もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
「こ、ここは……!?」
「う……ウッソだろ……」
レミナにあった、おそらくはプロメスティンの隠れ拠点。そこは、見た事がないほど進歩的な施設だった。
妙な機械装置があちこちに並び、その用途は二人にも分からない。
「……俺達の世界の、先を行ってやがる……」
ヴィクトリーは壁の機械に目をやりながらそう言った。プロメスティンの技術は、俺の理解やこの世界の遥か先を行っているようだ……
「よし、奥に進んでみるか……」
「ああ……」
恐る恐る、一歩を踏み出した時だった。不意に廊下の赤ランプが点滅し、警報がけたたましく鳴り響いた。
「くっ、もう見つかったのか……!」
「そ、そんなアホな……!」
すぐさま臨戦態勢をとり、二人は構える……だが、衛兵も天使も迎撃に現れる様子はない。
「……あれ、来ないのか?いったい、どうなってるんだ……?」
「気も感じられねぇ……進むぞ。」
通路のど真ん中で、男二人が背中を合わせてても何もならない。
二人は警戒しながら、あてもなく先へと進むのだった……
内部構造は全く複雑ではなく、広い通路に部屋が並んでいる構造。とにかくシンプルで、迷いようも無かった。
「なんなんだ、この機械……」
「……俺は、機械には疎いんだよ……」
目に入るもの全てが、異世界。どの機械も、その用途が分からない。
「あの警報、うっせぇな……」
「ああ……」
警報は、未だに鳴ったまんま。それでも、敵らしい敵は現れなかった。
「やっぱり罠か……それとも、何かトラブルでもあったのか……?」
「……」
ヴィクトリーは額に指を置き、気を張り巡らせてみる。
「……どうだ?」
「……いや、分からねぇな。気を消してやがる……」
ヴィクトリーは腕を組んで首を傾げた。
「こんな最新設備なら、侵入者の居場所が分からねぇ訳がねぇ。俺達は逃げも隠れもせずに進んでるんだからよ……」
「これ、水槽か?」
「話を聞け。」
ルカの見上げていた、その視線の先──
「しかも、中身は……」
「……あぁ……」
見た事もないような異形のモンスターが、大型水槽に入っていた。
「標本か……?」
「い、いや……命は感じる……一応は生きてるみたいだぜ……」
「これも、キメラモンスターか……」
「それも……一つじゃねぇみてぇだな……」
大型水槽は並んでおり、その一つ一つにキメラモンスターが居た。どのモンスターもグロテスクで、奇妙な形をしている。まるで、複数のモンスターを複合させたような……
「ま、魔物や生物を実験材料にして、様々なキメラモンスターを造ってたんだろうよ……オエッ……俺、こういうのは無理だ……」
「……僕には、生命を玩具にしているようにしか見えないよ。よく、こんなひどい事を……」
ルカがそう言ったその時、一つの水槽のコンピュータがいきなり起動した。
「ん?」
「何だ?」
二人が向いた先では、機械音声が以下のことをループして言ってる。
「メインシステムエラー、実験体S-2への酸素供給停止。緊急措置として、保育プラントを解放します……」
「な、何だ……?」
「メインシステムエラー……奥で何かあったんか?」
そう言いながら、水槽の一つを見る。水槽に満たされていた溶液が、ごぼごぼと水位を下げていく。そして、自動的にその蓋が空いてしまった。
中に居たのは、当然異形のキメラモンスター。ぱちくりと目を開け、じゅるじゅると這い出てくる……
「あわあわ……外に出ちゃった……あれれ……人間がいる……」
両腕は触手、下半身は粘液状。そんな異形の体をじゅるじゅると蠢かせ、彼女は二人に視線を向けた。
「……おい、意思疎通を図れそうか?」
「……ま、まぁ……」
ルカは、前に進み出る。
「ぼ、僕は敵じゃないよ。君は、実験台にされていたのか?それなら、解放してあげるから……」
「あわあわ……お外なんて、興味ないもん。」
S-2はルカを見て、ニヤリと笑う。
「……キミの精液、とっても美味しそう……搾り出して、食べちゃってもいい……?」
「くっ……!人を襲うタイプなのか……!」
ルカは剣を抜き、構える。
「手を貸すぜ、ルカ……」
「……」
ルカは、剣でヴィクトリーを制止した。
「……こいつは、僕を指名したんだ……僕がやる!」
「……」
……そうか、こいつにも男としてのプライドがあったか。
ヴィクトリーは少し考えてから、下がった。
「おめぇも、戦士だったな……負けんなよ!」
「……」
そうは言ったものの、精霊の力無しでどこまで戦えるのか……
「雷鳴突きっ!!」
ルカは剣を寝かせ、雷鳴のような突きを彼女に放った。
「あうっ!」
「よしっ!」
剣技は今まで通り、普通に使えるらしい。
「うぉおおっ!!」
ルカは剣を握り込み、顔面、胸、鳩尾、腹、股間部分に斬撃を放った。
「おおっ!オール急所乱れ斬りっ!」
ヴィクトリーは、そう言いながら唸る。
やはり、ルカの剣技は健在。この程度のモンスターならば、負けることは無さそうだ。
「あわあわ……」
彼女は踏ん張り、腕の触手を振り下ろしてきた。
「ぐぁ……っ!!」
何とかその攻撃をガードするが、全身がビリビリするような衝撃でよろめいてしまった。
「……くっ!!」
「行きますよ〜!それそれ〜!」
彼女は両腕の触手をなびかせ、振り下ろしてきた。
「うわぁっ!」
その触手攻撃を何とか避けて、隙を見て懐に入った。
「魔剣・首刈りっ!!」
その喉元を突き上げ、体ごと吹っ飛ばした。
「あわっ……!」
「死剣・乱れ星ぃっ!!」
ダメ押しに死剣・乱れ星を放ち、バラバラに切り刻んだ。
「あわあわ……」
S-2の破片が消散し、粘液の塊になった。キメラモンスターは軒並み、封印すると変わったものになるらしい。
「ふぅ……何とか勝てたか……」
「精霊の力無しでも、全くの無力じゃねぇみてぇだな。」
「まぁね、経験の積み重ねって奴だよ。それにしても……」
「ああ……」
あれだけ暴れても、衛兵も天使も魔物も現れる気配がない。警備はザルなのか?この施設……
「警報うっせぇしよ……とっとと行こうぜ。」
「そうだな……」
腑に落ちない点がありすぎる。首を傾げながら、二人は進んだ……
「……ルカ、気付いたか?俺達以外にも、侵入者が居ること……」
「え……?」
歩きながら、ヴィクトリーは呟いた。
「おめぇが例のモンスターと戦ってる最中に、ちっせぇ気が近くで暴れてる感じがしたんだ……ほら見ろ。」
ヴィクトリーは、目の前を顎で指す。なんと、その先の通路は誰かが暴れ回ったかのような跡があった。
「こ、これは……」
「隔壁がブチ破られ、シャッターもひしゃげて……窓も割られ、機械も潰されて……んでもってこのバカみてぇにうるせぇ警報……」
「……ああ、間違いないな……」
そうならば、合点はいく。何者かが時を同じくして侵入し、そして派手に暴れているのだ。
「俺たちとは違って、周りのものをぶっ壊しながら進んでいる……きっとあいつらも、こいつに気を取られてるんだろうよ。」
ヴィクトリーが、そう言った時だった。一体のキメラモンスターが、走ってきた。
「わっ!またキメラモンスター!?」
「いや……」
「……」
そいつは怯えた様子で、そそくさと逃げてしまった。他にも、あちこちでキメラモンスターが逃げ回っているみてぇだ。
ルカは破壊された水槽に目をつけ、その前に立つ。
「水槽が壊されている……?もしかして、わざと逃がしているのか?」
「……侵入者は、目に付いた水槽を片っ端からぶっ壊してるみてぇだな……でも何で……」
「とにかく、今はこの混乱に乗るしかない。行くぞっ!」
キメラモンスターの逃げ惑う施設内を、二人は足早に進み始めた。彼女達のほとんどは非力な失敗作なのか、戦いを挑んでくる様子もない。
しかし……
「……!!」
いきなり、ヴィクトリーの顔面に触手が飛んできた。バク転し、触手を顎に掠らせてそれを避けて、構える。
「……不意打ちとは、卑怯じゃねぇか……」
「お前が言うな。」
ルカの突っ込みを無視し、ヴィクトリーは触手の主を見る。
目隠しをされて、両腕が触手になってて、下半身が粘液状になってる……天使?
「おめぇは……天使なのか?」
「私は、かつて天使だったわ……でも、今は……こんな姿に……」
「……」
仲間の筈の天使にさえ、こんな事をするのか……魔物とか人間とかの実験体になると、どんな扱いなのか想像したくねぇな……
「先に仕掛けたのはおめぇだ。容赦はしねぇぞ。」
「この体になってから、乾いて仕方ないの……男の精を搾り抜いて、しゃぶり尽くしてしまいたいわ……」
「あっそ!」
ヴィクトリーはブンッと腕を下ろし、かめはめ波を放った。元天使は消え、彼の背後に現れる。
「頂くわ……!」
「……」
彼は彼女の方を見ずに、裏拳でぶっ飛ばした。
「っ!?」
「よっ!」
ぶっ飛ぶ元天使の腕の触手を掴み、それを背負い投げするように床に叩きつけた。
「きゃあ……!!」
「ひもQみてぇな触手しやがって……」
ヴィクトリーは、意味不明な事を呟きながら構える。
「あなたの精、搾らせてよ……!」
「まだ言うか……!」
元天使は、粘液を周囲に広げた。不快な液体が床を侵食し、捕えにかかる。
「うわっ!」
それを何とか跳んで避け、彼女脳天にかかと落としを決めた。
「ぎゃっ……!!?」
「だぁらぁーっ!!」
そして、廻し蹴りで蹴り飛ばした。
「トドメっ!!」
廻し蹴りでぶっ飛んだ元天使に、バーニングアタックを放った。
「……これで、ようやく解放されるのね……」
それは彼女に直撃し、その体を消し飛ばした。
「……封印……しなくても良かったよな……」
「……あぁ。」
あの天使も、楽になれただろう。そう思いたい。
「これ以上敵が現れたら、おめぇが危ねぇ。早いとこ進むぞ。」
「あ、ああ……精霊の封印も、なんとしても解かなきゃな……!」
二人は走り、通路を進む。
「……それにしても、荒っぽいことをするなぁ……」
「あぁ……隔壁がボコボコじゃねぇか……」
先に進むにつれ、破壊の痕跡は激しくなっていく。しかもそれを見ていて気づくことがあった。
「……侵入者はかなり小柄みたいだね。ほら、破壊の跡が僕の腰あたりの高さに集中してるんだよ。」
「その大きさだと……たまもとかそこら辺か?」
「いや……魔王城にいたたまもが、先回りしてるとも考えにくい。……もしかして、僕達をここに導いた少女が……」
「……」
首を傾げながらも、二人は先へと進むのだった。
「……ここは……?」
通路を進んだ先に突き当たった、巨大な扉。その中は、かなり広い空間だった。
「大広間みてぇだな。広さも高さも学校の体育館ぐらいはありそうだ。」
「……あぁ……」
相変わらず、用途不明の最先端設備が立ち並ぶ。
「……ほう、ここに着いたのは貴様らが先か。」
そんな二人に、いきなり女性の声がかかった。
「お、お前は……!」
「プロメスティン……!!」
そう、プロメスティンがコツコツと二人の前に出てきたのだ。立派に、スカウターまで着けて。
「それにしても、どうやってこの研究所を見つけた?あのハッチを、そう簡単に発見出来たとも思えんが……」
「ゴスロリ風のおっそろしい気を放ってる少女が教えてくれたぜ。」
プロメスティンはそれを聞き、イラッとした表情を浮かべる。
「そうか……黒のアリスの仕業か……」
「その様子だと、おめぇも想定外の事態だったようだな……」
「……それより、アリスは何処だ!いったい、アリスに何をした!」
それを聞き、クスクスとプロメスティンは笑い始める。
「ふふ……お前達はつくづく面白い。互いの身を案じながら、無様なまでにすれ違う。お前達もここに来るまでに、別の侵入者の存在を感じ取っただろう?」
「はっはっは!随分と色んな奴からヘイトを買ってるみてぇだな……」
「それも当然か、あんな非人道的な実験を繰り返していたらな……!」
「学究の崇高さなど、お前に分かるはずもない。」
プロメスティンのスカウターが起動し、ピピピと鳴る。
「それより、その侵入者も間もなくここに来るはずだ。」
「あぁ……すぐそこまで来てるみてぇだな……」
「ここに……?」
確かに、この場へと荒々しい気配が近付いてくる。廊下を進み、解錠されているはずの扉を叩き潰し……そして現れた侵入者とは、なんと──
「ここに居たか、プロメスティン!さぁ、余の封印を解いてもらうぞ!」
なんと、少女になったアリスだった。
「あ、アリス……?」
ルカは呆気にとられ、そう漏らす。
「どこをどう見ても余だろうが、ドアホめ!」
「ど、どうしちまったんだ……」
ヴィクトリーも、半笑いでアリスを見る。
「説明している暇はないが、こんな姿でも紛れもなく余だ!」
「そうか……アリス……良かった……」
「いや……良かった……のか?」
まぁ、良かったとしよう。
「なるほど、六祖大縛呪にはそのような抜け道があったとはな。しかし、とっさにそんな手段を思いついたわけではあるまい……?」
「ふん……意地の悪い教育係の狐に、色々と教わっていてな。こんな魔術など一生使う機会はないと思ってたが……」
「ふむ、その体では十分の一の力も発揮できまい。精霊の力を失った勇者と合わせても、雀の涙の戦力だな。ネクスト・ドールも、ラ・クロワも呼ぶ必要はあるまい、私一人で、十分に事は足りる……」
「待てよコラ。」
ヴィクトリーが、プロメスティンの前に立った。
「誰か、対策するのを忘れちゃいねぇか……?」
「はて、なんの事やら……私は、無駄な事はしない主義なのでね……」
「……」
ヴィクトリーの闘志に火が付いたようだ。メラメラと気が燃え上がるのが分かる。
「アリスっ!僕達は下がるぞ!このままじゃ足手まといだっ!」
「あ、あぁ……!」
プロメスティンは、自作の精霊とやらも使えるらしい……流石のヴィクトリーも、苦戦を強いられる事になるだろう……
「……死ぬなよ、ヴィクトリーっ!!」
「……」
「丁度いい機会だ、この肉体を実戦でテストするとしよう。私の体に埋め込んだ、特別な遺伝子を発現させてな……!」
プロメスティンは手を広げ、気を解放して衣服を吹っ飛ばした。
「おめぇ、自分の体まで実験台にしてんのか……」
「否定する気か?サイヤ人……強さを求めるために、自分の体をイジメ抜くのはお前だって同じはずだ……」
彼女の皮膚が蠢き、何やら嫌な気が放たれる。
「……おかしいぞ……なぜ貴様の体から魔素が放たれている……!?」
後方に居たアリスがそう言うと、プロメスティンはクスッと笑った。
「武道家……そして勇者よ、お前達も天使と魔物の混合体を目にしただろう?これこそが、その完成作だ……!」
そう言った彼女の節々の皮膚が突き破れ、そこから海藻が出てきて、体にまとわりついた。
「な、何だ……!?」
「わかめ……!?」
「な、何だ……そいつは……!?」
ルカ、アリス、ヴィクトリーの順に驚愕が走る。
「これは太古の魔藻、すでに絶滅した古代搾精種。原種の魔種に最も近い、奇跡の生命体だ!無学なお前達には分かるまい?この古代種を復活させた意義が!何百種類もの魔物を実験に供し、この身に魔藻を選んだ意味が!」
「そんなの、分かりたくもない……!」
「わかめを生やして威張るな、ドアホめ!」
「……」
こいつにまとわり付いてた、鼻につく藻の匂いの正体はこれか。
「さぁ……始めるぞ。」
「……」
今、マトモに戦えるのは俺しかいねぇ……だけど、やるしかねぇ!!
ヴィクトリーは構え、プロメスティンと相対した……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい