もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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激戦、そして決着!

 しばらく二人は洞窟の奥へと歩いていた。

「……もしかしたら残りの二匹がガチになってたりな……」

「ぅ……それは嫌だね……でも……」

 あまり期待は出来なさそうだ。何せ幹部級の二人があれだったから……

「くくく……『土のゴブリン』に続いて『水のラミア』も倒すとは、中々のもの。しかし、我はそう簡単にはいかんぞ!」

 考え事をしながら歩いていたら、不意に声が響いてきた。そこに現れたのは、これまた少女のヴァンパイアだった。

「我は闇の眷族にして、魔の貴族……そして、四天王の一人、『風のヴァンパイア』。くくく……今宵の餌食はお前らのようだ……」

「……」

「……」

 いや、確かにヴァンパイアには違い無いが……予想よりも小さすぎる。

「ヴァンパイアガールって言ったところか……あはは……」

 ヴィクトリーがへらへら笑いながら、口を開くヴァンパイアガールはちっちゃなマントを頑張ってぱたぱたさせながら、不敵に笑っている。

「えっと、じゃあ、とりあえず……」

 剣を抜こうとした僕を、ヴィクトリーが制止した。

「……多分俺一人で十分だと思うぜ……」

「……じゃ、どうぞ。」

 ルカは剣をしまい、その場に立つ。

「くははは!勇者一行の武道家一人で我相手に何ができる!?」

「……分かんねぇぞ〜?」

 ヴィクトリーがドスの効いた声でそう言い、構える。どうやら油断も手加減もする気は無いようだ。

「では、行くぞ!その精気、一滴残らず吸い尽くしてくれる!」

 そう言うと、ヴァンパイアガールは無数のコウモリに変化した。そして、コウモリ達が一斉にヴィクトリーに襲いかかってきた。

「……ちゃっ!!」

 ヴィクトリーは少し動揺した後、目を鋭くし、迫り来るコウモリを手足でビシビシと打ち落としていった。

「ぐっ……」

 猛烈な羽音とぶつかってくる小さな打撃に多少はたじろいでいるようだ。小さくても、流石ヴァンパイアのはしくれといったところか。

「ちぃっ!」

 ヴィクトリーはその場を一旦脱出し、コウモリの群れを正面に置く。そして構え直し、腕をクロスさせ、コウモリの群れを見据えた。

「はぁっ!!」

 思いっきり、腕を突き出す。すると、ドンッという音と共にコウモリ達が吹っ飛んだ。

「うわっ……!」

 衝撃がルカの所まで響き、顔に石やらなにやらがビシビシと飛んでくる。

 両手で気合い砲を放ち、正面に集中したコウモリ達を一網打尽にしたのだ。気合砲をモロにくらったコウモリ達は、消えてしまった。

「……あれ?」

「……ありゃ?あいつはどこだ?」

 コウモリ達が姿を消してもヴァンパイアガールの姿が見当たらない。

「くくく……我はここだ!」

「なにっ!?」

 いつの間にかヴィクトリーの背中に、ヴァンパイアガールがよじ登っていたのだ。

「こんの……!!うりゃあっ!!」

「ひゃっ!?」

 ヴィクトリーはヴァンパイアガールのマントを掴むと、軽々と持ち上げ、思いっきり地面に叩きつけようとする寸前で止まった。

 流石に幼女相手にこの攻撃はまずいと感じ、思いとどまったのだ。片手でマントの襟袖を掴みながら、怯えきったヴァンパイアガールと目を合わせた。

「……えい。」

「いたっ!」

 そして、デコピンをしてから彼女を解放する。

「な、何をする!無礼であろう、我に対して!」

 尻もちをつき、彼女はヴィクトリーを睨む。その目にはじんわりと涙がにじんでいた。

「ううぅ……何であんな事をしようとしたのだ……」

「わ、わりぃ……」

 しくしく泣きじゃくるヴァンパイアガールに、ヴィクトリーは謝ってしまった。

「結局お前も泣かせてるじゃないか……」

 ルカは、頭を抱えながら俯いた。

「ぐすっ……ぐすん……」

 マントで涙をぐしぐしと拭き、彼女は再びヴィクトリーを睨んだ。

「も、もう許さないぞ!こうなったら、我の恐ろしさを見せてくれる!」

「どうやらまだやる気みてぇだな……」

 ヴィクトリーが構え直し、ヴァンパイアガールに向かう。

「ちょっと待っていろ、魔力を集中するから!準備ができたら、我の目をじっと見るのだぞ!」

「何でおめぇは自分から手の内を明かすような事を言うんだ。」

 そう言い、ヴァンパイアガールは魔力を集中する。

「しょうがねぇなぁ……」

 ヴィクトリーは洞窟の隅に行って、蟻が虫を運んでいるところを観察した。

「……」

 何だこの戦いは。吸血鬼対武道家とは思えないほど緩い戦い……いや、戦いにもなっていない気がするぞ。

 しばらくしてから、ヴァンパイアガールの魔力が溜まったようだ。

「もう良いぞ!」

「んぁ?意外と早いんだな……」

 ヴィクトリーは道着の帯を締め、ヴァンパイアガールに向かう。

「さぁ、我が目を見るがいい!!」

 そう言うと、ヴァンパイアガールの目が妖しく輝いた。

「魔眼っちゅう奴か……」

 ヴィクトリーは目の前で腕を交差させ、魔眼から身を守った。

「な、何で腕で視線を遮る!目を見ろと言っただろうが!」

「バッキャロー!敵のそう言う発言にまんまとひっかかるやつがいるかーっ!!」

「ぐ、ぐぬぬぬぅ……!!我は諦めんぞー!!」

 そう言い、ヴァンパイアガールは飛びながらヴィクトリーに突進する。彼はその突進をかわし、かわし際にうなじに手刀を叩き込んだ。

「がっ……!」

「……これで気は済んだか?」

 どうやら、気絶させるまでは力を入れてなかったようだ。

「うぅ……どうして意地悪ばかりするのだ……」

 ヴィクトリーはまた、ヴァンパイアガールを泣かせしまった……

「ご、ごめんよ……」

「うぅ……ひぐ、ひぐっ……」

 どうやら彼女は、完全に戦意を失ってしまったらしい……何だこの戦いは。

「……おめぇ、『風のヴァンパイア』とか名乗ってたけど、風属性は使わねぇのか?」

「使えない……魔王城の四天王の真似して、みんなで名乗ってるだけ……」

「そ、そっか……ははは……」

 まぁ、そんな事だろうと思ってた……

「うぇーん!うぇーん!」

 泣きじゃくりながら、彼女は逃走してしまった……

「……何だかやるせねぇ戦いだったな……」

「そうだね……」

 だが、侮れない点もあった。コウモリ変化に、魔眼に……とにかく大人のヴァンパイアと戦う時はこれらの技に注意しよう。

「行こうぜ。今度はドラゴンが待ってる。」

「うん。」

 そして僕達は、洞窟の奥へと足を進めた……

 

 ここまで四天王の内、三人を撃破した。ゴブリン、ラミア、ヴァンパイア……そして残るはドラゴン。しかし……この分ではどうせ……

「わはは、よくここまで来たな!」

 そこに現れたのは、やっぱり少女のドラゴン娘だった。

「がおー!」

 ……やっぱりか。ちんまり可愛いドラゴンは僕達を威嚇しているようだ。

「期待裏切んねぇな〜……この世界……」

 ドラゴンの子供は……確かドラゴンパピーって言うんだったか。そんな事を思いながら彼女と相対する。

「私は四天王最後の一人、『火のドラゴン』!よくぞここまでたどり着いたな!凄いぞ勇者共!」

「お前をこらしめれば、盗賊団は壊滅って訳だな……!」

 二人は脱力しそうになったが、構える。

「……ここに来るまでの僕の決死の覚悟はどうしたらいいんだ。」

「知るか。目の前の敵に集中しろ。」

 二人は小声で会話をする。そこにドラゴンパピーが声をあげた。

「何をぼそぼそ言っているのだ!来ないならこっちから行くぞ〜!」

 彼女は大きく息を吸い、そして激しい炎を吐いた。

「うわっ!?あつっ!この子あつっ!」

「あぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃ!」

 どうやらヴィクトリーは服の背中に引火したらしい。すぐさま道着を脱ぎ、ばさばさと仰ぎ、消火して事なきを得た。

 流石は少女と言えどドラゴン。決して油断できる相手では無いようだ。

「い、行くぞっ!」

 ルカはエンジェルハイロウを抜き、ドラゴンパピーの頭に振り下ろした。だが、ガキンという音と共に刃が跳ね返されてしまった。

「なっ……!?」

「うがっ……!」

 凄まじい石頭に刃が跳ね返されて、殆どダメージを与えることはできなかったのだ。

「だっ!!」

 続いてヴィクトリーが彼女に拳を放つ。

「うがーっ!」

 だが、彼女はその拳を受け止め、手首を掴み、その体を投げ飛ばした。

「マジかこいつーっ!!」

 ヴィクトリーはそう叫び、壁に激突してしまった。

「くそ……!」

 いくら小さいとは言え、やはりドラゴン。火も吐くし、その表皮は鎧並、そして凄まじい怪力が備わっている。

「う、うが……どっちも……痛かったのだ……」

 やはり、多少はダメージがあったようだ。頭を押さえ、手首を回しながら涙をにじませる。だが、他の四天王と違い、その涙を振り払った。

「う、うがーっ!」

「うわっ!」

 ドラゴンパピーはルカに飛びつき、頭をがじがじと噛んだ。

「痛い……けっこう痛い……!」

「ルカーっ!」

 いつの間にか復活したヴィクトリーがドラゴンパピーを掴み、引きはがす。彼女は地面にごろんと転がった後、すぐに立ち上がった。

「ちっせぇ癖に厄介だな……」

「……下がってろ!ヴィクトリー!僕が剣技で決める!」

「……おう!任せた!」

 ヴィクトリーが下がり、この勝負がルカとドラゴンパピーの一騎打ちになる。ルカが彼女を見据え、剣を構える。

「必殺技で決める……!!」

 思えば、勇者とドラゴンの一騎打ちは、僕の憧れではなかったか。少々想像とは違うが、今の僕はそのシチュエーションにいるのだ。そう思うと、闘志がもりもり湧いてきた!

「行くぞっ!!うおぉおおおおお!!」

「うがぁーっ!!」

 僕が魔剣・首刈りを繰り出すと同時に、ドラゴンパピーもちっちゃな爪を振りかざして駆け寄ってきた。両者は一気に駆け抜け、そして互いの技が交差し、一閃した。

「……どうなった!?」

 ヴィクトリーは、目を鋭くして両者を見る。

 しばらくの間、沈黙が続いた。

「……うがぁ……!」

 倒れたのはドラゴンパピーだった。ルカの技が彼女の技より早く決まったのだ。

「や、やった……のか?」

 ルカが、相手の方に向く。

「うがが……うが……」

 彼女は地面にひっくり返り、涙を堪えている。最早、反撃する余裕は残っていないようだ。

「僕の勝ちだな……」

 勝利の余韻を味わいながら、僕は静かに剣を納めた。

「か……かっけぇ……」

 これで、戦いが終わった。

 勇者とドラゴンの一騎打ちは勇者の勝利に終わったのだ。

 これで全てが終わった。四天王の全員を地に伏せたのだ。

「やっぱルカはすげぇや!こんな序盤でドラゴンを倒しちまうなんて!」

「ふっふっふ……言っただろ?僕は勇者だって……」

「やれやれ、ニセ勇者一行と、ちびドラゴンの戦いが終わったようだな……」

 現れるなりアリスは言葉を吐く。正直な所、全く間違っていないのが悲しいが。

「おめぇ現れるなりそれか……」

「あれ?そいつらは……」

 アリスがその背に連れていたのは、盗賊団四天王の三人であった。

「ひぐっ……」

「ぐすん……」

「えぐっ、えぐっ……」

 どうやら三人ともアリスにこっぴどく怒られたようだ。ともかく、僕達は四天王を打ち倒した訳だが……

「所で、他の団員はいないのか?」

「あぁ、盗賊団って言うから俺も、魔物で徒党組んだ小規模部隊みたいなの想像してたぞ。」

 そんな問いにドラゴンパピーとヴァンパイアガールが答える。

「いないのだ……」

「全部で四人だけ……」

 つまり、これで盗賊団全部って事か。

「ひゃ〜……あきれた……四人だけで盗賊団かよ……」

「えっと……どうするべきだと思う、アリス、ヴィクトリー?」

 泣きべそをかく少女四人を前に、僕はどうしたらいいか分からない。

「余に聞くな。盗賊団を壊滅させたのは貴様らだろうが。」

「とりあえず、町のみんなに謝罪させて、あとは町に任せようぜ。あくまでこれはイリアスベルクの問題っぽいしよ。」

「あっ……そうだね。とりあえず、イリアスベルクの人達に謝りに行こう。いっぱい迷惑をかけたんだから……分かったね?」

「あやまるぞ……ぐすっ……」

 泣きながら四人は頷いた。

「なるほど、人間の町を引き回すというわけか。もし、こいつらをリンチしろという事態になったらどうする?」

 その言葉に四人はビクッとする。

「り、リンチ……?」

「そんなの……やだよぅ……」

「ぐすっ……えーん、えーん……」

「……大丈夫、絶対にそんな事させないよ。リンチしようなんて奴がいたら、この僕が叩きのめしてやる!」

 ルカは、力強くそう言い放った。

 僕は決して魔物を退治したい訳じゃない。人と魔物が共存する世界を築きたいだけなのだ。それに、イリアスベルクには、アミラのような魔物も普通に馴染んでいたはず。意外と魔物に対する風当たりはそんなにきつく無いのかもしれない。

「お前ら、とってもいいやつ……」

「ぐすっ、ぐすっ……」

 こうして僕とアリスとヴィクトリーは泣きじゃくる四人を連れてイリアスベルクに戻ったのだった。

流血表現

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