もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話   作:ジョーカー:ゼノ

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外伝:希望を背負った戦士

「はぁあっ!」

「よし、いいぞ……!」

 ルカとヴィクトリーは魔王城で修行していた。

 ここまでの経緯としては……あの天使襲来の六時間後に話が始まる。

 たまもはヴィクトリー達をアルマエルマに任せ、単身でレミナのラボに殴り込みをかける。しかしそこはもぬけの殻で、ディスクだけが残されてた。そして戻り、ディスクを解析。四精霊の在り処を知る。

 ルカは腕を無くしたヴィクトリーを魔王城に置いて、アリスと二人で世界を回って四精霊を取り戻した。天使が襲撃してる所には、ミカエラさんが飛んでくれた。ヴィクトリーはと言うと、左腕が無くてもちゃんと修行していた。たまにルカ達の所に瞬間移動し、戦えるだけ戦ったりしていた。

 そして、今に至る……

 

「いいぞルカ!だんだん動きのキレも良くなってきた!」

「はぁあっ!瞬剣・疾風迅雷っ!!」

 ルカの瞬剣・疾風迅雷が当たり、ヴィクトリーはぶっ飛ぶ。

「がぁっ!!」

 しかし彼は体勢を整え、飛び上がり、着地する。

「はぁっ……はぁっ……!」

 それを見ていたルカは、息を切らしながら、剣を構えていた。

「うむ、そんなものじゃろう!」

 たまもが、二人の修行を監修してくれてた。アリスの教育係とだけあって、その修行は有意義なものになっていた。

「ふぅ〜……ルカもめちゃくちゃ強くなってるな……もう俺じゃかなわねぇぞ……」

「いや、そんな事……」

 左腕が無いのにも関わらず、全力の僕と互角の攻防が出来る方が凄いと思う。相変わらず、ヴィクトリーは強い。

「で、おめぇらは明日ドレインラボとかに行くんだっけか。」

「ああ、捕虜を助けに行くんだ。それに精霊の森のラボにも一応行っておかないとな。あとは罪人の封牢に行って、ハインリヒを封印してる結界のコピーをとってくるんだ。」

「大忙しだな……なんだか、申し訳ねぇな……俺も左腕一本あったら、ついていけたのによ。」

「いや、いいんだ。その体だと、満足に戦えないだろうし……」

「足手まといを増やす訳にもいかないからな。」

 アリスは冷静に、そう言う。

「あぁ……」

 ヴィクトリーは左腕があった所を撫でた。

「その……仙豆さえ僕達が食べなかったら、その腕も元に戻ったのかな……」

「うん……でも、なくなっちまったもんはしょうがねぇさ。あの時、おめぇらを守りきれただけでも幸運だと思わねぇと。」

「……すまなかったな、ヴィクトリー。」

 アリスはそう言って、ヴィクトリーに頭を下げた。

「あの時、余は本気でどうにかしていた……」

「仕方ねぇさ。過ぎたもんはしょうがねぇよ。」

 そんな事を話し合っていた時だった。

 魔王城の前に、凄まじい気が降り立った。

「っ!?」

「なんだっ!?」

「この気は……グランべリアと戦ってた奴か!」

 そう、アルカンシエルが降り立ってきたらしい。

「はぁあっ!!」

 ヴィクトリーは超サイヤ人になり、外に出ようとする。

「待てヴィクトリー、僕達も行く!」

「そうだ、貴様だけではかなわん!」

「いや、おめぇらはここで待ってろ!おめぇらに何かあったら、取り返しがつかねぇんだぞ!!」

「し、しかし……!!」

「僕だって、精霊の力を取り戻した!!今なら、お前よりも出来る!!」

「……」

 ヴィクトリーは考え……そして閃く。

「分かった。おめぇら二人、先に行け。」

「ああ!」

「ふんっ!この魔王城に直接来るとはな……!」

 ルカとアリスは外に出る門の前で立ち止まり、気合を入れなおそうとした時だった。

「がはっ!?」

「ぐあぁっ!?」

 ルカとアリスの背中に、重い一撃が入る。そして、二人は気絶してしまった。

「……すまない、二人とも……おめぇらが死んじまったら、この星を守る人間は誰もいなくなっちまう……この先、イリアス達をぶっ倒せる可能性を持った、最後の戦士が……」

 そう言って、外に出ようとした時だった。

「行かせんぞ。」

 たまもが手を広げ、ヴィクトリーの前に立ちはだかった。

「どくんだ、たまも!ふざけてる場合じゃねぇ!」

「それはこっちの台詞じゃ!今のお主がアルカンシエルにかなうものか!!」

「そんな事分かりきってんだよ!!とっととどけぇっ!!」

「行かせんと言ったら行かせん!!」

「……」

 ヴィクトリーはたまもの手を取り、まっすぐに目を見つめた。

「……たまも、俺の目を見てくれ。俺が、これから死にに行くタマだと思うか……?」

「……しかし……」

「太陽拳っ!!」

「っ!?」

 たまもは太陽拳の閃光を直視してしまい、目を押さえる。

「ヴィクトリー……っ!!お主っ……!!がはぁっ!!」

 そして、たまもの腹に一撃して、気絶させた。

「……すまねぇ。」

 そう言い捨て、ヴィクトリーは外に出た……

 

 門の前では、案の定アルカンシエルが仁王立ちしていた。

「……よぉ。」

「ほう……出てきたのは貴様一人か。野蛮な猿……」

「他の仲間達はちょっと休憩してもらってる。何の用だ!」

 アルカンシエルは気を解放して、ヴィクトリーを威圧した。

「プロメスティン様よりの命令だ。貴様を殺してこいと……」

「……なるほど、どの道俺が指名されてたって事か……」

 ヴィクトリーも気を解放し、アルカンシエルの威圧をかき消した。凄まじい気が旋風し、彼女の全身を叩く。

「……!」

 つ、強い……魔王城でツクヨミやアンフィスバエナと戦ってた時より……!

「おい……俺とおめぇが戦うのはいいけど、一つだけ条件を付けさせろ。」

 ヴィクトリーは、彼女を睨めつけ、威圧しながらそう言う。

「な、なんだ……?」

 恐る恐る彼女は、聞く。

「魔王城のみんなには、絶対手出しすんな!」

 ヴィクトリーは、しっかりとそう言い放ち──彼女も、頷いた。

「いいだろう……私も貴様の敵である以前に、戦士だ。その条件を飲もう。」

 二人はそれで、ニヤリと笑った。お互いが戦士なので、通じ合えるものがあるのだろう。もしもこんな出会いじゃなければ、いいライバルになれたというのに……

「場所を変えようぜ。ここだと魔王城に迷惑だ。」

「ふん……好きにするがいい。」

 ヴィクトリーとアルカンシエルは、一緒になって飛んだのだった……

 

 二人はレミナに着地し、睨み合った。

「なるほど、ここを貴様の墓場に選んだ訳か……」

 アルカンシエルはそう言って、指をボキボキと鳴らしながら構える。

「……俺は死なねぇっ!!」

 ヴィクトリーが、そう言って彼女に一喝する。

「ほう……?」

「例えこの命が塵になろうと、必ず俺の意志を受け継ぐ者が現れて、そしてお前達天界軍をぶっ飛ばす!!」

「……」

 普通ならば、くだらない事をと吐き捨てる所だったが……今回は違った。この男は、死ぬ覚悟で私と戦おうというらしい。その身を犠牲にして、絶対に勝てない戦いに挑もうと言うのだ。

「……」

 ならば、正面から叩き潰すが礼儀──故に、構えた。

「……」

 構えた二人は睨み合い……そして、ぶつかり合った。

「だぁあーっ!!」

 ヴィクトリーは突進し、アルカンシエルの顔面にパンチを放つ。それは直撃し、彼女の頬を打ち抜いた。

「グッ……!!?」

 はやいっ!?見切れなかった……この私がっ!?

「だだだだだだだだだだだ……!!!」

 ヴィクトリーは右腕と両足だけでアルカンシエルの全身を乱打し、思いっきり顔面にパンチする。彼女はそれを食らいながら、踏みとどまり、反撃に殴りかかってきた。

「がぁっ!!」

「うっぐぅぁあ…… !!?」

 ヴィクトリーの腹にストレートの一閃が決まり、彼はぶっ飛んでしまった。

「はぁあっ!!」

 更に彼女は跳び上がり、踏み潰しにかかった。

「ぐぅっ!」

 ヴィクトリーは飛び上がって避け、エネルギー弾を連射する。

「ふんっ!」

 彼女は被弾しながら、構わずに突っ込んできた。

「なにっ!?」

「がぁっ!」

 そしてヴィクトリーの腹に膝蹴りしてから、廻し蹴りでぶっ飛ばした。

「ぐあぁあっ!!」

 ヴィクトリーは廃墟の壁に叩きつけられ、そこの部屋の中に転がり込んでしまう。

「くらえ……!!」

 アルカンシエルは飛び上がり、両の拳にエネルギーを込め、廃墟に突っ込んだ。廃墟は大爆発を起こし、崩れる。

「……ふん。」

 その前に降り立ち、瓦礫の山を前にする彼女。

「……がぁああああっ!!」

 その瓦礫の山を吹っ飛ばし、ヴィクトリーが突っ込んできた。

「ふふ……!」

 猛スピードでぶつかり、猛攻する。凄まじい速度で、拳と蹴りが飛び交い、加速していく。

「でゃだだだだだだ……!!!」

「ぐっ……ぬぬ……!!」

 アルカンシエルはなんとか対応しようとはするものの、左腕が無いはずのヴィクトリーの猛攻を全て凌ぐのは困難だった。

「ふんっ!」

 そこで彼女は、彼の拳を掴んだ。

「ぐぅっ!」

「はぁああっ!!」

 そして腹にまっすぐ蹴りを入れて、思いっきり蹴り飛ばした。

「ぐぁああああっ!!!」

 ヴィクトリーは体勢を整え、何回転かした後に飛び上がった。

「おそいっ!!」

 アルカンシエルは既に背後に回っており、彼をスレッジハンマーで地面へと叩き落とした。

「くっそぉ……!!」

「はぁあっ!!」

 アルカンシエルの飛び蹴りを、ヴィクトリーは間一髪で避ける。凄まじい地響きが大地に轟き、大きなクレーターができた。彼は何度かバク転してから、気を溜めた。

「波ーーーっ!!!」

 そして、片手で渾身の超かめはめ波を放った。

「うぉおっ!!」

 アルカンシエルはそれを掌底で吹き飛ばそうとしたが、かめはめ波が押し勝った。

「ぐぅおぉっ!!?」

「だぁああーっ!!」

 ヴィクトリーが既に眼前に移動しており、アルカンシエルのこめかみを蹴り飛ばした。

「ぐぁあっ!!」

「ででででででいっ!!どりゃあっ!!」

 更に胸に蹴りを乱打して、顎を思いっきり蹴り上げた。

「っぐぅう……!!?」

 アルカンシエルの体が、上空にぶっ飛ばされる。ヴィクトリーがそれに追いつき、彼女の足を掴んだ。

「だりゃあああああーーーっ!!!!」

 そして、渾身の力を込め、彼女を廃墟の屋根に叩きつけた。それで彼女は廃墟の屋根を貫通し、その廃墟の床すらも貫通して、地中奥深くまでめり込む。

「……」

 ヴィクトリーは、その廃墟の前に立った。

「……!」

 気の爆発と同時に、廃墟が吹っ飛んだ。そこからアルカンシエルが飛んできて、着地した。その表情は、若干ばかりの笑みが浮かんでいた。

「……」

「……」

 雲行きが、怪しくなってきた。空が曇り、雨が降ってくる。雷鳴が鳴り響き、風が吹いてきた。まるで、今から悲劇が訪れようとしているかのように──

「……がぁあっ!!」

「はぁあっ!!」

 二人は気を全開放して、ぶつかり合った。これが、ファイナルラウンドだ。

「どぉっ!!」

 ヴィクトリーは、パンチを放つ。しかしそれは避けられ、彼の体はすっぽ抜けた。その隙にアルカンシエルは、拳に爆炎を纏った。

「くらえっ!!」

 そしてその拳が、彼の頬を打ち抜いた。

「ぐぁああっ!!」

 直撃し、凄まじい勢いで吹っ飛んでいく。建物を何棟も貫通し、倒壊させていった。

「はぁっ!」

 アルカンシエルはその倒壊する建物の瓦礫を吹っ飛ばしながら追いつき、攻撃を連打してきた。しかし彼も、その攻撃の連打を防御する。

「ぐっ!ぐぐぐぐ……!!」

「ぉおおおおお……!!」

 アルカンシエルは足払いをかけ、すっ転ばせにかかる。

「ぐぅっ!!」

 彼は転ぶ寸前で耐え、飛んだ。

「逃がさんっ!!」

「なにっ!?」

 彼女も飛び、追いついて目の前に回り込み、踵落としを放つ。それにヴィクトリーは直撃し、勢いよく地面へと墜落した。

「ぐぅああぁっ!!」

「せいっ!」

 更に彼女は叩き落とした先に回り込み、彼を背中のヒッティングマッスルでぶっ飛ばした。

「ぐぅあああっ!!!」

 そのままヴィクトリーは壁に叩きつけられる。その際に、目を見開き、勢いよく吐血した。

「終わりだ……!!!黒炎十六掌ッッ!!!」

 そんな彼に、紅蓮の炎を宿した拳が、連続で叩き込まれた。

「うわぁああああーーー!!!!!」

 紅蓮の拳が、彼の体に致命傷を刻んだ。

「が……が……は……」

 ブスブスと体が焼け、内臓の組織の殆どに深刻なダメージが刻まれてしまった。しかし……

「ま……だだ……!!まだ俺は……戦えるんだぁああ……!!!」

 ヴィクトリーは気を解放し、アルカンシエルに向かってダッシュし、殴りかかる。

「くどいっ!!」

 彼女はそんな彼の顔面を大きな手で掴んで投げ飛ばしてから、走りながら彼の体に何発も重い攻撃を加えた。

「ぐぁあっ!ぎゃあっ!がはぁっ!ぐはぁっ!」

「剛ォオオオーーーッ!!!」

 そして顔面を掴んで、頭を壁に叩きつけた。

「ぐ……ぐぶ……っ!!」

「はぁあああ……!!」

 トドメと言わんばかりに、彼の体に再び黒炎十六掌が炸裂した。

「ぐぁあああああああ……!!!!」

 その技をくらってる最中に、この世界に来てからの記憶が脳内に走った。そして……

「ぐ……がはぁっ……!!!」

 白目を剥いて、ヴィクトリーは倒れた。

「ハァッ……ハァッ……!どうだっ!!」

「……」

 ヴィクトリーは気合いで立ち上がり、アルカンシエルを睨みつけ……そして気を解放した。

「なんだと……!!?」

「うぁあああっ!!」

 そして、彼女に殴りかかったが……その大きな掌が彼の顔面を掴み、壁に叩きつけた。

「ぐぁああっ……!!」

「今度こそ……!!」

 ヴィクトリーの体に、またもや黒炎十六掌が叩き込まれた。

「がっ……は……!!!」

 彼は遂に超サイヤ人で無くなってしまい、地面に倒れ伏した。

「はぁ……はぁ…………」

「ハァッ……ハァッ……!!」

 アルカンシエルは息を切らしながら、彼を見下ろす。

「つ、強かったぞ……貴様は……命令でなければ、殺すのが惜しいぐらい……」

「…………」

 ヴィクトリーは最後にアルカンシエルの顔を向いて……そして、絶命した。この世界のために戦った異世界の戦士は、死んでしまったのだ。

「……一応、サンプルの回収も頼まれてたな……」

 アルカンシエルは死んだ彼の髪の毛を千切り、そして転送魔法を使って帰った……

 

 魔王城……

「……はっ!」

 ルカが一番に目覚めた。

 確か、僕は……!いや、それどころじゃない!

「くそっ!」

 ルカは飛び出して、雨の中に走って行った。

「か、感じられない……ヴィクトリーの気が……!」

 

 しばらく走って、レミナ地点……凄まじい戦闘の痕があり、ほとんどの廃墟が吹き飛んでいた。恐らくは、ここで戦闘があったに違いない。

「……はっ!」

 遠くに倒れてる人影を見つける。山吹色の道着を身に付けた、動かぬ人──その人影に、見覚えはある。だけど……

「……ヴィク……トリー……?」

 こちらが近づくも、反応しない。最悪のパターンを頭の中に押し込み、走り寄った。

「ヴィクトリー……ヴィクトリー……っ!!」

 涙が、雨と共に流れる。

 こいつが負ける筈がない。こいつが殺される筈がない。だって、何時だって……どんなピンチでも、すごいパワーでピンチを乗り切ってきたじゃないか!

「……嘘だ……」

 ルカはヴィクトリーの亡骸の前に立つ。暫くしても彼は起きないので、その体を仰向けにして揺すぶった。気絶してるか、寝ているだけだと信じていたのだ。

「ヴィクトリーっ!!しっかりしろぉっ!!ヴィクトリーっ!!起きろったら!!」

 激しく揺すぶったり、大声を出しても、ヴィクトリーは反応しない。確信した。彼は、死んだ。自分達や魔王城のみんなを守る為だけに戦い、そして死んだのだった。

「嘘だ……こんなの……こんなの、嘘だぁーーーっ!!!」

 ルカは天に向かって叫びながら、大声で号泣してしまった。

「わぁああーーーーっ!!!!」

 握った拳から、血が滲み出る。

 彼の中にいる精霊達も、顔を伏せていた。

「ふぇーん!ヴィクトリーがぁ!ヴィクトリーが死んじゃった〜っ!」

「っ……」

「く……く……!!」

「恨むぞ……我々が無力な事を……!!!」

 ルカの泣き声が、大雨のヘルゴンド大陸に響く。

「うぁあああああーーーーッッッ!!!!」

 その時だった。ルカの指輪が割れ、その背中に光の翼が広がった。凄まじいエネルギーが、彼の体内に流れ込む。

「うわぁあああーーーーーッッ!!!」

 ルカはその力のままに両の拳を振り上げ、地面に叩きつけた。すると大地が粉砕し、そこら一帯に亀裂が走った……

流血表現

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