もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
一行の次の目的地はナタリアポート。嘗て人魚学校の爆破を目前にしたり、メイアという人魚の依頼を受けたりした所である。ここもまた、イリアスの魔の手によって、戦場と化していた。
ガルダに乗りながら、ルカとヴィクトリーとアリスが並ぶ。
「着地点どこにする?」
ヴィクトリーが眼下の戦場を俯瞰しながら、言う。
この戦場は、例に漏れず普通ではなかった。と言うのは、ここで暴れているのは人魚で、ここを防衛しているのもまた人魚なのだ。人魚は水魔法が得意なので、戦い方はそれを利用したものになる。よって、まるで津波と津波が激突しているかのような戦いが繰り広げられていた。
慎重に着地点を決めないと、着地した所を津波で狩られそうだ。
「あそこにしよう!みんな、飛ぶぞっ!」
「うむ、行くぞ!」
「おうっ!!」
ルカの背から光の翼が顕れる。アリスも同じく背から翼を生やす。その横にいるヴィクトリーは舞空術でふわりと体を浮かせる。そうして三人はガルダから飛び降りて、飛行する。
「戦いを嫌うはずの人魚共が相争うとは……おそらく、黒のアリスの差し金だな。」
飛びながら戦場を見回し、アリスは言う。
ルカはそれを聞き、心が締め付けられた。今すぐにでも止めさせなければ。
そう思って辺りを見回す。これほどの大軍、何処かに大将が居るはずだが──
「……おい、見ろヴィクトリー!」
「ん?」
ルカが指す方向には、メイアが居た。
水魔法でもって、懸命に戦う彼女は、既に多少のダメージを受けている模様。それでも倒れること無く、戦い続けている。
そんな彼女の背後から、敵のマーメイドが武器を持って忍び寄ってくる。眼前の戦闘に必死で、気付いていないようだが──
「ちっ!」
「うぉおっ!!」
そこにルカとヴィクトリーが飛び、同時にその敵マーメイドに飛び蹴りを食らわせた。そいつは吹っ飛んで壁に叩きつけられ、戦闘不能になったようだ。
「メイアさん、平気ですか!?」
「勇者様……!来て下さったのですね……!」
ルカとメイアが背を合わせ、構える。
ヴィクトリーが一人、ここから教会方面へ向いていた。
「……旦那さんや他の人間は、既に避難してるんだな。」
彼の言葉に、メイアは頷く。
「はい!私達マーメイドは、協力して敵をそこに近づけないようにしているのです!」
「分かりました、僕達も加勢します!」
とりあえず、この大軍をどうにかしなければ──そう思っていた矢先だった。
「……あぶねぇ、二人とも!!」
ヴィクトリーがルカ達に向けて気合砲を放ち、二人を吹っ飛ばしてしまった。
「わっ!?」
「ヴィクトリー!?何を──」
何をするんだ──なんて言葉が出る前に、己を吹っ飛ばした彼は一人、凄まじい津波に直撃してしまった。
「なっ!!?」
なるほど、そういう事か。彼が自分らを吹っ飛ばしていなかったら、僕達も巻き込まれていただろう。しかし、僕達のためだけに吹っ飛ばすなんて──
「……
彼は普通に全身にバリヤーを張って、耐えていた。そんな彼の懐に、ちゃっかりアリスまでいる。
「全く、貴様一人で受ける必要があったか?このドアホめ。」
「そう言うなって。あいつ、こっちに仕掛けたっぽいしさ……」
悪態つく彼女に対し、彼はそんな事を言いながら、目線を敵の方へ向ける。彼の目線の先には強力な気を放つマーメイドが居た。
「おい、いきなり津波ぶっぱなして来るなんて卑怯じゃねぇか。」
「貴様が言うのか。」
「へぇ、不意打ちが得意な貴方が言うのね。」
アリスとマーメイドに揃ってツッコまれた彼は「へへへ」と笑ってから、目を鋭くする。
「どうしてこの町を攻撃すんだ。この町の皆、仲良くしてたじゃねぇか。」
「ふん、人間に尻尾を振る人魚など、粛正の最たる対象ですわ。一族の屈辱を忘れるとは、マーメイドの名折れです……!」
「一族の屈辱だと……!?」
「ローラとアランの悲劇……有名な人魚伝説よ。あなたも、耳にした事はないですか?」
「……確か──」
話には、聞き覚えがある。確か、ルカに「茶でもしねぇか」と提案した時に間違って寄って半ば無理矢理ジュースを飲むことになったマーメイドパブで……
その内容は、人魚と青年の悲しいお話。アランって青年の船乗りがやべぇ大怪我して、ローラって人魚に助けられた話だ。人魚の血ってのは仙豆に次ぐ万能薬ではあるが、彼の大怪我はそう簡単には直せず、毎日マーメイドの血を飲ませないと死んじまうそうだ。ローラはアランに一目惚れしたのもあって、どうにかして助けたかった。だから人間に化けて、彼の看病をしていた。料理に血混ぜてって感じで。
そんなある日、ローラが人魚だってのがバレちまった。そこから悲劇は起きた。当時のこの町も魔物排斥の思想が強く、彼女をついに告発しちまったんだ。そうして捕らえられた彼女は、処刑される事になっちまう。その時に彼女は処刑に串刺し刑を所望したとか。串刺しで流れた血を彼に飲んでもらうために……
その事を知った彼は、彼女を愛していたが故に、そんな惨い事をさせる訳にはいかねぇと、毒を飲んで死んじまったんだ。自分が死ねば、彼女の
それを知った彼女は、処刑場から逃げたんだ。そうして町には数日の間、嘆きのような嵐が吹き荒れたとか……
この悲劇から、町の人間は反省して、人魚と仲良くやってたが……
「……」
ヴィクトリーは、動揺した素振りで目線を下に向ける。それを見たマーメイドも、彼と似たような表情をする。
「……ローラの話を知っているようですね。人間の愚かさが、最悪の結末を──」
「黙れ。」
彼は
「確かにおめぇらの怒りには正当性がある。けどよ、こんな戦争巻き起こす理由にはなんねぇ!!」
「私達の心を……ローラの純粋な気持ちさえ分かろうとしなかった人間が、知った風な口を!!」
二人は気を解放し、向かい合った。
「てめぇら、過去がどうこうで今の在り方が変わるような種族なんか!?」
「適当な事を言わないで下さい……!」
マーメイドは牽制に、水魔法を放ってくる。圧縮された水の弾丸が4発ほど、こちらに放たれる。
ヴィクトリーはそれらを避けてから、後方を確認する。着弾した壁が、地面が、抉れている。
「相当の威力みてぇだな……!」
「そうですか?」
マーメイドは、既に背後に回っていた。
彼女は水魔法を纏った拳を、こちらに振りかぶっている。しかし彼は超反応で振り向き、その拳を受け止め、脇腹にフックした。
「ごふっ……!?」
「でやぁっ!」
「っ!」
彼女はそれをギリギリで水弾で相殺し、息を吐く。
「そりゃあっ!!」
そんな所に彼が「スキあり」と言わんばかりに飛び込んできて、次々に攻撃をラッシュした。彼女もそれに応戦し、素早く腕を動かして彼の攻撃を防御する。
そんな攻防の最中、彼女の髪がしゅるしゅると蠢く。そうして、彼の両腕が絡まり、巻き付き、拘束されてしまった。
「なっ!?」
「はぁあっ!!」
彼女は両手を合わせ、かめはめ波のように津波を、彼の腹に撃ち出した。
「うわぁああぁあーーーっ!!」
彼は吹っ飛ばされ、そこらの建物に叩き付けられた。その建物も派手に壊れ、彼は瓦礫に埋もれた。
「っ!ヴィクトリー!!」
「あっ、勇者様!」
ルカは剣を抜き、ヴィクトリーの方へ走り出す。そんな彼の背に手を伸ばすメイア。
彼女の方が先に異変に気付き、海の方角を見た。
「避けて勇者様ーっ!!」
「えっ──」
彼は、突如やってきた大津波に飲み込まれてしまった。
「うわぁああああっ!!」
そうして押し流され、海の方へ行ってしまった。
「そ、そんな……!勇者様も武道家様も……!」
「安心しろ、奴らはそんな事で倒れるタマではない。」
メイアの傍に、いつの間にかアリスが居て、そう言う。
「えっ、それは……」
「まぁ見ていろ。」
アリスが言うと、海と瓦礫から気が噴き上げ、両者の姿が見えた。
「っ……!」
マーメイドの前には、超サイヤ人のヴィクトリー。そして海には天使の力を宿したルカがいる。
「もう容赦しねぇぞ……!」
「っ……!」
超サイヤ人となったヴィクトリーが、超スピードでマーメイドの眼前に迫る。
「!!」
あまりの速度に驚き、硬直してしまうマーメイド。
「どりゃあっ!!」
彼はそんな彼女の顔に、容赦なく肘打ちする。ぶっ飛ばされた彼女を追い、ダッシュして尾びれを掴む。
「くっ!」
マーメイドは負けずに、水魔法のエネルギー弾を放ってくる。
しかしそれを避けて、先程自分が埋もれた瓦礫の方へぶん投げた。
「きゃあっ!?」
「うぉおおおっ!!」
彼はそこに飛び込み、腹に正拳突きした。
「っぐはあっ……!」
彼女はそれで、膝をつく。
「っぐはぅ……!」
「さぁ、降参しろ!おめぇにもう戦う力はねぇ!」
ヴィクトリーはそう言いながら、マーメイドをキッと睨む。
「っぐ、ぅ……!こ、このままでは……!ローラ様の、無念が……!」
彼女は腹を押さえ、肩で息をしながら、聞き覚えのある名前を呟く。
「……何だと?」
「ローラとアランの悲劇のローラは……私達の今の女王なんですよ……ゆえに……!」
「……!」
マーメイドは、一気に突進してくる。そして、至近距離で水魔法を放った。それは、まさに渾身の水魔法。飛沫が爆発し、周囲にまで衝撃が巻き起こる。
「はぁ、はぁ……!」
飛沫が晴れた先……そこにヴィクトリーは居なかった。
「はっ……!!?」
次の瞬間、マーメイドは白目を剥いて気絶した。その背後に、ヴィクトリーが居た。瞬間移動で背後に回り、
「……」
そんなヴィクトリーの背後に、誰かが着地した。気の察知で見ずとも分かる。この気はルカだ。
「終わったんか。」
「ああ……相手はジェネラルマーメイドって奴だったけど……何とかなったよ。」
ルカはそう言いながら、剣についた海水を払ってから、納める。
「それよりヴィクトリー、聞いたか?ここを襲ってる集団の女王が……」
「……ああ。」
ローラ……伝説に出てくる彼女がボスだとすると、一筋縄では終わらなさそうだ。少なくとも、簡単には終わらないはず。きっと、とんでもない実力に違いない。
「一刻も早く、女王を見つけないと……!」
「ああ……!」
走り出す二人の後ろで、アリスとメイアが向かい合う。
「……では、引き続きここの防衛を任せるぞ。精々、死なぬようにな。」
「はいっ!」
メイアはそう言って、戦火の飛ぶ方へ行く。アリスは彼女とは逆方向の、二人の方へ行った……
「……おい、ルカ。」
「ん?」
ヴィクトリーが隠れながら、ある方向を指差す。一緒に隠れながらその方向を見ると、可愛らしい子供のマーメイドがいた。波とぱしゃぱしゃ戯れながら、鼻歌を歌っているその子は、とてつもない潜在魔力を有しているのを感じる。
「……」
「アリス、あれがクィーンマーメイドか?」
押し黙るヴィクトリーだったが、ルカが聞く。しかし、アリスは首を振った。
「いいや……あまりにも若すぎる。しかし、血縁かもな。」
そう言い合っていると、その子は突如としてこちらに目をつけた。
「わわっ、人間だ……」
そう言うと、警戒の眼差しをこちらに向ける。
「どうする。」
「僕が出よう。」
ヴィクトリーは、非戦闘員を殴る訳にはいかないという信念を掲げているため、戦闘になると不利だ。仕方ないので、ルカが前に出た。
「落ち着いてくれ、僕達は敵じゃないんだ。ただ、クィーンマーメイドに会いたいだけなんだよ。」
ルカがそう言うと、少女マーメイドの眉間のシワが無くなった。
「へ〜……お母さんに会いたいの?」
「お母さん……か。つまり君は女王の娘?」
それを聞いた彼女は、無邪気な笑顔を向けた。
「私はエル、人魚姫だよ。おかあさんは、人間になんか会いたくないんだから。きっと、またおかあさんを悲しませる気なんでしょ?あたしがら意地悪な人間をこらしめてあげる!」
エルがそう言って構えた瞬間、彼女の真横にエンジェルハイロウが猛スピードで飛んだ。その刃は彼女の頬に掠り、その背後10mほど離れたそこらの壁に瞬間で辿り着き、「シコンッ」と刺さった。
「……」
エルという少女は今、背筋が凍るという体験を、初めてした。あんな得物をあんな速度で投げれるのは、どう考えても人間業ではない。
「……お願いだ、君を傷付けたくないんだ。」
「……っふえぇ……」
ルカの凄みに押されたエルは、怖気付いて戦意喪失したようだ……
それを確認したルカは、先程投げた自分の得物に手を向ける。すると、剣がひとりでに浮かび、彼の手に戻った。
「……僕達は、争いたいわけじゃないんだ。君のお母さんに、こんな事を止めさせたいだけなんだ。」
「で、でもぉ、おかあさんは人間が大嫌いなんだよ……あたしのお父さんが、人間のせいで……」
「っ……君の父親は、伝説に出てきたアランって人かい?」
あの伝説は、数百年前の伝説と聞いた。それならば、彼女はこれでも数百歳なのだろうか……?
「どうなんだ、アリス?」
ヴィクトリーは、ルカと同じ疑問を抱いていた。それなので、アリスに聞いてみる。
「ふむ……男が生前に交わった際の子種を、最近まで維持していたのだろうな。サメや一部の魚類は、一年以上も精子を体内に保存出来るという。最高位の人魚ならば、もっと長く精子を体内保存するなど容易い事だ。どういう心変わりで、最近になって娘を生んだのかは分からんがな……」
「……そうか。」
もしかしたら……もしかしたら、ほんの、ほんの少しだけ……頭を冷やして、人間の事を理解しようとしてくれたのかも知れない。これは俺の希望的観測ではあるが、もしそうだとしたら……それをこんな形で唆した黒のアリスは、絶対に許せねぇ。
クィーンマーメイドが愛していたのは、人間。しかし憎むのも人間。その矛盾につけ込みやがって……!
「……っ!」
ヴィクトリーの気の察知が、凄まじい気を捉える。なんと、海の方からだ。
「ルカーっ!アリスーっ!構えろっ!!とんでもねぇやつが来るぞーっ!!」
「っ!!?」
「……来てしまったか。」
身構える三人の前に、凄まじい気を放つマーメイドが現れる。一目見ればわかる、こいつがマーメイドの最上位種であるクィーンマーメイドだ。
「人間は愚か……自分以外の存在を
「お、おかあさん……!?」
静かな雰囲気のクィーンマーメイド……しかし、その内側には今にも飽和し、爆発しそうな憎悪の気が渦巻いているのが分かる。
「聞いてくれ、クィーンマーメイド。人間は、あんたの言うような……」
「聞く気は無いわ。何かを訴えたいなら、私に勝ってからにしなさい。」
「……説得は無理みてぇだな。」
取り付く島もないとはこの事か。まるで、以前のエルベティエのようだ……
「それでも一言だけ言わしてもらうぞ……」
ルカがそう言いながら、剣を抜く。そして、鋭く構えた。その目は、しっかりとクィーンマーメイドの目を合わせている。
「あんたがそこまで憎しみを抱くのは、一人の男を深く愛したからなんだろう?その相手だって、人間だったはずだ!なのに、なぜこんな……!」
「聞く気は無いと言ったはずよ……!」
クィーンマーメイドはそう言って、気を解放した。凄まじい気が、彼らの髪をなびかせる。
「なら、僕達が勝った後に聞いてもらう!」
「いくぞぉっ!」
そうして、遂に二人とクィーンマーメイドは激突したのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい