もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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イリアスベルク、乱戦

 ミカエラの話によって、全ての謎が解けたヴィクトリー。そして、たまもの話により天界の軍勢が本格的に仕掛けてきた事を知る。

 三人の戦士は何の因果か、世界をもう一周する事にした。ルカの精霊の力の奪還と、世界各地の天界軍の強襲から人間達を守るために。

 そして、まず最初に向かったのはイリアスベルクだった。

 

 イリアスベルク上空……

「まずいぞ、町がすっかり囲まれている……!」

 ルカの眼下では、イリアスベルクが魔物の群れに包囲されていた。衛兵が総出で防いでいるが、突破されるのも時間の問題だろう。

「よし、行くぞ!!」

 ヴィクトリーはガルダから跳び、舞空術でイリアスベルク内に向かう。

「よし、余達も加勢するぞ!」

「あぁ!」

 ルカとアリスもガルダの背から飛び降り、乱戦の中へと降り立った……

 

「おらおらおらおらおら!!邪魔だ邪魔だ邪魔だっ!!」

 ヴィクトリーは町内に降りると共に、抜拳し、キメラモンスターを薙ぎ払っていた。

「ひいぃ……!」

「た、助けてぇ……!」

「ど、どうなってるんだよ……!」

 ふと、そんな男達の声が聞こえてきた。

「むっ!?」

 見ると、男達がキメラモンスターに襲われているではないか。

「ふふっ……逃がさないわよ……」

「ありゃあ、ナメクジのキメラモンスターか……?」

 ナメクジ型のモンスターに、触手がついたみたいなキメラモンスター……適当に、キメラスラッグと名付けようか。

「そんな事考えてる場合じゃねぇ!」

 ヴィクトリーは瞬間移動し、キメラスラッグの前に立つ。

「逃げろおめぇら!」

「あ、あんたは……!?」

 男達は驚きながらも、唐突に現れた、山吹色の格好をした少年を凝視する。

「へぇ……イキの良さそうなのが出てきたわね……」

 キメラスラッグはそう言って、構える。

「はぁあああっ!!」

 ヴィクトリーは気を解放し、超サイヤ人となった。辺りにエネルギーが波動し、凄まじいパワーが溢れる。

「なっ……!?」

「だあぁっ!!」

 そして、彼女の腹に一撃した。

「がっはぁあ……!?」

 キメラスラッグは、その一撃で倒れ、戦闘不能になった……

「す、凄いぞ少年!」

「何やってんだおめぇら!とっとと逃げろ!」

 ヴィクトリーがそう言うと、キメラビーストが男達に襲いかかってきた。

「ほら言わんこっちゃ……!」

 そう言いながら、踏み出そうとした時だった。

「死剣・乱れ星……!」

「ダークネスボールっ!」

 影が二つ飛び出してきて、剣技で二体、魔法で一体を倒してしまった。

「た、助かった……!」

 ようやく安全になった男達は、すたこらさっさと走り去る。

「ふぅ……間に合ったか……」

「ヴィクトリーのお陰だな、感謝するぞ。」

 そして、ヴィクトリーの前に立った人影の正体は──

「ルカっ!アリスっ!」

 町の外に着地したハズの、ルカとアリスであった。

「町外は衛兵が何とか頑張っている。僕達は町内を頼まれた!」

「敵はまだまだ残っている、行くぞ!」

「ああ……!」

 三人の戦士は走り、イリアスベルクを進む。

「次の相手は、あの通りの2ブロック向こうだ。」

「魔物の気が数体……いや、こいつは……!」

「とにかく、行くぞ!」

 三人は、混乱する町を猛進した……

 

「邪魔よ……おチビちゃん達……」

「ひゃあっ!」

 キメラモンスターの触手の一撃で、プチラミアはぶっ飛ばされてしまう。石壁に叩きつけられた体が、地面にだらりと転がる。

「このぉっ!」

 キメラモンスターの頭上から飛びかかったヴァンパイアガール──その体はたちまち触手に巻き取られ、拘束されてしまった。

「うがー!離すのだー!」

 触手にがじがじと噛み付くドラゴンパピー──その体も、しゅるしゅると触手に絡め取られてしまう。

「まったく……面倒な小娘達ね……このまま、絞め殺してあげるわ……」

「あうぅ……!」

「うがが……!」

 触手に力が込められ、少女達を締め上げる。骨が軋むほど締め上げられ、二人は呻き声を漏らした。

「ふふふっ、苦しいでしょう。さぁ、骨をバキバキに潰されてあの世に行きなさい……」

 キメラモンスターの触手に、力が込められる……が、次の瞬間、少女達を締め上げていた触手が切断された。

「何とか間に合ったみてぇだな……」

「大丈夫か、みんな!」

 ヴィクトリーの気円斬とルカの剣技によって触手が切断され、ドラゴンパピー達が地面へと投げ出される。二人ともぐったりしているが、命に別状はないようだ。

「た、助けに来てくれたの……?」

「ああ……こいつの相手は、僕達がする!」

 ルカとヴィクトリーは構え、キメラモンスターと対峙する。

「へぇ……このキメラテンタクルの触手を斬るなんて……随分と、腕の立つ人間がいるようね。」

 触手がうねうねと、うねる。切り落とした部分も再生しているようだ。それに、普通の魔物とは違う嫌な気……こいつは、明らかに戦闘タイプのようだ。

「……あなた達は、どんな風に」

「激烈光弾っ!!」

 ヴィクトリーお得意の不意打ちのエネルギー弾が、キメラテンタクルの顔面に爆裂した。

「閃殺っ!!」

 続いてルカの閃殺が、彼女を更にぶっ飛ばした。

「……殺す!!」

 彼女は吹っ飛びながらもそう言い、触手を伸ばし、ヴィクトリーを拘束した。

「なにっ!?」

「はぁっ!」

 そして、勢いよく民家へとぶん投げた。民家の壁が崩落し、ヴィクトリーは瓦礫に埋まる。

「ちっ!」

「次はあなたの番よ……!」

 キメラテンタクルはルカに目をつけ、両腕の猛攻を仕掛けた。

「……」

 しかし彼はそれを流れるように避けて、懐へと踏み込む。

「なっ……!?」

「魔剣・首刈りっ!!」

 そして、踏み込んだ足に力を込め、キメラテンタクルの喉元を突き上げ、その体を打ち上げた。

「ぐっえ……!?」

「……」

 打ち上げられた彼女の目の前に、瞬間移動するヴィクトリー。彼は彼女の胸に指を刺し、止まる。

「超龍閃撃!!」

 そして、強烈な寸勁でもってぶっ飛ばした。それで、彼女の体が勢いよく地面に叩きつけられた。

「ごっ……はぁあ……!!」

 キメラテンタクルは倒れ、吐血する。

「そ、そんな……この私が圧倒されるなんて……!」

 ヴィクトリーとルカは並び、倒れる彼女に拳と剣を向けた。

「さぁ降参しろ。お前にもう勝ち目はない!」

「ぶっ飛ばされねぇ内に、とっとと帰れ!」

「いや、まだよ……!これぐらいで私が……!」

 キメラテンタクルは、触手を薙ぎ払った。二人はそれを跳んで避け、距離をとる。

「まだ諦めていないのか……」

「往生際の悪いやつ……」

「はぁあっ!」

 地面を這うように、伸びてきた触手──

「ていっ!」

 それを、ヴァンパイアガールがむぎゅっと踏みつけた。

「!?」

「うぁあっ!」

 さらに彼女は、触手を思いっきり引っ張る。足元がふらついていたキメラテンタクルは、そのまま地面に倒されてしまった。

「ぐっ……!この、小娘が……!」

「うがー!」

「このぉっ!」

 倒れたキメラテンタクルに飛びかかったのは、二人の魔物少女。プチラミアはぼかぼかと殴りつけ、ドラゴンパピーは顔面に火を吐く。

「お、おい……!」

「大丈夫なんか、おめぇら……!」

「後は、私達に任せて!あんた達は、噴水広場で暴れてる天使をやっつけて!」

「うがー!きっとあの天使が親玉なのだー!」

「くっ……まとわりつくな、この雑魚ども……!」

 触手を振り回して暴れるキメラテンタクルに、負けじとくらいつく少女三人。かなり弱らせたとはいえ、この三人に任せて大丈夫なのか……?

「ほら、早く行ってよ!町のみんなが天使にやられる前に!」

「こいつだけは、意地でもやっつけるのだー!うががががーっ!!」

「わ、分かった……無理はするなよ!」

「死ぬんじゃねぇぞ!いいなっ!!」

 キメラテンタクルの相手はあの三人に任せるしかない。

 戦士達は、噴水広場に駆け出した……

 

「あ、あうぅ……」

「はぅぅ……」

 噴水の周囲では、十人近くもの戦士が倒れ伏していた。そして、その中心に居たのが……

「あら……また人間が二人、餌食になりたいのですか?わたくし、イリアスベルク制圧軍を率いる大天使マリエルと申します。」

 外見は、あどけない風貌の少女。しかし大天使を名乗るだけあり、相当の威圧感だ。

「僕はルカ……ただの偽勇者だ。」

「俺はヴィクトリー、よろしくな!」

 マリエルのスカウターが反応する。そして、二人の素性を映し出した。

「……なんと、あなた達が噂の汚れし勇者と野蛮な猿ですか。これは、丁重にお相手をせねばなりませんね……」

 マリエルはそう言って笑い、構えた。

「アリス、周囲のキメラモンスターを任せた。この場に誰も乱入させんな。」

「ああ、余はどっちにしろ天使には触れられん……任せたぞ!」

 アリスは飛び、町のキメラモンスター狩りに出かける。そして、勇者と武闘家は天使に向かって構えた……

「だぁっ!」

「がぁっ!」

「うふふ……」

 三人はぶつかり合い、激しい攻防を繰り広げた。

「あだだだだだぁっ!!」

「でぇやぁあああっ!!」

 嵐のような拳の連打と、無数の剣閃。しかしそれを受け流すは、大天使の眼光と身のこなし。

「遅いですね……まるで、止まって見えます。」

 マリエルはそう言い、二人の攻撃を切り落とした。

「ふんっ!」

 そして足払いをかけ、二人をすっ転ばせた。

「うわっ!?」

「ぐっ!」

「あはっ……!」

 更に素足でルカの股間を踏み、ぐりぐりと足を動かす。

「うぁ……!」

「ちっ!」

 ヴィクトリーは、マリエルの顔面に気弾を放った。だが彼女は避け、今度は彼の股間を踏む。

「うふふ……楽しいですね……」

「だっ!!」

 彼は股間を踏まれる快楽を振り切って彼女の足を持ち、立ち上がってグルグルとぶん回した。

「っ!?」

「だりゃああーっ!!」

 そして石壁へとぶん投げた。石壁は崩落し、彼女は瓦礫に埋まる。

 それを確認したルカは、すぐさま立ち上がった。

「うぁあああーーーっ!!」

 ヴィクトリーは、エネルギー弾を連射した。

「僕もっ!!」

 ルカも両手にエネルギーを溜め、連射する。

 二人のエネルギー弾がマシンガンのように連射され、マリエルに集中砲火し続ける。その間に、爆発が何度も連続した。

「かぁっ!!」

 マリエルは巨大なエネルギー波を放ち、それらを消し飛ばした。

「うおぉっ!!」

 ヴィクトリーがそれを蹴り上げ、上空へと弾き飛ばした。

「あはっ!」

 その隙にマリエルはヴィクトリーの背後に回り、その体を抱きすくめる。

「な……!」

「ふんっ!」

 そして、バックドロップした。

「はぁっ!」

 だがヴィクトリーは逆立ちし、何とか耐える。

「え……!?」

「そりゃあっ!」

 そしてその状態のまま、マリエルを蹴っ飛ばした。

「がはっ!」

「九重の羅刹っ!!」

 蹴っ飛ばされた彼女に、ルカの剣技が叩き込まれる。

「きゃあああっ!!」

 彼女は大ダメージを受けたことによって体幹が崩れ、ふらついた。

「一気に決めるぞルカぁっ!!」

「おうっ!!」

 ヴィクトリーはかめはめ波のポーズをし、ルカはヴィクトリーの手に手をかざす。

「総べての生、母なる天に回帰せよ……!」

「うぉおおおっ!!」

 ルカのエネルギーが、ヴィクトリーの手の中で凝縮していく。それを確認していたマリエルのスカウターがスパークし始めた。

「そ、そんな力……!そんな力、何処に……!?きゃあっ!?」

 そして、とうとうスカウターは壊れる。二人の跳ね上がる戦闘力によって測定が追いつかず、ショートしたのだった。

「魔天かめはめ波ーーーっ!!!」

 ヴィクトリーは、魔天回帰とかめはめ波の合体技を放った。凝縮された天使のエネルギーが、蒼き波動と共に爆発し、打ち出される。そして、それはマリエルに直撃し、大爆発を巻き起こした。

「ああイリアス様……わたくし、人間などに……!!」

 そして、彼女はそう言い、粒子となって消えていった。

「おっしゃあ!」

「よし、残った魔物も……!」

 ボスを倒した事で、魔物の動きも乱れてくる筈だ。一気に叩くぞ……と、思った時だった。

「あれ……?他の魔物達も、逃げていくみたいだぞ……?」

「ああ……町を徘徊してた奴が逃げていく……」

「さっきの天使は、イリアスベルク制圧軍の指揮をとっていると言ってた。」

 ここでアリスがぬっと現れた。

「指揮系統が乱れると、敵はとても脆いようだな。」

「なるほど……親玉を倒すのが、いちばん手っ取り早いんだな……」

 息を吐きながら、ルカは剣を納める。

「ふぅ……」

 ヴィクトリーも超サイヤ人を解き、息を吐いた。

「やったのだ!」

「くくっ、我等の恐ろしさを見せ付けてやったぞ……」

 そこに現れたのは、あちこちに生傷をこしらえた三人の少女。完全に失神し、縄で縛られたキメラテンタクルを引きずっている。なんとか、三人がかりで叩きのめしたようだ。

「ありがとう、助かったよ。あんた達が来てくれなかったら、どうなってたか……」

「いやいや、君達もよく頑張ったよ。」

「あぁ……弱らせた後とはいえ、大金星だぞ!」

 そう言うと、三人の表情がみるみると曇っていく。

「うがが……悔しいのだ……あのままじゃ、やられていたのだ……」

「あたし達、ほとんどなんの役にも立てなかった……町のみんなを、守りたかったのに……」

「……」

 予想以上に、三人は自分の無力さを痛感しているようだ。

「悔しいならば、今後は研鑽を積め。この偽勇者達も、昔はナメクジに塩をぶつけていたのだぞ。」

「ふ、古い話を蒸し返さないでくれよ……」

「あはっ!そう言えばそんな日もあったなぁ!」

「しかし研鑽を積み、今では精霊を従わせるようになったりした。今では片方は天使の力を覚醒させ、片方は伝説の戦士の姿に覚醒した。もうどこからどう見ても立派な人外だ。」

「……褒めてるのか、それ?」

「じ、人外……」

 いつしか、町もざわざわと騒がしくなってくる。当座の脅威は去り、町の人々も家から出てきたのだ。

「おや、やっぱりあんた達かい。前の時も今回も、世話になりっぱなしだねぇ。」

 戦士達に声をかけてくれたのは、サザーランドのおかみさんだった。

「うむ、一暴れしたからお腹が空いたぞ……」

 おかみさんは、そう言うアリスに目をつけた。

「ありゃお嬢ちゃん、ずいぶんと小さくなっちゃったねぇ。お団子でも食べて、早く大きくなりな。」

「あまあまだんご……」

 アリスは目を細め、もらった団子を食べ始めた。

「ほら、あんた達もご褒美だよ。がんばって戦ったんだから、たっぷり食べな。」

 おかみさんは、チビ魔物娘達にもだんごを配る。

「ありがとうなのだ……」

「うまい……もぐもぐ……」

 落ち込みながら、団子を頬張る少女達。

「大食いの兄ちゃん、あんたはいらないのかい?」

「この戦いが終わったら、ゆっくりと食わしてもらうぜ……それより……」

 ヴィクトリーはカードケースから、カードを一枚取り出す。

「おかみさん、これ……」

 そのカードを、おかみさんに差し出した。

「んん、何だいこれ?」

「とりあえず、持っといて下さい。絶対何かの役に立ちますから……」

「あんたがそう言うって事は、絶対に役に立つんだね……ありがたく貰っておくよ。」

 おかみさんはカードを受け取り、大事にしまった……

 

 一時の休息は結構だが、いつまでものんびりはできない。

「……それじゃ、僕達は行きます。他の町も、天使や魔物に襲われているんですよ。」

「英雄ってのは、忙しいもんだねぇ。気を付けて行くんだよ。」

「はいっ!……ってアリス、いつまで団子を食べてるんだ!お前も行くんだよ……!」

「あまあまだんご……」

「あはは……それじゃあ!」

 名残惜しそうなアリスを二人で引きずり、ガルダへと乗せる。こうして戦士達は、イリアスベルクを後にしたのだった……

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