もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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魔王アリスフィーズ

 四天王を倒した勇者一行。そんな勇者一行を呼ぶように、アリスは魔王の間の扉を開けた。

 

 その扉を抜け、通路を抜けた先……魔王の間。そこで待ち受けていたのは、やはりアリスだった。

 アリスは僕達に対して、まるで他人のような視線を送り……そして、おごそかに口を開く。

「……勇者一行よ、よくぞここまでたどり着いた。余こそが魔王、アリスフィーズ16世である。」

「お、おい……!何を冗談を言ってるんだよ、アリス!」

「そーだそーだ!四天王達はもうぶっ飛ばしたんだ!もう戦う理由はねぇだろうが!」

 戸惑う二人に対し、アリスは冷たい視線を向ける。まさに、冷酷な魔王そのものの眼差しを……

「さぁ……余を倒しに来たのだろう?構えろ、勇者一行!魔王の力、その目に焼き付けるがいい!」

「……」

「いや、その目に焼き付けるがいいって言われてもよぉ……」

 これは、なんの冗談なんだ……?こんな風に僕達を驚かせて、後で笑いものにする気なのか……!?そんな冗談なんていいから……

「いい加減にしろよ、アリス!僕は……」

「ルカ……貴様は、勇者なのだろう。」

 アリスはルカの言葉を遮った。

「勇者が魔王城に来れば……何を成すか、一つしかあるまい。」

「アリス……」

「お、おかしいだろうが!!」

 ヴィクトリーが手を広げて、アリスに怒鳴った。

「もう俺達に戦う理由はねぇだろ!もう、もう……!」

「……『決着は魔王城でつける』……そう言ったのはヴィクトリー、お前だぞ……」

「ーっ!あんな言葉、本気に取るバカがいるかぁああーっ!!」

「……っ……!」

 この瞬間、僕達は悟っていた。これは、何の冗談でもない。

 アリスは魔王として、勇者一行である僕達に相対しているのだ。

「お前……ま、まさか……!!」

 アリスの母は、人と魔物の共存のため、自分から勇者に倒された。魔王である自分の死をもって、人と魔物の和解を成そうとしたのだ。そしてアリスは、母親の意志を継ぐと誓ったはず……

「アリス、お前……母親みたいに、自分が犠牲になる気なのか!?」

「余は魔王で、貴様らは勇者一行。戦うしか道は……」

「死ぬ気かって聞いてんだ!!てめぇ、わざと俺達に殺される気なのかよ!!」

「……二人とも、これは魔王としてのけじめなのだ。魔物を統べる王として、人と魔物の和解を成すためには……そのためには、いわば儀式が必要なのだ。大衆は、分かり易い物語を求めている。勇者が魔王を倒すという、そんな単純明快な物語をな。それは古い時代と決別し、新しい時代を迎えるための儀式なのだ……」

「そんな……」

「……」

 確かに、ルカも母親の意志を継いだ方がいいみたいな事は言っていた。だが、それは人と魔物の共存を目指そうという意味で、断じてこんな……

「……ふざけるな!僕は、こんなつもりで言ったんじゃない!」

「そ、そーだそーだ!おめぇの勝手な御託を並べて……」

「貴様らがどう思おうが、関係ない!」

 アリスは二人を一喝し、悲しそうな顔をする。

「……余は、魔王としての仕事をなすまでだ。」

「勇者に倒されるってのが、魔王の仕事なのかよ!」

「勇者の仕事ってのは、魔王をぶっ殺す事なのかよ!!」

「それで、世の中は上手くまとまる。魔王の死によって、魔物達は暴れるのを止めるだろう。その後は……魔王を倒した勇者たる貴様らに任せる。世界は貴様らを、英雄として迎えるはずだ。」

「僕は……英雄になりたいわけじゃない……」

 ルカは涙ぐみながら、そう言い放つ。

「そう言うな、時代の節目には英雄が必要なのだ。これこそ、母上の望んでいた事。それを台無しにした余が、あらためて実行するに過ぎない。」

「……ふざけんなァアァアッ!!!」

 アリスは、いつからこんな事を考えていた……?もしかして、ルカに色々と特訓を施したのも……今まで、俺達を助けてくれたのも……

「まさかアリス……自分の自殺の道具にするために、ルカに修行を施したっていうのかよ!」

「そ、そのために……そのためだけに、四精霊の力を借りるように言ったのか!?全部、自分を殺させるために!!」

「最初のうちは、ただの余興に過ぎなかったがな。一緒に旅をしているうち、貴様らなら任せられると確信した。そして人間は、魔物を共存相手として迎えることが出来る。まだまだ、世界は希望に満ちている……貴様らと世界を見て回り、それを悟ったのだ。」

「ぐ……!!」

 僕は、胸が締め付けられるような思いに囚われた。アリスの真意さえ見抜けず、色々な技を身につけて浮かれていた自分の愚かさに腹が立つ。

 そんな僕の背中を擦りながら、ヴィクトリーはアリスを睨んだ。

「そんな世界を見ながら、そんな考えしか出来なかったのかよ……自殺してまで……なぁ!!?」

「犠牲を得なければ、成せんこともある。貴様らも子供ではないのだから、それくらいは分かっているだろう。」

 アリスは立ち上がり、二人を睨んだ。

「さぁ、勇者としての責務を果たせ!貴様らは、何のためにここに来た!?」

 ルカは地面を強く踏み鳴らし、アリスを睨んだ。

「僕達は、魔物が人間を苦しめるのを止めさせに来たんだ!魔王を……お前を、殺すために来たんじゃない!」

「もう、俺達の目的は済んだ!四天王も人間を害さねぇって言ってくれた!だから、おめぇの命なんていらねぇんだよ!」

「甘いことを言うな!少なくとも、人間側はそう簡単に納得するはずがあるまい!魔王が滅びたという事実が無ければ、人間は納得しないということが分からんか!!」

「こんなの、違うよ……!」

「こんなの……ねぇだろ……こんな……こんな……!!」

「頼む……もうこれ以上、余を困らせるな……」

 震える二人に、アリスは悲しそうな声で言う。

「貴様らは、勇者なのだろう?当の貴様自身がどう思おうが、勇者は魔王を倒すために存在するのだ。貴様らの抱く信念だけを信じろ。他の何にも囚われるな。二人とも……今の貴様らが成すべき事は分かるな?」

「僕は……」

「俺は……」

「さぁ、構えろ二人とも。ルカは堕剣エンジェルハイロウではなく、貴様の手持ちの剣を。ヴィクトリーは殺意を込めた拳を……悪いが、封印や気絶などという中途半端な真似は遠慮させてもらうぞ……」

「……僕は……」

 ルカが剣を構えるのを待たず、アリスは戦闘態勢に入った。

「勘違いするな、決して八百長に転じるつもりはないぞ。貴様らの攻撃に迷いがあれば、返り討ちにしてくれる。実力で余を打ち負かすほどでもなければ、この世界は任せられんからな……」

「……やるしかねぇ……やるしか……!!」

「……アリス……」

 二人は構え、気を全解放してアリスに突っ込んだ!

「こんの馬鹿がぁあああーーーっ!!!」

「アリスーーーッッ!!!」

 アリスは消え、二人の背中に肘を落とした。

「ぐぁあっ!」

「ぎゃあっ!?」

「そんな程度か……!?」

 尻尾でヴィクトリーをぶっ飛ばし、ルカを巻き上げる。

「なっ……!?」

「勇者ぁあああーっ!!」

 そして、頭から床に叩き付けた。その叩きつけはあまりにも強力で、上半身が床に埋まってしまった。

「……これで、終わりではないだろうな……!?」

 アリスはそのルカの足を掴み、床から引き抜いた。

「うぐぐ……!」

「ふっ……」

 そこにヴィクトリーが突っ込み、アリスの蛇部分に足払いをかけてすっ転ばせた。

「なにっ!?」

 アリスは、足から手を離してしまう。それを確認したヴィクトリーは拳を握り、彼女の顔面をぶん殴った。

「……っ!!」

 鼻血。彼が、本気でぶん殴ってきた証拠だ。

 アリスは己が鼻から吹き出る赫を確認しながらぶっ飛び、一回転して着地する。そして鼻血を拭って、にやりと笑ってからヴィクトリーを指さした。

「……生意気だぞ、貴様。」

 アリスの指先から、無数のビームが二人に向かって放たれた。

「くっ!」

「はぁっ!」

 二人はそれを全て弾き飛ばし、猛攻を仕掛けた。

「はぁああーっ!!」

「てぇやああーっ!!」

「うぉおおおっ!!」

 アリスは二人の猛攻に対応し、隙を見て二人に強烈な一撃を放った。

「ぐぅっ!」

「うわっ!?」

 ルカとヴィクトリーは何とかそれを避け、二手に分かれて彼女を挟んだ。

「ふっ!」

 アリスは手を広げるようにして二人に手を向け、そこからエネルギー波を放った。

「ぐっ!」

「くそぉっ!」

 ルカはウンディーネの力を使って避け、ヴィクトリーは10倍界王拳を使って飛び上がった。そしてアリスの方を見てみるが、そこに彼女はいなかった。

「なにっ!?」

「ヴィクトリーっ!うしろだーっ!!」

 ルカの声の通り後ろを向いた瞬間、ヴィクトリーはアリスの一撃でぶっ飛ばされた。

「ノームっ!!」

 ルカはノームの力を使って、ヴィクトリーを受け止めた。

「大丈夫か!?」

「い、いってぇ……!」

「よそ見をするな……!」

 アリスは両手を突き出し、エネルギーボールを放った。高密度のエネルギーが、二人に迫る。

「くっ!?」

「こなくそっ!!」

 ルカとヴィクトリーはそれを受け止めて、上方向に投げ飛ばした。

「お〜いてぇ……!」

「……くそ……!」

「……」

 アリスは二人を見る。

「……っ!!」

 そしてギンッと眼光を鋭くすると、ヴィクトリーの居た床が消し飛んだ。

「うわっ!?」

「ぐっ!?」

 ヴィクトリーは高速移動でその衝撃から逃れ、部屋全体を見回してみる。

「こっちだ!」

「なにっ!?」

 アリスが背後に現れ、ヴィクトリーは振り向いた。その刹那、彼女の魔力が彼の全身を覆った。

「なっ……!?」

「う、うごけねぇ……!!」

 どうやら、ある種の拘束魔法らしい。

「……死ぬなよ。」

 そう言ってアリスはそれを浮かせて、魔王の間の奥に飛ばした。

「うわぁあああーーーーっ!!!」

 そして床に着弾すると共に、凄まじい大爆発が魔王城を揺るがした。

「なっ……ヴィクトリーっ!!」

「……」

 爆発が止み、もくもくと煙が晴れる……そこに、ヴィクトリーの姿は無かった。

「そ、そんな……!」

 うろたえるルカの背後に、誰かが着地した。

「え……!?」

「ふ〜……今のは危なかったよなぁ。」

 なんと、ヴィクトリーはほぼ無傷だった。

「ヴィクトリーっ!」

「な、なに……!?いったい、どうやって……!」

「爆発した瞬間に全力で抜け出した。」

 ヴィクトリーはそうきっぱりと答えてから、猛ダッシュで突進した。

「はやいっ……!?」

「はぁっ!」

 正面から殴りかかる……と見せかけ、背後に高速移動する。

「なっ……!?」

「だりゃあーっ!!」

 そして、思いっきりルカの方へ蹴り飛ばした。

「壊斧・大山鳴動ォオッ!!」

 ルカは、そこに全力で剣を振り下ろした。土の力を纏った壊滅的な一撃は、確実にアリスを捉えたのだった。

「ぐぁあっ……!!」

 アリスの身体は床に叩きつけられてバウンドし、宙を舞う。

「はぁあああああっ!!」

 ルカはそんな彼女を、走りながら何度も切りつけ、顔面に両足蹴りを炸裂させた。

「ぐふっ……!?」

「だっはーーーっ!!!」

 ぶっ飛んでる最中の胸に、ヴィクトリーも両足蹴りを放ち、一気に壁までぶっ飛ばした。壁は粉砕し、ガラガラと崩れる……

「ふぅ……やっと一発!」

「……アリス……!」

 全力を込めた僕のKOパターンからの、ヴィクトリーの飛び蹴りのダメ押し。これならば、流石のアリスもこたえるはずだ……

「……」

 アリスはと言うと、余裕で立ち上がって首を鳴らしていた。

「あ、あらら……ま、全く効いてねぇみてぇだな……」

「そ、そんな……!!」

 アリスは体の汚れを払い、二人を見る。

「ここまでやるとはな……余の体にホコリをつけたのは、四天王以外で貴様らが初めてだぞ……」

「お、俺は全力でやったんだけどな〜……少しくらいはこたえると思ったんだけどな〜……あ、あはは……」

「ぼ、僕だって全力でやった……!」

「……」

 アリスは気を溜めて、指をクンッと上げた。

「!!来るぞっ!!」

「あぁっ!!」

 次の瞬間、二人の中心に煉獄の炎が巻き起こった。二人はそれを避け、構える。その時、二人にエネルギー波が迫ってきた。

「くっ!?」

「なんだっ!?」

 二人はそれを避ける……が、エネルギー波は曲がり、また迫ってくる。

「くそっ!そういうタイプか!」

「その通り……そいつは、貴様らに着弾するまでどこまでも追いかけていくぞ……!」

「くっ……!」

 本当にその通りで、避けても避けても追いかけてくるようだ。

「余が居ることを忘れたか!?」

「はっ!?」

 アリスはヴィクトリーをホールドし、動きを封じた。

「しまっ……!?」

 そして、エネルギー波に直撃してしまった。

「うわぁあああっ!!」

「ふん……」

 次はルカに向かう。

「……っ!」

 ルカは、アリスに向かってダッシュした。

「なにっ!?」

「はぁっ!!」

 そして高速移動で消える。すると、エネルギー波がアリスに迫ってきた。

「しまっ……!!」

 エネルギー波は彼女に着弾し、大爆発を起こした。

「ふぅっ……!」

「さ、サラの時の手か……」

 ヴィクトリーは、ボロボロになった上半身の胴着を破りながら、ルカの横についた。

 しかし、呑気に言ってる場合ではない。アリスは、再びこちらに迫ってきた。

「くるぞっ!」

「みてぇだなっ!」

「凍れっ!この世界と共に!!」

 アリスは、大気も凍るような冷気を放った。

「かめはめ波ーっ!!」

 ヴィクトリーは10倍界王拳のかめはめ波を放った。凄まじいエネルギーがぶつかりあい、消滅する。

「うぉおおおっ!!」

「どぉらぁああっ!!」

 アリスとヴィクトリーは拳を固め、超スピードで走る。そしてクロスカウンターし、ぶっ飛んだ。

「ぐっ……!!」

「ぐはぁっ……!!」

「はぁああっ!!」

 ルカはぶっ飛んだアリスの腹に、瞬剣・疾風迅雷を放った。

「ぐぶっ……!!?」

 アリスは、壁に叩きつけられた。

「……よ、よし……いける……いけるぜルカっ!!」

「アリス……!」

 今度のは手応えアリだ。アリスも、多少たりとはこたえている。

「確かに、ここまで来ただけの事はあるな……本当に、貴様らは強くなった……だが……」

「だが……?」

「……この戦いにも、飽きてきた。」

 アリスはそう言って、首をゴキゴキと鳴らし、二人を見た。

「貴様らは全力で戦うと言っておきながら、まだかなりの余力を隠している……」

「バレちまったか……」

「……」

「それを考えに入れても……余が本気を出せば、貴様らなど簡単に捻り潰せる……」

「……!」

 突然の、アリスの絶対勝利宣言。ヴィクトリーは少し頭に来たらしく、半笑いになる。

「おめぇが本気を出せば……?」

「ああ……本当に、楽しかったぞ……二人とも。ここまで運動したのは、本当に久しぶりだった……」

 アリスは悲しそうにそう言って、ようやく構えた。

「アリス……僕は……っ!」

「こっからが、本番みてぇだ……なぁっ!!」

 ルカは精霊の力を次々と解放し、ヴィクトリーは10倍界王拳を全開にする。

 ここからが、本番のようだ。この世界の命運をかけた最終決戦……勇者一行と魔王の激突は本番に入ったのだった……

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