もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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一周して魔王城

 四精霊を取り戻したルカ。そして戦士達は対策を練りに、すぐさま魔王城へと飛んだ。

「二人共……女神イリアスは恐ろしく強いぞ。」

 魔王城に向かうガルダの背中……アリスは、不意にそう告げた。

「分かってるよ……今の俺じゃ多分勝てねぇ……」

「それでも、戦うしか道はないよ。アリスだって、そうだろう?」

「……」

 アリスは話し、ヴィクトリーはそれに聞き入った。

 アリスは一度、エンジェルハイロウを持ってイリアスに殴り込みに行ったそうだ。あの時アリスは返り討ちにされて、地上にぶっ飛ばされた……それが、俺達との出会いだった。

 でも、何もできなかった訳でもないらしい。エンジェルハイロウを握り込んだ拳で、顔面を一発ぶん殴ってやったとか。あの日イリアスが降臨しなかったのは、アリスがイリアスの頬をぶん殴ったからだ。イリアスにも面目はある。顔面腫らした状態で降臨したら、みんなの信仰が薄れるかも知れねぇ。

 アリスはその時点で、イリアスに勝つのは無理だと判断したらしい。その後の話は……よく覚えてねぇ。勇気をくれたのはルカと俺だとか、天界がどうこうだとか……天界に繋がる天国の門とやらが、世界のへそという所にあるという話は聞いてた。だけど天界もその門も、聖素で構成されてる。多分、俺でも干渉するのは難しいだろう。

「……でも、やるしかねぇぞ。その世界のへその門とやらをどうにか暴いて、イリアスに殴り込むしかねぇ。」

「ああ……プロメスティンから奪ったCDに、何かないか期待しているのだが……」

「たまもの解読も、進んでいるといいけどね……」

 そんな話をしてる内に、魔王城が見えてきた。世界をぐるりと周り、なんとか帰還したのだった……

 

「お帰りなさいませ、魔王様……」

 ヴァンパイアが出迎えてくれた。

「うむ、出迎えご苦労。」

「たまも様より、ご報告がございます。どうぞ、広間の方へ……」

「うむ。」

「いい報告だといいな。」

 ヴィクトリーとルカは、アリスに続いて進む。

「なぁルカ、帰ってきた感凄くねぇか?」

「そうだな……」

 最初に魔王城に乗り込んだ時とは、なんという状況の差だろうか……こうして、アリスの後に続いて通された広間。そこでは何人もの妖狐達がディスクを咥えたり、れろれろ舐めていた。

「ぬぉっ……狐どもめ!徒党を組んで、何のつもりだ!」

「よう!たまもさんに、妖狐に、八尾さん!」

 狐達は空いた手でメモをとっている。すげぇ情報量で、目を通すだけでも時間がかかりそうだ。

「研究所跡を最捜索したら、さらに多くのディスクが発見されてのう。あまりに多いから、狐族総出で解読してるのじゃ。」

「きつねめ……」

「そんでもって、何か分かったんか?」

「精霊封じの結界については、かなり解析が進んだぞ。」

 たまも曰く、世界の四箇所に、特殊な磁場を発生させるための装置が置かれてる塔があるらしい。東西南北、その極地に一本ずつ、世界を囲うように。そこから結界が発生しており、この星全体に精霊封印が施されてるらしい。ルカが生まれる前から、この研究はされてたらしい。そして精霊も同じく……

「四本の塔って言ったよね、結界を無効化するにはその塔を破壊すればいいんだね?」

「精霊結界を解除するだけなら、それが得策じゃろう。しかし、ウチにもっと良案があるのじゃ。」

「……そうか、この星規模で結界を展開出来るならぶっ壊すより利用しちまった方が……」

「そういう事じゃ。」

「利用だって……?」

「可能なのか、そんな事が……?」

 たまもはメモをとり、ルカとアリスに向く。

「四本の塔は、あくまで術式の増幅装置に過ぎん。インプットした結界術式を、全世界に増幅展開するためのものじゃ。だから、こちらで準備した術式にすげ替える事も理論上は可能。そこで考えたのが、聖エネルギーに物理干渉できるようにする結界じゃ。」

「聖エネルギーに物理干渉って……」

「天使達に普通に攻撃できるようになるんだな。」

「理論上はそうなるのだろうが……しかし、そんなとんでもない結界などこの世に存在するのか?そんな事、神でも無ければ……」

「ドアホめ、あてもなくこんな事を言い出すものか。聖エネルギーを物理化する、そうした結界は確かに存在する。この大陸にある罪人の封牢は知っておるか?」

「罪人の封牢って……」

「あの、ハインリヒが封印されてた所か……」

「ふむ……既に足を運んでいたか。あそこには、ハインリヒの魂を封印している結界がある。」

「あの結界をどうすんだ?」

「転用して、聖エネルギーの物理化を可能にさせるのじゃ。」

「なるほど。そいつを塔で増幅すりゃ、ルカの精霊封印は解けて、天使達にも触れるようになる。そして天界に殴り込みをかけられるって訳か……」

「たしかに良案だぞ、たまも!そうなれば、大規模な反攻作戦も可能になろう……!」

 たまもは別のメモをとり、目を通しながら口を開く。

「そのために必要なのは、問題の術式のデータ化じゃ。術式を解析し、ディスクに記憶する作業が必要になる。この作業は、罪人の封牢に出向いて直接行わねばならん。敵の妨害が予測される以上、強者が赴くべきじゃが……」

「それじゃあ、僕達が行くよ。」

「うむ、雑魚には任せられんな。」

「俺も行くぜ!」

「では、任せるとしよう。ディスクへの記憶作業は簡単じゃ。少し練習すればすぐ出来る。」

 たまもはにぱっと笑い、ディスクを持った。

「ウチも、早速このディスクに日記をつけてみたのじゃ!」

「お、おう……」

「ミーハーきつねめ……」

 アリスは二人に向き直して、息を吐いた。

「ともかく、その作業は明日に決行するとしよう。二人共、今晩はゆっくりと休むぞ。」

「明日まで待つのか……?こんな状況なんだから、早く準備を進めた方が……」

「いや、ルカ……今の俺達は疲労し切ってんだ。一日もぶっ続けで戦って変に疲労して死んじまったら、計画はパァだぞ。」

「でも、敵がいつ責めてくるか……」

「……最後に戦った天使の階級を覚えてるか?」

 ヴィクトリーは僕の言葉を遮ってそんな事を聞いてきた。最後に戦った天使……ワミエル……あいつは確か……

「智天使……」

「……智天使ってのは熾天使の一個前の位を指すんだ。そんな奴を俺達はぶっ倒したんだぞ。天界サイドからしたら大損害のハズだ。」

 アリスはルカの肩を叩いた。

「無論、いずれまた仕掛けてくるだろうが……焦れば焦るほど、向こうの思うツボだぞ。」

「魔王様も平静を装ってはいるが、消耗は著しいはず。封印を受けた体で、あれだけの激戦を重ねたのじゃからな……お主ら三人とも、今晩はゆっくり休め。休むべき時には休むのも、戦の鉄則じゃぞ。」

「そうか、それなら……」

 ルカも納得していたようだった。

「……それで、たまもよ。」

 アリスが、たまもを呼び止める。

「余にかけられた六祖大縛呪の方はどうだ?」

「そちらに関しては、なんとも情報が少なくてのう……」

 どうやら、全く進んでない模様。だいたいの位置が分かれば、なんとか探知できるらしいが……

「まるで手掛かりさえないのではのう。」

「むむむ……早く元の体に戻りたいぞ……」

 ……と、そこにヴァンパイアがうやうやしく出てきた。

「魔王様、クィーンエルフ様とクィーンフェアリー様がいらしております。少しばかり、お待たせしておきましょうか?」

「いや、すぐここに通せ。話は丁度済んだ所だ……」

「了解致しました、それでは……」

 それから少しして、クィーンエルフとクィーンフェアリーが通された。

 どちらも疲労の色が濃いが、負傷などはしていない様子だ。

「ご無沙汰しておりました、魔王様。この度は、ご機嫌麗わしく……」

 クィーンエルフの挨拶を、アリスが掌を見せて止める。

「……堅苦しい挨拶は不要だ。そのような余裕もあるまい。察するに、天界勢に妖精の島を追われたか?」

「誠に恥ずかしながら、ほとんど戦火を交えずに撤退を決意。エルフ族及びフェアリー族の多数が、御城に落ち延びております。敵勢は多く、抵抗は無駄な犠牲を伴うものだと判断。誠に心苦しくも……」

「……堅苦しい弁明など不要、それに撤退は正しい決断だ。エルフ及び妖精一同、しばらく魔王城に滞在するがいい。」

「はっ、ありがたき幸せ……その際の敵の動きに関し、ご報告がございます……」

 その報告の内容……

 どうやら、各地で捕えられた男が妖精の島に運ばれてるらしい。島のどこかに、収容所でもあるのか……?

 そう思ってた時、たまもも横から口を挟んできた。そこはドレインラボと呼ばれてる場所だそうだ。島の地下に、男を搾るための処理施設がある……そんな情報をディスクから吸い出したみてぇだな。

 長年住んでるクィーンエルフが気付かなかったのは無理もない。特殊な隔壁で遮断され、通常手段での探知は難しいみてぇだ。記録によれば、数十年に渡ってたくさんの男が運び込まれてるらしい。もちろん、今回の襲撃でも男達が多く運ばれたはずだ。

「……ふぁあ……」

 俺は欠伸をしながら、たまも達の話を聞く。島の地下には霊脈が通っててエネルギーの供給が楽だとか……

「……二人共、精霊の森で植物のキメラモンスターと戦った事を覚えているか?」

「ああ、キメラドリアードの事か……」

「あれも、プロメスティンの実験体だったんだな……」

 あの時が、キメラモンスターとの初遭遇だったはずだ。

 まさか、同じような敵と何度も戦うなんて思ってもなかった。

「あんなものが、精霊の森をうろついていたのは……その近隣に、何らかの関連施設があったからではと思わんか?」

「そう言えば、そうだな……」

「丁度、あそこも霊脈の地だったっけな……」

「……ふむ、なるほど。調べたいが、一連の解読作業でウチはくたくたでのう。……おい、七尾!」

「はっ!」

 たまもの声に反応して、頭に木の葉を乗せる。

「これが、魔王様にかかってる六祖大縛呪と同じ波長の術式じゃ。精霊の森付近で、発信源を探知できんか……?」

「精霊の森ですね、しばしお待ちを……」

 七尾は目を瞑り、集中する。そしてしばらくしてから、ゆっくりと目を開けた。

「……微かですが、近隣から酷似した術式の余波を感じます。探しておられるもので、間違いないでしょう。」

「そこに、アリスの封印装置があるって事か……!?」

 ルカはすぐに立ち上がり、ヴィクトリーとアリスを見た。

「よし二人共、さっそく……」

「焦んじゃねぇよ。動くのは明日からだっつってんだろ。」

「その通りじゃ。少しは落ち着けい。」

「ご、ごめんなさい……」

 怒られてしまった……

「ルカ、今の疲労し切った俺達が行っても返り討ちに遭うのが関の山だ。今は休もうぜ。」

 たくさんの事が山積みになっているが……決行するのは明日からだ。

「二人共、今日は客間で休むといい。ヴァンパイア、案内してやれ。」

「かしこまりました、こちらへ……お荷物をお持ち致しましょうか?」

 馬鹿丁寧に客間へと導かれ、ひたすらに畏まるのみ。こうして僕達は、客間で体を休める事になったのである……

 

「ふぅ……」

「あ〜!食った食った〜!こんなに食ったの、久しぶりだぞ〜!」

 運ばれてきた夕食を平らげて、戦士達は一息ついた。ちなみにヴィクトリーは五回ぐらいおかわりしてた。

「……それにしても、変な成り行きだよな。」

 前は、四天王を倒すためにこの城に来たのに……それが今では、客として客間で寛いでいる。

「ああ……」

 ……俺も最初は魔王をぶっ飛ばそうとここで戦ってたのに、いつの間にか創造神を倒すため戦うことになってたからびっくりだ。いや、それは俺だけじゃなくて、ルカもそうか。

「……そんじゃあルカ、俺はちょっと寝る前に運動してくる。」

「ああ、お前は寝る前に動かないと寝れないんだっけ……」

「すっかり、習慣になっちまってるからな〜……」

 今のヴィクトリー、まるで遠足を明日に控えてる子供みたいだ。怖く……ないのかな……

「……そうだ、ヴィクトリー。」

 ルカは、出ていこうとするヴィクトリーを呼び止めた。

「ん?何だよ。」

「その……魔王軍よりとんでもない敵が現れて怖いか?それとも、嬉しいのか?」

 思えば、ヴィクトリーはいつだってそうだった。強いやつを目の前にして、そいつと戦うとなるといつも嬉しそうに笑っていた。だからこその、この質問だ。

 その質問に、ヴィクトリーは少し考えて……

「…………両方だ。」

 そう答えた。

「……そうか。ごめん、変な事聞いて。」

「気にすんな。」

 そう言って、ヴィクトリーは魔王城の訓練所へと行ってしまった……

「両方……か。」

 そう呟いていたらドアがノックされ、彼と入れ替わるようにアリスが入ってきた。

「入るぞ、ルカ……」

「ああ……どうしたんだ、こんな夜に?」

「うむ、少しばかりお腹が減ってな……」

流血表現

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