もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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ラ・クロワ登場

 お化け屋敷でのリベンジマッチに勝利し、息を吐く戦士達。

「また負けてしまったのじゃ……」

 とっちめられたクロムは、そう言いながらしょんぼりする。

「もう、悪い研究はしないって約束したじゃないか。それなのに、どうしてこんな事を……」

「その約束は、確かに守っておるのじゃ……幽霊の研究は人畜無害、命を奪うどころか墓荒らしさえせんぞ。」

 彼女は目を伏せたまんま、そう答える。

「でも、屋敷に入ってきた奴を襲ったんじゃねぇのか?」

「屋敷に入った者は、幽霊で脅して追い払っただけじゃ。それ以上の事はしておらんのじゃ。」

「じゃあ、ロビーにあった三体の屍は……」

「何だかおかしな機械モンスターが、あの三人を吸い殺していたのじゃ。タチが悪かったから、やっつけたのじゃ……」

「……」

「嘘は言ってねぇみてぇだな……」

 ヴィクトリーはしゃがみ、クロムと視線を合わせる。

「プロメスティンとの繋がりは?そもそも今外がやべぇ事になってんのは知ってんのか?」

「プロメスティンからは、合成ナノカーボンや超速シナプス……つまり、ゾンビ向けの高度な技術を教えて貰っただけじゃ。見返りも求められんかったし、以前にお前達に酷い目に遭わされてからは、会ってもおらんぞ。外がやばい事になってるなんて、聞いたこともない……本当じゃ、嘘は吐いておらんぞ。」

「う〜ん……」

 ヴィクトリーはバリバリと頭を掻き、質問を続ける。

「……それで、なんで俺達にリベンジマッチを?」

「降霊術の研究が上手くいっていた矢先、お前らが現れたものじゃから……つい、調子に乗ってしまっただけじゃ……悪気はなかったのじゃ……」

「……だってよ、ルカ。」

「………………」

 大筋の所で、嘘は吐いてはいないようだ。どうやら、天界との繋がりはないらしい……

「……分かった、信じるよ。でも、なんでそこまで研究にこだわるんだ?」

「それは……没落した我が一族を復興するためじゃ。」

 クロムは顔を上げ、そう言った。

「一族を……」

「復興……?ゾンビや幽霊の研究でか?」

「儂のフルネームは、クロム・アルテイスト……アルテイスト家は、代々魔王様に仕えてきた誇りある一族じゃ。魔芸を得意とし、優れた降霊術やネクロマンサー技、人形遣いの技……そうした伝統魔芸の数々でら魔王様を楽しませてきた家系なのじゃ。しかし先代のアリスフィーズ十五世陛下の御代から、それらの技は外道の術として禁止された。儂らの一族は、こうして落ちぶれてしまったのじゃ!」

「……そうなのか。」

「そりゃあ大変だったな……」

 十五代アリスフィーズ……って事は、アリスの母ちゃんか。何で、その時代にアルテイスト家の魔芸が禁止されたんだ?もしかして、アリスの母ちゃんも幽霊が怖かったとか……

「……そういう訳で、儂は一族の栄誉を取り戻したかったのじゃ。降霊術やネクロマンサーの魔芸を、極限まで磨き抜き……そして魔王様の御前にご披露し、認めてもらうために!」

「……そうなのか……でも……」

「魔王様、そこで泡吹いてっけど……」

 二人の視線の先……そこには、アリスが泡を吹いて倒れていた。

「な、なんじゃと……!?」

「……う、うむむ……」

 アリスは起き上がり、クロムを睨む。

「……魔王様、クロムのゆかいな降霊術を楽しんでもらえましたでしょうか?」

 クロムは少し焦りながら、そう言うが……

「……ふざけるな、ドアホが!!貴様は今後三百年、魔王城に立ち入り禁止だ!」

 それを聞いたクロムは、ガーンとショックを受けた。

「わわわ……」

「……夢が遠ざかっちまったな。」

「ど、どんまい……」

 二人はクロムの背中を撫で、励ましてあげる。アリスはようやく冷静になった模様で、彼女の顔を見た。

「そうか……貴様、アルテイスト姉妹の妹の方か。姉が起こした例の事件で、一族ともども永久追放されたのだったな……」

「ね、姉様は……」

 クロムは、不意に視線を床へと落とした。

「姉様がなぜ、狂気に走ったのか儂には分からんのじゃ……でも、一族の汚名は儂がすすがれなければ……」

「……母は、かねてより貴様の姉を危険視していたのだ。一歩間違えれば、奴は狂気の道に至るとな……しかし、母の見立ては甘かった。奴は、一歩どころか二歩も三歩も狂気の道を突き進んだ……ゆえに母は討伐隊を送り込み、貴様の姉を処刑せざるを得なかった。あの者が至ったのは求道者の狂気か、それとも……」

 ヴィクトリーとルカは、顔を合わせる。彼女らにしか分からない話が飛び交ってるので、困惑してる模様だ。

「……いったい、何があったんだ?」

「いや、僕が聞きたいんだけど……」

 そう話した、その時だった。

「狂気とは、実に異な物言いよ。」

 彼らの背後に、ペストマスクを付けた黒い女性が立っていた。

「なっ!?」

「何者だっ!?」

「貴様、何処から入った……!」

 俺もルカもアリスも、全く気配を察知できなかった……こいつ……かなり強い!

「アルテイストの求道に、正気や狂気の別など無用。クロム……お前には、何度もそう教えたはずだがな……」

「その声は……そんな、まさか……!」

「正気と狂気の別にこだわり、真理に一歩とて近付けない……未熟すぎるな、不肖の妹よ。」

 そう言いながら、その女は黒いコートとペストマスクを外した。その素顔は白髪のお姉さんという感じで、何処と無くクロムに似ていた……

「私はラ・クロワ……プロメスティン様の右腕……魔芸の求道者にして、心理に到達せんとする者……」

 クロムはその素顔を見て、驚愕していた。

「そんな……シロムお姉ちゃん……!?まさか、死んだはずじゃ……!?」

「ああ……シロムは既にこの世にいない。今の私は、究極の求道者ラ・クロワだ……」

 こいつが、クロムの姉ちゃん……そんでもって、プロメスティンの腹心の部下。こいつ自身も相当な気を放っているが、それとは別の力を感じた。単純な力以外の何かを、こいつは持ってやがる……!

「でも、なぜここに……!?」

「これも教えた事だろう、クロム……魔芸者が起こした不始末の後片付けは、同業者の仕事。お前の無様な作品の数々、ここに至るまでに全て始末しておいた。とんだ出来損ないだな……お前の作品も、お前自身も……」

「お姉ちゃん……」

「……ぐっ!!」

 ヴィクトリーは超サイヤ人2となり、ラ・クロワに突進した。

「クロムを、馬鹿にするんじゃねぇーっ!!」

「……」

 彼女は彼の全力パンチを、指一本で止めてみせた。

「な、なんだと……!!?」

「ヴィクトリーの全力の一撃が……!?」

「ふん……」

 その指先が発光し、彼の腕に衝撃が駆け巡る。

「ぐぁああああっ!!」

 彼はぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられた。腕も、しばらく使い物になりそうになかった。

 まさか……こんな圧倒的だなんて……!

「ぐ……ラ・クロワとやら……なんでイリアスの側につくんだ!?イリアスは、人間も魔物も滅ぼそうとしているんだぞ!」

「……あいにく、パトロンの素性にはこだわらないタチでな。私の才能を認め、魔芸探求の機会を保証してくれるならば……相手が神だろうが悪魔だろうが、いっさい構いはしないのだ。」

「そんな理由で……イリアスの下についたってのか……!」

 ヴィクトリーは腕を押さえながら立ち上がり、ルカの横についてから、彼女を睨む。

「人間や、仲間だった魔物の虐殺に何とも思わないのか……!」

 ルカは身構えながら、彼女に言い放つ。

「……二人とも、そんな事は問うだけ無駄だ……こいつは、魔芸のために妖魔を虐殺した異常者なのだからな!」

「な、なんだって……!?」

「汚れし勇者と野蛮な猿と魔王、それに不肖の妹よ……あいにく今回は、お前達の始末までは命じられてはいない。とは言え、このまま引き返すのもあまりに芸が無い……魔芸を志す我が身ゆえ、芸が無いなど無能の極み。ゆえに、我が無敵の楽団……」

 ラ・クロワは手を合わせ、気を解放した。

「シルク・ドゥ・クロワ、ここで披露するとしよう!」

 そして、巨大な棺桶が彼女の背後に出現した。それは重苦しい木と木が擦れ合う音を鳴らしながら、ゆっくり開いていく。

「させるか……!」

「おぉっ!」

 こいつは、妹と同じネクロマンサー。手強いゾンビを呼ばれる前に、召喚者を倒してしまえば……

「雷鳴突き!」

 ルカは踏み込み、雷鳴のような突きを放った。

「血裂雷鳴突き……」

 その刹那、棺桶から現れた影が、見慣れた突き技を放つ。その互いの剣がぶつかりあい、なんと相殺してしまった。

「そ、そんな……!」

「ルカと同じ技だと……!?」

「……よくも、私の編み出した技をそこまで使いこなしたものね。生身の肉体だったならば、おそらく押し負けていたわ……」

 召喚されたのは、短剣を構えたエルフのゾンビ。しかも、その実力はハンパじゃなさそうだ……

「お前は、いったい……」

 その妖魔の姿を見たアリスが、驚愕した。

「奴は魔剣士フェルナンデス……魔族随一の剣士だった、伝説のエルフだ!」

 彼女の解説に、二人も動揺する。

「な、なんだと……!?」

「伝説の魔物かよ……」

「油断するな、まだ来るぞ!」

 今度は棺桶から、無数の触手が飛び出してきた。二人はそれを切り払うのが、精一杯だった。

「私の触手を剣と素手で防ぐとは……なかなか面白い人間達ですね。」

 出てきた魔物は植物の魔物。しかし、その身に秘めてる気で、ただ者では無いことが分かる。

 当然、アリスにも見覚えがあるようだ。

「クィーンスキュラ……数十年前に毒殺され、現在の女王位は空位になっている……」

「クィーンスキュラだって……!?そこまでの大物が、アンデッドに……!」

「いや……」

 二人だけでは終わらない。まだまだ棺桶から、凄まじい気が出てくる……

「ふふっ、巻き付きがいのありそうな人間達ですね。たっぷりと締め上げ、嫐り抜いてあげましょう……」

 でっかいラミアを見て、アリスが解説する。

「クィーンラミア……ラミア族の女王だ。クィーンスキュラと同じく毒殺され、こちらの女王位も現在は空位……」

 今度はマーメイドが出てきて、クィーンラミアと並んで俺達を睨む。

「潮の匂いが無い場所では、いまいち気が乗りませんね……マスターの命ならば、仕方のないところですが。」

「海賊女王ロザ……七つの海に名を馳せた、伝説の海賊人魚。しかし航海途中に消息を断ち、海賊団全員が行方不明……後に無人状態で漂流していたロザの海賊船が発見されたが……船上ではなんらかの化学兵器が使われた形跡があったそうだ。」

 次に棺桶の中から飛び出してきたのは、異様な雰囲気の妖精だった。

「あははっ、美味しそうな人間〜!」

「タイタニア……妖精族の突然変異。極力な魔力と自然感応力を備えていたが、突然に行方不明となった……」

 次に出てきたのは、紫の体毛をしたハーピーのゾンビだった。

「あたしが呼び出されるほどの相手なの……?楽しめなかったら、その首を千切ってあげるわ……」

「先代クィーンハーピー……戦神と称された武闘派の女王。強大な力と軍事的才能を持ち合わせ、一族を率いて戦火を広げた……そして近隣の魔物集団と戦争を繰り返し、乱戦のさなかに行方不明。戦死とされているが、死体は発見されなかった……」

「そんな連中が、ゾンビ化されているなんて……」

「こりゃ、相当やべぇな……」

 シルク・ドゥ・クロワ……当時の女王や、それに匹敵するほどの力を持つアンデッド集団。それが目の前に居座っている威圧感は、凄まじいものだった。

「ラ・クロワは、強力な屍を手に入れるため……当時名を馳せていた最上位の妖魔たちを暗殺したのだ!毒殺、闇討ち……あらゆる手段を用いてな!」

「なっ……」

「なんていうことを……!」

「そして奴は、それらの屍で生み出したゾンビを母上の前に披露した……それがゆえ、母様から永久追放を受けたのだ!」

「……」

「……なるほど、確かにこりゃあ狂気だ……」

 ラ・クロワはクロムに向き直り、笑った。

「見たかクロムよ、これが魔芸というものだ。お前の生半可な志では、到底たどり着けん境地……」

 そして、腕を上げて指を鳴らす。

「さて……シルク・ドゥ・クロワ、七人目の新団員を紹介しよう。魔王アリスフィーズ16世、この最高傑作をぜひあなたに見せたかった……」

「余に……だと?」

「ぐっ……まだこの上にどんな奴が……」

「す、すげぇ気が現れる……!!他の奴らとは比べ物になんねぇぐらい、すげぇ奴が……!!」

 固唾を飲む戦士達の前で、棺桶から巨大な妖魔のアンデッドが姿を現す。

「ここは、どこだ……?余は魔王……それ以外は、何も思い出せぬ……」

 出てきたのは、アリスに似た巨大な妖魔。当の彼女はそれを見て、驚愕の表情を隠せなかった。

「そんな……!か、母様……!?」

「なにっ!?」

「そう、先代魔王アリスフィーズ15世のアンデッドだ!魔王のゾンビなど、造り出した者は空前絶後!どうだクロムよ、これこそが究極の魔芸というものだ!」

「貴様……絶対に許さん!!」

 ラ・クロワに飛びかかろうとするアリスを、二人は抑えた。

「落ち着け、アリス……ヴィクトリーとの立ち回りを見るに、怒りのままに戦ってどうにかなる相手じゃないぞ……!」

「ああ、こっちは全力でやったのに簡単に腕がオシャカにされたんだ……」

 いや……どんなに冷静になって戦っても、どうにかなる相手じゃねぇと思う。アリスフィーズ15世のゾンビから放たれる気は、それほどに凄まじかった。

「さて……盛り上がりのところ、申し訳ないが……さっきも言った通り、お前達の処分は命じられていないのだ。ゆえに、今回はほんの顔見せのみ……私の魔芸を本当の意味で披露するのは、また後の機会となるだろう。」

 シルク・ドゥ・クロワは、次々と棺桶に収まっていく。そしてアリスフィーズ15世のゾンビも、顔見せだけで消えてしまった。

「なるほど……わざわざアリスの母親のゾンビを見せて、憎しみを煽ったわけだな。僕達がお前に挑むように仕組み、返り討ちにするつもりで……その狙いは、僕達の死体……ってところか?」

「聞いた話と違うな、なかなか頭が回るではないか。楽しみにしているぞ、お前達の屍が手に入るのを……」

 ラ・クロワは棺桶を消し、出口へと歩み寄った。

「汚れし勇者のゾンビと、サイヤ人のゾンビ……そして、魔王母子のゾンビ……これこそ、我が究極の作品となるはずだ。」

「貴様、絶対に殺す……!!」

 いきり立つアリスを、ルカが抑える。

「挑発だよ、アリス……」

 アリスを抑え込むルカ達の横を、ラ・クロワは悠々と素通りし……そして、地下室から去っていったのである。あれだけ禍々しかった気も、嘘のように消えていた。

「あいつ……絶対に許さん!母上の死体を弄びおって……!!」

「分かるよ、アリス……僕も母さんに同じ事をされたら、絶対に許せない……」

「だけど、今の俺達じゃどうにもなんねぇんだ。安易な行動は慎まねぇと。」

「分かっている……まさか、貴様らに論されようとはな。」

 アリスも冷静になり、ようやく落ち着いてきた。

 クロムはというと……

「姉様……儂のせいじゃ……あの事故のせいで、姉様はおかしくなって……」

「……あの事故?」

「今より、数十年も前の事。まだ、儂と姉様が仲睦まじかった頃……儂は下らんミスで実験薬を間違え、爆発事故を起こしてしまったのじゃ。その際に姉様は儂をかばい、大怪我をしてしまった……それ以来、姉様の様子がおかしくなってしまったのじゃ。多分、儂に愛想を尽かしてしまったから……」

「……」

「あいつが、おめぇをかばって……」

 しかし、今のあいつはあんな狂人になってしまった。クロムのミスによる事故で、妹に失望してしまったからか……

「どんな事情があろうと、奴は決して放置できん。あれほどのゾンビを動かすのに、どれだけの性が必要となるか……シルク・ドゥ・クロワは全て叩き潰さねば、莫大な犠牲を生み出すぞ。もちろん、母上のゾンビも……」

「ああ、アリスのお母さんも、安らかに眠らせてやらないとな……」

「貴様らの力を借りる事になるな……頼むぞ、ルカ、ヴィクトリー。」

「ああ……そんじゃ、次に行くか?」

「ああ、行こう!」

 今も、イリアスの魔の手が各地に伸びているのだ。こんな所で、立ち止まってられるか!

 ヴィクトリーはクロムに向く。

「……クロムは、どうすんだ?」

「……」

 彼女は、視線を床に落としていた。ショックで何も考えられないようだ。

「……しばらく、そっとしておくがいい。あいつも、もう悪巧みはせんだろう。」

「そうだね……」

 こうして僕達は、苦々しい感情を抱きながらもお化け屋敷を後にした……

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