もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
夕方……日が落ち始め、空がオレンジ色に染まり始めた。
「ルカ……関わりの無い人間をなぜそうまでして救おうとする?貴様が言うには、英雄になりたい訳では無いのだろう?」
突如、アリスがルカにそう質問する。
「ただ助けたいだけさ……ニセ勇者であろうと、自称勇者なんだからね。」
「人間とは利己的で、弱者を平気で踏みつけにする。自分の欲を何よりも重んじ、そのために弱者を虐げる……人間はそういう種族だと思っていたのだがな……」
村の女性達が戦いの準備をする様子を眺め、アリスはため息を吐く。
「弱く汚いかと思えば、思わぬ団結力を発揮する……人間とはつくづく不思議なものだ……」
ヴィクトリーが口を挟み、僕も続く。
「誰だって弱いまんまはイヤなんだよ。」
「弱い自分を何とかしたいって思うのが人間だと思う……そんなものさ。」
「ふむ、弱っちいニセ勇者と脳みそ筋肉が言うと説得力が違うな。」
「……」
「ぐぬぬ……」
前に比べたら随分と強くなったと思ってるんだけどなぁ……
「とにかく、村のみんなは準備が整ったみたいだぜ。」
ヴィクトリーがそう言い、村の女性達を見る。
「これで準備万端だよ!」
「戦うのは初めてですが……頑張ります!」
ルカが立ち上がり村人達を見る。
「じゃあ、東の森に行きましょう。皆さん、くれぐれも無理はしないように……」
こうして僕とヴィクトリーとアリス、そしてハピネス村の女性達は、東の森に向かったのだった。
「この奥です……少し行けば、ハーピーの集落があるのです。」
「はい、分かりました……」
集落である以上、当然沢山のハーピーがいるはず。
「……馬鹿にでけぇ気が一つ……静かな気が殆どで、僅かに活動している奴もいるな……」
ヴィクトリーが額に指を置きながらそう言う。
馬鹿にでかい気というのは、おそらくボスの事であろう。
「じゃあ、僕達が先に乗り込んでボスを倒していきます。」
「ハーピー達が混乱したら、頼むぜ。」
「あぁ、気をつけなよ!危なくなったらすぐに引き返すんだよ!」
そして、最悪の事態も想定する。
「もし僕達がダメだったら……その時は逃げてください。では、行ってきます!」
「よし、行くぞ!」
ヴィクトリーも僕に続き、僕の横についた。
すると、アリスが急に僕達を呼び止めた。
「おい二人とも!……戻ってこいよ。こんなくだらん所で、魔物の餌食にはなるな。」
「……あぁ!」
ルカが返事をし、ヴィクトリーは笑って親指を上げる。
いったいどういう風の吹き回しか、アリスらしくない事を言う。しかし、悪い気はしなかった。
「よし、行くか!」
「おうっ!」
僕達は気合いを入れ、ハーピーの集落へと向かう。
母さん、イリアス様、どうか僕を見守って下さい……
「……ふぅ。何とか、ここまでは見つからずに来れたね。」
「お、隠密行動かよ……俺こういうの一番ニガテなんだよなぁ……」
夕暮れ時は、アリス曰くハーピーがぐっすり眠っている時間らしい。
ハーピーの朝は早く、午前は元気、昼はうとうと、夕方はぐっすり……そう言う毎日だという。
「夜はどうしてんだろうな。」
「知らないよ。睡眠時間長いんじゃない?」
集落の中は静かで、外をうろついているハーピーもいない。そして、小声の少しの会話なら誰にも気付かれない。
「アリスは、ボスのハーピーは一番高い所にいるって言ってたな……」
「じゃあ、あそこか?」
ヴィクトリーが指さした場所に、一番大きい樹木の最も立派な家があった。
「確かにあそこに馬鹿でけぇ気が潜んでやがる……」
「よし、あそこだな……!」
おもむろに、一歩を踏み出した時だった。
「お姉ちゃん、あそこに誰かいるよ……?」
「本当だ……人間みたいだね……」
「まずいな……」
僕達の前に、姉妹のハーピーが現れる。
「おねえちゃん……このひとたち、はじめてみるよ……」
「そうね、ここの人じゃないみたい。何でこんな所にいるのかな……?」
姉妹の会話に口を挟んだのは、ヴィクトリーだった。
「決まってんだろ!おたくのボスぶっ飛ばしてオトコ達を開放するためだ!」
「こ、声が大きいって……」
やむを得ず、僕は剣を抜いた。手荒なことは好まないが、他のハーピー達を呼ばれたら困る。ここは、この剣で少しばかり封印させるしかないようだ。
「おねえちゃん……わたし、あの人たちと交尾したい……」
「うふふ、気に入ったのね。じゃあ、あの人達を初めての交尾相手にしよっか……まずはいっぱい気持ちよくして弱らせないとね……」
「ルカ、俺は武闘家というプライドがある……非戦闘員とは戦えねぇ。任されてくれるか?」
「そっか、分かった!任せて!」
ヴィクトリーは腕を組み、僕達から離れる。あいつが敵を誰かに譲るというのは珍しいんじゃないか。そう思いながらハーピー姉妹と単身で相対する。
「あれ……?一人で戦うつもりなの……?」
「そうだ、行くぞ!」
ルカが剣を構え、攻撃する。
だが、当然、かわされてしまう。
「わっ……びっくりした……」
「大丈夫、人間は空を飛べないんだから。こうやって空を飛んでいたら、痛いことはされないからね。」
「ぐっ……またか……」
「あいつ……俺ぐらいの運動神経もねぇのにどうやって……」
姉妹そろって空に舞い上がり、攻撃が当たらない。
前の戦いのように、密着してきた所を狙わないと……
「このっ!」
また空に視線を戻す。だが、そこには妹ハーピーしかいなかった。
「えっ……!?」
「後ろだ!」
呆気にとられるルカに、ヴィクトリーが言う。
「正解っ!」
何と姉ハーピーがいつの間にかルカの背後に回り、彼を羽交い締めしてきたのだ。
「ぐっ!」
背後からルカの体を抱え込み、強引に押さえる。しかし、これはまたとないチャンスなのだ。
「よし、今だ!」
彼はその状態から、姉ハーピーに一撃食らわせた。
「きゃあっ!?」
まさに会心の一撃だったようで、大ダメージを食らった彼女はルカから離れ、倒れてしまった。そこに、妹ハーピーも駆け寄る。
「ああっ、おねえちゃん!」
「よし……!」
ヴィクトリーはその様子を見て、頭をかいていた。
「あーんな方法があったんか……俺のあれは徒労だったんか……?」
ハーピーとの戦いは大分理解出来た。この調子なら勝てるぞ!
「おねえちゃん!死んじゃやだぁ!おねえちゃん!」
「大丈夫、あなたは、おねえちゃんが必ず守るからね……」
「やだぁ!おねえちゃんをころさないでぇ!」
「……」
何だろう、とても凄い罪悪感。
「あぁっ、もう……!」
「これじゃ俺達悪者じゃねぇか!」
僕達はハーピー姉妹から背を向けて逃げる。ハーピー姉妹も追いかけては来なかった……
しばらく走り、一息つく。
「ふぅ、今度は見つからないようにしないとな……」
「めんどくせぇな……どうせあのハーピー姉妹は侵入者が居ること知らせに回るぞ……」
そう、ゆっくりはしていられなかった。向こうが本格的に警戒するまで、ボスを叩かないと……
「仕方ない……行くぞ、ヴィクトリー!」
「おうっ!」
僕達は茂みから飛び出し、樹上にあるボスの家に向かって一目散に駆け出した。
「……私の家に何の用でしょうか……」
不意に二人の背後からばさっという音が聞こえ、そして尋常ではない気配が漂う。
「ま、まさかっ……!!」
「おめぇは……!!」
振り返るとそこには、いかにも立派なハーピーが立っていた。
「あんたが、ハーピーの親玉なのか……?」
ルカの問に対し、そのハーピーは静かに答える。
「全てのハーピーを束ねる長、クィーンハーピーとは私のこと。この私に、どのような御用でしょう。まぁ、察しはついておりますが……」
「さらった人達……」
「ハピネス村の人達から頼まれてやってきた。ぶっ飛ばされねぇ内にさらった人間返せ。そんでもって、もうこんな事やめるんだ。」
ヴィクトリーがルカの言葉を遮り、単刀直入に言う。口は悪いが、言おうとしていたことと一致していた。正直な所、説得に応じてくれる可能性は無いだろうけど……
「人の子よ……それが物を頼む礼儀だと思っているのですか……?」
「うっせぇ!とっととしねぇと、ぶっ飛ばして焼き鳥にして食っちまうぞ!」
「ちょっ、ちょっ……」
焦る僕と、挑発するヴィクトリーに、クィーンハーピーがため息をつき、言葉を放つ。
「……このような人間がいるから、魔物と人の関係に溝が出来てしまう……故に我々が生き延びるためにはこうするしか無いのです……」
「おめぇにとってもこれが死活問題ってのは察しがついてんだ……だけど、それは村人達の了解を得たのか?男達の意見は聞いたのか?それに……」
「そのような問い、貴方たちに答える義理はありません。」
ルカが剣を抜き、構える。
「何だか分からないけど、こちらの言い分を聞いてくれないなら……」
「俺達は力で訴えなきゃなんねぇ。」
二人とも、臨戦態勢に入る。あまり気は乗っていないが、こうなってしまうと退治するしか他になくなってしまうのだ。決して命までは取らない。反省してくれるまでこの剣で封じるだけだ……
「実力行使というわけですね。ならば、ハーピーの女王の力、その身に教えて差し上げましょう……!」
ボウッとハーピーの気が溢れ出す。間違いない。こいつはかなりの強敵だ。一瞬でも気を抜いたら負けてしまうぞ。
「女王に敵意を向けること……それは大いなる罪……いかなる理由があろうとも……」
ヴィクトリーはそんなクィーンハーピーの話を無視し、クィーンハーピーに突進し、渾身のパンチを放った。
「なぁにベラベラ喋ってんだ……!」
だが、そのパンチには怯まずに頬に拳を受けたまま、ヴィクトリーを睨む。
「なにっ!?」
そして今度はルカの方を見て羽をクイクイと動かす。
「っ……でりゃっ!」
ルカの攻撃もヒットする。
「……なるほど。二人とも、なかなか筋はありますね……」
「当たった……?空を飛んで避けないのか……?」
クィーンハーピーがふっと笑い二人を見る。
「ハーピーの女王たる者が、そのような稚拙な戦いぶりを見せるとでも……?」
「へぇ〜……随分と気前がいいんだな……それとも、余裕ってやつ?」
クィーンハーピーは高速移動して、ヴィクトリーの懐に入り、その腹に蹴りを放った。
「ぐふっ……!?」
ヴィクトリーはその一撃で膝をつき、腹を押さえて悶絶した。
「貴方には分かりませんよ……人間の貴方には……」
「このっ!」
ルカもクィーンハーピーに攻撃をしかける。
「はぁっ!」
だが、避けられて、かつ、脇腹に蹴りが放たれる。
「ぐっ……!?」
その蹴りガードし、構え直した。
「ほう……それでは、これはどうですか?」
クィーンハーピーは軸足をそのままに、体を回転させ、正面蹴りを放つ。
その蹴りは凄まじい威力で、ガードしても衝撃を殺しきれなかった。
「うわぁっ!」
体が少し吹っ飛ぶが、着地する。
ガードしているのに、この威力。マトモにくらったら一撃で戦闘不能になるぞ……!
「うぉおおお!!」
「だりゃあああ!!」
僕達は二人でクィーンハーピーに突進し、猛攻を仕掛けた。
「止まって見えますね……」
だが、二人がかりの猛攻ですら、簡単に避けられてしまい、攻撃が全く当たらない。すると二人は高速移動し、クィーンハーピーの背後に立つ。
「うしろっ!」
クィーンハーピーはその場でジャンプし、両足で二人を蹴り飛ばす。
「くそっ!」
ヴィクトリーがバク転し、高く跳躍する。しかしその眼前に、クィーンハーピーが迫ってきた。
「人の身でその高さまで跳べるのは珍しいですね……」
「そうかよ!」
両手を、彼女の方に突き出す。
「……?」
「があぁっ!!」
彼女は至近距離で放たれた気合砲に直撃し、吹っ飛ぶ。しかし、表情に変化はなかった。
「なるほど、確かにただの武闘家ではないようですね……ですがっ!」
余裕でそんな事を言いながら、その気合砲から脱出し、ヴィクトリーの髪を足で掴む。
「はあぁっ!」
「うわぁあああっ!?」
そしてそのまま、その顔面を地面に叩きつけた。
「確か、貴方は似たような事を昼のハーピーにやりましたね……?」
クィーンハーピーはそう言い、ヴィクトリーの頭に置いてある足に力を込める。
「……あてつけのつもりらしいが、今のおめぇ、隙まみれだぞ。」
ヴィクトリーがそう言った瞬間、クィーンハーピーの喉元に鋭い突きが炸裂した。
「ぐっ……ぇ……!?」
ルカがクィーンハーピーに魔剣・首刈りを放ったのだ。
「行くぞっ!おらおらおらおらおら!!」
その一撃で怯んだクィーンハーピーに連続で斬撃が叩き込まれる。
「ぐっ……!!」
クィーンハーピーが飛んで攻撃から脱出しようとした時、ヴィクトリーが起き上がり、その足を掴む。
「おりゃああああ!!」
「わっ!馬鹿っ!」
「っ!?」
ルカが一旦離れ、ヴィクトリーと距離をとる。彼はそれを確認し、クィーンハーピーの足を両手に持ち、思いっきりぶん回し、そしてルカの方に投げた。
「攻撃を休めんな!あんなスキはもう作れねぇぞ!」
「分かってる!!」
二人はクィーンハーピーを挟み撃ちにしてラッシュをかけようとした。だが、彼女は投げられている途中で地面に片足をつき、着地する
「うぐぅ……!!はぁっ!!」
そして、両の羽から二人に突風を放った。
「うわっ!?」
「ぐぅっ!?」
二人は吹っ飛び、ヴィクトリーは木に叩きつけられ、ルカは地面に伏してしまう。
「……」
クィーンハーピーは一つの疑問が思い浮かぶ。
何故自分は本気を出して戦わない……?いや、本気を出せない訳ではない。その気になれば、この程度の人間の一人や二人、一撃でカタをつけられる筈。なのに、何故かこの人間達相手に本気を出したら、それこそ女王としてのプライドが折れる気がした。
クィーンハーピーは心の何処かで迷っていた。
自分のしている事は正しいのか。いや、そんな事を考えている時点で正しい訳がない。だが、ハーピー一族を紡いでいくには、こうするしかない。人間は我々を受け入れる訳が無いから……
「……双方に聞きます。何故私達に勝負を挑んだのですか?」
突然の質問に目を瞬かせる二人。
「さっき言った通りだ。おめぇをぶっ倒して、村のみんなを開放……」
「そういう事ではありません……貴方達はどういう思いで村人達の頼みを受けたのですか?」
二人はまた目を瞬かせた。そして……
「僕達は人と魔物が共存する世界を実現したいんだ!その為に、お前らのような横暴を許すわけにはいかない!」
「俺は強いヤツと戦いたいのもあるけんど、第一に、人を尊重しねぇ魔物は許せねぇんだ!ルカの理想の為にも俺達は絶対に勝たなきゃなんねぇ!!」
ボロボロの戦士達はそう言い、咆哮を挙げながら立ち上がった。
「……さぁ、続けようぜ女王様……!!」
「僕達はお前が分かってくれるまで、何度も立ち上がるぞ……!!」
「……っ……」
クィーンハーピーの心の迷いが決定的になったのであった。
流血表現
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もっとする
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このままでいい
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しなくていい