もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
外から悲鳴が聞こえる。人の走る音が聞こえる。次に聞こえたのは、破壊音。派手な破壊音と共に、また人の悲鳴が上がった。
「……」
そんな外の様子など興味無さげに、地下牢で項垂れる一人の魔導師が居た。嘗てこの魔女狩りの村をそう呼ばれる所以を作った、悪逆非道の魔術師、リリィだ。
彼女は痛みの消えた腹──ヴィクトリーの超龍閃撃を叩き込まれた場所を気にしながら、ただ項垂れているだけだった。その心の中にある思いは、哀愁か、はたまた後悔か、それかどちらでもないのか……
そんな地下牢の鍵が、唐突に開けられた。何かと思って顔を上げると、そこにはどこか見覚えのある顔が居たのだった。
「虜囚の身とは落ちぶれたものですね……リリィ・メーストル。」
「……」
はて、誰だったか。確か、実験台にした女の中にこんな人間が居たような……
「ふん、私の事など覚えておりませんか。無理もないでしょうね、貴女にとって私はただの実験台……そんな私が、あなたを上回る魔導の素質を秘めていたとは……皮肉な話だと思いませんか?」
聞かれてもいないのにベラベラと離す彼女の顔を見て、だんだんと思い出してきた。そうか、彼女は──
「確か、ルシアと言ったかしら……復讐のつもり……?」
リリィの口にした名前に、彼女は反応する。どうやら、正解のようだ。
「……ただ、ケジメをつけに来ただけですよ。忌まわしい魔女狩りは、あなた一人の罪ではありませんから。この村自体が罰を受ける必要がある……そう私は考えています。」
なるほど、外の悲鳴はそういう理由からか。なんて下らない──いや、嘗て自分がやろうとしたことと、大差ないか。
そんな事を思いながら、「はは」と小さく笑う。前は館の内で上げられている悲鳴が、今外で上がっているだけの事。どこに歴然な差が生まれるというのだろうか。
「……あなたは、私と同じね。図らずとも、優秀な後継者を育ててしまったみたい。私はもう……疲れたわ。次のバトンは、あなたに渡してあげる。」
リリィの発言に、ルシアの眉がピクリと動く。苛立ちによるものであることは、言うまでもないだろう。
「……同じと思って欲しくないですね。私には、崇高な理念があるのですから……」
そういうルシアを見て、リリィは「ふっ」と吹き出した。
「本当に、そう思うのかしら……?」
「ええ、あなたと私は違います……!!」
ルシアの気が膨れ上がる。体の刺青のような魔力印が緑色の光と共に顕れ、爆発的に跳ね上がった気は体の内から滲み出し、やがて肩の皮膚を突き破りながら異形の器官が飛び出した。それがじゅるじゅると音を立てながら、彼女の両腕を覆った。
その異形の器官が一気に肥大化し、巨大な口腔を開く。そして、リリィの体を丸呑みにしてしまった。
「……ふん、悲鳴さえ残さないとは。しかし、そう簡単には消化しませんよ。数ヶ月は生かしたまま、じっくりと時間をかけて溶かして差し上げましょう。」
リリィを飲み込んで膨らんだ触手に語りかけるように言ってから、彼女は外に出る扉へと歩く。
「さて、行きますか……」
彼女は一人、つかつかと歩くのだった……
「ここも襲われてるぜ、ルカ!」
「ああ、まずいな……!」
「行くぞ、二人とも!」
ヴィクトリー、ルカ、アリスが並んで、魔女狩りの村に突撃する。
ここにも既に襲撃の手があった。すっかり見慣れたキメラビーストが、村内で大暴れしている。村には戦闘員がおらず、人々はただ逃げ惑うばかり。
「しょうがねぇな……おおい、かかってきやがれぇっ!!」
ヴィクトリーが大声でそう言いながら構えると、キメラビースト達は彼に目をつける。それに応じるように彼も気を高め、解放した。爆発のような気の解放により、彼女ら達は興奮状態になり、一気に襲いかかってきた。
「おらぁああっ!!あだだだっ!どりゃあっ!」
飛んでくるキメラビースト達を、一撃で仕留めては投げ、仕留めては投げを繰り返し、着実に数を減らしていく。
「ルカ、アリス!周りの雑魚は俺に任せろ!」
キメラビーストの腹を膝蹴りで打ち上げ、また襲いかかってきた別の奴を後ろ回し蹴りで蹴り飛ばしながら、言う。
「分かった!」
「ならば余たちは、一番強そうなモンスターを仕留めるぞ!」
二人は走り、この場を駆け抜ける。残ったのは、ヴィクトリーとそれを囲むキメラビーストの大群。彼女達はその輪をじわりじわりと狭めてくる。
「……いくぜ!!」
穏やかな少年の目から、血気溢れるサイヤ人の目になる。本能的な恐怖を感じたキメラビースト達は後退しようとしたが、時すでに遅し。
「どりゃああぁあっ!!!」
彼の拳が、地を叩く。すると衝撃が大地に波紋するように拡散し、周囲のキメラビーストを打ち上げた。
「はぁあっ!!」
舞空術で浮かび、一体一体を殴り飛ばしていく。しかし、中には反撃の意思があるキメラビーストが、翼を使って飛びかかってくる。それも一体だけでなく、五体ぐらいが一気に襲ってくる。
「気円斬っ!!」
その群れに対して気で丸鋸を再現したものを放ち、襲いかかるもの全てを切り伏せた。役目を終えた気円斬は、ブーメランのように彼の元へ返っていく。しかし、まだ大群はここにいる。
「よぉっし!!」
彼はなんと、気円斬の上に乗り、あたかもサーフボードかキックボードのように乗りこなしながら、敵の群れと戦い始めた。気円斬の上から軽快に飛び回りながら、気弾で的確にキメラビースト達を撃ち抜いていく。
「むっ!」
周囲に居た数体のキメラビーストが、大きく口を開ける。そこから、エネルギー波を放ってきた。
「うぉおっ!!?」
腕をクロスして、仕方なくそれらに直撃する。すると、大爆発を巻き起こした。
ヴィクトリーと戦うにあたって、品種改良が成されたのか、はたまた戦っていくうちに種族が進化したのか……この村のキメラビーストは、遠慮なく殺しにかかってくるようだ。
直撃したはずのヴィクトリーに、まだまだエネルギー波が放たれ続ける。そうして煙の立ち込めるその中心点に、無数のキメラビースト達が殺到した。ひしめき合いながら、中心点にあるものを貪り始める。彼女らの隙間から山吹色や青色の布の切れ端が、パラパラと出てくる。
「しゃらくせぇえっ!!はぁああああああーーーっ!!!」
彼の怒号が轟き、その体の中心から爆発波が巻き起こった。彼を貪っていた彼女らはそのエネルギーに融けて、吹っ飛んでいく。
そうして青いアンダーシャツと山吹色のズボン姿の彼は、上空に飛び上がり、眼下を見下ろす。案の定、諦めの悪いキメラビースト達が追いかけていた。
「うぉおおおっ!!かめはめ波ぁあああっ!!」
彼はそんな彼女らに向けて、かめはめ波を放つ。すると、先頭の奴がそれに直撃し、後衛の連中も巻き込まれながら、地上へ墜落していく。
「おっしゃダメ押し!!」
かめはめ波に押される先頭のキメラビーストに向かって、気弾を放つ。すると、かめはめ波が押され、キメラビースト達を一気に貫いた。それを追うように、彼は手を伸ばして猛スピードで急降下する。
空気との摩擦で、まるで大気圏から墜落するかのように、手に熱が発生する。
「どりゃあぁあああああっ!!」
そうして追いつき、かめはめ波を殴り砕くように、拳を振り下ろした。それと同時に地につき、そこを中心点に大爆発が巻き起こった。それに巻き込まれたキメラビースト達は吹っ飛び、大きく数を減らしたのだった……
「ふぅ……こんなもんか?」
もうこの周囲には、キメラビーストの気はしない。しかし、意外に広い村なので、別の地点にまだまだ敵の気配がする。
「よぉし、行くか……!」
そう意気込んでいた、その時──また、キメラビースト達が周囲を囲んできた。
「……おめぇら、ほんとしつけぇな……!!」
構えながら、思う。
おかしい、さっきのでこの周辺の奴は、全員倒したはずだ……なのに、どういう訳か、敵が無尽蔵に湧いて出てきやがる。もしかしたら……外部から来たモンスターじゃねぇのか?
そう思っていると──
「助太刀しますっ!!」
突如として、聞き覚えのない声が聞こえる。
「えっ……」
背後を見ると、そこには、会話もしたことないような、見知らぬ村娘の一人がいる。彼女がその腕を突き出すと、そこが触手になり、周囲のキメラビースト達をなぎ払いで一掃した。
「おおっ!?」
そういえば、村の娘達は人体実験で体が妙な事になっているんだったか。その姿を隠しながら生きる毎日を送ることになり、大変そうだったのに……
「おめぇ、その腕……」
「いいのよ……」
背後から声をかけてきたのは、これまた腕が変異した女性。彼女もまた、触手腕で戦い始めた。
みんな、みんな戦っている。彼女らだけじゃない、村の皆が、忍び続けたその姿と力でもって、この村の為に……!
「ここは私達に任せて、勇者さまの元へ!」
「大丈夫、私達は戦える!」
力強くそう言いながら、キメラビーストと応戦する彼女達──そんな二人に、ヴィクトリーは頷いた。
「ああ……頼りにしてっからな!」
彼はそう言って、拳から親指を上げるグッドサインを見せた後、ルカの所へ飛び去ったのだった……
ルカは、アイアンメイデンという魔物の亜種と激戦を繰り広げていた。迫る触手から逃げながら、剣技を振るい、時にはエネルギー波を放ち、着実に押しているようだ。
「……!」
そんな時、彼の気の察知に覚えのある気が引っかかった。それも、猛スピードで此方に向かっているようだ。
迷いなく、その気の主の名前を叫ぶ。何よりも信頼出来る、自分の親友の名を──
「ヴィクトリーーーッッッ!!!」
その雄叫びにも似た声を聞いた気は加速し、ミサイルのように飛来し、正面にいたアイアンメイデンを思いっきり蹴り飛ばしたのだった。あまりの衝撃に土埃が舞い上がり──そこから覗けた姿は、逆立った金髪に碧い瞳をした少年だったが、間違いなく親友のものだった。
「罪人を、処分──」
蹴り飛ばされて壁に叩きつけられたアイアンメイデンは、力無くそう言いながら、ガクリと倒れたのだった……
「何とか、強い奴は追い払えたんじゃないか?」
ヴィクトリーはそう言いながら超サイヤ人を解き、ルカに向く。
「ああ……!」
彼も納剣し、ヴィクトリーに頷いたのだった。
さて、ここからどうしたものか……
「……勇者様、まあ助けに来てくださったのですね。」
そこに、一人の村娘が此方に来た。彼女もまた、腕が触手になっている。
「ああ、けど……おめぇら、その腕……」
「その体、村の男達にバレて……」
心配する二人だったが、彼女は目を鋭くする。
「今はその事よりも、村を守る事に集中するべきです。勇者様は、どうかルシアを倒して頂けないでしょうか。」
「……ルシア?」
「それって、いったい……?」
聞き覚えのない名前に、首を傾げる二人。そんな彼らに、村娘が語り始めた……
ルシアというのは、彼女らと同じくリリィの被害者だそうだ。リリィが捕まった後も見当たらなかったので、死んだ扱いになっていたらしい。しかし、生きていて、屋敷を脱出して、修行したらしい。
周囲のキメラビーストから察するに、どこかでプロメスティンと接触した筈だ。相当信頼されているはずではあるが……
「彼女は、リリィを……そして、この村を憎悪しています。その気持ちは分かります、私達もそうでしたから……」
彼女が語り終えると、別の村娘も此方に来た。
「お願いします、ルシアを倒してください!」
「こちらからも、お願いします!」
そんなに頼み込まれなくても、こちらの意は既に決している。
「……分かった、僕達に任せてくれ。それで、ルシアは……」
「あそこだろうな……」
ヴィクトリーがそう言った先……領主の屋敷の方面だ。それに、村娘が頷く。
「はい……確かに、そこへ入っていきました。リリィに成り代わろうとしているのか、他の目的があるのか……」
「分かった!」
「村の防衛は任せるぞ!」
「どうか、ご武運を!」
そうして解散し、ルカ達は屋敷へ、そして村娘は村の防衛に走った。
「いくぞ、二人とも!」
ルカが言うと、アリスとヴィクトリーも頷く。
「ああ……!」
「分かってるともぉ!」
こうして戦士たちは、領主の屋敷へと向かった。かつての魔女狩りの舞台、そこにルシアがいるのだ──
凄まじい気の中心点……そこには、異形の器官を発達させた、緑髪の女が立っていた。
「……おめぇか。」
彼女が、ルシアなのだろう。隠す気もないとてつもない気を放ちながら、嘗てリリィと同じ場所で、ただこちらを待ち構えるように立っていた。
「おや、ようやくお目見えですか。」
彼女は、こちらを確認し、不敵に微笑んだ。
「お前がルシアか……なぜ村を襲った!」
ルカは剣を向けながら、啖呵を切る。それに対して、彼女は涼しい顔をしていた。
「この村を、私のものにするためです。自分の居場所は、自分で努力して勝ち取らなくては……ね。」
「居場所だって……?支配なんかで、本当の居場所が作れると思っているのか!?」
「あなたこそ……支配以外の手段で、私のような異形が受け入れられると思っているのですか?間違いなく、人は異形を差別します。この村の者達が、魔女を排斥していたように──そして、あなたがリリィを討ち倒したように──」
おぞましい魔力が、増大する。それに圧倒されるルカとヴィクトリーだが、決して怯むことはなかった。
「……確かに、俺達はリリィを無理矢理力で抑えたさ……あのまんま放置していたら、あと何人死んでたか、分かったもんじゃねぇからな。けど、まだおめぇならやり直せる。人を一人も殺しちゃいねぇんだろ?」
ヴィクトリーの言葉に、ルシアは反応した。
「……なぜ、そう思うのです?」
「俺には分かる……この村にも、来たばっかなんだろ?んでもって、今はその最後の一歩に踏み込もうとしている……やめとけやめとけ!そんな道選んだって、どうせいい事ねぇぞ!」
「……くだらない事を。」
彼女はそう言いながら、戦闘態勢をとった。
「それでは、まずあなた達を残酷に嫐り殺すとしましょう。勇者の屈辱的な敗北をもって、この村の支配の証明とします。」
彼女は酷薄な笑みを浮かべ、にじり撚ってきた。その巨大な触手が、ぐちゅぐちゅと妖しくうねる。
こうして、ルシアとの激突が始まったのだった……
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい