もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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アンフィスバエナ、猛攻

 ウンディーネの泉……そこにはエルベティエが居て、人間やサラマンダーを保護していた。しかし、スライムベス娘……ベスがウンディーネの泉に魔水銀を投げ込んだ事で、泉は汚染された。激昂するヴィクトリー、ベスに猛攻するものの、水銀毒により解毒が必要な状態になる。何とかルカがベスを倒したものの、次に現れたのは……

 

「アンフィスバエナ……キメラモンスターの完成形、ネクスト・ドールの一人よ。」

 昆虫のような骨格をしたモンスター。足が大鎌になっており、それを使ってカッシンカッシンと歩いている。

「四天王の一人、エルベティエを滅ぼすために開発されたのが私。その存在意義を果たすため、ここまで出向いてきたわ……」

「……私を滅ぼすため……?」

 エルベティエはアンフィスバエナをギロリと睨み、指をボキボキと鳴らす。

「ど、どうやって鳴らしてんだ……」

 ヴィクトリーが彼女の指に注目しながら、そう漏らす。そんな彼女の顔は、今まで以上に凄み(ドス)の篭ったものだった。

「不可能な目的のために生み出されるなんて、ひどい人生ね。悪いけれど、今日は虫の居所が悪いの……」

 エルベティエの腕が粘液の槍となり、鋭い突きを繰り出した。しかしアンフィスバエナは大鎌を煌めかせ、粘液の槍を切断してしまう。

「反応速度は、それなりね。でも、その程度の力で……っ?」

 本体から切り離され、地面に落ちた粘液。普段なら、たちまち元通りに再生してしまうはずだ。しかし、切断された粘液の断片は、そのまま崩れ去ってしまった……

「私の体が……細胞単位で死滅した……?いったい、何をしたの……!?」

「ふふっ、驚いた……?」

 アンフィスバエナは大鎌を見せる。そして、その大鎌に気を纏わせた。

「この超振動ブレードで、切断面の細胞を振動破壊したのよ。」

「避けろっ!!エルベっ!!」

 アンフィスバエナはその大鎌をエルベティエに振り下ろす。ヴィクトリーの言葉に反応した彼女はバク転し、月面宙返りをして彼の横に立った。

 アンフィスバエナは鎌を抜いて、不適に笑う……

「私は、あなたを滅ぼすために生み出されたキメラモンスター。クィーンスライムの特性に対抗できる兵装が、この体に備わっているわ!」

「くっ!」

「ちっ!」

 彼女は、エルベティエに突進し、鎌を振り上げた。

「おらぁっ!」

 しかし、ヴィクトリーが鎌を蹴り上げで止める。

「……へぇ?」

 そしてエルベティエが、粘液となり、彼女の体に絡みついた。

「捕らえたわ……!」

「いいえ、ただの自殺行為よ……」

 次の瞬間、アンフィスバエナの周囲の空気が揺らめいた。

「ぎゃあっ!!?」

「っ!!」

 ヴィクトリーの足が、まとわりついていたエルベティエが、いきなり電撃された。彼女の粘液も彼の靴も、ボロボロと崩れる。

「そんな……まさか、全身にも……」

「震動装甲……対スライム用に開発された、特殊な外殻よ。粘状の特異性は、これで完全に無効化できるわ……当然、人間にも効くけど……」

「い、いってぇ〜……!」

 ヴィクトリーは焼けた靴をパンパンと叩く。アンフィスバエナの視線は、そんな彼の隣に居るエルベティエに向いた。

「あなたは私に、触れることさえできない……接触すれば、それだけで群体細胞が死滅してしまう……!」

 そう言って笑いながら、エルベティエに迫ってきた。

「ルカーっ!!加勢してくれーっ!!」

 ネクスト・ドールの実力はツクヨミとの戦いで思い知っている。このまま挑むのも、無謀というものだろう。だから、ルカに助けを求めるしかなかった。

「分かってる……!」

 彼が応じて、その戦いに加勢しようとした時、周囲に柔らかな光が満ちた。このタイミングで、よりによって天使が降臨してきたのだった。

 黄身が露出した巨大な卵のようなものから、女の上半身が生えた天使……

「私は座天使エグエル……天使の卵に精を宿し、孵させるのが役目……」

「天使の卵だと……?天使って、卵生なのか?」

「確か、イリアスの分身って話じゃ……」

「太古の昔は、イリアス様の放つ聖素より天使が生み出されました。……しかしそれも、遠い神代の話。現代の天使は、大いなる卵子に、精子を受精させる事で生まれます。その精子とは、優れた人間の肉体と魂そのもの。殿方一人を一つの精子として扱い、私の抱くこの卵に受精させるのです……」

「人間一人が精子扱いか……贅沢な話だな……」

 アリスがそう漏らし、物陰に隠れた。

「さぁ、汚れし勇者ル」

 ここで、ルカの魔天回帰がエグエルの顔面に直撃した。

「ヴィクトリー、加勢は出来そうにない!お前が行ってやれ!」

「わ、分かったよ……!」

 あの野郎、俺は水銀毒でフルパワーが出せねぇって時に……!

「ヴィクトリー、大きく口を開けて。」

「うんっ?」

 エルベティエの言われた通りにすると……彼女は液体となって宙を舞い、ヴィクトリーの口に入り込んだ。

「〜〜〜!!!」

 エルベティエがヴィクトリーの体内に入り、彼も反射で喉を鳴らして彼女を飲み込んでしまう。まるで、魔人ブウが体内に入り込むかのような光景が連想できたが……それと違うのは、特に彼の見た目は変化しなかったということだ。

「……っぷぁ!?エルベッ!こんな時にふざけてる場合か!」

「あらあら、私が怖くてその男の体内に逃げ込んだのかしら……?」

「……そうじゃないわ。」

 ヴィクトリーの体が、勝手に構えをとる。

「わっ……?」

「ヴィクトリー……ベスとの立ち回りを見るに、あなたがフルパワーを出すにはこうするしか無いと踏んだのよ……毒は私が解毒する。だから、あなたはあれを。」

「……そういう事か……」

 ヴィクトリーは超サイヤ人2になり、アンフィスバエナを見据えた。エルベティエの言う通り、ベスとの戦いの中で感じたあの苦痛はない。

「じゃあ、遠慮なく行くぜっ!!」

 そして、彼女に突っ込んだ。

「ふんっ!」

 しかし彼女の震動装甲が発動し、ぶっ飛ばされる。

「ぐぁっ!」

「っぐ……!」

 ヴィクトリーの体内にいるエルベティエも、苦しそうな声を上げる。

「……あなたがダメージを負えば、私もダメージを負う……それだけは伝えておくわ……」

「……了解!」

 ヴィクトリーは立ち上がり、再び構える。そんな彼を見て、アンフィスバエナはニヤニヤと笑っていた。

「見た所、あなたは武道家タイプね……やばいんじゃないの?私相手だと相性は最悪よ?」

「……果たして、そうかな……」

 ヴィクトリーは両手に気を溜めて、エネルギー波を連射した。

「だだだだだだ……!!」

「はぁああああ……!」

 彼女はそれを切り弾きながら突進し、鎌を振り下ろした。

「ちっ!」

 それを白刃取りするが……

「あっちぃッッ!!?」

 ……鎌の刃が、超高熱だった。

「はぁっ!」

 更に震動装甲のショックウェーブでぶっ飛ばされてしまった。

「……なるほど、超振動ブレードの正体は高周波による振動熱か。そりゃあエルベティエの細胞だって切れる筈だ……」

「……どういう事……?」

「俺がおめぇをぶん殴れるのと同じ原理だ……俺の拳が普通に殴るっていうより焼き潰す……みたいな感じで、あいつは普通に切るってよりは、溶断するって感じの方が正しい。普通に叩くより、細胞そのものを攻撃して殺しちまうんだ……だから、単純な再生能力じゃ太刀打ち出来ねぇ……もしエルベティエが水蒸気から再生できんなら、話は別だったかもしれねぇけど……」

「へぇ……」

「会話は終わりかしら!?」

 アンフィスバエナが、ヴィクトリーの顔面に鎌を振り下ろした。

「やべぇっ!」

 それをギリギリで回避し、鎌が刺さった所を見る。

「ふふ……」

 かなり深く刺さっており、なおかつ刺さった所以外を破壊していない。なるほど、首を狙われたら即死か。

「ちっ……!」

 ヴィクトリーは靴を脱ぎ、アンフィスバエナの顔面に飛ばした。それを切り払い、彼女は無数の斬撃で猛攻してきた。

「──そこかっ!!」

 彼は目を光らせ、一瞬の隙を見て、龍翔拳を放った。

「ぐぅっ!?」

 彼女はダメージを負ったものの、踏ん張り、またショックウェーブを放つ。しかし彼はそれより速く離れ、彼女を見据えた。

「へぇ……」

「はっはぁ〜……何となくおめぇとの立ち回りが分かってきたぞ……」

「果たして、そうかしら……」

 アンフィスバエナは身を低くして、エネルギーを集中させた。

「っ……!?な、なんだ……!?月光きゃのんみたいの撃つつもりか……!?」

「……」

 彼女はニタアっと笑い、その場で勢いよく鎌を振った。

「くっ!!」

 ヴィクトリーはそれに対し、超かめはめ波を放った。しかしかめはめ波が切れて、斬撃が飛んで迫ってきたのだった。

「なにぃっ!!?」

 ヴィクトリーは倒れるようにそれを避ける。背後の壁に、横一文字の斬撃が走った。

「か……かめはめ波が……切れた……!!?」

 しかも、斬撃が飛んできた。まずい……こいつもツクヨミと同様に、色々隠し持ってやがる……!

「行くわよ……ホラホラホラホラっ!」

 次にアンフィスバエナがヴィクトリーの前に高速移動し、猛攻した。斬撃の嵐が、彼に襲いかかる。

「そこだっ!!」

 彼は再び一瞬の隙を見て、顔面に蹴りを放つ。

「ふっ!」

 彼女はそれを避けたが、彼の素足が髪を掴んだ。

「な……!!?」

「だだだだだだだだだぁっ!!」

 そしてもう一方の足で、その腹を連打した。

「ぐ……ぐぐぐ……!!小賢しいっ!!」

 彼女は、ショックウェーブでヴィクトリーを引き剥がした。吹っ飛ぶ彼は空中で体勢を整え、構え直す。

「ち……!」

「くらいなさい……!!」

 アンフィスバエナはそんな彼に向け、エネルギーを胸の中心に集合させていた。

「な、なんだありゃあ……!!?」

「ヴィクトリー、避けてっ!」

 エルベティエの警告によって、体を動かそうとしたが──アンフィスバエナの方が、速かった。

「吹っ飛びなさい……!!ソニックバースト!!」

 彼女はソニックブームを一点に集中させ、それを撃ち放ってきた。とんでもないエネルギーが音速を超える勢いで発射され、ヴィクトリーの全身に叩きつけられたのだった。

「ぐぅああああああっ!!!?」

「きゃあああっ……!!」

 彼は吹っ飛びながらきりもみ回転する。その口から、自分の血とエルベティエの水が混ざったものが飛ぶ。そして、地面に倒れた。

「ぐ……だ、大丈夫か、エルベティエ!!」

「ぐっ……うっ……ぐ……!!」

 どうやら、全然大丈夫じゃないみたいだ。と言っても、俺が大丈夫って訳でも無い。全身が痺れて、立ち上がれなさそうだ。

「ほう?いい感じに野蛮な猿が転がってきましたね……」

 そう言って彼の顔を覗いたのは、ルカと戦ってたエグエルだった。

「では、あなたを……」

「ちぃっ!!」

 ヴィクトリーは、どどん波をエグエルの眼球に当てた。

「ッッ!!?」

 彼女は怯み、その背後からルカが走ってくる。

「行くぞ、断空の刃っ!!」

 そして、次元を切り裂く程の一閃で、彼女をぶった切ったのだった。

「こ、この卵を……失う訳には……!!」

 そう言って、卵と女体に両断された彼女は、消散した……

「……大丈夫か?ヴィクトリー。」

「ぜ、全然大丈夫じゃねぇさ……」

 ルカがヴィクトリーに手を伸ばし、彼はそれを掴んで立ち上がる。

「よし、今度は僕も戦えるぞ……」

「何かあったら余も加勢するぞ。」

「さ、サンキューみんな……」

 ルカとヴィクトリーとアリスが並び、アンフィスバエナと相対する。これなら、勝機はあるはず……

「……あの卵天使、足止めさえまともに出来ないなんて。おまけに、そろそろ……」

 アンフィスバエナは暫く黙り……

「……四対一だと、流石に面倒ね。負けないにしても、鎌の一本でも折られてしまえば大問題よ。プロメスティン様に、いらぬ叱責は受けたくないわ……」

 そう呟き、背を見せた。

「やけに早い退散だな……」

「どうした、逃げるのか……?」

「私の体は、上から下まで希少金属の塊よ。あなた達四人の命と、私の鎌一本でも割に合わないわ……ふふっ、命拾いしたわね。エルベティエ、あなたの処分は次にするわ……」

 そう言って、アンフィスバエナは立ち去った。敵の気配も消えて、ようやく一息つけた。

「……魔王城の時も、そうだったけど……あいつら、やけにあっさり退くよな。」

「ツクヨミは毒で瀕死だったけど……エンリカの時のあいつも、すぐに退散しちまってたよな。何でだ?」

「知らん……そこまで、戦力を温存しときたいのか……はたまた別の理由か……」

 三人がそう言って頭を抱えてると……

「っぷ……!!」

 ヴィクトリーが、大量の水を吐き出した。

「わぁっ!?」

 その光景に驚いたルカが、一歩退いてしまう。

「………………」

 彼の吐き出した水が集合し、エルベティエを形作った。

「な、なんだエルベティエか……」

「……俺が毒にならねぇようにしてくれたんだってさ。ありがとな。」

 エルベティエは無表情のまま、二人をじっとりと睨みつけた。

 ……また何か、文句でも言われるのか……

「……ありがとう、かばってくれて。それに引き替え、随分と情けない姿を見せてしまったようね……」

「あ、いや……」

 エルベティエの口から、そんな言葉が出るとは思わなかった。二人は思わず戸惑ってしまった。

「仕方ないよ、敵はエルベティエの特性を研究し尽くしてたみたいだし……」

「あんなの、まともに戦えるわけねぇよな……」

「うむ……敵はこちら側を徹底的に研究し、あらゆる対策が組み込まれている。貴様の特性は非常かつ特異な分、それが封じられれば脆いものだ。」

「魔王様、全ては私の不徳が致すところ。無様な敗北に、部下の造反……そのせいで、泉が汚染されてしまって……」

 ルカは、エルベティエの肩を叩く。

「経験上、助言させてもらうけど……そういう感じの事は、自分ばかり責めてもロクなことにならないよ。」

「うむ、その通り!我等三人とも経験者だからな!」

「威張っていうモンでもねぇだろ……」

「……羨ましいわね、三人にはそういう絆があって。」

「いやいや、羨ましがる事でもないよ……」

「……ともかくルカ、ここに来た目的を果たすぞ。」

「ほら、サラマンダー、立て。」

「さ、寒い……」

 ヴィクトリーがサラマンダーを連れてきた。そう言えば、洞窟の隅で震えてたっけ。誰も気にしてなかったけど、戦いの最中とずっとここにいたのか……

「そんじゃあルカ、俺は地上に出て修行する。」

「余は泉の水でもガブ飲みしてくる。とっとと終わらせろ、さも無ければ泉がただのクレーターになるぞ。」

「私は、プランセクト村で同胞や人間達の様子を見てくるわ……」

 ルカ以外の戦士達は、この場を去ってしまう。そして、ルカとサラマンダーは再契約に及んだのだった……

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