もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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明かされる真実

 エンリカにやってきた戦士達。

 ルカとヴィクトリーは二人で正面を、アリスは裏門につき、エンリカに迫り来るキメラモンスター達を止めにかかった。そしてキメラタンや天使兵、更には権天使であるナガエルをも倒し、優勢になったと思われた時だった……

「何よ、天使もやられたの……? プロメスティン様のおっしゃる通り、あの連中は頼りにならないわねぇ……」

 突如として現れたのは、あのネクスト・ドールの一人ラプンツェルだった。二人は彼女と相対し、激戦を繰り広げようとした、その時だった。

「……お待ちなさい」

 双方の間に割って入ってきたのは……あの、ミカエラだった……

 

「あ、あんた……」

「ミカエラさん……」

 ルカの漏らした声に、ラプンツェルは反応する。

「まさか……あなたが、ミカエラ? 力を失い、隠遁したという話では……」

「確かに、今の私にかつての力はありません……」

 ミカエラはラプンツェルに向き直り、涼やかに口を開いた。威圧感……とは違う、凍てつく殺気を向けながら。周囲の温度が下がったと錯覚するほどの気迫に、二人は息を呑んだ。

「……ですが、あなた程度の一匹や二匹なら今の私でも十分。天軍の剣、錆び付いたと思うならば……その身と引き替えに、試してみれば良いでしょう」

「……」

 相対したまんま、睨み合うラプンツェルとミカエラ。重苦しい圧迫感と、凍えるような殺意が静かにぶつかり合う……

「……ふふっ、確かに面倒そうねぇ。私が負ける事はないにしても、足の一本も持ってかれたら損だわ……」

 先に折れたのは、ラプンツェルだった。その圧迫感が消え失せ、くるりと背中を見せる。

「……退くわよ、あんた達」

 その号令と共に、背後にいるキメラビースト達も背を見せた。そして、森へと去っていく……

「……でも、少し命が伸びただけにすぎないわ。イリアス様は、造反者に容赦などしないから……」

「やはりあなたは、イリアスの事を全く分かっていないのですね。イリアスは造反者のみならず、自身の崇拝者にさえ容赦などしませんよ。まして魔物のあなた達など……イリアスが最終的にどうするかは、火を見るより明らかでしょう」

「イリアス様は旧世界の処理を私達に委ねて下さっているわ。そんな戯れ言で私を惑わそうというなら、失敗だったわね……」

 そう言い残し、ラプンツェルも森の中へと消えていった。ようやく、全ての敵を追い返すことが出来たのだ……

「……ちぇっ、俺が倒してやろうと思ったのによ」

 ヴィクトリーは腕を組み、超サイヤ人を解いて元に戻る。

「いくら強いとはいえ、まだまだ経験の少ない人造妖魔。戦闘における駆け引きは、実に未熟のようですね。あの程度のブラフで、簡単に退いてくれるとは……天軍の剣など、とうに錆び付いて使い物にならないというのに」

「ミカエラさん、あなたはいったい……」

「来てくれたのですね、ルカ……」

 ミカエラが微かに笑みを見せた時、足音が近付いてきた。村の中から現れたのは一人のエルフと、その後ろに連れられたアリス。

「ミカエラ様、裏門の敵勢も追い返しました。こちらの少女が加勢してくれなければ、どうなっていたか……」

「ふん……こっちはビーストどもばかりで退屈だったぞ。そっちはなかなか盛り上がったようだな」

「まぁね、大変だったよ……」

「天使もモンスターも入り混じって、大乱戦だ」

 アリスは平常を装ってはいるが、かなり疲労してる様子だ。やはり、少女の姿だと思うように戦えないのだろうか。

「ありがとうございます、あなた達のおかげで村は守れました。私達だけでは、イリアスの手勢を撃退することは不可能だったでしょう……」

「いやぁ……」

「それより、イリアスヴィルの人は?」

「ええ……ほとんどは、村の中で保護しています。あの時、たまたま戸外の離れにいた者達を除いては……」

「そ、そうですか……」

「こんな状況だ。素直には喜べねぇけど……どうやらイリアスヴィルの人達は無事みてぇだな」

「さあ、こちらにどうぞ。色々と、お話もあるでしょう……」

「は、はい……」

 こうしてルカとヴィクトリーとアリスは、村内へと招き入れられたのだった。天使と思われる謎の女性、ミカエラに招待されて……

 

 ルカがイリアスヴィルの人と再会してる間、ヴィクトリーは外れの方で修行してた。

「だだだだだーっ!!」

 超サイヤ人になりながら、遠慮無しに基礎戦闘訓練を行う。もともとイリアスヴィルの人達とはたった三日のよしみだ。再会してやっても何も無いだろう。

「ふんっ! はぁっ! でゃあーっ!!」

 とにかく、超サイヤ人になったからには一刻も早くその壁を超えなければならない。そうしなければ、おそらくイリアスには勝てないだろう。

「……洗礼を受けていない勇者と共に、素手で敵をなぎ倒す武闘家が現れたって聞いてるわ」

「……」

 ふと見ると、エルフが腕を組みながらヴィクトリーを見てた。キメラタンに捕まってたあいつだ。

「あ、あの……怪我は……」

「こんなの擦り傷よ」

 そう言って、エルフはヴィクトリーに水を渡す。

「……ありがとう」

 ヴィクトリーはそれを飲んでから、思いっきり浴びて汗を洗い流した。

「……羨ましいわ。私達みたいに武器を取って戦う必要が無いなんて……」

「そんな楽なもんでもねぇさ」

 彼は、引き続き修行しながら答える。

「俺だって剣はかじった事ある。だけど、簡単な剣技しか出来ねぇし、不器用だから素手に逃げたんだ」

「……剣、使えるの!?」

 エルフは、意外そうな声で言う。

「なんだよ……俺が殴る事しか脳がねぇ馬鹿だって思ったか?」

「……」

 正直、思ってた……という感想を喉から出る前に飲み込む。

「あの……」

 エルフはそう言いながら、ヴィクトリーに剣を渡した。

「これ……」

「……」

 ヴィクトリーがその剣を取ろうとした時だった。

「あなたにも大切な話があります。私の家にどうぞ……」

 ミカエラが、ルカとアリスを連れてヴィクトリーに声をかけた。

「み、ミカエラ様……」

「あ……悪いな」

 ヴィクトリーはエルフに手を振りミカエラについていく。

 大切な話とは、いったい……

 

「まずは、お礼を言っておかないと……イリアスヴィルのみんなを助けてくれて、ありがとうございました」

 ミカエラの家で、ルカはお礼を言う。確かにミカエラが例の転送魔法を使わなかったら、それこそイリアスヴィルの人間は皆殺しにされていただろう。

「いえ……イリアスヴィルの全員を救うことが出来なかったのが心残りです。こちらも襲撃を受けていたため、混乱の中での転送術式でしたので……」

「……」

「それはそうと、ここにはエルフしか居ねぇんだな。あとは……元天使がちょいちょいとって感じか」

「なにっ……!?」

「鈍い奴だな……まだ気付いていなかったのか……?」

 アリスは、息を吐いてルカにそう言った。そして、ミカエラが頷く。

「ええ……住民の大半は魔物であり、特にエルフが多いです。そして、あなたの言う通り元天使……堕天使も居ます」

「堕天使……?」

「イリアスの考え方……過剰な魔物排斥に反対する天使も、少ないながら存在しているのです。天界を追われ、地上に移り住むことになった……そんな彼女達は、堕天使と呼ばれる事になったのですよ」

「も、もしかして……ミカエラさんも……」

「ええ、その通り……私も堕天使ですよ。原初の天使と呼ばれ、最初にイリアスによって造られた天使姉妹……その双子の姉が、この私なのです」

「さ、最初の天使ですって……?」

「そ、そりゃあすげぇや……!」

 それが本当なら、大物なんてレベルじゃない。全ての天使の中でも、一番最初に生み出された存在なのだ。

「それでは、全てをお話しましょう……」

「……」

 ヴィクトリーは、ミカエラの話に聞き入った……

 

 話は数十億年前に遡る。

 世界を循環してた聖素と魔素が、それぞれ濃縮されていった。わかりやすく言うと、光と闇が出来たんだって。

 聖素……光からはイリアスが生まれた。魔素……闇からは邪神アリスフィーズが生まれたそうな。

 問題の光……イリアスは、まず自らの分身を作ったとか。神の姿に似せて造られた二体の分身は、双子の天使となった。その姉方が、ミカエラさんなのだ。言われてみれば、ミカエラとイリアスは、雰囲気が何処と無く似ている。

 それからイリアスは数々の分身……つまり、天使を生み出した。

 イリアスはきっと、自分の分身を作ろうとしたのだろう。だけど、天使ってのは自我を持ってはいるが、あくまで聖素で作られたイリアスの分身に過ぎない。決して、イリアスを満足させるようなものじゃなかったのだ。

 寂しかったのかもしれない、イリアスも……

 邪神は闇そのもの……決して交わる事はなかった。そこでイリアスは、地上の生物に目をつけた。

 当然、爬虫類や原始的な哺乳類……それらを、知性ある存在に導こうとした。大型爬虫類……恐竜を滅ぼしたり、生命が住みやすいように環境を整え……試行錯誤する事数億年。哺乳類は猿となり……猿は人間へと成った。こうして人間は出来上がったのだ。

 だが、イリアスにとって好ましからざる者が地上には存在していた。それが、邪神によって生み出された魔物だ。

 邪神の方は、簡単に魔物を生み出すことができたらしい。というのは、魔素が直接的に生物の遺伝子に絡みやすいからとかどうとか。無教養なヴィクトリーにはよく分からなかった。

 邪神も、まずは二代目アリスフィーズを作った。更に地上で独自発展していた生物の遺伝子を使い、六体の魔物を生み出した。言うまでもなく、そいつが六祖だ。現在、地上にいる魔物はみんな六祖の遺伝子を受け継いでいるらしい。

 こういった話は、地上には出回ってないらしい。聖魔大戦のあと、イリアスにとって好ましくない事実は抹消されたとか。

「それでは、その聖魔大戦の話をしましょう……」

 この世界の千年前、イリアスと邪神の対立が決定的となった。そして、とうとう地上の覇権をかけた争いが始まったのだ。

 邪神の魔物軍対女神の天使軍……想像しただけても、凄まじそうだ。

 ともあれ、その戦いは熾烈を極めた。ミカエラさんも、天使長として何度も六祖と剣を交えたとか……その妹も、副天使長として……

 戦況は、邪神が終始として優勢だった。二人の神の激突は、凄まじい破壊をもたらした。そして、そのぶつかり合いを続けていれば、全てを破壊してしまうと二神は悟っていたらしい。

 しかし、イリアスはなんと世界の存亡を脅しに使ったのだ。このまま激突すれば、全てが消えてなくなる……しかし邪神らが封印に応じれば、他の魔物には手を出さない……と。

 卑劣……というより、もはや狂気だ。そこまでして、イリアスは邪神に勝ちたかったのか。

 邪神は、降伏せざるを得なかった。そして六祖とともに、六祖大縛呪に封じられた……

 だが邪神も馬鹿ではないらしく、例の封印に特殊な自動解除条件をつけた。イリアスが魔物に手を出した時……その時こそ呪縛は解けて、六祖も邪神も復活するという仕組みになっている。

 魔物は死ぬと、魔素に還る。それが輪廻転生を得て別の魔物になるが、いっぺんに大量の魔物が死ぬと、そうではなくなる。輪廻転生が滞り、聖素より魔素の方が濃くなってしまうのだ。こうやって魔素と聖素のバランスが崩れれば、六祖大縛呪も解けるとか。

 ……そう言えば、以前なんでイリアスは魔物や自分を信じない人間を皆殺しにしないのか、考えた事がある。そうか、こういう事だったのか……

 まぁ、イリアスも馬鹿ではないらしい。大気中における魔素の操作方法、新たな結界の開発、邪神が復活した時の対策……なども練っている。そういう時の為に、天使の中の知恵の者にキメラモンスターを作って貰ってるとか。誰とは言わんけど。

 そうやって、魔物自身に魔素の管理をさせるという方針に定めたのだ。そのためにイリアスが目を付けたのが、黒のアリス……ハインリヒに討たれたあと、その命を救ったのだ。

 再創世が成った時に、魔素の管理を任せるという条件つきで……

 イリアスの策略に、我慢出来なくなった天使も出てきた。それが、ミカエラさんの妹……やはり、原初の天使だった。

 そいつは、たったひとりの最終決戦に赴いた。あの邪智暴虐のイリアスをぶっ倒す為に、命をかけて……そいつを討つのに、イリアスはミカエラさんを差し向けた。ミカエラさんとその妹の戦いは熾烈を極め……そして妹は重症を負いながら下界に脱出、堕天使となった。

 それから数百年……レミナを滅ぼした。あそこでは高度な魔導実験もされていたとか。

 結局のところ、イリアスは自分を信じない者を憎むのだ。まさに、超すげぇ最強のかまってちゃんって訳だ。

 それから色々あって、ミカエラさんはこの村に根を下ろしたとか。ミカエラさんは生活が落ち着き始めたとき、妹の消息を追ったらしい。妹は百年ほど世界をウロウロした後、落ち込んでる勇者と出会った。そしてその勇者を愛して、そうして子供を産んで、人間として死んだ……

 

 その妹こそ……

「ルシフィナ……僕の母さんなんだね……」

「ルカの母ちゃんが……イリアスに反旗を翻して戦った天使……か」

「まさか、ルカの母親が堕天使だったとはな……流石の余も、驚いたぞ」

「ショックでしたか、ルカ? あなたは純粋な人間ではない事を知って……」

「……」

 ルカは首を左右に振った。

「いいえ、ミカエラさん……むしろ、誇らしいものだと思います。僕の存在自体が、人も、魔物も、そして天使とも共存していけることの証明のような気がしていて……」

「そうですか……本当に、いい子に育ちましたね」

 そう言って、ミカエラさんは僕達に柔らかな笑顔を見せた。そう言えば、ミカエラさんはルカの母親の姉さん……って事は、ルカの伯母に当たるのか。

 

 その後も話は続く……マルケルスは、ハインリヒの血統だったとか。

 原初の堕天使と、伝説の勇者の血統……通りで、ルカは色々と人間離れしてる訳だぜ……

流血表現

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  • このままでいい
  • しなくていい
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