もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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砂漠と天使とちぃぱっぱ

 ルシアとの激戦を制し、何とか魔女狩りの村を防衛した戦士達。

 村娘達が正体を見せたから、また一悶着あるかと思ったが、そうでもなかった。正体を見せてまでこの村を守ったのだ。言うことはあるまい。

「じゃあこいつを……」

 次の目的地に向かう前に、ヴィクトリーは例のカードを一番強そうな村娘に託した。そして、戦士達は次の目的地に向かう……

 

 次の目的地はサファル遺跡だそうだ。ガルダで向かい、戦士達はサファル遺跡に降り立った。遺跡とは名ばかりに、広大な砂漠に廃墟跡がちらちら見えるだけの場所……ここに、シルフが居るはず。

「きっと、天使の連中が黙って通してくれる訳がねぇ。気を引き締めて行くぞ。」

「ああ……油断するなよ、アリス。もう天使の気配がするぞ……」

「貴様らこそ、気を抜くなよ……」

 最大限に周囲を警戒しながら、周辺を歩いてみる。しかしアテもなく探し回るには、この砂漠は広大すぎた。

「それにしても、広い遺跡だなぁ……ノームの時は、土人形が導いてくれたんだよな。」

「シルフの気を感じねぇ……気配を消してんのか、それとも……」

「相当に衰弱しているのか……だな。」

 アリスはヴィクトリーがあえて口にしなかった事を言い、腕を組んだ。

「だとすると、向こうから合図を出す事は不可能なはず……」

「ちょっと待って、風の流れを探ってみるよ。」

 ルカは目を閉じ、周囲の流れに耳をそばだてる……

「それこそ、シルフの力が無いと難しいのだろう?」

「……」

「……」

 ヴィクトリーも目を閉じ、周囲に気を張り巡らせてみる……

「……ヴィクトリー、気付いたか?あっちから、弱々しい風が吹いてくるような……」

「ああ、俺も今気付いた……」

「分かるのか……!?」

「……たぶん。」

「いや、間違いねぇさ。」

 ヴィクトリーが言うのだ。きっと、その方角にシルフがいるはずだ……

「よし、あっちに……」

 ルカが一歩踏み出した瞬間、その体がぐらついた。しかしそれも一瞬で、すぐに体制を立て直す。

「おっと……あぶないあぶない……」

「……」

 そんなルカの様子を凝視し、アリスは眉をひそめる。

「どうしたルカ、貧血か?」

 ヴィクトリーも心配そうに声をかけた。

「言ったはずだぞ、ルカ。無理に力を使おうとするな……」

「……大袈裟だよ、アリス。」

 そう言いながら、微かな風の気配を頼りに歩き出す。

「……そうだ、お前の瞬間移動で……!」

 ルカがヴィクトリーに聞くが、彼は首を横に振った。

「いや……試したけど、気が小さすぎて捉えられねぇ……瞬間移動は無理だ……」

 俺が孫悟空だったら、あるいは……いや、言うまい。

「……そ、そうか……」

「す、すまねぇ……」

 そんな会話をしながら、砂を歩くこと十分……不意に、嫌な気が立ち込めた。

「新手の天使か……!」

「みてぇだな……!」

 柔らかな光を伴って天使が降臨し、行く手を塞いできた。体の組織の四分の三が羽毛のようなもので出来てて、股間にはグジュグジュと触手がうねっている……

「……とうとうこのSSの作者が表現に困り始めたぜ。」

「ナガエル辺りからこんな感じだと思うけど……」

「ふふっ……私は力天使シルキエル、命を紡ぐ天使よ。命を終えた者の体を優しく繭で包み、魂を天へと還すのが役目。本来、あんた達のような生身の人間は相手にしないのだけれど……今回はらイリアス様から特別に命を下されたのよ。」

「悪いけど、僕達はまだ生きてるんだ。お前の繭とやらで、魂を昇天させられる訳にはいかない!」

「よっしゃ行くぜ!覚悟しな!」

 ルカとヴィクトリーは構え、臨戦態勢をとった。なれる限りの最高状態になり、戦士達は構える。

「ふふっ……ヒトを生きたまま、私の繭で昇天させてしまうのは初めてよ。どんな風になるのか、とっても楽しみだわ……ぐちゅぐちゅの」

「おめぇら前台詞言わなきゃ戦えねぇんか?」

 ヴィクトリーの言葉に、シルキエルはムッとする。

「それじゃあ、前置きは無しです……」

 その表情から、狂気が入り混じった笑みを浮かべ、気を解放した。次の瞬間、何かがキラッと光るのが見えた。

「避けろルカっ!」

「くっ!?」

 ルカは堕天舞踏で動いたが、頬に何かがかすり、血が垂れる。

「こ、これは……」

「糸か……!」

 見ると、シルキエルの股間部分から糸が出ていた。

「あははははっ!」

 今度は羽を揺らし、鋭い羽根を無数に飛ばしてきた。

「くそっ!」

 ヴィクトリーは前に立ち、それを次々に弾く。

「ほぉら、いいものをあげるわ……!」

 シルキエルは口をカパッと開け、そこから凄まじいエネルギー波を放った。

「やべぇっ!!」

「うわぁっ!?」

 二人は飛び上がり、それを避ける。エネルギー波は砂漠に着弾し、大爆発を起こして一帯を消し飛ばした。

「お〜やべぇ!あんなん食らったらたたじゃすまねぇぞ……!」

「じゃあ、こっちも行くぞっ!」

 二人はシルキエルに突っ込み、猛スピードでぶつかり合った。

「があぁっ!」

「ぐっ!?」

 ヴィクトリーの頭突きで彼女は揺らぐ。

「閃殺っ!」

 そこにルカが、次元をも切り裂く一閃──閃殺でダメ押しした。シルキエルはダメージを負い、二人から距離をとって、股間部分の触手を開いた。

「ふふ……なかなかやるみたいね……!これならどう……?」

 その股間部分から、無数の糸が迸った。卑猥な光景ではあるが、当たったらサイコロステーキのように細切れになってしまうだろう。

「ヴィクトリーっ!」

「ああ!」

 ヴィクトリーがルカの手を掴み、二人で瞬間移動する。

「なにっ!?」

「こっちだぁっ!」

「はあぁっ!」

 二人はシルキエルの背後に現れ、一緒に後頭部を蹴り飛ばした。

「ぎゃっ!?」

 シルキエルはぶっ飛ぶが、空中で急停止し、二人の方を見た。そして腕を上げ、巨大なエネルギーボールを生成した。

「……っ!その技は……!!」

「エンジェリックプロミネンス……!!」

 確か、プロメスティンも使った超大技……本来は、上位の天使の技だったか……

「吹っ飛びなさい……!!」

 シルキエルは、それを戦士達に投げた。

「だぁりゃあああーーーっ!!」

 だが、ヴィクトリーが全力キックで蹴り返した。

「……え!?」

 彼女はその技に直撃し、大爆発した。

「あが……が……そ、そんな……この技を……蹴球(サッカー)感覚で……!!」

「はぁあっ!!」

 ボロボロになった彼女の前にルカが躍り出て、剣を振り上げた。

「九重の羅刹っ!!」

 そして、その身体中を重く、速い斬撃で切り裂き、バラバラにした。

「そ、そんな……地上の人間に……こんな力が……!!」

 細切れになった彼女は、粒子となって消えていった……

「こんなのが出てくるって事は、方向は合ってるって事だな。よっぽど、シルフには近づいて欲しくないみたいだ……」

「ふん……道しるべ代わりになって、ちょうど良いかもな。」

「そう話し合ってる暇も無さそうだぜ……」

 ヴィクトリーがそう言いながら空を見て、構える。

「ああ、分かってる……!」

 息を休める暇もない。周囲の空間が歪み、また新手の天使が降臨してきた……派手な天幕とベッドと一緒に現れたのは、暗い雰囲気のお姉さんという感じの天使だった。シルキエルよりゃ、キモくはない。

「私は、主天使エンディエル……天使の娼婦と呼ばれております……」

「天使の……娼婦?随分と噛み合わせの悪い言葉の組み合わせだな……

「清楚系ビッチ的な……」

「神に奉仕した者の死に際し、その善行に快楽で報いるのが私の役目。この天幕に誘い、天国の性技を存分に楽しんで頂いた後……あらためて、本当の天国に送らせて頂きます。ならばこその、天使の娼婦という異名なのです……」

 その言葉を聞いたアリスが出てきて、エンディエルに向いた。

「貴様ら天界の者からすれば、ルカやヴィクトリーなど大罪人のはず。なぜ、聖者専門の送迎者が現れた?」

 エンディエルは笑い、気を解放した。

「汚れし勇者達を極上の快楽で葬送せよ……そう、イリアス様は仰せなのです。」

「そうかよ……!」

 ヴィクトリーがそう言いながら踏み込み、エンディエルに飛び蹴りした。

「ふふ……」

 彼女は顔面に足を受けながら、天幕を閉めた。

「わっ!?」

 ヴィクトリーは瞬間移動で抜け出し、ルカの横につく。

「あら……反射神経はなかなかのものですね……お猿さん……」

「……ちっ……」

「あの天幕も本体か……!」

 二人は構え直し、改めてエンディエルと対峙した。

「行くぞっ!」

 ルカは接近し、剣で攻撃する。

「ふっ!」

 エンディエルは立ち上がり、それを避け、回し蹴りした。

「があぁっ!!」

 ルカは土の力を解放し、回し蹴りを腹筋で受けた。

「ふ……」

「なに……!?」

「だあぁっ!」

 そして足払いでエンディエルの体をすっ転ばせ、天幕から脱出する。

「いくぞぉっ!!あだだだだだだだだだだだ!!!」

 ヴィクトリーは気を解放し、エンディエルにフルパワー連続エネルギー波を連打した。

「あだだだだだ……!!」

「ぐ……ぐ……!!」

 エンディエルは天幕を閉め、バリヤーを展開させ、エネルギー波から身を守った。

「ちっ……バリヤー機能付きかよ……」

 ヴィクトリーがエネルギー波の連打を止め、様子を伺う。

「ふっ……」

 エンディエルは天幕を開け、彼を指差した。

「光炎聖殺弾!!」

 その指先から、聖なるエネルギーを纏った鋭いエネルギー弾が飛んできた。

「うわっ!?」

 ヴィクトリーはそれを間一髪避け、エネルギー弾の飛んだ方向を見る。光炎聖殺弾は、背後に見えた石柱を綺麗に貫通していた。

「な、なに……!?」

「何処を見ているのですか……!?」

 エンディエルは両手を上げ、そこにエネルギーボールを生成して、投げ飛ばしてくる。

「っ!!」

 ヴィクトリーはそのエネルギーボールを受け止める……が、受け止めながらズササササと後退してしまう。

「どっせい!」

 しばらく後退し、その背中に例の石柱がついた時、エネルギーボールを空へと投げ飛ばした。

「お〜いてぇ……!」

「はぁあああーっ!!」

 ここでルカが走り出し、エンディエルに突っ込んだ。

「汚れし勇者……!」

「魔天回帰っ!!」

 ルカの電光石火の魔天回帰がエンディエルに直撃し、エンディエルを思いっきりぶっ飛ばした。

「ぐ……そこまで抵抗するのならば……少しばかり、強引にかからねばなりませんね。」

 エンディエルはそう言いながら手を合わせて念じる……すると天幕が蠢き、大きな口のようなものになった。しかも、それが二つある。

「ふっふっふ……」

「な、なんだアレ……!?」

「でっけぇ……口……!?」

 そう話していると、天幕の口がヴィクトリーに向かって伸び、思いっきり食いかかってきた。

「うわっ!?」

 彼は飛び上がり、その場から離れる。天幕の口は石柱を見事に噛み砕いていた。

「う、うっわぁ……!」

「ウッソだろ……あれホントに布かよ……!」

「いいえ、私の一部です。」

 天幕の口が揺らめき、二人に突っ込んだ。

「くそっ!」

「やべぇっ!」

 それを次々と避けながらエンディエルのスキを伺う。

「うふふふふ……」

 エンディエルが不敵に笑い、天幕を揺らめかせる……次の瞬間、二つの天幕の口が猛スピードでヴィクトリーに迫ってきた。

「ちっ……だああぁーーーっ!!!」

 彼は迫ってくる天幕口を目の前に、咄嗟に超爆発波を放ち、全エネルギーを惜しみなくぶつけて、消し飛ばした。

「なにっ……!?わ、私の天幕が……!?」

 天幕を消し飛ばした事により、エンディエルが動揺した。いや……ダメージも負ってるのか。ならば、ここしかない!

「おめぇはもう終わりだ!!」

 そう言いながらヴィクトリーはエンディエルに超スピードで突っ込み、彼女の腹に思いっきりパンチを放った。

「ぐぁぁぁああああああ……!!!?」

「龍拳……!!!」

 そして身体中の全ての気を爆発させ、ドラゴンとなってその体を貫いた。

「ぁ……が……!!?」

「……」

 スタッと着地し、腰を落とす。その背後でエンディエルの体が大爆発を起こした。

「ぎゃぁぁぁぁあああああーーーッッッ!!!」

 エンディエルは断末魔の叫びを残しながら、粒子となって消えていった……

「ふぅ……天使の邪魔はこれで終わりみたいだな……」

「らしいぜ……」

 もう天使の気は感じない。この砂漠で俺達の邪魔をする天使は、アレが最後だろう。

「強力な敵ではあるが、数は少ないな……イリアスめ、手駒は意外に少ないのかもしれん。」

「結構な事じゃないか。あのレベルの敵が大量に押し寄せて来たら、勝ち目なんて無いよ。」

「あはは……あんなのが、大量に……かぁ……」

 ……正直、想像したくないレベルで気色悪い。

 そんな会話を交わしながら、戦士達は砂漠を進む。

「天使の数は、最盛期に比べて随分減ったと聞いたことがある。どうやら、本当なのかもな……」

「減ったって……」

「なんでだ?」

 二人はアリスの横顔を見る。

「真偽は余にも分からんが……数百年ほど前に、何者かが大勢の天使を討ち滅ぼしたという。魔王城の図書館にあった、出自の怪しい書物で目にした話だ。断片的な掲載だったし、ただの伝説か歴史上の事実かも分からん。」

「大勢の天使を討ち滅ぼした、って……僕が言うのも何だけど、そうそう倒せる相手じゃないだろ?」

「ああ……ごく一部の例外を除いて、天使には物理干渉できねぇんじゃなかったか?」

 その例外……ルカの持ってるエンジェルハイロウと俺の体……聖素のパワーを込めた拳や剣ぐらいだが……

 ん、待てよ……

 ここでヴィクトリーは、最初に戦った大天使であるアリエルの言葉を思い出した。

『私はかつてハインリヒと戦って生き残った数少ない天使……〜』

 ……ハインリヒが……?

 ……今は考えるのはナシだ。これ以上考えたら頭が爆発しちまう。

「……おい二人とも、あの流砂は何だ?」

「あそこから、微かな風を感じるな……」

「なんだありゃ……?」

 アリスが指したのは、大きな流砂。

 しかも、その底で誰かがもがいてるようだ!

「たすけてぇ……誰か、たすけてよぉ……」

 そこに居たのは……いかにも風属性の大人のお姉さんという感じの……

「……誰?」

 ルカに気付いたそいつは、にぱっと笑った。

「わぁっ、ルカだぁ!やっぱり来てくれたんだね!」

「もしかして……シルフか?」

「もしかしなくても、シルフだよぉ……」

 やっぱり、シルフだった。

「ずっと砂まみれで、体がしおしおになっちゃった……体が弱って、こんな姿になっちゃったんだよぉ……」

「……」

「……だってよ。」

 ……弱った……のか?なんだかよくわからないが、助けてやらないと!

 ルカはノームを召喚した。

「ノーム、頼む。」

「……」

 ノームがそこに指差すと、流砂がせり上がり、真っ平らになってしまった。すっかり弱った様子のシルフが、ルカの前にごろんと転がる。

「ふぇーん!おなかへったよー!このままじゃ、おなかがへって死んじゃうよー!」

「……方法は分かっているだろう。」

 やけに不機嫌そうなアリスが出てきて、ルカに言う。

「さっさと済ませろ、ドアホ偽勇者め。」

 そう言い残して、アリスは消えてしまった。

「……俺も修行に行くぜ。死ぬなよ。」

 俺も空気を呼んで、この場から飛び去った……俺、何も悪い事して無いよね?

流血表現

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