もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

16 / 227
集落での激戦

 夕方……日が落ち始め、空がオレンジ色に染まり始めた。

「ルカ……関わりの無い人間をなぜそうまでして救おうとする?貴様が言うには、英雄になりたい訳では無いのだろう?」

 突如、アリスがルカにそう質問する。

「ただ助けたいだけさ……ニセ勇者であろうと、自称勇者なんだからね。」

「人間とは利己的で、弱者を平気で踏みつけにする。自分の欲を何よりも重んじ、そのために弱者を虐げる……人間はそういう種族だと思っていたのだがな……」

 村の女性達が戦いの準備をする様子を眺め、アリスはため息を吐く。

「弱く汚いかと思えば、思わぬ団結力を発揮する……人間とはつくづく不思議なものだ……」

 ヴィクトリーが口を挟み、僕も続く。

「誰だって弱いまんまはイヤなんだよ。」

「弱い自分を何とかしたいって思うのが人間だと思う……そんなものさ。」

「ふむ、弱っちいニセ勇者と脳みそ筋肉が言うと説得力が違うな。」

「……」

「ぐぬぬ……」

 前に比べたら随分と強くなったと思ってるんだけどなぁ……

「とにかく、村のみんなは準備が整ったみたいだぜ。」

 ヴィクトリーがそう言い、村の女性達を見る。

「これで準備万端だよ!」

「戦うのは初めてですが……頑張ります!」

 ルカが立ち上がり村人達を見る。

「じゃあ、東の森に行きましょう。皆さん、くれぐれも無理はしないように……」

 こうして僕とヴィクトリーとアリス、そしてハピネス村の女性達は、東の森に向かったのだった。

 

「この奥です……少し行けば、ハーピーの集落があるのです。」

「はい、分かりました……」

 集落である以上、当然沢山のハーピーがいるはず。

「……馬鹿にでけぇ気が一つ……静かな気が殆どで、僅かに活動している奴もいるな……」

 ヴィクトリーが額に指を置きながらそう言う。

 馬鹿にでかい気というのは、おそらくボスの事であろう。

「じゃあ、僕達が先に乗り込んでボスを倒していきます。」

「ハーピー達が混乱したら、頼むぜ。」

「あぁ、気をつけなよ!危なくなったらすぐに引き返すんだよ!」

 そして、最悪の事態も想定する。

「もし僕達がダメだったら……その時は逃げてください。では、行ってきます!」

「よし、行くぞ!」

 ヴィクトリーも僕に続き、僕の横についた。

 すると、アリスが急に僕達を呼び止めた。

「おい二人とも!……戻ってこいよ。こんなくだらん所で、魔物の餌食にはなるな。」

「……あぁ!」

 ルカが返事をし、ヴィクトリーは笑って親指を上げる。

 いったいどういう風の吹き回しか、アリスらしくない事を言う。しかし、悪い気はしなかった。

「よし、行くか!」

「おうっ!」

 僕達は気合いを入れ、ハーピーの集落へと向かう。

 母さん、イリアス様、どうか僕を見守って下さい……

 

「……ふぅ。何とか、ここまでは見つからずに来れたね。」

「お、隠密行動かよ……俺こういうの一番ニガテなんだよなぁ……」

 夕暮れ時は、アリス曰くハーピーがぐっすり眠っている時間らしい。

 ハーピーの朝は早く、午前は元気、昼はうとうと、夕方はぐっすり……そう言う毎日だという。

「夜はどうしてんだろうな。」

「知らないよ。睡眠時間長いんじゃない?」

 集落の中は静かで、外をうろついているハーピーもいない。そして、小声の少しの会話なら誰にも気付かれない。

「アリスは、ボスのハーピーは一番高い所にいるって言ってたな……」

「じゃあ、あそこか?」

 ヴィクトリーが指さした場所に、一番大きい樹木の最も立派な家があった。

「確かにあそこに馬鹿でけぇ気が潜んでやがる……」

「よし、あそこだな……!」

 おもむろに、一歩を踏み出した時だった。

「お姉ちゃん、あそこに誰かいるよ……?」

「本当だ……人間みたいだね……」

「まずいな……」

 僕達の前に、姉妹のハーピーが現れる。

「おねえちゃん……このひとたち、はじめてみるよ……」

「そうね、ここの人じゃないみたい。何でこんな所にいるのかな……?」

 姉妹の会話に口を挟んだのは、ヴィクトリーだった。

「決まってんだろ!おたくのボスぶっ飛ばしてオトコ達を開放するためだ!」

「こ、声が大きいって……」

 やむを得ず、僕は剣を抜いた。手荒なことは好まないが、他のハーピー達を呼ばれたら困る。ここは、この剣で少しばかり封印させるしかないようだ。

「おねえちゃん……わたし、あの人たちと交尾したい……」

「うふふ、気に入ったのね。じゃあ、あの人達を初めての交尾相手にしよっか……まずはいっぱい気持ちよくして弱らせないとね……」

「ルカ、俺は武闘家というプライドがある……非戦闘員とは戦えねぇ。任されてくれるか?」

「そっか、分かった!任せて!」

 ヴィクトリーは腕を組み、僕達から離れる。あいつが敵を誰かに譲るというのは珍しいんじゃないか。そう思いながらハーピー姉妹と単身で相対する。

「あれ……?一人で戦うつもりなの……?」

「そうだ、行くぞ!」

 ルカが剣を構え、攻撃する。

 だが、当然、かわされてしまう。

「わっ……びっくりした……」

「大丈夫、人間は空を飛べないんだから。こうやって空を飛んでいたら、痛いことはされないからね。」

「ぐっ……またか……」

「あいつ……俺ぐらいの運動神経もねぇのにどうやって……」

 姉妹そろって空に舞い上がり、攻撃が当たらない。

 前の戦いのように、密着してきた所を狙わないと……

「このっ!」

 また空に視線を戻す。だが、そこには妹ハーピーしかいなかった。

「えっ……!?」

「後ろだ!」

 呆気にとられるルカに、ヴィクトリーが言う。

「正解っ!」

 何と姉ハーピーがいつの間にかルカの背後に回り、彼を羽交い締めしてきたのだ。

「ぐっ!」

 背後からルカの体を抱え込み、強引に押さえる。しかし、これはまたとないチャンスなのだ。

「よし、今だ!」

 彼はその状態から、姉ハーピーに一撃食らわせた。

「きゃあっ!?」

 まさに会心の一撃だったようで、大ダメージを食らった彼女はルカから離れ、倒れてしまった。そこに、妹ハーピーも駆け寄る。

「ああっ、おねえちゃん!」

「よし……!」

 ヴィクトリーはその様子を見て、頭をかいていた。

「あーんな方法があったんか……俺のあれは徒労だったんか……?」

 ハーピーとの戦いは大分理解出来た。この調子なら勝てるぞ!

「おねえちゃん!死んじゃやだぁ!おねえちゃん!」

「大丈夫、あなたは、おねえちゃんが必ず守るからね……」

「やだぁ!おねえちゃんをころさないでぇ!」

「……」

 何だろう、とても凄い罪悪感。

「あぁっ、もう……!」

「これじゃ俺達悪者じゃねぇか!」

 僕達はハーピー姉妹から背を向けて逃げる。ハーピー姉妹も追いかけては来なかった……

 

 しばらく走り、一息つく。

「ふぅ、今度は見つからないようにしないとな……」

「めんどくせぇな……どうせあのハーピー姉妹は侵入者が居ること知らせに回るぞ……」

 そう、ゆっくりはしていられなかった。向こうが本格的に警戒するまで、ボスを叩かないと……

「仕方ない……行くぞ、ヴィクトリー!」

「おうっ!」

 僕達は茂みから飛び出し、樹上にあるボスの家に向かって一目散に駆け出した。

「……私の家に何の用でしょうか……」

 不意に二人の背後からばさっという音が聞こえ、そして尋常ではない気配が漂う。

「ま、まさかっ……!!」

「おめぇは……!!」

 振り返るとそこには、いかにも立派なハーピーが立っていた。

「あんたが、ハーピーの親玉なのか……?」

 ルカの問に対し、そのハーピーは静かに答える。

「全てのハーピーを束ねる長、クィーンハーピーとは私のこと。この私に、どのような御用でしょう。まぁ、察しはついておりますが……」

「さらった人達……」

「ハピネス村の人達から頼まれてやってきた。ぶっ飛ばされねぇ内にさらった人間返せ。そんでもって、もうこんな事やめるんだ。」

 ヴィクトリーがルカの言葉を遮り、単刀直入に言う。口は悪いが、言おうとしていたことと一致していた。正直な所、説得に応じてくれる可能性は無いだろうけど……

「人の子よ……それが物を頼む礼儀だと思っているのですか……?」

「うっせぇ!とっととしねぇと、ぶっ飛ばして焼き鳥にして食っちまうぞ!」

「ちょっ、ちょっ……」

 焦る僕と、挑発するヴィクトリーに、クィーンハーピーがため息をつき、言葉を放つ。

「……このような人間がいるから、魔物と人の関係に溝が出来てしまう……故に我々が生き延びるためにはこうするしか無いのです……」

「おめぇにとってもこれが死活問題ってのは察しがついてんだ……だけど、それは村人達の了解を得たのか?男達の意見は聞いたのか?それに……」

「そのような問い、貴方たちに答える義理はありません。」

 ルカが剣を抜き、構える。

「何だか分からないけど、こちらの言い分を聞いてくれないなら……」

「俺達は力で訴えなきゃなんねぇ。」

 二人とも、臨戦態勢に入る。あまり気は乗っていないが、こうなってしまうと退治するしか他になくなってしまうのだ。決して命までは取らない。反省してくれるまでこの剣で封じるだけだ……

「実力行使というわけですね。ならば、ハーピーの女王の力、その身に教えて差し上げましょう……!」

 ボウッとハーピーの気が溢れ出す。間違いない。こいつはかなりの強敵だ。一瞬でも気を抜いたら負けてしまうぞ。

「女王に敵意を向けること……それは大いなる罪……いかなる理由があろうとも……」

 ヴィクトリーはそんなクィーンハーピーの話を無視し、クィーンハーピーに突進し、渾身のパンチを放った。

「なぁにベラベラ喋ってんだ……!」

 だが、そのパンチには怯まずに頬に拳を受けたまま、ヴィクトリーを睨む。

「なにっ!?」

 そして今度はルカの方を見て羽をクイクイと動かす。

「っ……でりゃっ!」

 ルカの攻撃もヒットする。

「……なるほど。二人とも、なかなか筋はありますね……」

「当たった……?空を飛んで避けないのか……?」

 クィーンハーピーがふっと笑い二人を見る。

「ハーピーの女王たる者が、そのような稚拙な戦いぶりを見せるとでも……?」

「へぇ〜……随分と気前がいいんだな……それとも、余裕ってやつ?」

 クィーンハーピーは高速移動して、ヴィクトリーの懐に入り、その腹に蹴りを放った。

「ぐふっ……!?」

 ヴィクトリーはその一撃で膝をつき、腹を押さえて悶絶した。

「貴方には分かりませんよ……人間の貴方には……」

「このっ!」

 ルカもクィーンハーピーに攻撃をしかける。

「はぁっ!」

 だが、避けられて、かつ、脇腹に蹴りが放たれる。

「ぐっ……!?」

 その蹴りガードし、構え直した。

「ほう……それでは、これはどうですか?」

 クィーンハーピーは軸足をそのままに、体を回転させ、正面蹴りを放つ。

 その蹴りは凄まじい威力で、ガードしても衝撃を殺しきれなかった。

「うわぁっ!」

 体が少し吹っ飛ぶが、着地する。

 ガードしているのに、この威力。マトモにくらったら一撃で戦闘不能になるぞ……!

「うぉおおお!!」

「だりゃあああ!!」

 僕達は二人でクィーンハーピーに突進し、猛攻を仕掛けた。

「止まって見えますね……」

 だが、二人がかりの猛攻ですら、簡単に避けられてしまい、攻撃が全く当たらない。すると二人は高速移動し、クィーンハーピーの背後に立つ。

「うしろっ!」

 クィーンハーピーはその場でジャンプし、両足で二人を蹴り飛ばす。

「くそっ!」

 ヴィクトリーがバク転し、高く跳躍する。しかしその眼前に、クィーンハーピーが迫ってきた。

「人の身でその高さまで跳べるのは珍しいですね……」

「そうかよ!」

 両手を、彼女の方に突き出す。

「……?」

「があぁっ!!」

 彼女は至近距離で放たれた気合砲に直撃し、吹っ飛ぶ。しかし、表情に変化はなかった。

「なるほど、確かにただの武闘家ではないようですね……ですがっ!」

 余裕でそんな事を言いながら、その気合砲から脱出し、ヴィクトリーの髪を足で掴む。

「はあぁっ!」

「うわぁあああっ!?」

 そしてそのまま、その顔面を地面に叩きつけた。

「確か、貴方は似たような事を昼のハーピーにやりましたね……?」

 クィーンハーピーはそう言い、ヴィクトリーの頭に置いてある足に力を込める。

「……あてつけのつもりらしいが、今のおめぇ、隙まみれだぞ。」

 ヴィクトリーがそう言った瞬間、クィーンハーピーの喉元に鋭い突きが炸裂した。

「ぐっ……ぇ……!?」

 ルカがクィーンハーピーに魔剣・首刈りを放ったのだ。

「行くぞっ!おらおらおらおらおら!!」

 その一撃で怯んだクィーンハーピーに連続で斬撃が叩き込まれる。

「ぐっ……!!」

 クィーンハーピーが飛んで攻撃から脱出しようとした時、ヴィクトリーが起き上がり、その足を掴む。

「おりゃああああ!!」

「わっ!馬鹿っ!」

「っ!?」

 ルカが一旦離れ、ヴィクトリーと距離をとる。彼はそれを確認し、クィーンハーピーの足を両手に持ち、思いっきりぶん回し、そしてルカの方に投げた。

「攻撃を休めんな!あんなスキはもう作れねぇぞ!」

「分かってる!!」

 二人はクィーンハーピーを挟み撃ちにしてラッシュをかけようとした。だが、彼女は投げられている途中で地面に片足をつき、着地する

「うぐぅ……!!はぁっ!!」

 そして、両の羽から二人に突風を放った。

「うわっ!?」

「ぐぅっ!?」

 二人は吹っ飛び、ヴィクトリーは木に叩きつけられ、ルカは地面に伏してしまう。

「……」

 クィーンハーピーは一つの疑問が思い浮かぶ。

 何故自分は本気を出して戦わない……?いや、本気を出せない訳ではない。その気になれば、この程度の人間の一人や二人、一撃でカタをつけられる筈。なのに、何故かこの人間達相手に本気を出したら、それこそ女王としてのプライドが折れる気がした。

 クィーンハーピーは心の何処かで迷っていた。

 自分のしている事は正しいのか。いや、そんな事を考えている時点で正しい訳がない。だが、ハーピー一族を紡いでいくには、こうするしかない。人間は我々を受け入れる訳が無いから……

「……双方に聞きます。何故私達に勝負を挑んだのですか?」

 突然の質問に目を瞬かせる二人。

「さっき言った通りだ。おめぇをぶっ倒して、村のみんなを開放……」

「そういう事ではありません……貴方達はどういう思いで村人達の頼みを受けたのですか?」

 二人はまた目を瞬かせた。そして……

「僕達は人と魔物が共存する世界を実現したいんだ!その為に、お前らのような横暴を許すわけにはいかない!」

「俺は強いヤツと戦いたいのもあるけんど、第一に、人を尊重しねぇ魔物は許せねぇんだ!ルカの理想の為にも俺達は絶対に勝たなきゃなんねぇ!!」

 ボロボロの戦士達はそう言い、咆哮を挙げながら立ち上がった。

「……さぁ、続けようぜ女王様……!!」

「僕達はお前が分かってくれるまで、何度も立ち上がるぞ……!!」

「……っ……」

 クィーンハーピーの心の迷いが決定的になったのであった。

流血表現

  • もっとする
  • このままでいい
  • しなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。