もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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混乱するウンディーネの泉

「ルカよ……」

 ガルダの移動中に、アリスがルカに声をかけた。

「クィーンアルラウネがその身を犠牲にした時、貴様は全く動かなかったな。余はこの体だし、貴様も連戦で消耗していた……唯一動いていたヴィクトリーも、奴にやられて倒れた……結果的に、状況は変わらなかったであろう事は予想できる。それでも普段の貴様なら、疲れきった体を顧みずに割り込んだはずだ。しかし貴様は、ずっと沈黙していた……」

「……」

 ルカは黙ってしまう。

「そう言えばそうだったな……おめぇ、珍しく何もして来なかったし……何か、半分気絶してたみてぇだったぞ。何があったんだ?」

「…………」

「連戦で消耗していた……という程度の衰弱ではなかったのだろう?クィーンアルラウネとの戦闘後は、意識を保つことで精一杯だった……」

「……ああ。」

「……やっぱりな。」

 どうやらあの時のルカ、文字通り半分気絶してたらしい。ヴィクトリーとツクヨミの激闘も、ルカからしたら夢を見てるような感覚だったと思う。

「ルカ……それ以上、力は使うな。何度も言った通り、大いなる力には代償があるものだ。今はまだ、少し休めば回復するようだが……この先、どこまで体の異常が進行するか分からんのだぞ?」

「……分かった、なるべく力を抑えるようにするよ。」

「いざとなったら俺もいる、安心しろ……」

「貴様もだ。」

 アリスはヴィクトリーの言葉を遮る。

「気付かないのか?貴様の超サイヤ人とやらは体に無理を強いる技だ……それも、界王拳とは比較にならない程……」

「……バレてた?」

「貴様の超サイヤ人の力……そして、ルカに秘められた天使の力は極めて強力だが……二人共、その肉体は紛れもなく人間のものなのだ。強力な力に肉体を蝕まれ、最終的には死んでしまうぞ……特に、ルカの方は……勇者ハインリヒのように……」

「……ハインリヒが、どうなったっていうんだ?」

「………………」

 それっきり、アリスは黙ってしまった。

「……安心しろって。力は制御して、無理しねぇ程度にするからさ!」

「ああ……僕もだ……」

 アリスはルカを見つめる。

「……何でも、自分一人で背負い込むな。貴様が余に言った言葉だぞ。」

「ああ、肝に銘じるよ……」

 アリスから釘を刺されまくった戦士達。

「さて、ここら辺は網羅した筈だぜ。ウンディーネの泉に行かねぇか?」

「ああ、そうしようか……ガルダ、ウンディーネの泉だっ!」

「くえぇっ!」

 ウンディーネの泉……そこには水と反対属性のサラマンダーが居るはずだ。彼女と会って、再契約しなければならない。

 こうして戦士達は、ウンディーネの泉に進路を向けたのだった……

 

 ウンディーネの泉……

「相変わらず、ここは静かだな……」

「天使の気も感じねぇ。」

「やっぱり、サラマンダーは地下洞窟の奥かな。」

「そうだろうな……行くぞ。」

 アリスがそう言って泉に飛び込む。二人もアリスに続いて泉に飛び込み、地下洞窟を目指した。

 

「……ぷはっ!」

 泉から顔を出すと、そこには……

「うぅっ……なんでこんな事に……俺の家が……財産がぁ……」

「ママー、おなかすいたよぉ……」

 ……どういう訳だか、人間達が居た。

「ど、どうなってんだ……?」

 それも、一人や二人なんてもんじゃない。襲撃から逃げ延びたであろう人達が、数十人はいたのだ。

「あの……なぜここに?」

 ルカの問いに、青年と女性が答える。

「村が襲われたところを、魔物に助けてもらったんだよ。それで、ここにかくまってもらってるんだ。」

「命を助けてもらったことには感謝してるわ。でも、いつまでここにいればいいのかしら……」

 アリスは、二人の方に向く。

「近隣の住民のようだが……いったい誰が、ここに彼等を保護したのだ?」

「さぁな……」

「……ここって、スライム族の聖地なんだよね?」

 ヴィクトリーとルカは、洞窟内を流れる泉の方に目をやる。

「わーい!あはははっ!」

「わーい!わーい!」

 スライム娘が、子供たちと無邪気に水遊びをしている。これは、いったい……

「あれぇ……?」

 泉の奥から、ピンク色のスライムがルカとアリスとヴィクトリーに目をつけた。

「エルベティエ様、誰か知らない人と妖魔が来たよー!」

 その声に呼ばれて出てきたのは……

「……」

「おめぇは……エルベ!」

「……せめてフルネームで呼びなさい。」

 なんと、四天王の一人エルベティエだった。

「エルベティエ、なぜここに?人間を保護したのは、もしかして……」

 ルカもヴィクトリーの隣に来て、エルベティエを見る。

「確かに私の命令だけど……勘違いしないで。人間が滅びてしまえば、私達も滅亡してしまうのだから。結局のところ、あなた達の言う通りみたいね。」

「ああ、分かってくれて嬉しいよ……」

「……ふん。」

 そっぽを向いているものの、彼女は確かに分かってくれたようだ。以前のエルベティエなら、意地でも人間を助けはしなかっただろう。

「えへっ……えへへ……嬉しいよね……分かってくれるって……」

「……何、この気持ちは……」

「かぁっ、キモッ!」

「……なるほど、こちらの状況は分かった。エルベティエ、魔王城の現状を報告しろ。」

 エルベティエはそう言うアリスを指差し、ルカの方を見る。

「……誰?この偉そうな子は……」

「余だ、アリスフィーズ16世だ!見て分かれ、ドアホめ!」

 ルカが答えるより先に、アリスが怒鳴る。とはいえども、小さい姿なので威厳はあまり感じられない。

「こ、これは失礼を……」

 エルベティエが動揺しながら、魔王城の現状を報告する。

 たまもは例のCDの解析してる。アルマエルマは文句を垂れながら守備部隊を再編、魔王城の防御を固めてるらしい。グランベリアは、受けたダメージが酷くて、今も休養中とのこと。ダメージの半分以上がルカのカドラプル・ギガらしいが。

「エルベティエ、サラマンダーを見なかったか?多分、この洞窟の奥にいると思うんだけど……」

「サラマンダーなら……あそこにいるわ。」

「えっ……?」

 エルベティエの示した先、洞窟の隅で頭から毛布を被って縮こまっている人影……

「さ、寒い……」

「サラマンダー……!?」

「あらあら……」

 避難民の一人かと思ってて、ルカもヴィクトリーも気付かなかった。虫の息のサラマンダーが、すぐ側にいたのだ。

「洞窟の奥で震えていたから、ここに連れてきたんだけど……」

「ありがとう、エルベティエ。おかげで手間が省けたよ。」

「ふん……」

「今回はあっさり見つかったなぁ〜。」

「それではとっとと……」

 アリスがそう言いかけた時だった。

「……なんだ、この嫌な空気は?」

 不意に、とても嫌な空気が漂ってきたのだ。

「なんだか、空気が濁ってるような……」

「これは、いったい……」

 アリスもエルベティエも、すぐさま異変を感じ取ったようだ。敵の仕業……いや、この辺に敵の気は感じない。

「……っ!」

 ヴィクトリーが、胸を押さえて膝をついた。

「ヴィクトリーっ!?」

「く、苦しい……む、胸が……いてぇ……!!」

 エルベティエの所にも、スライム娘が近寄ってくる。

「エルベティエさまぁ……」

 そのスライム娘も様子がおかしく、たどたどしい足取りになっていた。

「どうしたの?しっかりしなさい……」

「くるしいよぉ……た、たすけ……て……」

 そのままスライム娘は地面にべちゃりと倒れ、動かなくなってしまった。

「この子も、弱ってるわ……いったい何が原因で……」

「うぐ……ど、どうなってやがる……!そいつも……さっきまで水遊びしてたはず……ゲホッ、ゲホッ!」

「まさか、泉の水が……!?」

「ああ、間違いない、ウンディーネの泉全体が、何らかの原因で汚染されたようだ!」

「な、なんだ……これは……」

「く、苦しい……息が……」

 更に、人間達もヴィクトリーと同様に苦悶していた。水を汚染していた毒が瘴気を放ち、空気にまで淀んでいるのだ。

「まずい、このままでは被害が広がるぞ!」

「そんな……私達最後の聖域が……誰が、泉に毒なんて……!」

「えへへっ、あたしだよ……」

 そう言って登場したのは、さっきのピンク色のスライムだった。

「お、おめぇ……いったい、何をした……!?」

「泉にねぇ、魔水銀を投げ込んだんだ!」

「ベス……そんな……!!なぜ、スライムの聖地にこんな事を……」

「泉に毒を入れたら、私をスライム族の女王にしてくれるんだって!黒のアリスが約束してくれたんだから〜!」

「ベス、あなたは……!」

「そんな理由で……!!」

 エルベティエが詰問しようとした所、ヴィクトリーが胸を押さえて立ち上がった。

「そんな理由で……エルベを裏切って、黒のアリスの駒になりやがって……!!」

 今までに見せてこなかった程の彼の怒気に、ルカやエルベティエは動揺する。それと同時に、気が溢れ出し、この地下洞窟全体が震え始めた。

「エルベ達が大切にしてた泉に毒まで投げた……怒ったぞ……!!俺はマジで怒ったぞ……!!俺は……俺は……!!」

 そして彼は超サイヤ人2となり、怒りのままに気を全開放した。

「おめぇを許さねぇぞぉぉおおおーーーっ!!!」

 そのままスライムベスに突撃し、彼女の顔面をぶん殴った。気を纏った拳によって彼女はぶっ飛び、洞窟の壁を何枚も突き破る。

「っ!!?」

 エルベティエ、初めて超サイヤ人を目撃する。

「き、金色に……!?」

「エルベティエ、貴様は早く泉の解毒を頼む!ただちに分裂して、全員を解毒しつつ地上に運び出せ!それが出来るのは、貴様だけだ……!」

「……既に、急いでおります……!」

 ヴィクトリーの怒りの猛攻にタコ殴りにされるベス……そんな激戦が巻き起こっている洞窟内では、大量のエルベティエが人々を担ぎ、地上へと連れ込んでいた。

「だあぁっ!!」

 ヴィクトリーはベスを蹴り飛ばし、その全身に怒涛のラッシュを仕掛けた。一発一発に物凄い威力が篭っているのが、見て分かる。

「す、凄い……!以前に戦った時よりも、遥かにパワーアップしてる……!」

 エルベティエは目を凝らし、激戦を見守っていたが……彼女の横にいたルカは、眉間にシワを寄せていた。

「……ヴィクトリーは、こんなもんじゃないよ……」

「くうぅっ!」

 ベスが瓦礫から飛び出し、ヴィクトリーに頭突きしようと突っ込む。彼はそれを掌で受け止め、思いっきり蹴り上げた。

「がっはぁ……!!?」

「があぁっ!!」

 それに追いつき、またもや彼女を一方的に圧倒する。

「……奴が勝負を焦ってる……既に全力に近い飛ばし方で……それなのに、あのザマはなんだ……」

 アリスの声に、エルベティエが反応する。

「……あのザマ……?私には、圧倒的にあの子が押しているようにしか……」

「あんなもんじゃないんだよ……超サイヤ人のヴィクトリーはあんなもんじゃない……!」

 ルカの眉間のシワは、濃く刻まれる一方であった……

 ベスを地面に叩き落とし、ヴィクトリーの猛攻は止まった。

「ハァッ……ハァッ……!!」

 彼は胸を押さえ、苦しそうにする。何やら、相当体に無理を強いている様子だ。

「あはっ!」

 ベスはそこに飛び上がり、苦しんでいる最中の彼にパンチした。

「うぐぅっ!?」

「えーいっ!」

 そして、そのまま地面に叩き落とした。

「ぐぅっ!!」

 ヴィクトリーは何とか着地するが……胸を押さえて、跪いてしまう。

「ハァッ……ハァッ……!!」

「えーいっ!」

 ベスはそのヴィクトリーにエネルギー波を連射した。

「ぐぅっ……!!」

 彼はなんとか、腕を交差してそれらを防御する……

「こっちだよ〜!」

 しかし、ベスが彼の背後に瞬間移動。

「やぁーっ!」

 そして、そのまま彼を、サッカーでもするかのようにルカの方向に蹴っ飛ばした。

「ぎゃあああっ……!!」

 ヴィクトリーは黒髪に戻ってしまい、ルカの足元に倒れた。

「なっ……!?」

「馬鹿な……!ヴィクトリーがあんな奴に……!!?」

「…………っ……」

 ……なるほど、そうか分かったぞ。僕は天使と人間のハーフ、アリスは魔王、エルベティエはスライム……と、僕達は体の構造が普通の人間とは違う。当然ヴィクトリーも宇宙人だから、体の構造は多少人間とは違うはずだが……それでも、人間に一番近い体をしているのはこいつなんだ!毒だって、多少の耐性しかない……!!

「とっどめ〜!」

 ベスは水の力を解放し、ヴィクトリーにエネルギー弾を放った。

「ちぃっ!」

 ルカがそれを切り弾き、彼は一命を取り留める。

「あれぇ?今度は勇者かぁ……」

「エルベティエ、ヴィクトリーの解毒を頼む!」

「ええ……」

 ヴィクトリーをエルベティエに任せ、ルカはベスと向かい合った。

「行くぞっ!」

「君も、呆気なく倒しちゃお〜っと!」

 ルカは明鏡止水を発動し、ベスに猛攻した。

「うふふっ!」

「ふんっ!」

 彼女のパンチを避け、足払いをかける。

「なっ!?」

「行くぞっ!!瞬剣・疾風迅雷ッ!!」

 そのまま風の力を剣に込め、突きの一閃をした。それは確かに直撃し、彼女にダメージを刻み込む。

「おぉおおおっ!!」

 更に振り向き、剣を寝かせ、同じ技を繰り出し、ダメ押しした。

 そんなダメ押しの瞬剣・疾風迅雷が、三回も繰り返され、全て直撃する。

 その後に彼は鉄の剣を抜き、二刀流の構えをとる。

「はぁあああ……!!」

 鉄の剣と、エンジェルハイロウに聖なる力を込め、突進した。

「な……!?」

「がああぁっ!!!」

 そして、ベスに斬撃を交差させた。

「きゃああぁっ!!!」

 彼女の胸が切り裂かれ、バラバラになる。

「な、なんで……負けちゃうの……」

 そして、彼女は水たまりの姿に封印された……

「ふぅ、やったか……」

 ヴィクトリーの猛攻のダメージもあった為、簡単に終わらせる事が出来た。

「でも、こいつを倒しても泉の毒は……」

 ウンディーネの泉は、相当にきつい毒で汚染されてしまった。スライムベス娘を倒したところで、その事実は変わらないのだ。

「申し訳ありません、魔王様……我々の中から、造反者を出してしまうとは……」

 戦ってる間に、人間達は地上へ運び出されたようだ。沈んだ顔で、エルベティエがアリスの前に立つ。アリスと会話する彼女を横目に、ヴィクトリーの解毒が完了したようだ。

「……エルベ……」

「……なぜ、私達の聖地を……」

 エルベティエは物凄く落ち込んだ顔で、ブツブツ言う。自分が大切にしてた聖地を、自分の同胞が破壊しちまったんだから無理もないだろう。

 と、そこにルカがエルベティエの肩を叩いた。

「そういう事もあるよ、エルベティエ……同じ種族でも、想いが通じない事だってあるんだから……」

「これじゃあ、人間の事を責められないわね。愚かなのは、私達も同じだったわ……」

「エルベは愚かじゃねぇさ。さっきの人も、俺もおめぇに命救われたんだ。感謝しねぇとな。」

「僕からも、礼を言わないと。」

「……」

 エルベティエは黙り込み、視線を地面に落とす……次の瞬間、突然に横一文字の斬撃が周囲をひと薙ぎにした。

「危ないっ!!」

「ふせろっ!!」

 二人はとっさに、エルベティエを突き倒す。ルカは背中に、ヴィクトリーは髪に掠った。

「くそっ!敵の奇襲か……!」

「……なぜ、私を庇ったの?私には斬撃は効かないのに……」

「いいえ……命拾いしたのよ、エルベティエ。二人が庇っていなかったら、今の一撃で終わっていたわ……」

 そう言って現れたのは……魔王城で出会ったネクスト・ドールの一体だった。

「お、おめぇは……!!」

「アンフィスバエナ……キメラモンスターの完成形、ネクスト・ドールの一人よ。」

流血表現

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