もんむす・くえすと!の世界に降り立った1人のヒーローアバターの話 作:ジョーカー:ゼノ
ラ・クロワ率いるシルク・ドゥ・クロワ。そのモンスター達との戦いは、熾烈を極めた。そして、遂に魔王アリスフィーズ15世のゾンビが登場した。その彼女に、なす術もなく圧倒される戦士達……しかし、ヴィクトリーはここで驚きの提案をしてきた。
「どうせ、ラ・クロワとも戦わなきゃいけねぇんだ……おめぇは、そこで休憩しててくれ……」
「え……!?」
「俺はアリスの母ちゃんを食いとどめる……!」
なんと、二人がかりで歯も立たなかったアリスフィーズ15世と、一対一でやり合うと宣言したのだ。薄ら笑いを浮かべるラ・クロワを横目に、ヴィクトリーはニヤリと笑った……
「じゃあ、超サイヤ人を超えた超サイヤ人を更に超えてみるか……」
「す……超サイヤ人を超えた超サイヤ人を……さ、更に超えて……っ!?」
まず、ルカが驚く。早口言葉じみたヴィクトリーの言葉を、理解しやすいように口に出して、その意味を理解した。
「……超サイヤ人を超えた超サイヤ人を、更に超えただと……?」
ラ・クロワは眉を吊り上げ、苛立ちを見せる。そんな都合のいいものがあるのなら、早く出せと言わんばかりの態度だ。
「は、ハッタリだろ……ヴィクトリー?まさか、それ以上の変身が……!!」
心配するルカの目の前で、ヴィクトリーは、気を解放する。
「……はぁあああああああ……!!!!」
その気が、これまでより更に大きく膨れ上がった。
「……っ!!これは……っ!!」
ワミエルと戦った時に、あの変異──いや、その先に行こうとしているのか……!!?
「……ッッ!!」
「……ハッタリではない……!」
アリスフィーズ15世も、ラ・クロワも硬直してしまった。ヴィクトリーの凄まじい気に、この場に居る全員が吹っ飛ばされそうになっていた。
「かぁあああああああ……!!!!」
影響は、ここまでに留まらなかった。
バイオラボ、地下道……
ヴィクトリーの気で、そこも激しく揺れていた。
「うわわわわっ!?な、何じゃこの揺れはっ!?」
「……」
揺れに戸惑うクロムを、フレデリカが抱えて走る。
「このエネルギーは……ヴィクトリー……!?あ、あいつ……こんなエネルギーを……!!?」
別地点にいるアリスも、ヴィクトリーのエネルギーがする方へと駆け出した……
魔王城……
「……っ!?」
たまもが、真っ先に異変に気付いたようだ。その直後、魔王城が凄まじい気の嵐によって揺れ始めた。
「……っ!たまも様っ!」
八尾が、たまもの元に来る。
「こ、このエネルギー……もしかして……」
「ああ……ヴィクトリーのエネルギーじゃな……」
「こ、こわいよぉ〜!」
「妖狐っ!私にくっついておきなさい!」
七尾は、妖狐を抱きかかえながら身を伏せていた。その横でたまもは、バイオラボの方角を見て、唾を飲んだ。
「あ、彼奴……いったい、どんな修行をした……!!?」
「ぐ……ぐ……ぐがががが……がああああああ……!!!」
ヴィクトリーのエネルギーがどんどん膨れ上がる。彼の眉毛が薄くなり、前髪が一束になり、髪が伸び始める。
「うぐ……ぐぐ……!!」
ルカが、彼の放っている気に吹っ飛ばされそうになりながら、その変異を見つめていた。
この館だけではなく、この星全体が揺れている。こいつ、いったいどうなってしまうんだ……!?
「がぁああああああああ……!!!!」
目覚める。サイヤ人の本性が。あの時の感覚が。戦闘民族の本能が。
大猿の雄叫びのようなものが彼の頭の中で響き、それが体の中にいるサイヤ人という力の結晶を呼び覚まし──
「かあああああぁーーーーッッッ!!!!」
ヴィクトリーは大きく咆哮し、身体中から閃光を放った。エネルギーが爆発し、気がこの星全体に轟く。
「っ!」
「くっ……!」
「ぬぅっ……!!」
そして、閃光が晴れ……その場に居たルカ、ラ・クロワ、アリスフィーズ15世はヴィクトリーの方に目を向けた……
「…………」
一束だけになった前髪、腰辺りまで伸びた金髪、眉毛は無くなり、悪人面になっているが、確かにヴィクトリーだった。何より、放たれている気が前とは段違いだった。スパークがバチバチと鳴り、圧倒的なオーラを纏っている。
「……これが超サイヤ人を超えた超サイヤ人を更に超えた姿……超サイヤ人3ってとこかな……」
「超サイヤ人……3……!!」
ラ・クロワは動揺した様子で、超サイヤ人3となったヴィクトリーを凝視した。その視線に応えるように、彼もニヤリと笑い、彼女に向く。
「時間がかかってすまなかったな。まだこの変化に慣れてねぇんだ……」
天界……
「ち、地上で……地上で何が起こっているのです……!?」
「エデンッ!どけっ!」
「ちょっ、プロメスティンっ……」
「まぁ……!」
エデンとプロメスティンと黒のアリスが、水晶を覗き込む。そこには、驚天動地の変身を遂げたヴィクトリーが映し出されていた。
「ま、まさか……こいつが……!?」
「ものすごいエナジーですわ……確かに……」
「と、とても信じられません……!この天界にまで、パワーが届くなんて……!」
この戦士……いったいどうなっている……!!?
「……ラ・クロワ……」
プロメスティンが微かにそう呟く。
「……素晴らしいですわ。ハインリヒ以来の、素晴らしいパワーですわ……うふ、うふふふ……」
黒のアリスは、不敵に笑っていた……
「時間が勿体ねぇ、とっととやろうぜ。」
ヴィクトリーは構え、アリスフィーズ15世と相対した。
「人間の身で、よくぞここまで鍛え上げた……しかし、余には勝てぬ……!!」
アリスフィーズ15世は拳を固め、殴りかかってくる。ヴィクトリーはその拳に合わせるように、パンチを放つ。それで拳同士が衝突し、衝撃が完全に相殺され、周囲に突風が舞う。
「なにっ!?」
「……」
ヴィクトリーは飛び上がり、拳で彼女の顎を打ち抜いた。
「ごぉおっ!?」
「ふんっ!」
ぶっ飛びかけた彼女の髪を掴み、こちらに手繰り寄せる。そして、何度も顔面にパンチした。
「ぐ、ぐぐぐぅ……っ!!」
「……」
そして両手で髪を掴んでグルグルとぶん回し、床に叩き落とした。
「がぁあっ!!」
彼女は起き上がり、エネルギー弾を連射してきた。
「!!」
彼はそれを手刀で次々に弾き飛ばしてから、矢のように飛び蹴りした。それは彼女の顔面に直撃し、自分よりも何倍もある巨体を蹴り飛ばす。
「小賢しい……っ!!」
アリスフィーズ15世は踏ん張り、接近して、ヴィクトリーの顔面をぶん殴った。しかし、殴られた筈の彼は余裕の笑みで彼女を見る。
「な……!」
次の瞬間、ヴィクトリーの拳がアリスフィーズ15世の頬を打ち抜いた。
「っ!!?」
「だだだだだだだだだだだぁ!!!」
更に腹にパンチを連打して、頭突きでぶっ飛ばした。
「ぐぅう……!!」
「ふんっ!」
ヴィクトリーは猛スピードで飛び、拳を振り上げる。しかしアリスフィーズ15世は、彼の顎をアッパーで打ち抜いた。
「っく……!?」
「はぁあっ!」
そして腹に尻尾を叩きつけて、床へと叩き倒した。
「ぐぅっ……!!」
「ふははは……!」
更に両方の拳に力を込めて、ヴィクトリーの全身に拳を乱打した。とんでもない威力でめちゃくちゃに連打される拳のせいで、バイオラボ全体が地震のように揺れる。
「ふんっ!」
しかし彼はそんな拳をガードした後に、彼女の腹を思いっきり蹴り上げたのだった。
「ぐぅうううっ……!!?」
アリスフィーズ15世は、きりもみ回転しながら、目を見開いた。
「がぁああああっ!!!」
ヴィクトリーはそんな彼女の腹に、フルパワーでパンチを連打した。先程のお返しと言わんばかりに、人智を超えた速さでのラッシュが、ミスヒット無しに彼女に叩き込まれる。
「ぐぐぐぐぅうううぁああああ……!!!!」
「だだだだだだだだ……!!!だりゃああああああーっ!!!」
渾身の力を込めたパンチで、天井近くにまで打ち上げた。
「がっはぁあああ……!!!」
アリスフィーズ15世の体が回転し、今度は天井に正面を向ける形となる。
「こっちだぁっ!!」
「!!!」
ヴィクトリーが気を込めた拳を振り上げて、彼女の前に現れ──
「だぁりゃあああーーーっ!!!」
その拳を彼女の腹に、思いっきり叩きつけた。叩きつけられた所から、スパークがバチバチと迸る。
「おぉおおッッうッッ……!!!!」
彼女は猛スピードで思いっきり床に叩きつけられ、床から2m近くバウンドした。
「はぁああああーーーっ!!!」
ヴィクトリーは両手に気を溜め、エネルギーを込める。そんな両手を突き出し、アリスフィーズ15世に隕石の如く突進した。
「!!!!」
そして、彼女の腹にヴィクトリーが着弾。光の柱のような凄まじい大爆発が巻き起こり、衝撃波で部屋中のあらゆるものが吹き飛んだ。
「ぐ……!!」
「……やった。」
ヴィクトリーはルカの横に着地して、そう呟く。もくもくと爆煙が晴れ……そこに、確かに必殺技を食らったはずのアリスフィーズ15世が立っていた。
「……なんだとっ!!?」
「ハァッ……はぁっ……はぁ……!!」
彼女の呼吸が、整っていく。そうしてダメージを全回復すると、本気でブチ切れた目でヴィクトリーを睨みつけた。
「舐めていたぞ……人間……よくも余にここまでの屈辱を……!!」
「……」
息は切らしてる……が、傷は再生してる……俺らやレプリカントみてぇに、自己強化するのは無理みてぇだな……
「殺してやる……殺してやるぞ、金色の戦士……!!」
「時間はかけたくねぇ、一気に終わらせるぞ!」
二人は激突し、猛スピードで攻防を繰り広げた。
「だぁあっ!」
ヴィクトリーが、アリスフィーズ15世の頬をぶん殴った。
「ふんっ!」
彼女は仰け反るものの、踏ん張って殴り返す。
「がぁっ!」
彼はそれで揺らぐが、何とか意識を手放さず、蹴り上げで彼女の顎を打ち抜いた。
「ぐうぅっ!」
彼女は床に踏み込み、ボディブローした。魔王の拳が、金色の戦士を貫かんと、確かにその胴に叩き込まれる。
「がっ……だだだぁっ!!」
ヴィクトリーは体を廻し、彼女の胸に蹴りを連打した。
「ぐぅあああっ!!」
「吹っ飛べ……!!」
アリスフィーズ15世の顔面、胸、鳩尾、腹に、猛スピードで、ほぼ同時に気を纏った拳の寸勁──超龍閃撃が叩き込まれた。それは、確かに彼女の正中線の急所に叩き込まれたのだった。
「ぐっがぁああああーッ!!?」
彼女は何が起きたかも理解出来ぬまま、ダメージのままにぶっ飛び、倒れる。
「な、なんと……寸勁を、一瞬で四発も……!!?」
ラ・クロワは見切っていたようだ。
「……ふっ!」
ヴィクトリーは着地して、構える。
「っぐうぅっ!まだだぁーっ!!」
「げっ……!」
アリスフィーズ15世は立ち上がり、気を全開放した。おぞましい魔王の気が溢れ出し、部屋中に波動する。
「まだ、終わるかァアアッッ!!!」
「お、おめぇちょっとしつけぇぞ……!」
ヴィクトリーは戸惑った顔から……何かに気付いたような様子をしてから、歯を見せて笑顔になった。
「ナイスタイミング……」
「うぉおおおっ!!!」
拳を振り上げたアリスフィーズ15世の顔面に、謎の小さな影が飛び出してくる。そして、その小さな幼女の拳で彼女をぶっ飛ばした。
「っ!?」
影は、ヴィクトリーの前に立つ。その正体は、ようやくここに駆けつけたアリスだった。
「アリス……」
「あ、アリス……!」
遂に、アリスが来てしまった。
母のアンデッドと対峙する前に終わってくれと、願っていたのに……
「時間稼ぎ、ご苦労だったぞ……ヴィクトリー。」
「ああ……選手交代だ。アリスはあいつを……俺達はラ・クロワをやる。」
「ヴィクトリー……どう言う事だ……!?」
時間稼ぎ?選手交代?なんで、そんな事を……
「お前、もしかして全力じゃなかったのか……?」
「さぁな……ただ、アリスフィーズ15世は確かにすげぇ強敵だし……こいつはアリスが倒さねぇと意味がねぇ……そんな気がしたんだ。」
「その通りだルカ、分かってくれ……母う──アリスフィーズ15世は、余が相手する。それが、余のつけるべきケジメというものなのだ。」
「……分かった。」
そこまで言われちゃ、断りようがない。結果、一番避けたい展開になってしまったが……仕方ない。
「くくっ、話は終わったか?余に似た妖魔よ……次は貴様が余の相手のようだな……」
アリスフィーズ15世は、アリスに尻尾を叩きつけた。しかし彼女は小さい体ながらも、それを受け止めて、踏ん張る。
「……場所を変えよう!ここには、余計な気を遣う奴がいるからな……!」
アリスはそう言って、アリスフィーズ15世を足元に叩きつけた。床が崩れ、両者は地下へと落ちる。
「死ぬんじゃねぇぞ、アリス!」
アリスが追撃をしかけながら、こっちに向かって親指を上げたのが確認出来た。
「なんと、早くもメインスペクタクルが始まってしまったか!現役魔王と前代魔王の対決、実に面白い……!」
ラ・クロワの言葉に、ルカとヴィクトリーの視線が向いた。
「……何が面白い?本当に面白いのか、これが……!!」
「アリスの母ちゃんの死体を改造して、アリスと無理矢理戦わせて……外道が……!!」
「ああ、まだ勇者達が残っていたか。すまないが、私はあちらの舞台に専念せねばならんのだ。趣には欠けるが、先の演出をもう一度楽しんでくれ……」
棺桶の中から出てくるクィーンスキュラと先代クィーンハーピー。ラ・クロワはもうこっちには興味もないらしく、階下に降りようとしてる。
「今度こそ、私の触手で……」
「閃殺。」
ルカの時空を断裂させるほどの一閃が、クィーンスキュラの触手と交差する。切り落とされた触手が、ぼとりと床に落ちた。
「これはお見事な剣技……しかし触手を断ったとて、いくらでも再生は可能です。」
「……それで、胴体も再生するのか?」
「え……?」
クィーンスキュラの下半身が、床に落ちた。さっきの閃殺で、胴体もぶった切ってたらしい。
「そんな、まさか……!」
真っ二つになったクィーンスキュラの体が、粒子と化していく。今度こそ、物言わぬ屍へと還ったのだ……
「まさか、一撃だと……?クィーンスキュラには、前の戦いのダメージが残っていたとはいえ……いや、連戦での疲労は貴様の方が大きいはず!休憩も、そんなには……」
「ラ・クロワ……僕達は、何人もの女王と戦ってきたよ……人間達を誘拐してでも、一族の繁栄のために尽くそうとする者……一族の興亡を賭け、暴力で種族間の闘争を推し進める者……労苦を強いられた娘達のため、怒りを爆発させた者……人間に追い詰められ、とうとう反撃を始めた者……失った恋人の無念を晴らそうとする者……野心と支配欲を剥き出しにする者……同胞を守るために、命を落とした者……正しい感情も、正しくない感情も様々だったけど……剥き出しの感情を持って戦う女王達は、誰もみんな恐ろしく強かったよ。」
「……行け、クィーンハーピー!今度こそ勇者達を葬り去れ!」
ラ・クロワに命令された先代クィーンハーピーが、羽根をはばたかせて周囲を舞う。
「ふん、あたしはそう簡単に……」
ヴィクトリーは彼女の顔面を掴み、床に叩きつけた。
「ぐぅあああっ!!?」
そのままビクンビクンと跳ねてから、動かなくなってしまった。
「……だけど、こいつらには魂がねぇ……こんなくだらねぇガラクタ人形に、今まで女王に勝ち続けてきた俺達が負けてたまるか……!!」
「そうだ!生きている者の命を奪い、ただのマリオネットに変え……その命の源さえ奪い去って、何が究極の魔芸だ!」
「なんだ、こいつらの強さは……来いタイタニア!こいつらを止めろ!」
棺桶からタイタニアが出てくる。
ヴィクトリーは腑抜けになった先代クィーンハーピーを、彼女にぶん投げた。
「きゃ……!」
「これが……お前が、彼女達から奪った力だ!」
先代クィーンハーピーごと、タイタニアを一閃するルカ。二体の妖魔は真っ二つになり、屍に戻った。
「感情、心、魂……それは、生命ある者全てが持つ力。それを奪い、お前は彼女達を弱くしたんだ……!」
「究極の魔芸だか何だか知らねぇが、おめぇのやった事は単に生命を奪っただけだ!」
二人は並び、ラ・クロワの方に拳と剣を向けた。
「くっ……!残る全員で出ろ、シルク・ドゥ・クロワ!三人がかりで、何としても勇者達を倒せ!」
棺桶から出てくる、フェルナンデス、ロザ、クィーンラミア……残るはこいつらだけか。
「行くぞ、ヴィクトリー……!」
「ああ……!」
二人は背中を合わせて構えた。新たな力を爆発させたヴィクトリー。怒りを爆発させたルカ。二人の猛攻が今、ここから始まる……
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