もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
遂に決着がついた、魔王と勇者の戦い。
ルカのフルパワーの乱刃・気炎万丈によって、熾烈を極めたバトルに、終止符を打ったのだ。
「……アリスっ!!」
ルカはアリスに声をかけた。
「……楽しい旅だったな、二人とも……」
アリスはもう瀕死の状態にあった。そんな状態でも、幸せそうな顔をしてルカを見た。
「貴様らと共に世界を巡った日々……その思い出は、余の最高の宝物だ。さぁ、貴様の手でこの旅の幕を引いてくれ。貴様だからこそ、余も決心がついたのだ……」
「……っ!」
「……」
ルカは剣を握りながら震え、ヴィクトリーはそれを見る。
「……何を躊躇している?貴様らの冒険は、次の一撃で終わるはずだ。勇者としての使命を忘れたとは言わさんぞ。さぁ、その剣を魔王に振り下ろすがいい!」
「……く……!!」
「……」
ルカは、震える手から、剣を取り落とした。
「できるわけ、ないだろ……」
「………………ドアホめ。」
「……」
ルカは倒れるアリスの前に立ち尽くす。
「薄甘い情に流され、自分の成すべき事を見失うとは……貴様は、理想を実現するチャンスを不意にしたのだぞ。」
「誰かが犠牲にならなきゃ叶えられない理想なんて、そんなの最初から嘘だ。僕は命を奪うことじゃなく、命を大切にすることで理想を叶えたいんだよ……」
そんな事が、薄甘いものだとは分かりきってる……だけど……
「仲間を斬った剣で、いったい何の理想を実現しろって言うんだ!お前こそ、現実逃避もいい加減にしろ!」
「余が……現実逃避だと……?」
「あぁ、確かに現実逃避だな……」
ヴィクトリーはそう言いながら、クスクス笑う。
「おめぇは色んな事を背負い込みすぎて、周囲が見えなくなってるぜ……今の状況で魔王が死んだら、どうにかなると思ってんのか?」
「……魔王が勇者に滅ぼされれば、皆の意識も変わる。人と魔物はもう争うべきではないと、皆は変わ──」
「そーゆーのが現実逃避って言うんだよ。」
ヴィクトリーはアリスの言葉を遮る。
「プランセクト村での事を忘れたのか、アリス?もし今、魔王が滅びたっていう情報が世界に流れたらどうなるのか……」
「人間は魔物を弾圧しまくるだろうな……そうなりゃおめぇらの理想もパァだ……」
「………………」
「精神的支柱を失い、団結も出来ない魔物達がどうなるか……それが分からないお前じゃないだろう?」
「しかし、ここで余が犠牲にならなければ……母上だって、無駄死にに……」
ルカは、ヴィクトリーの方を見る。彼は、それに頷いた。
「……悪いけど、僕は思うんだ。お前の母親のやり方は、間違っていたんじゃないかって……」
「何だと……!?貴様、母上を愚弄する気か……!!」
「現にちっせぇおめぇが暴れたせいで計画が呆気なく崩れたじゃねぇか。仮に上手くいったとしても、そんな脆い安定なんて早く崩れるのがオチだと思うぜ……」
「……しかし、余が滅びなければ……人と魔物が共存する世の中は……」
ルカはアリスの肩を叩き、しっかりとアリスの目を見た。
「アリス、お前は自分が死ぬことを前提に考え過ぎてる。自分さえ犠牲になれば、世の中は上手くいくと思い込もうとしている……」
「安易な自己犠牲に逃げんなよ。人と魔物が共存する世界には、おめぇが必要なんだからさ……」
「……いいのか?お前達の理想の世界に、魔王である余が存在していても……」
「あぁ……平和になった世界を、また一緒に旅をしよう。きっと、お前もまだ食べたことのない美味しいものがあるはずだよ。」
ルカはアリスに手を差し伸べる。彼女は彼の手を握り、微笑んだ。
「ふっ……そうだな……余はまだまだ、食い足りんぞ……平和になった世界を、あらためて旅して回りたいものだ……貴様らと一緒にな。」
「あははっ……まだまだ退屈しなさそうだぜ……」
「ああ、また一緒に旅しよう。そのためにも、人と魔物が共存できる世界を築くんだ。」
ヴィクトリーがようやく、ルカの肩を掴んで立ち上がる。
「四天王は、もう人間には迷惑かけねぇって言ってたし……更に、おめぇらが協力すれば……」
「ああ、勇者と魔王が協力すれば……あ、僕達はニセ勇者だったっけ……あはは……」
「ふん、ドアホめ……結局、貴様らは最後までニセ勇者のままではないか。」
「あははははっ!それでいいや!」
「あぁ、それでいいんだよ。僕達は結局、最後までニセ勇者だったのさ。」
憧れていた勇者にはなれなかった。魔王を倒せず、英雄にもなれなかった。でも、それで構わない。
この僕達の冒険には、大きな意味があったはずだ……
「勇者ルカ……武闘家ヴィクトリー……あなた達は今、最も愚かな選択をしました……」
不意に、そんな声が魔王の間に響いた。
「……この声はっ!?」
「まさか……!!」
周囲に広がる、神聖なオーラ。そして目の前に降り立つ神々しいヴィジョン……そう、女神イリアスがこの場に降臨したのだ。
「イリアス様……」
「とうとう、私が最も恐れていたことが起きてしまいました。あなた達は魔王に籠絡され、邪悪な意志に身を委ねたのです。せっかく目を掛けてきたあなたと、わざわざ別世界まで飛んで連れてきたあなたが、結局はこうなってしまうとは……私は、悲しみと失望を隠せません。あなた達は、勇者失格です。」
アリスが立ち上がり、イリアスに向いた。
「ふん、勇者失格なものか……他人のために戦い抜いた!それを勇者と言わず何というのだ!?」
「アリス……」
「勇者の定義は、この私が決めること。あなたが口を挟むいわれはありません、魔王アリスフィーズ……」
今度はルカが前に出て、イリアスを見上げた。
「イリアス様、どうかお聞かせ下さい。魔物とは、本当に汚れた存在なのですか……?」
「当然です。」
イリアスは即答し、続ける。
「魔物とは人を誘惑し、堕落させる邪悪な存在……いかなる魔物にも、例外などありません。」
魔物とは汚れた存在である……その教えが、今まで多くの偏見を生んできた。その偏見こそが、これまで魔物との共存を妨げてきた。
「イリアス様……人と魔物は、敵対するのが宿命なのですか?」
ルカは続いて質問をする。
「当然です。」
やはりそれに即答するイリアス。
「魔物と手を取り合うなど、決してあってはなりません。」
人と魔物は敵対する宿命……その通念が、多くの悲劇を生み出してきた。アリスの母親でさえ、その通年からは逃げられなかったのだ。それにより、大きな悲劇が生み出されてしまった……
「分かりました、ならば……」
……ずっと、疑念は抱いていた。本音では、その考え方はずっと以前から相容れなかった。それを信仰の仮面で誤魔化してきた。その矛盾に見て見ぬ振りをしながら、ずっと崇拝してきた。
しかし……
「……」
ヴィクトリーも考えていた。
初めて会ったときは、いいやつだと思っていた。だけど、事実は腹黒くてドブ川みてぇな心の持ち主だった。魔物だって、人間だって、手を取り合える筈なのに……こいつのせいで……!!
「イリアス様……いや、イリアス!お前こそ、人と魔物の理解を阻む真の敵だ!」
「おめぇだけは……おめぇだけは、俺達がぶっ飛ばしてやる!!」
ルカは剣を抜き、ヴィクトリーは抜拳し、剣先と拳をイリアスに突きつけた。
「アリスは現実逃避を止めて、自分の成すべきことと向かい合ってる……」
「ああ……だから僕も、真実と向かい合う!」
「……神に剣を……そして拳を向けましたね。五戒にある通り、それは大いなる禁忌のはず。」
イリアスは、二人に片手を向ける。
「……二人とも、神の裁きを受けなさい。」
裁きの雷が、二人に落雷した。
「……」
ルカは、流水のような動作で雷を躱した。
「よっと!」
ヴィクトリーは、純粋にスピードだけで雷を躱した。
「どうした、イリアス?裁けるのは無抵抗な相手だけか……?」
「夥しいほどの罪人は裁けても……たった二人の男は裁けないようだな……」
二人はまた横に並び、背中を合わせてイリアスに向いた。
「……勇者ルカ……武闘家ヴィクトリー……あなた達は、あくまで私に逆らおうというのですね。やはり、汚れた血筋と野蛮な猿は清めようもないという事ですか……」
イリアスの顔が大いなる憂いに染まっていく。まるで、周囲に立ち込めるオーラも悲しみに沈んでいくようだ……
「……うふふっ。」
イリアスは口角を上げ、下衆い笑みを二人に見せた。と、不意に清らかなオーラも、ドス黒い色に染まった。
「……ッッ!!!?」
「この魔王城を、第二のレミナとしましょう。魔物共と仲良く滅亡の道を歩みなさい……汚れし勇者ルカ、そして汚れし武闘家ヴィクトリー。」
そう言い残し、イリアスのヴィジョンは消えた……
次の瞬間、魔王城が激しい揺れに襲われた。
「な、なんだ……!?地震か……!?」
「いや、これは……!」
「気だ……!感じた事のない気が、ウヨウヨと現れやがった……!」
僕とヴィクトリーとアリスは同時に異変を察知していた。ヴィクトリーの言う通り、これまでに感じた事のないような妖気が、城内に幾つも現れたのだ……
そこに、エルベティエが飛んできた。
「……報告です、魔王様。天使の軍団と、奇妙なモンスターの群れが場内に侵入。こちらも迎撃に出ていますが、相手は多勢につき劣勢の模様……」
「本格的に仕掛けてきたか、イリアス……!」
「魔王城を、第二のレミナにするって言ってたな……」
「ああ……もう疑うまでもねぇ!レミナを滅ぼしたのはイリアスだ!」
そんでもって、同じ事をこの魔王城でやろうとしている……
「分かった!すぐに向かう!」
「僕も行くよ、アリス!」
「俺も出るぞっ!」
こんな状況、放置できるはずがない。
三人は、同時に魔王の間を飛び出したのだった……
魔王城の広間では、敵味方が入り乱れての攻防が展開されていた。
「くっ……なんなの、こいつら……!」
「一歩も退くな!これ以上は進ませんぞ!」
ヴァンパイアや、ベヒーモスといった強豪モンスター達が必死に応戦している。その相手が……
「あ、あいつら……!」
「た、確か……!」
レミナで遭遇した、あの
「あははっ!ほらほらほら〜!魔物なんて滅びちゃえ〜!」
「汚れし魔物よ、神の裁きを受けなさい……」
魔物達に矢を放ち、剣を振るう天使の軍団。その耳に、変な機械がついてる……
「ありゃあ……スカウターじゃねぇか!」
「スカウター!?」
フリーザ軍が戦闘力を測る時に使うあのスカウターを付けながら、天使の軍団は魔物に襲いかかっていた。当然ながら、魔物の側も天使に応戦するが……
「このぉっ!」
ベヒーモスの強靱な尾で繰り出された一撃……しかしそれは、天使の体をすり抜けてしまった。
「ぐっ……!なぜ攻撃が当たらない……!?」
「あははっ、知らなかったのぉ?人間も魔物も、天使には触れないんだよぉ。」
「地上の者は、聖素で構成された天使の肉体には干渉できない……当然、こちらの攻撃は当たるのだけれど。」
並外れた力と、攻撃が当たらないという反則的特性。天使達は圧倒的な戦闘力で、強豪モンスター達を駆逐していく。
「あ、圧倒的すぎる……あいつらじゃ分が悪ぃ……」
「こうやって、レミナを滅ぼしたってわけか……!天使の軍団と、奇妙な魔物達が……!」
「……ああ、そういうことらしい。この奇妙な魔物共も、イリアスの生み出した新種のようだな……」
そう言う三人の前に、「コツ、コツ」という、ハイヒールの音が近付く。
「いいや、それは違う……キメラモンスター共は、私の作品だ。」
不意に、一人の女性──足音の主が、三人の前に立った。
「お、おめぇは……!!」
「私はプロメスティン、智の求道者。かつて、ヒトに火を与えし者……」
「そうか……貴様の正体は天使だな。道理で全く魔素を感じなかったはずだ……あの奇妙な魔物は、いったい何だ……?貴様は、何を作り出した……!?」
プロメスティンは、横に来た異形生物の顎を撫でる。
「こいつらは、キメラモンスターと呼ばれる魔導合成妖魔。イリアス様のご命令により、長い研究の果てに生み出されたものだ。」
「あの魔物嫌いのイリアスが、魔物の研究を命じただと……?神が宗旨替えをするとは、初耳だな。」
「地上の者などに、この世の摂理など分かるまい……この世界の運行原理は、お前達の思っている以上に複雑なのだ。」
プロメスティンはキメラビーストの頭を撫でると……ヴィクトリーに向かわせた。
「何で俺っ!?」
ヴィクトリーはそいつを顔面を裏拳で粉砕し、あっさりと片付ける。
「ともかく、私の生み出した最高傑作達がここを制圧する。四天王や魔王、そして勇者一行を倒してな……」
「僕も、ヴィクトリーも、アリスも、もちろん四天王も……お前達なんかには負けはしない!」
「ふふ……さて、それはどうかな……」
プロメスティンがそう言った、次の瞬間だった……吹っ飛ばされた人影が、ルカの正面に投げ出される。それは、なんとグランべリアだった。
「ぐっ!」
床に片膝をつき、立ち上がろうとするグランべリア。しかし、相当に深いダメージを負っているようだ……
そして、グランべリアを吹っ飛ばした主が僕達の前に立った。人に近い、強化人間……?ともかく、こいつはキメラビーストとは別格のようだ……
「妖魔の中でも最高峰の実力を持つという魔剣士、グランべリア……その実力、その程度に過ぎんのか?」
人型のモンスターがそう言うと、ルカとヴィクトリーの二人が彼女を睨めつけた。
「なんだとぉ!?」
「グランべリアは、僕との戦いで大ダメージを負っていたんだ!そうでなければ、お前なんかにやられるか──」
啖呵をきった僕達の真ん中に突っ込んできたのは、アルマエルマだった。
「あいたたたた……今日は疲れてるのに、やってくれるわ……」
「アルマっ!」
アルマエルマは軽くマントの汚れを払い、ふらふらと立ち上がる。ルカとの戦いでダメージを負っていたとはいえ、四天王を圧倒するなんて……
「遅いのね、あなたの風とやら……まるで、止まって見えるわ……」
ハーピーのような骨格をした、キメラモンスターも現れた。いや、まだ他にもいる。
「あらあら、なんと張り合いのないこと。この程度の連中を抹消するため、わざわざ私達が造り出されたのかしら?」
昆虫のようなキメラモンスターが、カマを使って「カッシン、カッシン」と歩いてくる。
「今宵は満月……しかしながら、この宴は盛り上がりに欠けますね。」
獣のようなキメラモンスターも、登場した。
「あははっ……仕方ないわよ。だってそいつら、旧世代の魔物だもの。」
また虫のようなキメラモンスターも来て、クスクスと笑う。
「原種ごときが、次世代型のあたし達に敵うわけがないわ……」
「くっ……!こんなのが五体もいるのか……!」
「一体一体がすげぇ戦闘力なのに……五体も居るのかよ……!!」
こいつらは、キメラビーストなどとは明らかに別格だった。その強大な威圧感は、他とは比べるまでもない。
「アルカンシエル、ハイヌウェレ、アンフィスバエナ、ツクヨミ、ラプンツェル……この五体は四天王を滅ぼすために造られた最新型のキメラモンスター。四天王のデータを集め、全ての性能を上回るように造り上げたのだ。」
「ふっ……そういう事だ……」
アルカンシエルがプロメスティンの横につき、僕達を見た。
「なんの改造もされていない生身の魔物など……所詮は、我々の相手では無かったようだな。」
「そういうわけでぇ……みんな、さっさと死んでよ。あっ……勇者と武道家は、散々に犯してからね。」
ラプンツェルの言葉に、天使達も反応する。
「あははっ……あたしも、勇者達を犯したいなぁ〜!」
「イリアス様の信徒でありながら、神に反逆した勇者の罪は重い。その罪状、二万年の陵辱刑に相当するわ……」
「ぐっ……!!」
「ち、ちくしょう……!」
キメラモンスターに加えて、天使の大軍団。まさに、多勢に無勢の状況だ……
「だったら、この集団を率いるお前を……!」
ルカは剣を構え、プロメスティンに斬りかかった……
「出でよ、ジルフィ……!」
次の瞬間、プロメスティンの速度が一気に増した。疾風のような動きで、ルカの一撃はあっさりと躱されてしまったのだった。
「まさか、今のは……!?」
「精霊の力、貴様の専売特許だと思うな。すでに私はその力を解析し、複製や量産にさえ成功している……」
「な……なんだと……!?」
「そ、そんな……精霊まで……!」
量産にさえ成功している……それはつまり、精霊を使える敵も多数いるということ。イリアスの率いる軍勢は、どれだけ強力なのか……
「ふん……物怖じするな、二人とも。貴様らは今まで、幾多の困難を乗り越えてきたはずだ。」
アリスはそう言って、二人の横に立った。
「アリス……」
「おめぇ……」
「最初に言ったな、余と貴様らは仲間などではないと……ただ、余が貴様らの旅に同行しているだけに過ぎんと……」
アリスは二人の方に向き、目を鋭くした。
「だが、これからは違う!余と貴様らは、同じ志しを抱いた仲間だ!」
「……ああ、そうだな!」
「そうだ……その通りだぜ!」
アリスと共に戦える……それは、戦力が大幅に増えるという以上の意味があった。アリスと肩を並べて戦えるのなら、どんな困難も乗り越えていける。
「共に行くぞ、二人とも!遅れをとるなよ!」
「ああ、分かった!」
「言われなくても!」
目の前には強大な天使の軍団……そして、圧倒的な力を持ったキメラモンスターの群れ……それを率いる、魔導科学に魅入られた天使……その背後にいる、真の黒幕……
「うぉおおお……!!」
「はぁあああ……!!」
剣を掲げ、僕とアリスはその集団に突っ込んだ。
「俺、わくわくしてきたぜ!」
少し遅れ、ヴィクトリーはそう言って気を解放し、ルカに続いたのだった……
天界……
「くすくす……素敵なパーティがやっと始まりましたわね……いよいよ再創世を行うんですの、イリアス様……?」
水晶を覗きながら、ゴスロリ風の少女はそう言う。
「ええ……嘆かわしい事に、ヒトの信仰心は薄れ切っています。神を敬わなくなったヒトなど、ただの欠陥品に過ぎません。祝福無き勇者達が正しき信仰を示せば、私も考え直したのですが……当初の予定通り、これより再創世を実行する事とします。」
「現世に新世界を上書きするのなら、現世のヒトはみぃんな不要ですわね。お約束通り、私達が好きに遊んでもよろしいのかしら……?」
「ええ、お好きなように。ヒトは、私が生み出した『初めての』失敗作ですから。ただしあなた達の役目は……」
「分かっておりますわ、イリアス様。」
少女はイリアスの言葉を遮り、クスッと笑う。
「世界を正常に運行させる魔素の総量、私達がちゃんと管理しますから。」
クスクス笑いながら、少女は続ける。
「全世界の魔素と聖素のバランスを同量に保つのも大変ですわね。そのせいで、イリアス様のお嫌いな魔物も根絶やしには出来なかった……」
「……」
イリアスはイラッとしたような表情で、少女を睨んだ。
「あら失礼、ご気分を害しましたね。神であるイリアス様さえ、世界を運行する物理事象を左右できないなんて……ヒトに知れたら、ますます信仰が薄れてしまいますから。」
「五百年前にあなたの命を救ったのは、減らず口を聞くためではありません。あなた自身も、置き換え可能な存在である事をお忘れなく……黒のアリス。」
少女……黒のアリスは微笑み、イリアスに一礼する。
「くすっ……心しておりますわ、イリアス様。ところで……」
黒のアリスは水晶をズームさせ、ヴィクトリーを見る。
「この異世界から連れてきたお猿さん、いったいどうしましょう?」
「……まぁ、好きにしてもいいですよ。でも早めに策を打っておきなさい。超サイヤ人になられると厄介ですから……」
「すーぱーさいやじん……うふ……ふふふ……そういう事を言われると、余計に気になりますわ……」
黒のアリスはそう言って、水晶に映ったヴィクトリーの顔を舐めた。
「それでは、再創世を始めましょう。次世代の『ヒト』も、ほぼ開発は完了していますからね。」
「こちらも現世のヒトを食べ尽くす準備は出来ておりますわ。原種の手札も十分に集めましたし、次世代の魔物も……うふふっ。」
「さて、準備は万端。今度こそ、信仰に溢れた平和な世界を築きましょう……」
中章ラストです
流血表現
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このままでいい
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しなくていい