよ……!?と。

「おおっ!額で……!」

 一方で、ヴィクトリーは感心していた。

 そうだ、拳は額で受けた方がダメージが少ないんだ!と。

「行くぞっ!」

 ルカはアルマエルマの懐に潜り、魔剣・首刈りを放った。彼女の喉元が突き上げられ、体が打ち上げられた。

「ごはぁっ……!!」

 彼女は宙を舞ってから着地して、靴を脱ぎ捨てる。

「ルカっ!!気をつけろ!!」

「ああ!!」

 ヴィクトリーからの注意喚起──そう、武道家が靴を脱ぐというのは、いわゆるリミッターを切るという事。それは、彼自身がどういうことか、一番わかっている。

 なので、警戒した。

「はぁっ!」

 アルマエルマは、ルカの顔面に蹴りを放った。

「ふっ!」

 それをギリギリで避ける……が、髪が彼女の足に掴まれた。

「はぁっ!」

「きゃっ!?」

 その際に、無理矢理頭を傾げて、足を引き剥がした。

「せぇいっ!!」

 そして、アルマエルマの腹に突きを放った。だが、剣先を足の指で掴まれる。

「かかったわね……!」

「あっ!」

 次の瞬間、刃が大きく弾かれ、その足でルカの足を踏みつけた。

「ぐっ……!」

 剣を手放さんと、腕に力を込める。それで、ボディを晒してしまった。

 その時気づいた。足が踏まれ、逃げられな──

「はぁあああっ!!」

 ルカの腹に、何度も拳が叩きつけられた。

「がはっ……!?」

「これで……」

 アルマエルマは足の指を全部折りたたみ、狙いを澄ませ……

「トドメよっ!!」

 ルカの喉に、渾身の爪先蹴りが炸裂した。

「ガハァアアアアアッッッ!!?」

 ルカは、喉と腹を押さえて悶絶した。

 つ、強い……これが、本気のアルマエルマ……!!普段のおちゃらけた態度からは想像もつかない程のエグい攻撃……!!だが──

「はぁっ……はぁっ……!!」

 アルマエルマは肩で息をしながら、その様子を見る。

「……はあっ!」

 ルカは立ち上がり、ゲホゲホとせき込みながら彼女を睨んだ。

「な……!?わ、私の足技をくらって……!?」

 彼女は驚き、一歩下がってしまう。初めて、ルカという存在に恐怖を抱き始めたのだった。

 ルカはと言うと、目を瞑って、瞑想していた。

 ここで僕が負ける訳にはいかない……だから──

「反撃、開始!!」

 ルカは、クラウチングスタートの体制をとる。

「くっ……!!」

「よ〜い、どんっ!!」

 次の瞬間には、彼女の顔面をぶん殴っていた。

「……っ!?」

 さすがのアルマエルマも、接近が目で追えなかったようだ。

「こ、この……!!」

「やぁああっ!!」

 彼女の攻撃を、形になる前に切り返す。

「えっ……!?」

「行くぞぉおおおおっ!!」

 ルカの剣が発火し、気が爆発する。

「はぁああああああーーーっ!!!!」

 走りながら剣を左右上下に振り、何度も彼女を切りつけた。

「ぐっ!!」

 アルマエルマは剣を掴み、斬撃を止めてから、こめかみに足刀を放った。

「はぁああっ!!」

 彼は直撃しながらも、彼女に託すように剣を手放しながら、顎を後蹴りで打ち抜いた。

 これにはさすがのアルマエルマも、大ダメージで足がガクガクと震える。

「そ、そんな……!!」

「はぁあああっ!!!」

 ルカはアルマエルマの手を蹴り上げ、彼女に託した剣が真上に打ち上げれる。

 更に風の力を使って、大きく跳躍した。

「え……!?」

「くらえっ!!」

 ルカの渾身の両足蹴りが、アルマエルマの顔面を打ち抜く

 彼女は何歩か下がってから、膝をついた。

「や、やられ……!!!」

「終わりだ……!!」

 そこに宙を舞っていた剣がルカの手に戻り、灼熱を放った。

「乱刃・気炎万丈ォオオオオッ!!!!」

 膝をついたアルマエルマの全身に、無数の紅蓮の斬撃が走った。それがトドメとなり、彼女は倒れたのだった……

「……私の負けよ、今度こそね。私は、クィーンサキュバスとして本気で戦ったわ……」

「……」

 僕は体から溢れる身の丈を超える達成感を抑えながら、剣を納めた。この僕が、アルマエルマに勝った……初めて、対等に戦った上で四天王の一人を打ち破ったのだ!

「ふふっ、敗者は勝者に従うしかないわね……」

 アルマエルマは立ち上がり、ルカの前に立つ。

「人と魔物の共存……それが、ルカちゃんが剣をもって訴えたかったことよね?」

「うん、そうだよ。恐怖をもって威圧する以外のやり方を、考えてみてほしいんだ……」

「分かったわ、従ってあげる……元々私は、別に人間が嫌いって訳じゃないしね。コロシアムが無くなると寂しいし、人間のオスは大好きよ……」

「あぁ、信じているよ。」

 これで、アルマエルマは人間を襲わない筈だ。サキュバスだから、色々あるかもしれないが……少なくとも、度を超えた危害を人間に加える事は無いと信じたい。

「ルカっ!!」

 ヴィクトリーが、手を上げながら、近寄る。

「ん、あぁ!」

 二人は、気持ちのいいハイタッチを交わした。

「よくやったじゃねぇか!あのアルマエルマを倒しちまうなんてよ!」

「うん……僕は、負けるわけにはいかないからね……」

 とりあえず、まず一人。残る四天王は、あと三人だ……

「じゃあヴィクトリー、頼んだよ。」

「おう!任せとけ!」

 ヴィクトリーはルカと交代し、準備運動を始めた。ここでふと、ある事に気付く。

「……あれ?たまもは?」

 たまもの姿がない……

「ここじゃよ。とろいのう。」

「うわっ!?」

 たまもが、俺の背後から声をかける。こいつ、完全に気を消してやがった……

「それにしても、お主の連れはやるようになったのう。あのアルマエルマを倒すとは……」

「だろぉ?ただ、俺も負けてねぇ〜ぞ〜?」

「そうか、じゃあお主の相手はウチで決まりじゃな!」

 第一戦は、からくもルカが勝利した。第二戦は、ヴィクトリーとたまもが対峙する。

 ヴィクトリー、ルカに続けるか……?

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