もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ヴィクトリーは超サイヤ人に覚醒し……ルカは明鏡止水を再発見し……
とうとう、戦士達はプロメスティンを追い詰めた……かに思われた。
「これでもう、私は元の体には戻れない。しかし、お前達をここで滅ぼすためならば……」
追い詰められたプロメスティンは、おぞましい薬品を自分に注射しようとする。だが突如として彼女の足元に魔法陣が出現、その動きを拘束してしまった。
「くすっ、いけませんわね……そのお注射は、まだ使ってはいけないんでしょう……?」
そこに現れたのは、戦士達をここに導いた謎の少女だった……
あどけない風貌ながら、血が凍りそうな程不気味な気。その気は、何故かプロメスティンの薬品と同じ感じがした……
「なっ……!」
「黒のアリス……貴様、邪魔をするな!」
プロメスティンがそう言うと、アリスがハッとする。
「黒の、アリス……だと!?」
「……」
そう言えば、クィーンエルフからそんな奴が居るって聞いてたな……
「イリアス様は、まだあなたの頭脳が壊れる事を望んではおりませんわ。ヤケを起こして、未完成の『白の兎』を使われては困るのです。少しばかり、涼しい所で頭を冷やしてください……」
「ぐっ……!この、女狐め……」
プロメスティンの姿は、そのまま魔法陣の中に消えてしまう。彼女をどこかへと転送した後、黒のアリスは僕達の方に向き直った。
「女狐とは、ずいぶんと可愛くない呼び名……うさぎさんの方が、私は好きですわ。」
アリスが前に出て、黒のアリスを睨む。
「狐が可愛くないのは同感だが……貴様はいったい、何者だ?なぜ、8代魔王の異名である『黒のアリス』の名を騙っている……?それにその格好も、伝説にある8代魔王のものではないか。自らをいにしえの魔王になぞらえ、何のつもりだ?」
黒のアリスは、少女アリスに微笑む。
「うふふっ……名を騙っても、なぞらえてもおりませんわ。私こそが、魔王アリスフィーズ8世。」
そう言って、気を解放した。凄まじい気で周囲が揺れる。
「ぐ……!?」
「な、なんて気だ……!!」
「姿は真似られても、偽物にこの魔力は真似られませんわ……お望みならば、更なる力をもって証明してもよろしくてよ……そこの、金色のお猿さんを使ってね。」
黒のアリスはそう言って、ヴィクトリーを指さした。
「な……!!や、やんのかてめぇッッッ!!!」
ヴィクトリーは震えながら、構える。どう見ても、恐怖を隠しきれていない様子だ。
「ど、どうしたんだヴィクトリー……今のお前は超サイヤ人だろ!?」
「……だ、ダメだ……ど、どう仕掛けても返り討ちにされる未来しか見えねぇ……!」
プロメスティンを圧倒した超サイヤ人のヴィクトリーですら、黒のアリスに怯えている。僕は確信した。こいつ、マジでヤバい!
「あらあら……冗談ですわ。震えてしまって……」
黒のアリスは、震えるヴィクトリーに微笑んだ。
「……それはそうと、おめぇ確かハインリヒにぶっ殺された筈じゃねぇのか……?」
アリスフィーズ8世と言えば、ハインリヒとかいう勇者がぶっ殺したっていう話を覚えている。その時に、一緒にフリーザの話とか超サイヤ人の話とかもしたハズだ。
「あら、知っているのですね……口惜しくも、五百年前のあの日に私は討たれました。しかし冥府に堕ちる直前、イリアス様に救って頂いたのです。」
「ちっ……またイリアスかよ……」
「イリアスが……?なぜ魔物を憎むイリアスが、魔王を助けるなんて事を……」
「ふふっ、イリアス様にも色々と事情がおありですから……あなた達には話せないような事も、ひとつやふたつ……」
黒のアリスはくまのぬいぐるみを抱きながら、クスクスと笑う。
「それで、イリアスの走狗と成り下がったわけか。かつての魔王たる者が、女神の犬に……!」
「ふふっ……狐だの犬だの、散々ですわね。うさぎさんの方が、私は好きですわ。」
「……」
「……」
イリアスの配下となった、悪虐非道の元魔王。人間に敵対する魔物を集めていたのも、このためか……
「そう言えば、イリアス様から伝言を預かっておりますわ。」
黒のアリスはスカートを軽く翻し、そしてイリアスの口調の真似をして話し始めた。
「勇者ルカに武闘家ヴィクトリー……あなた達が闇に堕ちて以来、私は悩みました。なぜ人の中から、魔物に寝返るような勇者が出て来てしまうのか。なぜ人間達は、私があれだけ導いてもなお、魔物との関わりをやめようとしないのか……」
「……」
「……おめぇ、実はちょっとイリアスの事嫌いだろ。」
黒のアリスの物真似、少しイリアスを馬鹿にしてる感じがある。ヴィクトリーの突っ込みを流し、彼女は続ける。
「……そして、私は結論を出しました。神の声に耳を傾けぬ人間など、もはやいりません。現在の人間達をすべて清め、また新たな世界を創世するとしましょう。」
「なっ……なん……だと……!?」
「新たな世界の創世……?人間達を清めるって、まさか……」
黒のアリスは頷いた。
「……ええ、現世人類は絶滅させるとのこと。それが、神のご意志ですわ。」
ルカとヴィクトリーとアリスに、電撃のように憤慨が走る。
「ふざけるな!人間を滅ぼすなんて……!」
「そんな事……!!」
「ふふっ、とっても素敵なパーティになりそう……進行役は、この私が務めさせて頂きますわ。様々な趣向で、人類の最期を盛り上げて差し上げます。準備も既に整っておりますわよ……うふふっ……」
「誰が、そんな事を認めるか……!」
アリスは拳を振りかざし、黒のアリスに殴りかかる……が、その一撃はすっぽ抜け、彼女は床に転がった。
「あ、そうそう……お猿さん……」
黒のアリスは思い出したようにそう言い、高速移動でヴィクトリーの正面に迫った。
「うわぁっ!?」
飛び退こうとする彼の顎を、指で優しく掴む。その動作だけで、体が止まった。
「ぐっ……!?う、動けねぇ……!」
彼女の掴む力が強すぎて動けない。掴まれてるのは顎の先だけだというのに……
「あなたはワインというお酒を飲んだ事がありますか……?」
「……ぐっ……!」
「樽に入ったワインは時をかけて芳醇に……そうやって時間をかければかけるほど、それは美味へとなるのです。」
艶かしい声色でそう言いながら、彼の耳元に移動し、囁く。
「あなたも同じですよ……サイヤ人というのは、戦えば戦うほど強くなると聞いております……極限にまで高まったあなたはどれほどに美味しいのか、楽しみにしておりますわ……」
そう言って、彼の頬をれろぉ〜っと舐め上げた。
「……くそったれ!!」
ヴィクトリーはそれを振り払い、彼女の顔面にパンチを放った。だが、そのパンチは、指一本で止められてしまう。
「な、なんだと……!!?」
「そんな……!!」
超サイヤ人のヴィクトリーが全力で放った、渾身の一撃。それが、こんな少女の指一本ごときに……
「せいぜい、死なないように頑張って下さい……それでは御機嫌よう。また会える時を楽しみにしておりますわ……」
そう言ってくまのぬいぐるみの手を取り、バイバイするよう左右に振る。そして空間が歪み、黒のアリスは消えてしまった。
ヴィクトリーは超サイヤ人を解き、座り込んだ。
「……人間を滅ぼすってよ。」
「ついにイリアスも、そこまでの暴挙に出るのか……」
「女神の横暴も、いよいよ極まったな。事はもう、イリアスの魔物嫌いでは収まらんらしい……」
アリスは起き上がり、頭をバリバリと掻く。
「アリス、まずはおめぇが無事で良かった。」
「でも、その姿は一体……六祖大縛呪とやらのせいで、そんな姿に変えられたのか?」
「いや……その封印から抜け出るため、自分でやった。それにこれは仮の器で、本体ではないのだ。余の本体は今も、亜空間に封じ込められたままだ……」
ルカとヴィクトリーは顔を合わせ、頭を傾げる。
「えっと、どういう事か分からないんだけど……」
「まぁ、今はそんな事どうでもいいや。」
ヴィクトリーはふぅーっと息を吐き、ゆっくりと立ち上がる。
「とにかく、ここら辺を探索してみるか?」
「ああ、周囲を調べるぞ。ここは、研究所の中枢のようだからな……」
「あ、ああ……」
「よっしゃ、やろうぜ。」
六祖大縛呪の解除のヒントと、カプセルコーポレーションとかの情報があるかもしれない。
三人は、この部屋の探索を始めた。
「それにしても、派手に暴れすぎちまったな……」
瓦礫を除けながら、ぶつぶつと呟く。現存してる分厚い本もペラペラとめくり読みしてみるが……これは関係無さそうだ。
「研究日誌の類はないのか?それがあれば、少しは封印の事が分かるかもしれないが……」
「この棚に、変な銀色の円盤がいっぱいあるけど……これ、なんだろう?」
「あん?」
ルカが持ってたのは、掌サイズのCD。棚を見るとそれがたくさんある。
「あっ、こっちの棚も全部円盤だ……すごい枚数になるけど、なんなんだろう。」
「CDだ。」
ヴィクトリーの言葉に、二人は首を傾げる。
「しーでぃー?」
「コンパクトディスクの略で、デジタル情報を記憶する媒体だ。表面の細かいくぼみで情報をパターン化、そうやって情報を記憶するんだ。」
……全く何言ってるか分かんない。
「……お前、機械は苦手じゃなかったのか?」
「ああ、俺も何言ってるか分からねぇ。」
ルカとアリスはずっこける。
「じゃあ説明すんな!」
「こ、こっちに積んである箱も、全部CD入りだな。部屋全体となると、千枚を超えるのではないか……?」
「ぶっ壊れた奴を含めると八千枚はある筈だ。」
アリスはCDの一枚を手に取り、しげしげと眺める。
「そうか、分かったぞ……これに似たようなものを、僕はイリアスヴィルで見たことある……」
「なにっ!?」
「なんだと、何か知っているのか……?」
「農作物を荒らす害鳥を追い払うため、これを畑の周囲に下げておくんだ。すると、キラキラ光るのを恐れて鳥が近づいてこないんだよ。たぶん、プロメスティンや研究者達は害鳥に手を焼かされていたんだ……」
自信満々にそう言うルカを、アリスとヴィクトリーはジト目で見る。
「底抜けのアホ。」
「貴様はつくづくドアホだな。」
「がーん……」
しょんぼりするルカを横目に、アリスはCDを舐める。
「……なんだか、ピリピリする……」
「どうだ、何か分かったか?」
「……10月21日、細胞A10235の培養に問題はなし。X2デノン体を分離させ、胎内温度にて保存……」
「何を言ってるんだ、アリス……?」
「貸せ。」
ヴィクトリーはアリスからCDを貰い、ホイポイカプセルから端末を取り出す。
「何だそれ!?」
「まぁ見てろ。」
そして端末でCDを読み取り、画面に何やら表示される。
「う、うむ……余の読み取った情報と同じか……」
「ああ、間違ってはねぇだろ?さっきの説明。」
ヴィクトリーは一通り読み取った後、端末をしまってCDをどっかに投げる。
「いや、投げるなよ。」
「まぁ、こいつは研究日誌みてぇなモンだな。探ればおめぇらの封印を解くことが出来るかもしれねぇ。」
「だが、この量は骨が折れるぞ……」
アリスが腕を組み、ため息を吐いた時だった。
「お〜い、魔王様〜!」
「ん……?」
「なんだ……?」
どこからか聞こえてきた、たまもの声。気は……ちょうど、ルカの真上だ。
「ルカ、ちょっと下がってろ。」
「え……?あ、あぁ……」
その場から一歩下がるルカ。それと同時に、天井が崩れ出してきた。崩落する天井、降ってくる土砂。そして天井から開いた穴から、たまもが顔を覗かせた。
「おっす!」
「た、たまも……」
「おお、ルカとヴィクトリーも居たか。」
天井からロープが降り、そこからたまもが滑り降りてくる。
「……なんじゃ、このさいばぁぱんくな部屋は?」
そして部屋の中に立つと、きょろきょろと周りを見回した。
「この部屋に記憶媒体がすげぇある。」
「たまもよ、貴様はこういうのに詳しいのだろう?」
「ふむ……」
たまもは円盤を手に取り、口に咥える。
そして尻尾を振った。
「どうでもいいけど、何で口に咥えるんだ……?」
「点字みてぇなもんだろ。」
「てんじ?」
「あ、この世界にはねぇのか……点字ってのはな……」
ヴィクトリーが点字について説明する横で、アリスとたまもは話す。
「うむむ……随分とたくさんの情報が記録されておるな。しかも、多くは暗号か何かでプロテクトが施されておる。これを全部解読するのは、大変そうじゃぞ……と、それより急ぎの報告じゃ!」
ヴィクトリーとルカは、はっとしてたまもの方を見る。
「世界各地の町や村が、天使やキメラモンスターに襲われておる!」
「な、なんだって……!?」
「い、イリアスの奴、マジで人類絶滅させる気かよ……しかも、よりによってこんな早くに!」
全世界に広がりつつある、破壊と滅亡の魔の手。最初に思い浮かんだのは……
「ルカ……おめぇの村だ!」
「ああ……!イリアスヴィルは……僕の故郷は大丈夫なのか!?」
たまもは、深刻そうな顔をする。
ヴィクトリーも全力で推理し、仮説を口に出す。
「……あそこは、イリアスが直接降臨するイリアス神殿がある筈だ……」
「うむ……そうなると、真っ先に目をつけるのは……」
そこまで言って、たまもは言葉を濁す。
「そ、そんな……!」
「イリアスヴィルの人間は、誰だってイリアスを真面目に信仰していた……だけど、あのイリアスなら容赦なくやるだろうな……!」
「そんなの、絶対に許さない……!」
ルカは、たまもが侵入に使ったロープに飛びつき、よじ登る。
「あっ!こらっ!待てっ!」
ヴィクトリーもそれに続き、天井の穴に飛び込んだ。
「おい、待て……またか!少しはウチの言う事を聞かんか……!」
「あいつに言え!」
ヴィクトリーは一言をたまもに返して、地上へ飛んだ。
「くぇええ……!」
既にルカはガルダに乗っており、今まさに飛び立とうとした時だった。
「おい馬鹿!一人で行くなっての!」
「ドアホめ、余も忘れるな!」
ヴィクトリーの背後からアリスがダッシュしてきたと思いきや、ガルダの背中に飛び乗った。
「よし……!」
彼もガルダに飛び乗り、ルカの横に座る。
「イリアスヴィルに行ってくれ、全速力だ!」
「くぇぇ!」
そしてガルダは、全速力で大空を駆ける。イリアスの魔の手が伸びる、イリアスヴィルに向かって……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい