もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

114 / 227
火のグランべリア

 ルカがアルマエルマを倒し、続いてヴィクトリーもたまもを倒した。そこに乱入したエルベティエを叩き伏せ、彼はルカに変わり……

 ルカは、グランべリアと対峙した。

「……」

 グランべリアは静かに歩み寄り、正面にある巨大な扉の前に立ちはだかる。

「この奥は、魔王様の間だが……知っての通り、アリスフィーズ様はそこにはおられない。よって……私を倒せば、お前達は目的を果たした事になるのだ。」

「ああ……これが、最後の勝負だ!」

 この戦いに勝てば、僕達の冒険は終わる。四天王全員から理解を得て、人間側に危害を加えることはなくなる。それは、人と魔物の共存に向かう大きな一歩となるはずだ。

「……やるのか、二人とも……」

 ヴィクトリーが、二人に声をかける。

「手出しは無用だ……」

「まぁ、見ていろ……」

 二人は剣を抜き、構えた。

「最後の勝負だ、グランべリア……!僕が勝ったら、人間を苦しめるような事はやめてもらう!」

「ああ、全力で来い!お前の全てを、私に見せるがいい!」

「言われなくても見せてやる……!ここまでの戦いで身につけた、僕の全てを!」

 ルカは、まず風の力を解放する。

「なるほど、それが疾風の動きか……だがっ!!」

 グランべリアは雷鳴のように踏み込み、鋭い突きを繰り出した。ルカは回避が遅れ、それに直撃する。

「がはっ……!!」

「確かに、速さは凄まじい……が、所詮は人間が制御している動作。お前の心の流れを掴めば、風の動きとて制することは容易い!」

 グランべリアの凄まじい戦いのセンス。風の動きすら、圧倒するなんて……

「他の精霊の力も見せてもらおうか……」

「言われなくても……!!」

 ルカの筋肉がボンッと張り、土の力が宿る。

「かぁああ……!」

「ふんっ!!」

 グランべリアは剣をルカの頭に振り下ろした。ルカはそれをガードしたが……

「うぐぁあっ!!?」

 ガードしても、跪いてしまう程の威力。

「ぐぐぐ……!!」

 極まった大地の力でさえ、グランべリアの剣を鈍らせるのが精一杯のようだ。

「じゃあ、こいつはどうだ……!」

 ルカはウンディーネを呼び出し、心を水に委ねた。

「ほう、明鏡止水か……この短期間でその領域までたどり着けたのは見事。だがっ!!」

 グランべリアの魔剣・首刈りが直撃し、ルカは天井にすっ飛ばされた。

「ぐはっ……!!」

「お前の明鏡止水には、まだ曇りがあるようだな……」

 ルカは何とか着地し、遂にサラマンダーの力を解放した。

「懐かしいな、その煉獄の魔技……」

「ぶつけてやる……!!この僕の、最高奥義を!!」

「ふん……来いっ!!」

 二人は、気を解放した。

「乱刃・気炎万丈ッ!!」

「死剣・乱れ星ッ!!」

 ルカの乱刃・気炎万丈とグランべリアの死剣・乱れ星がぶつかりあい、そして相殺された。

「そ、そんな……!!」

 死剣・乱れ星は乱刃・気炎万丈の下位互換の技の筈だ。まさか、完全に相殺されるなんて……

「やはり、所詮は借り物の技のようだな。……しかし、決して未熟とは言うまい。劣化コピーとはいえ、私の最強奥義を模倣したのだ。そこまで出来る人間の剣士は、世界でもお前ぐらいだろう……」

「……」

 それでも、本家本元に及ばなければなんの意味もない。グランべリアはあまりにも強く、あまりにも圧倒的だった……

「……精霊の力、全て見せてもらった。妖魔と比べ肉体能力で劣る人間が、その優位を埋めるべく修めた力……いにしえの勇者ハインリヒも、大した技能を編み出したものよ。誇っていいぞ、ルカ。人の身でありながら、そこまで力を極めた自分自身をな。」

 ルカは拳を握って、グランべリアを睨んだ。

「戦いに負けて、誇る事なんてない!僕は、勝つためにここへ来たんだ!」

「ふ……もっともな事だ。しかし、今のお前では私に勝てはしない!」

「ぐっ……!」

 それでも、まだグランべリアには届かない。もう、ここまでか……

「バッキャロー!諦めるなーっ!!」

 そこで、ヴィクトリーが声をかけてくれた。

「ルカーっ!!おめぇの水の力とやらはまだ極まってねぇ!まだ望みはある筈だーっ!!」

「水の力……そうか……僕の明鏡止水には、まだ曇りがあるんだ……」

「その通り。同じ明鏡止水でも、私とお前では大きな差がある。その心、更に研ぎ澄まさなければ私には勝てまい!」

「……」

 僕の中のウンディーネも、飛び出してきた。

「……ここで負ければ、あなたの望みは露と消える。今まで戦ってきた意味も、全て消え去る。」

「ああ……だから、僕は勝つ。絶対に勝たなきゃいけないんだ……!!」

「ならば、もう一度私を呼びなさい。その信念の強さが、心を研ぎ澄ませる。あなたが強く念じれば念じるほど、その心から曇りは消え失せる。その時こそ、明鏡止水の極みに到達するわ……」

「……あぁ!」

 ルカはウンディーネの力を解放し、心を鎮めた……

「……」

 様々な思いが、力となり……その力が研ぎ澄まされていって……そして、遂にたどり着いた。明鏡止水の極みへ……

「……おおっ!」

 ルカからは、一切の気が感じられなくなった。遂に、極まったようだ……

「これが、明鏡止水の極み……」

 僕は、驚くほど静かな水の流れにいた。まるで、じんわりと閉じていく時間の中にいるようだ。おそらく、グランべリアもこの領域にいる。同じステージに立てたのだと、確かに実感できる……

「ふふ……ここからが、本番というわけか……いいだろう!その手並み、見せてみろ!」

「ああ……言われなくても、見せてやる……!」

 二人は走り寄り、剣をぶつけ合った。

「やぁっ!」

「がぁっ!」

 剣が激しくぶつかり合い、火花を散らす。互いの剣が頬に掠り、距離をとった。

「がぁあっ!!」

 グランべリアの疾風血裂雷鳴突きが、ルカに迫る。彼はそれを凌ぎ、身を回して彼女を切り上げた。

「ぐっ!?」

 彼女のガードが崩れ、ボディが空いた。

「そこだぁっ!!」

 がら空きのボディに、ルカの瞬剣・疾風迅雷が叩き込まれ、彼女はぶっ飛んだ。

「がはぁっ……!!」

 彼女は剣を床に突き立て、着地する。

「だがっ……!!」

 そして剣で床を削りながら迫った。その摩擦か、あるいはグランベリアの魔力か、剣が発火し、その剣でルカを切り上げた。

「ぐあぁっ!!」

「そこだぁっ!!」

 浮かぶ身体を見据え、気を解放してから、その体を十文字切りした。

「ぐっはぁ……!!」

 ルカは大ダメージを負って、ダウンしてしまう……が、すぐさま立ち上がった。

「そうでなくては……面白くないっ!!」

 グランべリアは剣を腰に携え、魔刀・明鏡止水を放った。

「はぁっ!!」

 ルカはそれを刃で受け止め、力を込めて突っぱねた。

「なにっ!?」

「てゃあっ!!」

 そして、その手を切り上げた。彼女の手から剣が離れ、巨剣が後方に突き刺さる。

「……ふふ……考えたな……!」

「はぁっ!」

 ルカは、そのグランべリアに突きを放った。

「はぁっ!」

 彼女は合気で彼の体を持ち上げ、後方へと投げ飛ばした。

「ぐぁあっ!?」

「……私が、剣を振ることしか出来んと思ったか?」

 グランべリアはそう言いながら、軽快なフットワークでステップを踏み、突進してくる。

「くっ!?」

 グランべリアの接近が速く、あっさりと僕の眼前まで来てしまった。

「はぁっ!」

 彼女はルカの髪を掴み、そして顔面を床に叩きつけた。

「ぐぶぁっ!?」

「終わったな……」

 立ち上がろうとするルカの横っ腹を、蹴り飛ばした。

「ぐぁあっ!!」

 ルカはまたダウンしてしまうが、すぐさま立ち上がった。

「くっ!」

「はぁっ!」

 グランべリアは既に眼前に迫り、顔面を掴みにかかってくる。

「ぐっ!!」

 ルカはその手を弾いて、彼女の顎を蹴り上げた。

「っ!?」

「はぁああっ!!」

 そして、上を向いた顔面に向かって剣を振り下ろした。

「ぐっ!!」

 グランべリアはその剣を白刃取りし、弾き返そうと力を込めた。

「がぁああ……!!」

「はぁああ……!!」

 二人の力が押し合い、剣からは火花が散る。

「がぁっ!!」

 ここで、ルカが一気に力を込める。それによって刃は彼女の手をすり抜けて、その体をぶった斬った。

「ぐぁあっ!!」

 グランべリアはよろめいてから、笑いながらルカを見た。

「いいぞ、ルカ……!」

 そう言いながら巨剣を取り、構えた。

「す、すげぇ……!!あのグランべリアと渡ってやがる!!」

「おったのか……あのグランべリアと、剣技でぶつかり合える人間が……」

「ルカちゃん、本当に強くなっちゃったわね……」

 ヴィクトリーや四天王達も、ルカの成長に驚嘆する。

「か、勝っちまうぜ、ルカのやつ……!!」

「がぁああっ!!」

「はぁああっ!!」

 ルカとグランべリアはまたぶつかり合い、凄まじい猛攻が繰り広げられた。

「はぁっ!」

 グランべリアのなぎ払いが、胴を斬る。

「がぁっ!!」

 ルカの切り上げが、顔を斬る。

「そこだっ!!」

 グランべリアは剣を振り上げ、逆袈裟切りにした。

「どりゃあっ!!」

 ルカはグランべリアに足払いをかけて、その体を半回転させた。

「なっ!?」

「はぁあああーっ!!」

 そしてその足を掴んでぶん投げ、走りながら何度も彼女を切った。

「ぐぁあああ……っ!!」

「だぁああーーーっ!!」

 そして、トドメといわんばかりに顔面に両足蹴りを放ち、蹴り飛ばした。

「が、がはっ……!!」

 グランべリアはルカの猛攻に耐えかね、遂にダウンした。

「や、やった……!!」

 遂に、遂にグランべリアが僕の前に倒れ伏した!

 身の丈を超える達成感を抑えきれず、思わずガッツポーズを取ってしまった。

「……はぁああーっ!!」

 グランべリアは、気を解放しながら立ち上がった。

「……そろそろ、小競り合いにも飽きた。ここは、大技で決着をつけるとしよう。」

「……」

 小競り合いといっても、僕の方は必死だった訳だが。

「互いに最強の奥義を繰り出し、立っていた方の勝利……それこそ、この戦いの決着にふさわしいと思わんか?」

「ああ……望むところだ!」

 僕は、乱刃・気炎万丈の構えをとった。決着は、同じ技をぶつけ合うのだ……

「……いや、それは違うな。私が見たところ、お前はなんらかの奥義を隠している。」

「ああ……でも、あれは……」

 カドラプル・ギガは、あまりにも隙が大きすぎる。どう控えめに見ても、実戦で使える技ではないのだ。

「……あれは、今の僕じゃ使いこなせない。準備を整えるのに、時間がかかるから……」

「構わん、それでいい。」

 グランべリアは剣を構え直した。

「互いに、これが最後の一撃だ。さぁ、お前の奥義を見せてみろ!」

「だったら、見せてやる……!!僕の中の全てを込めた一撃を……!!!」

 ルカは剣を掲げ、まず風の力を込めた!

「……その風の力を、直接ぶつけるという技か……?……いや、それだけではないようだな。」

「来い、ノーム……!」

 ルカの剣に土の力が宿った。

「土の力まで……?しかも、まだ終わりではないのか……?」

「来い、ウンディーネ……!」

 ルカの剣に水の力が宿った。

「なるほど、そういう技か……」

「……」

 今の内に、攻撃をすれば間違いなくグランべリアの勝ちだ。だがグランべリアは、自分の最高の技で僕のこの技を破ろうとしている。

 やたら時間がかかるこの技……のんびり待ってくれる相手など居るはずが無いと踏んでいたが、本当に待ってくれる奴がいたなんて……

「来い、サラマンダー……!」

 ルカの剣に火の力が宿った。

 ルカの剣からはおびただしいほどのエネルギーが宿り、この城を震わせていた。

「準備が整ったようだな……」

「ああ……」

 思わず礼を言おうとしたが、とどまった。互いの最強技で決着を付けるため、絶大な隙を見逃してくれたグランべリア。その感謝に応えるには、この究極奥義を悔いのない形で見せるしかない……!!

「行くぞ、グランべリア!!」

「来い、ルカっ!!」

 二人は一歩踏み出し、自分の最強技を放った。

「乱刃・気炎万丈ォオオオーーーッッッ!!!」

「カドラプル・ギガァアアーーーッッッ!!!!」

 二人の技がぶつかり合い、凄まじいエネルギーが膨張して、極大的な大爆発が巻き起こった。

 次の瞬間、カドラプル・ギガが乱刃・気炎万丈を消し飛ばし、全てを砕く力がグランべリアに叩きつけられた。

「見事……!」

 グランべリアはボロボロになりながら、倒れ伏した。

「……や、やった……!!やった、やったぁああーーっ!!」

「僕が……勝った……?」

 勝利の喜びが湧き上がるどころか、呆然としてしまう。

 目の前で、あのグランべリアが倒れ伏している……その姿が、夢か幻に見えてしまう。

「ああ……確かに、私の負けだ。実に、見事な技だった……」

 そのままグランべリアはフラフラと立ち上がり、息を吐いた。封印にまでは至らなかったものの、もはや戦意は残っていないようだ。

 これで、グランべリアを倒した……となると……

「やったぞルカーっ!!とうとう、四天王をぶっ倒しちまった!」

「あぁ……!!」

 ヴィクトリーとルカはハイタッチし、居並ぶ四天王の姿を見回した。

 アルマエルマは涼しい顔、たまもはにこにこと微笑み、エルベティエは不機嫌そうな顔……これで、僕達は全ての四天王を倒したのだ。

「じゃあ……約束通り、これ以上人間を苦しめないでくれ。その代わり、人間にも魔物を苦しめるようなことはやめさせるから……」

「俺からも頼むぜ。」

「……戦士に二言はない。」

「ええ……分かったわ。でも、コロシアムに出るのは構わないわよねぇ?」

「ウチは、最初から人間と仲良しじゃ!」

「人間から迷惑を掛けてきたら、ひどい目に遭わせるから……」

 四天王達も、僕達も握手を交わす。

「よし、じゃあルカっ!」

「ああ!これからは……」

 その時だった。

 周囲を圧倒するほど強大な魔力が、不意に地面を揺るがした。

「な、なんだ……!?」

「……この気は……っ!!」

 ヴィクトリーはそう言いながら、扉を見た。

 彼が見た扉の向こう……魔王の間に、とてつもない力の持ち主が現れたのだ。

「この魔力は……魔王様?」

「アリスフィーズ様!?いらっしゃったのか……!?」

 突然の事態に、驚愕の表情を浮かべる四天王達。

 いったいなぜ、アリスがあらためて魔王城に……!?

 その時だった……扉の奥から、仰々しいアリスの声が聞こえてきた。

「よくぞ四天王を倒した、ルカとヴィクトリー……いや、勇者一行よ。さぁ、余のもとに来るがいい!万物の魔王を統べる、魔王のもとへ!」

「アリス……!?どうしちまったんだ……!?」

「な、何を言ってるんだよ……!アリス……!」

 四天王達が背にしていた巨大な扉が、ゆっくりと開く。まるで、魔王の間に僕達を迎えるように……

「アリス……!」

 先に走り出したのは、ルカだった。

「あっ、待てルカぁっ!」

 ヴィクトリーはそのルカを追うように、走り出す。

「ま、待つのじゃ二人とも!」

 制止するたまもの声は、二人の耳には入らなかった。

 

 そのまま二人は、魔王の間に駆け込んだのだった……

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。